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4章
26。夢はどちらか
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いつだかの物理の授業で出された自由落下の問題があった。
五メートルの落下に掛かる時間はおよそ一秒。
五十メートルの落下に掛かるのは十秒ーーではなく、三秒ちょっとしか掛からない。
そして残念なこと、この世界の猫が使うのは転移魔法であって、瞬間移動じゃないのだ。
事前に準備しているのでなければ、転移陣の起動だけで何秒か掛かる。
落ちたのがシアンと一緒にだったら助かる可能性はあったが、これはもうーー
(間に合わないわ)
この塔の高さがどれくらいあるかは分からないけど、このままだと確実に即死だ。しかもグチャグチャのミンチ状態で。
ーーお願いだから、夢だと言ってほしい。
そんな願いも虚しく、加速度的にスピードを上げながら地面が近づいていたーー
◇
「……ソフィー……ソフィー……お願い、目を覚まして……!」
意識の端で誰かの泣きそうな声を拾う。
ソフィーって呼んでるから、シアンかな……でも少し、いやかなり声が高い? 女の人の声、のような。
けど私のことをソフィーと呼ぶのはここだとシアンだけのはずでーー
少しずつ、身体の感覚が戻る。
手を握られているのに気づいてほんのちょっとだけ握り返すと、ハッと息を呑む気配がした。
「ーーソフィー!? ひょっとして意識が……!」
今度は頭が抱きしめられる感覚。細くて柔らかい腕が回される。最初は恐る恐る、それからぎゅっと。
強いが、苦しくはない。あたたかい。
シアンやマゼンタに抱きしめられるのとは全然違うなぁ、なんてぼんやり考えながら、ようやく重い目蓋をこじ開けた。
あ、やっぱり女の人だ。
顔は見えないけど、長く豊かな髪が背中に広がってとても綺麗ーーって、この髪の色はストロベリーブロンド?
ーーーーまさか。
「お姉、ちゃん……?」
「……ソフィー!? あ、ああ……良かった。本当に良かった……! 神様、感謝いたします……!」
ーー夢を、見ているのかしら。それとも今までが夢を見ていたの?
私の横で、姉が顔をくしゃくしゃにして泣いていた。
五メートルの落下に掛かる時間はおよそ一秒。
五十メートルの落下に掛かるのは十秒ーーではなく、三秒ちょっとしか掛からない。
そして残念なこと、この世界の猫が使うのは転移魔法であって、瞬間移動じゃないのだ。
事前に準備しているのでなければ、転移陣の起動だけで何秒か掛かる。
落ちたのがシアンと一緒にだったら助かる可能性はあったが、これはもうーー
(間に合わないわ)
この塔の高さがどれくらいあるかは分からないけど、このままだと確実に即死だ。しかもグチャグチャのミンチ状態で。
ーーお願いだから、夢だと言ってほしい。
そんな願いも虚しく、加速度的にスピードを上げながら地面が近づいていたーー
◇
「……ソフィー……ソフィー……お願い、目を覚まして……!」
意識の端で誰かの泣きそうな声を拾う。
ソフィーって呼んでるから、シアンかな……でも少し、いやかなり声が高い? 女の人の声、のような。
けど私のことをソフィーと呼ぶのはここだとシアンだけのはずでーー
少しずつ、身体の感覚が戻る。
手を握られているのに気づいてほんのちょっとだけ握り返すと、ハッと息を呑む気配がした。
「ーーソフィー!? ひょっとして意識が……!」
今度は頭が抱きしめられる感覚。細くて柔らかい腕が回される。最初は恐る恐る、それからぎゅっと。
強いが、苦しくはない。あたたかい。
シアンやマゼンタに抱きしめられるのとは全然違うなぁ、なんてぼんやり考えながら、ようやく重い目蓋をこじ開けた。
あ、やっぱり女の人だ。
顔は見えないけど、長く豊かな髪が背中に広がってとても綺麗ーーって、この髪の色はストロベリーブロンド?
ーーーーまさか。
「お姉、ちゃん……?」
「……ソフィー!? あ、ああ……良かった。本当に良かった……! 神様、感謝いたします……!」
ーー夢を、見ているのかしら。それとも今までが夢を見ていたの?
私の横で、姉が顔をくしゃくしゃにして泣いていた。
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