【本編完結】森で遭難しかけたら獣とおかしな人達に囲まれました 〜飼い猫が私を逃してくれません!〜

夕木アリス

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4章

26。夢はどちらか

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いつだかの物理の授業で出された自由落下の問題があった。

五メートルの落下に掛かる時間はおよそ一秒。
五十メートルの落下に掛かるのは十秒ーーではなく、三秒ちょっとしか掛からない。


そして残念なこと、この世界の猫が使うのは転移魔法であって、瞬間移動じゃないのだ。
事前に準備しているのでなければ、転移陣の起動だけで何秒か掛かる。

落ちたのがシアンと一緒にだったら助かる可能性はあったが、これはもうーー


(間に合わないわ)


この塔の高さがどれくらいあるかは分からないけど、このままだと確実に即死だ。しかもグチャグチャのミンチ状態で。


ーーお願いだから、夢だと言ってほしい。

そんな願いも虚しく、加速度的にスピードを上げながら地面が近づいていたーー











「……ソフィー……ソフィー……お願い、目を覚まして……!」

意識の端で誰かの泣きそうな声を拾う。

ソフィーって呼んでるから、シアンかな……でも少し、いやかなり声が高い? 女の人の声、のような。

けど私のことをソフィーと呼ぶのはここだとシアンだけのはずでーー


少しずつ、身体の感覚が戻る。

手を握られているのに気づいてほんのちょっとだけ握り返すと、ハッと息を呑む気配がした。

「ーーソフィー!? ひょっとして意識が……!」

今度は頭が抱きしめられる感覚。細くて柔らかい腕が回される。最初は恐る恐る、それからぎゅっと。
強いが、苦しくはない。あたたかい。


シアンやマゼンタに抱きしめられるのとは全然違うなぁ、なんてぼんやり考えながら、ようやく重い目蓋をこじ開けた。


あ、やっぱり女の人だ。

顔は見えないけど、長く豊かな髪が背中に広がってとても綺麗ーーって、この髪の色はストロベリーブロンド?


ーーーーまさか。


「お姉、ちゃん……?」
「……ソフィー!? あ、ああ……良かった。本当に良かった……! 神様、感謝いたします……!」



ーー夢を、見ているのかしら。それとも今までが夢を見ていたの?

私の横で、姉が顔をくしゃくしゃにして泣いていた。
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