【本編完結】森で遭難しかけたら獣とおかしな人達に囲まれました 〜飼い猫が私を逃してくれません!〜

夕木アリス

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4章

28。思わぬ待ち人

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「うわぁ……なんだか久しぶりに帰った気がする……」

およそ二週間の入院生活から解放され、ようやく戻った自宅。
旅行で家を空ける直前までは留学もしていたので、もはや帰宅というより帰省のような感覚。懐かしき我が家、なんて言いたくなるレベルだ。


「入院長引いちゃったしね。その前も研究室旅行で家ではゆっくりできていなかったから、そう思うのも当然よ。お帰りなさい、ソフィー」
「ふふ、ただいまお姉ちゃん」

お互いにちょっと気取った感じに挨拶を交わして、笑いながら門扉をくぐる。


街の中心部からは少し離れた場所の一軒家で、昔は住み込みの家政婦さんまでいたくらいだから、お屋敷とまでは行かないまでもそこそこに広い家だ。
手入れされた前庭には小さなバラ園があり、ちょうど秋バラが見頃になっていた。
バラは、母の好きな花だった。


「私は明日からは仕事に出ないといけないんだけど……ソフィーは家に一人で平気? お手伝いさんとか手配しましょうか?」
「そこまでは大丈夫。部屋で大人しく、教授や研究室の人達にお詫びの手紙でも書いておくわ」

私の失踪事件なんてものであの時の旅行は台無しにしてしまっただろうし……私の人生でも一、二を争うくらいのやらかし案件だ。

入院中にスマホに来ていたメッセージには全部返事を返したが、教授にはちゃんと面と向かってもお詫びをしないといけない。

土下座で許されるもんならそうしたいけど、きっと意味が分からずにキョトンとされて終わりだろう。他に何か考えないとーー。


「そうね。先生は気になさっていないとは思うけれど、私からも改めてお詫びはしたいわ。あの日は本当に大変だったのよ……」
「うっ……本当にごめんなさい……謝って済む話ではないと思うけれど……」
「良いのよ。だってこうして無事にーーではなかったけど、生きて戻ってこれてるのよ? それが一番だわ」

怪我が完治したら一緒に謝りに行きましょうねと言われて、お願いしますとペコリと頭を下げながら玄関を通ると、そこで意外な人物ーー父親に遭遇した。



「ーーへっ? え、なんで……?」
「…………」


ーーーーびっくりした。

そういえば、ここはこの人の家でもあったわね。会わなさすぎて頭から抜け落ちてしまっていたけど。

前に会ったのはいつだったか……お姉ちゃんが大学を卒業した年だから、五年前とかかしら。


私も相当に驚いたがそれ以上にむこうが喫驚しているようで、一言も発することなく固まってしまっている。
そのままお見合い状態で数秒経過して、耐えきれずに自分から声を掛けた。

「……ええと、ただいま? それともおかえりなさい?」
「…………ああ」
「帰ってたんだ? 仕事は大丈夫? しばらくは家に居るの?」
「……今日までだ。明日の朝には発つ」
「あ、そうーー」


うぅ……頑張ったのに、これ以上会話が続かない。めちゃくちゃ気まずい。どうすれば。

……いやでも。この場合、向こうから話してくれても良くない? 『無事でよかった』とか『身体はもう平気なのか』とか一言くらい掛ける言葉ってあるでしょ?
仮にも行方不明になっていた娘が見つかったのに、ダンマリってどうなの?

ーーあ、なんか微妙に腹立ってきたわ。


お姉ちゃんはどうやら私と父に二人で話して欲しかったらしく途中まで後ろで見守っていたが、雲行きが怪しくなってきたのを察して私を部屋に送ってくれた。

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