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4章
33★ 一方その頃
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「お主は一体何をやっとるんじゃ! こんの阿呆がっ!」
ブラッドレイ城の執務室には現在大の大人七名がーーより正確にいうならば猫二匹に犬一匹、人間の大人三人に幼女一人が一堂に介していた。
広い部屋ではあるが人数も多い上に、不機嫌ここに極まれりといった感じにイライラMAXで執務用の椅子にふんぞり返る女王様ーーエリザベスから放たれるオーラのせいで、室内には息苦しさが漂っている。
「まさか青い方がやらかすとは思っていませんでしたね。何かあるなら赤い方かと思っていましたわ」
エリザの隣からは同じように不機嫌な調子でクロエがため息をつく。
「酷っ!? オレ、見た目の色で誤解されてない? これでもこいつよりは常識ある方だからな!?」
さりげにシアンだけでなく自分もディスられたマゼンタは抗議の声を上げたのだが、女王と宰相の親子に揃って冷たくスルーされて撃沈した。
「アンタ達ってセット扱いだもの~連帯責任ってヤツよね!」
「勝手にセットにすんじゃねーよ!」
「……まあ諦めろ。オマエがどう思っていても、マヤ達の認識が変わるわけじゃないからな?」
何を言っても無駄だと諭すように、リュウがマゼンタの肩を叩く。
なんでこんな揃いも揃って理不尽なんだ、とその場に崩れ落ちるマゼンタ。
張本人のシアンはそんな兄弟をちらりと見遣ったが、特に表情を変えることもなくダンマリを決め込んでいる。
しっぽをバタリバタリと自分の脚に打ちつけ耳をスッと伏せたまま、瞬きもせず目の前の女王を睨みつけるという全く反省の色のない態度を見て、そこここからため息が漏れた。
「はあぁ~……まあ予定外に早かったとはいえ、どのみち元の世界に戻るのは止められんかったろうからの。せっかくならもう少し仕込みをしっかりしてからが良かったのじゃがーー」
「そういう話をされていたから、距離を詰めようと努力したんですが?」
ようやく会話をする気になったシアンをエリザは呆れ顔で見つめる。
「一気に詰めようとしすぎじゃ阿呆が。結局逃げられたではないか」
「ソフィーが逃げようとしたわけではなく、たまたまタイミング悪く塔が崩れてしまっただけです」
「ほう? ならばそのまま受け入れてもらえる自信があったというわけじゃな?」
問われてツイと視線を逸らすシアン。急ぎすぎた自覚はあったらしい。
「あー、エリザ。猫いじりはその辺にしておかないかい? 私はともかく、皆そこまで暇でもないのだろう?」
それまでゆっくりお茶と茶菓子を楽しみつつ待っていた七人目ーーサイラスが、エリザを嗜めた。
隣国の前皇帝陛下がこの国の女王の執務室でくつろいでいることに突っ込む者はここには居ない。皆慣れたものである。
「そうですよお母様。お父様だってこうおっしゃってはいますが、一番無理を言って来ていただいておりますのよ?」
「むっ。言われずとも、わらわもそろそろ話を進めるつもりだったのだ!」
娘と元夫両方から『いい加減にしてさっさと進めろ』とせっつかれて頬を膨らましつつ、エリザは引き出しから古びた革の首輪を取り出してテーブルの上に置いた。
それを見たリュウとマヤの夫妻が驚きで目を見張る。
「ーーおい、それってまさか“護りの首輪”かーー?」
「ちょっとエリザベス! あなたまさか、この猫達にソフィアさんを迎えに行かせる気なの……?」
信じられない、と言った顔の二人と対照的に、猫二人は淡々としたものだった。
「それが例の首輪ですか。割と普通なんですね」
「へぇ、これが? 前に使ったのがリュウってことは相当古いっぽいけど、まだ効果あんの?」
「なっ!? オマエらこれが何か分かってるのか?」
「リュウがこっちの世界にマヤを拉致ってきた時に使ったやつでしょ? 女王様の日記で読んだし」
「!! エリザベス、あなたあの件に関しては記録を残してないって話だったんじゃ……」
それぞれの反応を示しつつ、首輪を見つめる四人。
ちなみにサイラスは「こんな型破りの魔道具を作れるなんて、やっぱり私の妻は天才だよね」と嬉しそうに話し、「元妻じゃ、元をつけんか!」とエリザに怒られている。
皆が皆好き放題に会話を始めてしまって、一向に収拾する気配がない。
そんな混沌とする場を止めたのは、それまで黙って茶器を傾けていた宰相だった。
「ーー全員、お静かにしてもらえませんか? お父様も、お母様を揶揄われるのは程々になさって。また話が止まってしまったでしょう? いちゃつくなら他所でやって下さいませ」
皇族の完璧な微笑み。
しかしそこから発せられるのは、絶対零度の威圧だった。
*******************************
しばらく三人称視点が続きます。
ヒロインもしばらく出てきませんが、その分猫成分多めとなる予定。
ブラッドレイ城の執務室には現在大の大人七名がーーより正確にいうならば猫二匹に犬一匹、人間の大人三人に幼女一人が一堂に介していた。
広い部屋ではあるが人数も多い上に、不機嫌ここに極まれりといった感じにイライラMAXで執務用の椅子にふんぞり返る女王様ーーエリザベスから放たれるオーラのせいで、室内には息苦しさが漂っている。
「まさか青い方がやらかすとは思っていませんでしたね。何かあるなら赤い方かと思っていましたわ」
エリザの隣からは同じように不機嫌な調子でクロエがため息をつく。
「酷っ!? オレ、見た目の色で誤解されてない? これでもこいつよりは常識ある方だからな!?」
さりげにシアンだけでなく自分もディスられたマゼンタは抗議の声を上げたのだが、女王と宰相の親子に揃って冷たくスルーされて撃沈した。
「アンタ達ってセット扱いだもの~連帯責任ってヤツよね!」
「勝手にセットにすんじゃねーよ!」
「……まあ諦めろ。オマエがどう思っていても、マヤ達の認識が変わるわけじゃないからな?」
何を言っても無駄だと諭すように、リュウがマゼンタの肩を叩く。
なんでこんな揃いも揃って理不尽なんだ、とその場に崩れ落ちるマゼンタ。
張本人のシアンはそんな兄弟をちらりと見遣ったが、特に表情を変えることもなくダンマリを決め込んでいる。
しっぽをバタリバタリと自分の脚に打ちつけ耳をスッと伏せたまま、瞬きもせず目の前の女王を睨みつけるという全く反省の色のない態度を見て、そこここからため息が漏れた。
「はあぁ~……まあ予定外に早かったとはいえ、どのみち元の世界に戻るのは止められんかったろうからの。せっかくならもう少し仕込みをしっかりしてからが良かったのじゃがーー」
「そういう話をされていたから、距離を詰めようと努力したんですが?」
ようやく会話をする気になったシアンをエリザは呆れ顔で見つめる。
「一気に詰めようとしすぎじゃ阿呆が。結局逃げられたではないか」
「ソフィーが逃げようとしたわけではなく、たまたまタイミング悪く塔が崩れてしまっただけです」
「ほう? ならばそのまま受け入れてもらえる自信があったというわけじゃな?」
問われてツイと視線を逸らすシアン。急ぎすぎた自覚はあったらしい。
「あー、エリザ。猫いじりはその辺にしておかないかい? 私はともかく、皆そこまで暇でもないのだろう?」
それまでゆっくりお茶と茶菓子を楽しみつつ待っていた七人目ーーサイラスが、エリザを嗜めた。
隣国の前皇帝陛下がこの国の女王の執務室でくつろいでいることに突っ込む者はここには居ない。皆慣れたものである。
「そうですよお母様。お父様だってこうおっしゃってはいますが、一番無理を言って来ていただいておりますのよ?」
「むっ。言われずとも、わらわもそろそろ話を進めるつもりだったのだ!」
娘と元夫両方から『いい加減にしてさっさと進めろ』とせっつかれて頬を膨らましつつ、エリザは引き出しから古びた革の首輪を取り出してテーブルの上に置いた。
それを見たリュウとマヤの夫妻が驚きで目を見張る。
「ーーおい、それってまさか“護りの首輪”かーー?」
「ちょっとエリザベス! あなたまさか、この猫達にソフィアさんを迎えに行かせる気なの……?」
信じられない、と言った顔の二人と対照的に、猫二人は淡々としたものだった。
「それが例の首輪ですか。割と普通なんですね」
「へぇ、これが? 前に使ったのがリュウってことは相当古いっぽいけど、まだ効果あんの?」
「なっ!? オマエらこれが何か分かってるのか?」
「リュウがこっちの世界にマヤを拉致ってきた時に使ったやつでしょ? 女王様の日記で読んだし」
「!! エリザベス、あなたあの件に関しては記録を残してないって話だったんじゃ……」
それぞれの反応を示しつつ、首輪を見つめる四人。
ちなみにサイラスは「こんな型破りの魔道具を作れるなんて、やっぱり私の妻は天才だよね」と嬉しそうに話し、「元妻じゃ、元をつけんか!」とエリザに怒られている。
皆が皆好き放題に会話を始めてしまって、一向に収拾する気配がない。
そんな混沌とする場を止めたのは、それまで黙って茶器を傾けていた宰相だった。
「ーー全員、お静かにしてもらえませんか? お父様も、お母様を揶揄われるのは程々になさって。また話が止まってしまったでしょう? いちゃつくなら他所でやって下さいませ」
皇族の完璧な微笑み。
しかしそこから発せられるのは、絶対零度の威圧だった。
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しばらく三人称視点が続きます。
ヒロインもしばらく出てきませんが、その分猫成分多めとなる予定。
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