【本編完結】森で遭難しかけたら獣とおかしな人達に囲まれました 〜飼い猫が私を逃してくれません!〜

夕木アリス

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4章

32。初っ端から間違ってました

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うっ……これ、どうしよう……。
このまま話を続けていたら、同棲のこともキスのことも全部バレちゃいそうなんですど……?

大きなエメラルドグリーンの瞳をキラキラさせながら肩を掴んでくるお姉ちゃんが怖すぎる。さっきは言わなくて良いって言ってたのに!

『で、どうなの?!』と詰め寄る姉にタジタジになりながら、なんとか諌めようと言葉をつないだ。


「あ、あのねお姉ちゃん? 私が居なくなってたのは一週間やそこらの話よ? そんなポンポン関係が進むわけないと思わない?」
「あらあら、恋に落ちるのに時間の長さなんて関係ないわよ。私だって教授には一目惚れだったもの」
「はぁ……お姉ちゃんってばーーって」


ん? ここで教授の話が出るの? ……お兄さんじゃなくて?
お姉ちゃん、教授のことは諦めたんじゃーー

「ーーあの、ちょっと確認なんだけど。お姉ちゃんって教授のこと、まだ好きなの?」
「ええもちろん! 実はしばらく『押してダメなら引いてみろ』っていうのを試したんだけど、全然ダメだったのよ。ということで、次は『押してダメなら押し倒してみろ』っていうのを試そうと思うの!」
「それ下手したら犯罪だからねっ!?」

普段は淑女そのものの振る舞いなのに、なんでウチのお姉ちゃんは色恋沙汰に絡むとこんなにアグレッシブなのよ?!

まあお相手の教授が草食系通り越して絶食系ってヤツだから、そうならざるを得なかったのかもしれないけどーーって、そうじゃなくて。


「……お姉ちゃん。あの旅行の日に、研究室のライリーさんに、告白されてたわよね?」

確かめたくない気がするがーーここまできたらスルーもできない。


「え? ソフィー、なんでそんなこと知ってるの?」
「実はあの時たまたま現場を見ちゃって……途中で気まずくなって離れたから、最後までは見てないんだけど……あれ、受けたんじゃないの?」


ライリーさんというのは、説明するまでもないかもだが私が何年もずっと好きで憧れてーーでも年齢も離れ過ぎていて、全く異性として見てもらえなかったお兄さん。

ちなみにお姉ちゃんはお兄さんの研究室の同期でもあるし、彼は卒業後そのまま持ち上がりで教員になっているので、お姉ちゃんの同僚でもある。


あの日のことは体感的にはもう何ヵ月も前のことだけど、片思いの相手の告白シーンとか軽くトラウマものだし、その時の二人の台詞は一言一句違わずバッチリ思い出せるんだけどーー

間違いなく好きって答えたよね?
『貴方のことが好きよ』って返事してたよね?

え……もしかして、だけど。まさかあの流れでーー


「ううん? なんでそんな顔をしてるのか分からないけど、その話ならお断りしたわよ?」
「なっーー!? 好きって言ってなかった?!」
「同僚として、よ。確かに付き合いもそれなりに長いし、優秀で気心も知れてるし、素敵な男性だと思うけど……やっぱり私は教授あのヒトが好きなの」

そう言ってはにかみながら頬を染める姉はとても可愛いらしい。可愛らしいがーー


…………うわぁ……。

お兄さんーーライリーさんが哀れすぎる。

あの流れ、絶対本人はと思ったろう。私だって思った。

一度好意を伝えておいてからのお断りって、鬼か? 悪魔か?

お姉ちゃんは女神だと思ってたけど『ただし恋愛方面は除く』と注釈が必要だったらしい。


ーーそれより何より。


……。
…………私、このせいで、色々とわけの分からないことになったんだけど?

森で遭難しかけたし異世界に迷い込んだし誘拐犯に拉致監禁されたし、挙句転落して肋骨を折ったんだけど?

全部全部、姉の紛らわしい返事と私の早とちりのせいってこと?


ーーーーあ、あぁ。

私ってば人生最大のヤラカシをしてしまったんだわ……!

最初っから全部勘違いだったんじゃないーーっ!!


うわあぁーーとその場にしゃがみ込んで頭を抱えていると、姉はこてん、と首を傾げた。

「あら……ひょっとして、ソフィーが好きだったのってライリーだったのかしら?」


お姉ちゃん……。

だからそのエスパーっぷりを今披露してくれなくてもいいんだってばーーッ!
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