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4章
36★ 猫は貢ぎ物になりません
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「にしてもジュリアス、お主そんな格好で何をぐうたら寝ておるのじゃ。ほんにだらしのない奴めが」
呆れた声と裏腹にデレまくった顔で、エリザは『神』と言った相手をムギュッと抱きしめ、頬擦りまでし始めた。
中身が何であれ、可愛らしいもふもふをもふらないなんてそれこそ我慢できない! といったところなのだろう。
対して神様の方も気にするそぶりもなく、エリザにされるがままになっている。
「あっはは! いやあ、この『人をダメにするクッション』って本当にヤバいよね! この前新しく駐在になった神官が貢ぎ物でくれたんだけどさぁ、これ神様でもダメになっちゃうよ~」
気持ち良すぎるってのも罪だよね! と嬉しそうにしっぽを振る小さな狼に、マゼンタとシアンはなんとも言えない表情をした。
「フェンリルって、確か魔獣じゃなかったっけ? もっと獰猛なイメージがあったんだけど……」
「帝国では聖獣扱いですよ、国の象徴としても祀られていますしーーもっと威厳がある感じだった気はしますが」
こちらも大概不敬な内容を平然と口にしていると、ジュリアスと呼ばれた神は二匹をしげしげと見つめた。
「それにしても、また今回は随分変わった貢ぎ物だね? 神様って猫は食べないんだけどなぁ~」
「食べるとはなんじゃ。気色悪いことを言うでないわ」
「あは、勘違いしてる~? 性的な意味で言ってないのはもちろん、食用って意味でもないよ?」
そもそも食事って必ずしも必要じゃないし、猫の肉ってそこまで美味しいものでもないからね~、と可愛らしい声で不穏なことを言うジュリアスに三人ともドン引きである。
「えー、そんな引かれると傷つくよ~。食べる文化の場所もあるんだから、個人の価値観でどーこー言うのは違うと思わない? まあどうせ食べるならぼくはちゃんとした料理が食べたいから、生は遠慮するけどね! で、今日は何しに来たの? エリザベスはそれ以上若返ったら色々動きづらいと思うよ? 子供の身体って扱いづらいしーーむぐっ」
ご機嫌にしゃべり続けていた神様だったが、エリザに口を押さえられてようやく一瞬静かになった。
「うるさいっ、ベラベラべらべらいつまで喋っとるんじゃ! お喋りな男は嫌われるんじゃぞ!」
「ごめんごめん、誰かと話すのが久しぶりすぎてつい興奮しちゃったんだよ~。ねね、許して?」
子狼はつぶらな瞳でうるうるとエリザを見上げてから、その頬をペロペロと舐めて許しを乞うた。
「ーー神様のくせにあざと可愛いさを全面に出してくるのって何なんでしょうね。気持ち悪くないですか?」
「媚びる必要のない立場のヤツがわざわざやるのって逆に腹立つっていうやつな。まあ本人の趣味なんじゃね?」
「うわー、ぼくってば散々な言われっぷりだねー。これでもエラ~い神様なのにっ!」
貢ぎ物から悪口言われちゃったよーとケラケラ笑う神様を地面に下ろし、ため息をつきながらエリザが文句を入れた。
「たわけが、誰がこやつらを貢ぎ物だと言うたのじゃ。勝手に勘違いするでないわ」
「でも結局贄なんだろう? 君、その猫たちの時間をぼくに食わせたいみたいじゃないか」
「おや、考えを読んだか。ならば話も早ーー「でもお断りだよ」ーーってなんでじゃっ!?」
すげなく断った神様は「せめて最後まで話を聞かんか!」とおかんむりな幼女に向けて小首を傾げてから、その場でくるりと宙返りをして見せた。
次の瞬間現れたのは、エリザと同じくらいの背丈の男の子。
天使のように愛らしい顔で耳もしっぽもなくーーでも弧を描いた口元からは鋭利な牙がのぞいていた。
「だから、最初に言ったじゃない。『ぼくは猫は食べないよ』って」
神様の声でそう続けた男の子に、三人は「あっ」と声を上げて顔を見合わせた。
呆れた声と裏腹にデレまくった顔で、エリザは『神』と言った相手をムギュッと抱きしめ、頬擦りまでし始めた。
中身が何であれ、可愛らしいもふもふをもふらないなんてそれこそ我慢できない! といったところなのだろう。
対して神様の方も気にするそぶりもなく、エリザにされるがままになっている。
「あっはは! いやあ、この『人をダメにするクッション』って本当にヤバいよね! この前新しく駐在になった神官が貢ぎ物でくれたんだけどさぁ、これ神様でもダメになっちゃうよ~」
気持ち良すぎるってのも罪だよね! と嬉しそうにしっぽを振る小さな狼に、マゼンタとシアンはなんとも言えない表情をした。
「フェンリルって、確か魔獣じゃなかったっけ? もっと獰猛なイメージがあったんだけど……」
「帝国では聖獣扱いですよ、国の象徴としても祀られていますしーーもっと威厳がある感じだった気はしますが」
こちらも大概不敬な内容を平然と口にしていると、ジュリアスと呼ばれた神は二匹をしげしげと見つめた。
「それにしても、また今回は随分変わった貢ぎ物だね? 神様って猫は食べないんだけどなぁ~」
「食べるとはなんじゃ。気色悪いことを言うでないわ」
「あは、勘違いしてる~? 性的な意味で言ってないのはもちろん、食用って意味でもないよ?」
そもそも食事って必ずしも必要じゃないし、猫の肉ってそこまで美味しいものでもないからね~、と可愛らしい声で不穏なことを言うジュリアスに三人ともドン引きである。
「えー、そんな引かれると傷つくよ~。食べる文化の場所もあるんだから、個人の価値観でどーこー言うのは違うと思わない? まあどうせ食べるならぼくはちゃんとした料理が食べたいから、生は遠慮するけどね! で、今日は何しに来たの? エリザベスはそれ以上若返ったら色々動きづらいと思うよ? 子供の身体って扱いづらいしーーむぐっ」
ご機嫌にしゃべり続けていた神様だったが、エリザに口を押さえられてようやく一瞬静かになった。
「うるさいっ、ベラベラべらべらいつまで喋っとるんじゃ! お喋りな男は嫌われるんじゃぞ!」
「ごめんごめん、誰かと話すのが久しぶりすぎてつい興奮しちゃったんだよ~。ねね、許して?」
子狼はつぶらな瞳でうるうるとエリザを見上げてから、その頬をペロペロと舐めて許しを乞うた。
「ーー神様のくせにあざと可愛いさを全面に出してくるのって何なんでしょうね。気持ち悪くないですか?」
「媚びる必要のない立場のヤツがわざわざやるのって逆に腹立つっていうやつな。まあ本人の趣味なんじゃね?」
「うわー、ぼくってば散々な言われっぷりだねー。これでもエラ~い神様なのにっ!」
貢ぎ物から悪口言われちゃったよーとケラケラ笑う神様を地面に下ろし、ため息をつきながらエリザが文句を入れた。
「たわけが、誰がこやつらを貢ぎ物だと言うたのじゃ。勝手に勘違いするでないわ」
「でも結局贄なんだろう? 君、その猫たちの時間をぼくに食わせたいみたいじゃないか」
「おや、考えを読んだか。ならば話も早ーー「でもお断りだよ」ーーってなんでじゃっ!?」
すげなく断った神様は「せめて最後まで話を聞かんか!」とおかんむりな幼女に向けて小首を傾げてから、その場でくるりと宙返りをして見せた。
次の瞬間現れたのは、エリザと同じくらいの背丈の男の子。
天使のように愛らしい顔で耳もしっぽもなくーーでも弧を描いた口元からは鋭利な牙がのぞいていた。
「だから、最初に言ったじゃない。『ぼくは猫は食べないよ』って」
神様の声でそう続けた男の子に、三人は「あっ」と声を上げて顔を見合わせた。
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