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4章
閑話7★ 古い記憶③
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「あなた達が、囚われていた猫ちゃん?」
こてり、と小首を傾げながら聞いてきたその子を、僕も兄弟も呆然として見つめた。
エメラルドグリーンのワンピース、ダークブロンドの髪に青味がかったグレーの瞳、身長は僕らより軽く頭ふたつ分は低い。
頬を薔薇色に上気させ、可愛らしく微笑む様は天使のようでーー血まみれで倒れ込む男たちを背景に立つ姿は、恐ろしくその場に不釣り合いだった。
「あれ、ひょっとして二人ともおしゃべりできないかな? 言葉、分かんない?」
「ーーいえ、大丈夫です」
ちょっと困った顔で眉根を寄せる彼女に返事をすれば、パッと花が咲くように笑顔を返された。
「良かったー。ええとね、ここの組織はかいめつさせたから、もう大丈夫! 猫ちゃん達はみんな自由だよ!」
「壊滅させたって……アンタみたいな子供がですか?」
「あっ、わたしの名前ララって言うの! あやしい者じゃないよ!」
「いや、むしろ怪しさしかねーだろ?! なに、まさかオマエ一人でコレやったわけ!?」
信じられない、一体何の冗談だよ……と片手で顔を覆いながらで首を振る兄弟。それについては僕も全く同意見だ。
ここの屋敷だけでも組織の人間は三十は下らなかったはずだし、何より貴族連中が絡んでるから、ここだけ潰せば済むって話じゃない。
「ううん、ひとりでやったんじゃなくて、いっぱいキョーリョクしてもらったの!」
「協力、ですか?」
「仲良しの人達がたくさん魔道具を貸してくれてね! あ、あと、今日ここにいた悪者はやっつけたけど、ざんとう? って人達は、また別の日にエラい人たちがショリしてくれるって!」
だから心配しなくてもいいんだよっ! と元気いっぱいに説明されて、僕と兄弟は何とも言えない顔で女の子を見つめるしかなかった。
◇
とりあえず彼女に敵意がないことは分かったので、そのまま屋敷の外に設置したという転移魔法陣まで移動することになった。
「えっとね、わたしはこの後お世話になってるお城に戻るんだけど。猫ちゃん達は行くアテがなければ一緒に来てもいいし、このまま好きなとこに逃げてもいいんだって!」
「……本当にそう言われてんのかよ? それって犯罪者を野放しにするってことだぜ?」
兄弟が信じられないといった顔で呻くのも当然だろう。ここに居る猫達の大半は、それなり以上に手を汚している。
強制されて使われていた側だから、ある程度の情状酌量は認められるだろうとは踏んでいたがーー逃げてもいい、なんて言われるとは思わなかった。
「ここ、違法組織だったから。猫ちゃん達は被害者だから保護対象だって! でもそうやってまた別のとこに囲われるのがイヤなら、こっそり逃げても見逃してくれるって! しばらくカンシ? はつくみたいだけど」
どうしたい? と聞かれて僕と兄弟は顔を見合わせた。
「オレは……ここに残るよ。母親とか他の兄弟が生きてるか確認したいしさ」
「ん、分かったー。見つかるといいね! 水色の猫ちゃんも居残り?」
「いえ僕はーー城とやらに行ってみます。少し気になることもあるので」
どことなくショックを受けている風の兄弟は放置して、女の子を見返した。
「あれ、ピンクの猫ちゃんと一緒じゃなくていいの? あとお城って別の国にあるから、ちょっと遠いよ?」
「構いません。監視がつくなら後で合流できるでしょうから。連れて行ってもらえますか?」
「もちろん! 確かにお城って言われたら気になっちゃうよね」
ーー気になっているのは城ではなく、目の前の彼女だけど。
その事は敢えて言わずに、僕はその子と転移魔法陣に入った。
こてり、と小首を傾げながら聞いてきたその子を、僕も兄弟も呆然として見つめた。
エメラルドグリーンのワンピース、ダークブロンドの髪に青味がかったグレーの瞳、身長は僕らより軽く頭ふたつ分は低い。
頬を薔薇色に上気させ、可愛らしく微笑む様は天使のようでーー血まみれで倒れ込む男たちを背景に立つ姿は、恐ろしくその場に不釣り合いだった。
「あれ、ひょっとして二人ともおしゃべりできないかな? 言葉、分かんない?」
「ーーいえ、大丈夫です」
ちょっと困った顔で眉根を寄せる彼女に返事をすれば、パッと花が咲くように笑顔を返された。
「良かったー。ええとね、ここの組織はかいめつさせたから、もう大丈夫! 猫ちゃん達はみんな自由だよ!」
「壊滅させたって……アンタみたいな子供がですか?」
「あっ、わたしの名前ララって言うの! あやしい者じゃないよ!」
「いや、むしろ怪しさしかねーだろ?! なに、まさかオマエ一人でコレやったわけ!?」
信じられない、一体何の冗談だよ……と片手で顔を覆いながらで首を振る兄弟。それについては僕も全く同意見だ。
ここの屋敷だけでも組織の人間は三十は下らなかったはずだし、何より貴族連中が絡んでるから、ここだけ潰せば済むって話じゃない。
「ううん、ひとりでやったんじゃなくて、いっぱいキョーリョクしてもらったの!」
「協力、ですか?」
「仲良しの人達がたくさん魔道具を貸してくれてね! あ、あと、今日ここにいた悪者はやっつけたけど、ざんとう? って人達は、また別の日にエラい人たちがショリしてくれるって!」
だから心配しなくてもいいんだよっ! と元気いっぱいに説明されて、僕と兄弟は何とも言えない顔で女の子を見つめるしかなかった。
◇
とりあえず彼女に敵意がないことは分かったので、そのまま屋敷の外に設置したという転移魔法陣まで移動することになった。
「えっとね、わたしはこの後お世話になってるお城に戻るんだけど。猫ちゃん達は行くアテがなければ一緒に来てもいいし、このまま好きなとこに逃げてもいいんだって!」
「……本当にそう言われてんのかよ? それって犯罪者を野放しにするってことだぜ?」
兄弟が信じられないといった顔で呻くのも当然だろう。ここに居る猫達の大半は、それなり以上に手を汚している。
強制されて使われていた側だから、ある程度の情状酌量は認められるだろうとは踏んでいたがーー逃げてもいい、なんて言われるとは思わなかった。
「ここ、違法組織だったから。猫ちゃん達は被害者だから保護対象だって! でもそうやってまた別のとこに囲われるのがイヤなら、こっそり逃げても見逃してくれるって! しばらくカンシ? はつくみたいだけど」
どうしたい? と聞かれて僕と兄弟は顔を見合わせた。
「オレは……ここに残るよ。母親とか他の兄弟が生きてるか確認したいしさ」
「ん、分かったー。見つかるといいね! 水色の猫ちゃんも居残り?」
「いえ僕はーー城とやらに行ってみます。少し気になることもあるので」
どことなくショックを受けている風の兄弟は放置して、女の子を見返した。
「あれ、ピンクの猫ちゃんと一緒じゃなくていいの? あとお城って別の国にあるから、ちょっと遠いよ?」
「構いません。監視がつくなら後で合流できるでしょうから。連れて行ってもらえますか?」
「もちろん! 確かにお城って言われたら気になっちゃうよね」
ーー気になっているのは城ではなく、目の前の彼女だけど。
その事は敢えて言わずに、僕はその子と転移魔法陣に入った。
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