チート能力のない主人公ですが何か？

プロローグ ～庭付き霊付き一戸建て生活始めました～

　年代が感じられる、とある洋館の一室。

　赤い絨毯じゅうたんが一面に敷かれ、部屋に置いてある家具も全てアンティーク品。
　この部屋だけ切り取って見れば中世ヨーロッパ時代と言っても差し支えのない雰囲気。

「ねぇーーねぇーー」

　ソファーに腰掛ける俺の横で黒髪の少女が間延びした声で話しかけてくる。

少女といっても年の頃は１６、７歳。

　巫女服みこふくみたいな衣装に身を包み、黒髪を背中辺りまで伸ばした目尻めじりがやや下がった可愛い系。

「ちょっとぉー！　聞いてるーー??」

　聞こえてはいるんだが今は考え事をしたいのでとりあえず無視。

「さて、これからどうするかな…」
「あー！　無視したー！　聞こえてるんでしょー!?」

　非難の声を無視して俺は腕組みをして集中。
　思案しあんに暮れる。

「ちょっとー？　もしもーーし？」

　無視。
　漠然ばくぜんとではあるが次にするべき事が見えてくる。

　ブォンッ!!

　突如とつじょ、顔面に迫ってくる拳。

「おわぁぁっ!?」

　反射的に回避行動を取ろうとするが間に合わず、そのまま拳は俺の顔を――――すり抜けた。

　ズシャア!!

　が、回避行動を取った俺の動きは止まらず勢いよく床にのめりこむ。

「っっ…！ さ、サキィィィーー!!!!」
「あっはははははーっっ!!」

　サキと呼んだ黒髪の女が両手でお腹を抱えながら俺の傍そばを離れ―――フワリと浮かんで宙で笑い転げた。

「あー、利剣のびびり顔、おっかしーっ！　あはははっっ!!」

「くっ……」

　笑われた恥ずかしさで顔を赤くした俺――利剣は

「一体どうしてこんな事になっちまったんだ……」

　よろよろと立ち上がってソファーに座り直しながら呟つぶやきを漏らした。