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13.死後の世界
しおりを挟む暖かい感触が心地よい。そんな気配で気がついた。
ここは死後の世界なのだろうか?死後の世界なんか知らないけどね。
ゆっくりと息を吐く。へぇ、呼吸はできるんだな。
目は閉じているのだけど光はなさそうだ。死後の世界は暗いのかな?
僕はゆっくりと目を開ける。
やっぱり暗いや。
おや?
両目が開いているんじゃないか?両目で見えている気がする。うん、見えているよ。
ああ・・・そうか。そうだよな。
死んだら怪我はリセットされるんだろうな。
確かに、死んだ状態で死後の世界にいかないといけなかったら大変な事だよ。僕はボロボロすぎるからね。
よかった、体は戻っていそうだ。
その証拠に感覚がなかった左腕まで動く。へぇ、指まで動くよ。咬み砕かれたはずの右腕も問題なさそうだ。よかったよ。
足も・・・足も全く問題ないや。
僕は横になっているようだ。体が大丈夫ならゆっくりと起きるか。さて死後の世界はどんな感じなんだろ。
その時に体に何か掛けられたものがあった事に気づいた。
これって・・・誰かのコートか?
そうか。このコートのお陰で暖かったのか。誰が準備してくれたんだろうか?お迎えの人かな?
そう思っていたら右横から声が掛かってくる。
「気づかれましたか?体に違和感はありませんか?」
瞬間驚いた。だっていきなり声がしたんだから。油断してたというか。小心者か僕は。まぁ・・・否定はできないけどさ。
少し慌ててしまったけど返事をする。
「え?あ、はい。死ぬ前に負った怪我は治っているみたいです。死後の世界って便利ですね」
「え?・・・あなたは死んでおりませんよ」
はい?
どういう事?
僕は死んでいない?
慌てて周囲を見回す。
とはいっても周囲は暗いからはっきりとは分からない。
ここは・・・もしかして・・・あの洞穴の中?
ん?
ん?
ん?
と、いう事は・・・・僕は生きている?
あれ?
あれれ?
どういう事?
慌てている僕の様子が伝わったのか側にいる人はクスクス笑っているようだ。
ま、不味い。
そういえば声の主は女性だった。彼女が僕を助けてくれたのだろうか?
「あの、僕を助けてくれたのは貴女ですか?魔獣はどうなりました?僕はどの位意識がなかったのですか?僕の体の怪我を治してくれたのも貴女ですか?」
慌てていたかもしれないけど状況確認のため聞いてみる。女性は少し間をおいてから答えてくれた。
女性はゆったりしたワンピースのような服を着ているようだ。流石に色までは分からない。
髪は結構長い。多分金髪かな?横を向いていているし、且つ髪が顔にかかっているので表情は分からない。
フード付きのコートを着ているから色々判別がつかない。声だけで女性と判断した体たらくだし。
「まずは落ち着いてくださいね。今は危険はありませんから。時間はあなたが魔物を倒してからそれ程経っていないと思います。鐘が無いので正確ではないですが”六の鐘”頃だと思います。私を助けてくれたのはあなたですよ。怪我を直したのもあなたです」
なんだろうか温かみがある声だ。気持ちが安らぐな。
それと反して言ってくれた言葉は衝撃的だった。
なんだって・・・?
言われたことが事実だとしても・・・まだよく理解できていない。
”六の鐘”となると十九時位か。多分だけど魔獣と戦ったのは十五時位。戦闘時間は分からないけど四時間前後気絶していたという事か。
時間経過はまぁいいや。
それより聞き捨てならない事がある。
僕が魔獣を倒したって?
そうなるとあれで止めを刺したという事になるのか?
相討ち覚悟だったのだけど。
そうか・・倒せたんだ。
驚きではあるけど・・・。それ程ビックリではないのか?いや、分からない。実感がないからだな。
もっと信じられないのが僕が怪我を治したという事だ。
どういう事?
確かに痛みは無い。目も見えている。両腕も動く。他も箇所も痛みは無い。女性が言う通り怪我が治っている事もまた事実なんだろう。
あれほど酷かった怪我なんだぞ。どうやったら四時間前後で丸ごと治ってしまうんだよ。
それを全て治したと?
・・・信じられない。
僕の沈黙を混乱と受け取ったのだろう。女性は再度声をかけてくれた。
「急には信じられませんよね。確かにあなたの怪我の治癒については、私はほんのちょっぴりお手伝いしたのは事実です。でも治癒をしたのはあなたの能力ですよ。これは本当ですの」
うん。
落ち着こう。僕を助けて・・・いや介抱してくれた女性が嘘をつくわけもない。殺そうと思えばいつでも殺せたのだから。
目の前にいる女性は恐らく悲鳴をあげていた女性なのだろう。
結果として僕は彼女を助ける事ができたのだろう。これは嬉しい事だ。初めて誰かの役に立てたのだから。
信じられないのは僕が自分の怪我を自分で治したという事か。
これだけが理解できていない。驚異的な再生能力があったという事なのか?
考えても仕方ない。こちらについては後で考えよう。
「そうなんですね。ともかく危険は去ったという点だけ聞いて安心しました。魔獣とは相討ち覚悟でしたから倒せたのは嬉しい事です。それよりあなたは怪我はありませんか?」
自分の事は後だ。問題は彼女が魔獣に重症を負わされていないかだ。話しぶりからは大丈夫だと思いたい。
女性は少し身を固くしたようだ。何か不味い事言ったか。と、なると何か大変な事に・・・。
「ほんの少しだけ、少しだけ怪我をしました。あなたの怪我と比較したら気にならない程度です。それ以外は全く問題ありません。気にして頂いてありがとうございます。その、、、お優しい方なのですね?」
「あ、いえ。洞穴から悲鳴が聞こえたので慌てて来たのです。手遅れだったら・・・あ、失礼。間に合うかどうか分からなかったのですが。間に合ってよかったです」
驚いた。
お礼を言われると思わなかった。颯爽と助けられたわけじゃない。殆ど不格好にガムシャラに行動した結果だ。そしてたまたま良い結果になっただけだ。殆ど自殺行為だという認識は流石に僕にもある。
素直に嬉しい。照れくさいけど助けられてよかった。
女性はクスリと笑ったような気がする。やっとこっちを見てくれた。大きな瞳が見えた。緋色かな?日の光の中なら綺麗だろうな。うん?見えたのは右目だけだ。左目は・・・髪で隠れているのかな?
「本当に助けに来てくれたのですね?あなたは命の恩人ですわ。いくら感謝しても感謝しきれません。願わくはこんな私を助けて失望されないかが私の不安です」
やっぱり怪我は女性だと気になる所なのかもしれない。普通に考えれば顔だろうな。
容姿で助けたと思われたかもしれないけど。そもそも声しか聞いていないんだ。最初から容姿はわからなかったし。今も薄暗いからはっきりとは分からない。
そりゃ綺麗な人を助けられたなら悪い気はしないよ。ま、男だし。
女性だから美醜を気にするよね。そこについては僕からは気にしないようにしよう。
彼女が一人で洞穴にいる理由は分からないけど明日の朝にはどこかに行くんだと思う。
そういえば一人でここにいるのだろうか?
僕も変だけど彼女がこの洞穴にいる事がおかしいと僕はやっと気づいた。
そうだよ。この岩場にいる事がもともとおかしいんだ。
少し考えてどう聞こうかと考えて・・・。またまた僕は忘れている事に気づいた。
そういや自己紹介をしてなくないか?・・・してないよな。
どんだけ焦っていたんだか。
自分で呆れてしまった。
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