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3章
サンタナ王都邸
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王都の南の街門を抜け、更に街道を進む。奥にそびえる城壁近くまで来ると、馬車は壁沿いに西へ向きを変えた。王都の門は、内側の門を貴族門、外側を街門と呼んでいて、それぞれ東西南北四基の合計八基あるそうだ。でも、貴族門は今は北と南しか使われていないとか。街が外へ拡大した今も、王都の正式な門は貴族門ではあるそうだ。
「西の貴族門はサンタナ家が管理していてね。城門としては使っていないのだよ」
高い城壁沿いに南から西まで移動し、やがて馬車が停まったのは、大きな軒のある堅牢な楼門の前だった。城壁の様子が少し前から変わっていて、窓や塔が見えて、壁というよりお城のようになっていて、この門は、街の出入り口の門というより、大きなお城の外門のようだった。
「お城みたい」
「西の門塔とも呼ばれているよ」
僕が思わず呟くと、ラドゥ様が教えてくれた。
僕は門塔を見たのは初めてだったので、つい馬車の窓に張り付くように覗いていて、レオリムもそんな僕の横にぴたりと身体を寄せて、外を見ていた。じーっと何か考え込んでいるみたい。
門塔の門扉はまるで壁のように閉ざされている。
騎士さんの一人が馬を降り、門脇の通用口へ向かうのが見えた。通用口の小窓越しに向こう側にいる人とやりとりする仕草をした後、戸が開いて騎士さんの姿が通用口へ消えた。しばらくして、門が重い音を立てて中から開いた。騎士さんと、門衛さんらしき人が中から出てきて、他の騎士さん達とも挨拶を交わすのが見えた。知り合いみたい。サンタナ家に仕えている人かな。
馬車はすぐに動き出して、楼門の大きな軒を潜り、門の先へ吸い込まれるように進んだ。門の扉の先は細長い通路だった。通路の天井は高くアーチ状になっていて圧迫感はないけれど、幅は大きめの馬車が一台通れる程度。騎士さん達が魔法でいくつか明かりを灯しているので、馬車の外の様子も確認出来るけれど、潜ったばかりの門扉はすぐに閉められたようで、薄暗い隧道のような中を進んでいった。先導した騎士さんが通路の先の扉を開いたみたいで、外の灯りが入って来たけど、夕刻を過ぎて日もだいぶ翳っていたので、明るさはそう変わらなかった。
通路を抜けた先は、広場になっていて、馬車止まりにもなっているみたい。馬車が停まって扉が開き、ラドゥ様が降りて、父さんが続いた。結構長く乗っていたせいか、ふらっとよろめいた父さんをラドゥ様が支えた。腰をとんとんしながら降りるからだよ。
レオリムが先に降りて手を差し出してくれたから、その手を取って降りて、二人で、う~んと伸びをする。
背後を振り返ると、馬車で通った通路の上に、いくつもの塔を乗せたお屋敷がそびえていた。外からは壁に窓や塔が付いているように見えたけど、内側から見ると、壁という感じはなくて、お屋敷というか、お城という感じ。今いる広場を囲むように、左右に階段があって、さっき抜けて来た通路の上にある正面玄関らしき扉へ向かって伸びていた。広場の先は庭園で、庭園の向こうには、王都の城壁程ではないけどまた壁と門が見えて、壁は庭園と、城壁と一体になったお屋敷を囲んでいる。
「ようこそ、サンタナ王都邸へ」
目を丸くしている僕と父さんへ、ラドゥ様はパチンと片目を瞑って、片腕をひらりとお屋敷へ向かって上げた。
ラドゥ様はそのまま、エスコートするように父さんを連れて正面玄関へ続く階段の方へ足を進めたので、僕もレオリムに手を引かれるまま、後に続いた。
階段を昇り切ると、計ったように扉が開いて、開いた先に数名の使用人の人が控えて頭を下げていた。
「おかえりなさいませ、旦那様」
執事さんらしい人が出迎えの挨拶をすると、ラドゥ様が鷹揚に頷いて、ただいま、と言った。
「出迎えありがとう。いつも留守を守ってくれて感謝している」
更に頭を下げた全員に向かって、ラドゥ様が、楽にするように、と声を掛けたので、みんな、顔をあげた。
「紹介しよう。私の良き友人、ウルマー・マウリ準男爵」
ラドゥ様に肩を叩かれて、父さんは緊張気味によろしく、と声を出した。
「そして、我が息子レオリムと、ウルマー殿の御子息でレオリムの婚約者、シーラン・マウリ殿」
レオリムは小さく首を縦に振って、レオリムだ、と言って、それから僕の方を見て手を取った。
「俺の伴侶のシーランだ。よろしく頼む」
みんなの視線が集中した気がして、ちょっと恥ずかしかった。僕もレオリムと同じくらい頭を振って、よろしくお願いしますと続けた。
「短い滞在だが、よろしく頼むよ」
最後にラドゥ様がそう言うと、また全員頭を揃えて下げた。
その後従僕さんに部屋へ案内された。
廊下に三つ並んだ一番手前の扉の前で、奥のお部屋二つもご自由にお使いくださいって言われたので、一度部屋に入ってからレオリムと一緒に覗きに行った。三つの部屋は続き部屋で、両側の部屋は対象の造りになっていて、真ん中の部屋が寝室だった。廊下に出なくても、部屋の中にも扉があった。
「これって……」
「若夫婦の居室みたいだな」
なんとなく照れ臭い気分になって、僕は無言で荷解きをして、旅装から普段着に着替えた。
レオリムは機嫌良さそうにしながら、支度が済むと、部屋の窓から庭園を眺めた。僕も、その隣に立った。
「ここ、懐かしい。多分建物は変わっているけど、二人が住んだことのある場所だと思う。王都の中心地に近付くにつれて分かった。王都を覆う結界も、この屋敷も、シーラの匂いを感じる」
「匂い……」
「優しい魂の匂いだ」
そう言って、レオリムは僕をぎゅっと抱き締めて、首筋に鼻を押し当てて深呼吸した。
嗅がないでー!
「西の貴族門はサンタナ家が管理していてね。城門としては使っていないのだよ」
高い城壁沿いに南から西まで移動し、やがて馬車が停まったのは、大きな軒のある堅牢な楼門の前だった。城壁の様子が少し前から変わっていて、窓や塔が見えて、壁というよりお城のようになっていて、この門は、街の出入り口の門というより、大きなお城の外門のようだった。
「お城みたい」
「西の門塔とも呼ばれているよ」
僕が思わず呟くと、ラドゥ様が教えてくれた。
僕は門塔を見たのは初めてだったので、つい馬車の窓に張り付くように覗いていて、レオリムもそんな僕の横にぴたりと身体を寄せて、外を見ていた。じーっと何か考え込んでいるみたい。
門塔の門扉はまるで壁のように閉ざされている。
騎士さんの一人が馬を降り、門脇の通用口へ向かうのが見えた。通用口の小窓越しに向こう側にいる人とやりとりする仕草をした後、戸が開いて騎士さんの姿が通用口へ消えた。しばらくして、門が重い音を立てて中から開いた。騎士さんと、門衛さんらしき人が中から出てきて、他の騎士さん達とも挨拶を交わすのが見えた。知り合いみたい。サンタナ家に仕えている人かな。
馬車はすぐに動き出して、楼門の大きな軒を潜り、門の先へ吸い込まれるように進んだ。門の扉の先は細長い通路だった。通路の天井は高くアーチ状になっていて圧迫感はないけれど、幅は大きめの馬車が一台通れる程度。騎士さん達が魔法でいくつか明かりを灯しているので、馬車の外の様子も確認出来るけれど、潜ったばかりの門扉はすぐに閉められたようで、薄暗い隧道のような中を進んでいった。先導した騎士さんが通路の先の扉を開いたみたいで、外の灯りが入って来たけど、夕刻を過ぎて日もだいぶ翳っていたので、明るさはそう変わらなかった。
通路を抜けた先は、広場になっていて、馬車止まりにもなっているみたい。馬車が停まって扉が開き、ラドゥ様が降りて、父さんが続いた。結構長く乗っていたせいか、ふらっとよろめいた父さんをラドゥ様が支えた。腰をとんとんしながら降りるからだよ。
レオリムが先に降りて手を差し出してくれたから、その手を取って降りて、二人で、う~んと伸びをする。
背後を振り返ると、馬車で通った通路の上に、いくつもの塔を乗せたお屋敷がそびえていた。外からは壁に窓や塔が付いているように見えたけど、内側から見ると、壁という感じはなくて、お屋敷というか、お城という感じ。今いる広場を囲むように、左右に階段があって、さっき抜けて来た通路の上にある正面玄関らしき扉へ向かって伸びていた。広場の先は庭園で、庭園の向こうには、王都の城壁程ではないけどまた壁と門が見えて、壁は庭園と、城壁と一体になったお屋敷を囲んでいる。
「ようこそ、サンタナ王都邸へ」
目を丸くしている僕と父さんへ、ラドゥ様はパチンと片目を瞑って、片腕をひらりとお屋敷へ向かって上げた。
ラドゥ様はそのまま、エスコートするように父さんを連れて正面玄関へ続く階段の方へ足を進めたので、僕もレオリムに手を引かれるまま、後に続いた。
階段を昇り切ると、計ったように扉が開いて、開いた先に数名の使用人の人が控えて頭を下げていた。
「おかえりなさいませ、旦那様」
執事さんらしい人が出迎えの挨拶をすると、ラドゥ様が鷹揚に頷いて、ただいま、と言った。
「出迎えありがとう。いつも留守を守ってくれて感謝している」
更に頭を下げた全員に向かって、ラドゥ様が、楽にするように、と声を掛けたので、みんな、顔をあげた。
「紹介しよう。私の良き友人、ウルマー・マウリ準男爵」
ラドゥ様に肩を叩かれて、父さんは緊張気味によろしく、と声を出した。
「そして、我が息子レオリムと、ウルマー殿の御子息でレオリムの婚約者、シーラン・マウリ殿」
レオリムは小さく首を縦に振って、レオリムだ、と言って、それから僕の方を見て手を取った。
「俺の伴侶のシーランだ。よろしく頼む」
みんなの視線が集中した気がして、ちょっと恥ずかしかった。僕もレオリムと同じくらい頭を振って、よろしくお願いしますと続けた。
「短い滞在だが、よろしく頼むよ」
最後にラドゥ様がそう言うと、また全員頭を揃えて下げた。
その後従僕さんに部屋へ案内された。
廊下に三つ並んだ一番手前の扉の前で、奥のお部屋二つもご自由にお使いくださいって言われたので、一度部屋に入ってからレオリムと一緒に覗きに行った。三つの部屋は続き部屋で、両側の部屋は対象の造りになっていて、真ん中の部屋が寝室だった。廊下に出なくても、部屋の中にも扉があった。
「これって……」
「若夫婦の居室みたいだな」
なんとなく照れ臭い気分になって、僕は無言で荷解きをして、旅装から普段着に着替えた。
レオリムは機嫌良さそうにしながら、支度が済むと、部屋の窓から庭園を眺めた。僕も、その隣に立った。
「ここ、懐かしい。多分建物は変わっているけど、二人が住んだことのある場所だと思う。王都の中心地に近付くにつれて分かった。王都を覆う結界も、この屋敷も、シーラの匂いを感じる」
「匂い……」
「優しい魂の匂いだ」
そう言って、レオリムは僕をぎゅっと抱き締めて、首筋に鼻を押し当てて深呼吸した。
嗅がないでー!
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