黒髪の魔女は暗闇を恐れている

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7、意外な隣人

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「タチアナ捜査官! なんでこんなところに?」
「それはこっちのセリフだ。何故、君が隣の部屋にいるんだ! 君はボクのストーカーか!」
 そう言ってタチアナさんは不機嫌そうに睨む。
「んなわけないでしょ! それより、俺の部屋に何かいるんですよ! なにかが!」
「何か……? ちょっと見せてみろ」
 タチアナさんは部屋の扉を少し開けると隙間から中をのぞきこんだ。
「ふーん……」
 そうなにか分かったように呟くと扉を閉めた。
「部屋の真ん中から、でかい影のようなものが、こうゆらーっと……」
 僕は身振り手振りで興奮気味で説明したがタチアナさんは冷静な反応だ。
「やれやれ……ちょっと待っていろ」
 タチアナさんは、寝癖のついた頭を掻きながら自分の部屋に戻り、しばらくすると何かを持って出てきた。
「灰皿あるかい?」
「灰皿ですか……えーと。どこかにあった気はしますけど」
「よし、部屋に入るぞ」
「え!」
「君の部屋だろ。いいから開けろ」
 僕は渋々扉を開けた。扉が開かれるとタチアナさんは躊躇なく入っていく。
「おい、灰皿は?」
「はい、ちょっと待ってください」
「別に灰皿でなくてもいいよ。少し火を起こすから燃えないようなもの、陶器のようなものでもいいからな」
 僕は何に使うのか分からない金属製の受け皿を見つけるとタチアナさんの元へ持っていった。
「キャンドルスタンドか。丁度いいな。少し待っていな……」 
 タチアナさんは、何かのハーブをキャンドルスタンドの上に置くと火をつけた。ハーブから白い煙が立ち上り部屋に漂っていく。
「うん。これでいいと思うよ」
 そう言ってタチアナさんは、部屋を出ていこうとしたが、なにがいいのか全く分からない。僕は慌ててタチアナさんを引き止めた。
「これでいいって……ねえ、あれ、一体なんなんです?」
「気にするな。大して悪さはしないよ」
「少しは悪さはするんですね……一体何あれらはなんです?」
「さあね。ボクは見ていないからなんとも言えないな」
 冷たい反応にめげそうになる。
「うっ……それはそうなんですが」
「きっと新入りが珍しかったんだろうよ。今その手のやつが苦手なハーブを炊いたから、それが効いていれば近づいてこないさ。じゃあね、ボクは寝たいんだ」
「あのタチアナさん……そっちで寝かせてもらってもいいですか?」
「ん……?」
タチアナさんは無表情のまま僕を見つめた。
「キミは馬鹿なのか?」
「馬鹿じゃないですよ! ちょっと怖がりなだけですよ!」
「ボクの部屋はダメだ。あたりまえだろ」
「じゃあ、タチアナ先輩が俺の部屋に来てくださいよ!」
「なんでだ……」
「だって怖いじゃないですか!」
「ボクは君の言動が怖いよ!」
「そんな事いわれても……」
「とにかくそのハーブを炊いていれ大丈夫だ。キミの国にも似たのがあるだろう」
「もしかして蚊取り線香のことですか? 全然違いますよ! ギャグですか! ネタですか! 全然ウケませんよ!」
「なんで真夜中に君にウケなければならなんだ! とにかく早く寝ろよ! 明日ヵらボクと捜査に出るんだからな!」
「えっ? は、はい……」
「寝不足で仕事ができないなんて言い訳はさせないぞ」
「気にしてくれてたんですね。ありがとうございます」
「い、一応、相棒だからな。いいか! 早く寝ろよ」
 今度は引き止める間もなく部屋から出ていく。
 大丈夫だと言われても不安しかなかった。幽霊の姿は見えないけど、気配が消えていないのだ。
 これじゃ、気味悪くて寝れないよ!

  *  *  *  *  *

 結局、その夜、神成は一睡もできず、翌日を迎えてしまった。
「お、神成さん、おはようございます」
 カフェに行くと、いつものようにシュアが明るい笑顔で挨拶してくれた。
「おはよう、シュア」
「なんだか今日は眠そうですねえ。また夜遅くまでお勉強ですか?」
「うーん……ちょっと違うんだよね。あ、いつものやつお願いします」
「かしこまりました」
 しばらくすると注文したドリンクが差し出される。
「おまたせしました。どうぞ」
「ありがとう」
 カップを受け取ると空いているテーブル席に座る
 さてと……いよいよ捜査官としての初仕事だ。タチアナ先輩のところに行かないとな……。
 僕は重い身体を起こして地下駐車場へ向うのだった。
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