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9、怪しい人物
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「どうやったんです。すごいですね」
「ルールを決めよう」
タチアナさんの真剣な口調に少し緊張する。
「え? は、はい……」
「ここからは素人には危険な事態が起きるかもしれない。ボクの言う通りにしろ。それが君の為だ」
「わ、わかりました」
「ボクの言葉は絶対だからね。逆らうなよ。ボクに忠誠を誓うんだ。わかったか?」
「はい」
最後の口調は特に強い。本当に危険な事があるのか、それとも新人捜査官を連れていくのが嫌なのか、どちらにしろ緊張が高まってくるのは同じだ。
「本当にここは暗すぎる。いやな感じだな……」
その呟きにそっと横目で見るとタチアナさんの表情は冴えない。魔力的な何かを感じ取っているのかもしれなかったが聞いてみる気にはなれなかった。
「ん?」
足元の瓦礫に違和感のあるものが目に入った。気になって瓦礫をどけてみると下にあったのは切断された右手首だった。その手にはスマートフォンが握られたいた。
「タ、タチアナさん。ちょっと、これ」
近寄ってきたタチアナさんが落ちている手首を覗き込む。
「よく見つけたね。地元警察も見落としていたのに」
そう言いながらスマホを握ったままの手首を拾い上げた。
「画面のひび割れが酷いな。データが生きてればいいけど」
「警察の見落としがまだありそうですね。ちょっとこの先を見てきます」
「わかった。何かあったら逃げるかボクを呼ぶんだぞ」
「わかりました」
奥に行くと放置されたなにかの工作機械があった。劣化した塗装はひび割れていて見捨てられてからかなりの年数が経っているのが察せられた。壁のぎりぎりに設置されていた機械の裏を覗き込んでみたがわけのわからないゴミと鉄くずしか見えない。
もっと何かないかと注意深く覗き込んでいると、機械と壁の隙間越しに何かが動いたのが見えた。
はっとして機械から離れ、何が動いたのか確かめようとした。すると、物陰から何かが飛び出した。
人間だ。
「誰だ!」
怒鳴り声に近い声で呼びかけたが飛び出した誰かは、無視して逃げていく。
反射的に追いかけたが、この時の僕は、直前のタチアナさんの注意はすっかり忘れていたのだ。
怪しい人影は壊れたガラスのない窓を乗り越え、外に逃げていく。同じく窓を乗り越え後を追う。
黒っぽいフード付きのジャケットかパーカーの後ろ姿が確認できた。
「おい! 待て!」
いくつかの路地をすり抜けながら後を追い続けると、やがて袋小路に追い詰めることができた。
逃げ場を失ったフードの男は観念したのか僕の方に向き直る。
相手が何を持っているかわからない。僕は支給されたてのSIGを抜き出すと相手に銃口を向けた。
「両手をあげて動くな」
男は素直に従った。ゆっくと両手を上げてく。
武器を持っていなかった事に安堵しつつ、銃を構えながら注意深く近づいた。
「ったく……しつこい奴だぜ」
男はそう小さな声で呟くと右手の指をパチンと弾いた。それが癖なのか何かの合図なのかその時はわからなかった。
その数秒後に何かが上から落ちてきた。人間のような姿だ。それは目の前に落ちて転がるとゆっくりと起き上がっていく。
安っぽいグレーのスーツとネクタいをさせてはいるが奇妙な体型と顔は人間とは思えない。まるで出来の悪い人形のようだ。
「なんだお前たちは! 近寄るな。それ以上近づくと撃つぞ」
警告を無視して近づいてくる人形たち。一発、空に向けて発砲したが接近は止まらない。
しかなく、一番前の一体に致命傷にならないような足の一部を狙って撃ってみた。だが、多少よろめいたものの何の恐怖もみせずに進んでくる。
やはり、こいつらは人間ではないのだ。
「くそっ! なんなんだ!こいつら」
その場から逃げ出そうとした時だった。路地の間から小さな人影が現れた。
慌てて銃を構えそうになったが、その姿を確認して寸でで止める。
そこにいたのはプラチナブロンドの髪をツーサイドアップにした少女だった。
「君、危ない。今すぐ逃げるんだ」
一般人を巻き込まないようにと大声で怒鳴ったが、少女は何の反応も見せず……いや、呆れたような表情で言った。
「はあ? 危ないのはアンタの方でしょーが」
「え?」
呆気にとられた僕に彼女は続けた。
「アンタこそどいていなさい! 邪魔よ」
邪魔?
その言葉の意味はすぐに分かった。
「ブレイド!」
彼女が叫ぶと、その背後から青白い電流と共に黒髪を後ろに縛った黒装束の女剣士が姿を現す。
半分透き通った姿といっしょに揺らめく青白い光に人間じゃない、と直感でわかった。
「お呼びでしょうか、お嬢さま」
女剣士がそう訊くと少女が力強く言い放つ。
「道を塞いでいるあの木偶人形どもを片付けてしまいなさい!」
「ルールを決めよう」
タチアナさんの真剣な口調に少し緊張する。
「え? は、はい……」
「ここからは素人には危険な事態が起きるかもしれない。ボクの言う通りにしろ。それが君の為だ」
「わ、わかりました」
「ボクの言葉は絶対だからね。逆らうなよ。ボクに忠誠を誓うんだ。わかったか?」
「はい」
最後の口調は特に強い。本当に危険な事があるのか、それとも新人捜査官を連れていくのが嫌なのか、どちらにしろ緊張が高まってくるのは同じだ。
「本当にここは暗すぎる。いやな感じだな……」
その呟きにそっと横目で見るとタチアナさんの表情は冴えない。魔力的な何かを感じ取っているのかもしれなかったが聞いてみる気にはなれなかった。
「ん?」
足元の瓦礫に違和感のあるものが目に入った。気になって瓦礫をどけてみると下にあったのは切断された右手首だった。その手にはスマートフォンが握られたいた。
「タ、タチアナさん。ちょっと、これ」
近寄ってきたタチアナさんが落ちている手首を覗き込む。
「よく見つけたね。地元警察も見落としていたのに」
そう言いながらスマホを握ったままの手首を拾い上げた。
「画面のひび割れが酷いな。データが生きてればいいけど」
「警察の見落としがまだありそうですね。ちょっとこの先を見てきます」
「わかった。何かあったら逃げるかボクを呼ぶんだぞ」
「わかりました」
奥に行くと放置されたなにかの工作機械があった。劣化した塗装はひび割れていて見捨てられてからかなりの年数が経っているのが察せられた。壁のぎりぎりに設置されていた機械の裏を覗き込んでみたがわけのわからないゴミと鉄くずしか見えない。
もっと何かないかと注意深く覗き込んでいると、機械と壁の隙間越しに何かが動いたのが見えた。
はっとして機械から離れ、何が動いたのか確かめようとした。すると、物陰から何かが飛び出した。
人間だ。
「誰だ!」
怒鳴り声に近い声で呼びかけたが飛び出した誰かは、無視して逃げていく。
反射的に追いかけたが、この時の僕は、直前のタチアナさんの注意はすっかり忘れていたのだ。
怪しい人影は壊れたガラスのない窓を乗り越え、外に逃げていく。同じく窓を乗り越え後を追う。
黒っぽいフード付きのジャケットかパーカーの後ろ姿が確認できた。
「おい! 待て!」
いくつかの路地をすり抜けながら後を追い続けると、やがて袋小路に追い詰めることができた。
逃げ場を失ったフードの男は観念したのか僕の方に向き直る。
相手が何を持っているかわからない。僕は支給されたてのSIGを抜き出すと相手に銃口を向けた。
「両手をあげて動くな」
男は素直に従った。ゆっくと両手を上げてく。
武器を持っていなかった事に安堵しつつ、銃を構えながら注意深く近づいた。
「ったく……しつこい奴だぜ」
男はそう小さな声で呟くと右手の指をパチンと弾いた。それが癖なのか何かの合図なのかその時はわからなかった。
その数秒後に何かが上から落ちてきた。人間のような姿だ。それは目の前に落ちて転がるとゆっくりと起き上がっていく。
安っぽいグレーのスーツとネクタいをさせてはいるが奇妙な体型と顔は人間とは思えない。まるで出来の悪い人形のようだ。
「なんだお前たちは! 近寄るな。それ以上近づくと撃つぞ」
警告を無視して近づいてくる人形たち。一発、空に向けて発砲したが接近は止まらない。
しかなく、一番前の一体に致命傷にならないような足の一部を狙って撃ってみた。だが、多少よろめいたものの何の恐怖もみせずに進んでくる。
やはり、こいつらは人間ではないのだ。
「くそっ! なんなんだ!こいつら」
その場から逃げ出そうとした時だった。路地の間から小さな人影が現れた。
慌てて銃を構えそうになったが、その姿を確認して寸でで止める。
そこにいたのはプラチナブロンドの髪をツーサイドアップにした少女だった。
「君、危ない。今すぐ逃げるんだ」
一般人を巻き込まないようにと大声で怒鳴ったが、少女は何の反応も見せず……いや、呆れたような表情で言った。
「はあ? 危ないのはアンタの方でしょーが」
「え?」
呆気にとられた僕に彼女は続けた。
「アンタこそどいていなさい! 邪魔よ」
邪魔?
その言葉の意味はすぐに分かった。
「ブレイド!」
彼女が叫ぶと、その背後から青白い電流と共に黒髪を後ろに縛った黒装束の女剣士が姿を現す。
半分透き通った姿といっしょに揺らめく青白い光に人間じゃない、と直感でわかった。
「お呼びでしょうか、お嬢さま」
女剣士がそう訊くと少女が力強く言い放つ。
「道を塞いでいるあの木偶人形どもを片付けてしまいなさい!」
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