俺と彼女と彼女と俺の出会いは少し違っている

毛穴翔太

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霊刀五月雨

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 残暑厳しい九月中頃。
 夜奈の元にようやくが届いた。
 霊刀五月雨だ。
 俺は霊刀五月雨が届いたと、学校で夜奈から聞かされ、放課後夜奈の家へと向かった。
「お邪魔します」
 古い門構えと彼女の家という事が相まって、未だに家に入る時はドキドキする。
「さあ、入って入って!」
 夜奈の強烈な歓迎に、戸惑う隙は無く、俺は夜奈に手を引かれて、夜奈の自室へと向かった。
 夜奈の部屋に入ると、最初に目にしたのは、刀では無く、小さい円形の机に置かれたパソコンであった。
「聖ちゃん、お待たせ。たっくんが来たの」
「せ、セイちゃん?」
 一体、誰の事だろうか?と思いながら、夜奈が話しかけていたパソコンへと、視線を向けた。
『お久しぶりです。国井拓真さん』
 パソコンの画面の中に居たのは、神宮寺であった。
「ああ。久しぶりだな」
 俺は軽く挨拶をし、夜奈の隣へと座った。
「其れで、刀が届いたって言っていたが、どこにあるんだ?どうみても、それらしいモノが無いんだが……」
「其れはね、ここにあるの!」
 夜奈はそう言うと、ベッドの下に手を入れて、其れを手に取った。
 黒光した鞘。独特な形をしたつば。綺麗に仕上げられた柄。抜けば見事に磨き抜かれた銀色の刃は、日本刀独特の反りが何とも言えないカッコ良さと美しさを兼ね備えている。
『でも、無事に着いて良かったです。夜奈ちゃん。あとはあなた次第だよ。修行の成果はどう?』
「この前連絡した時は全身に霊力を入れた状態で、三十分くらいだったけど、今は一時間は維持出来るようになったよ!」
『凄い!毎回夜奈ちゃんには、驚かされるよ。けど、この前も言ったけど、実際の戦闘になった際、恐らく言っていた時間の半分も満たないくらいだからね』
「分かってるよ!」
 夜奈と神宮寺は、そのあとも少しだけテレビ電話越しに話をした。そして……
「それじゃ、またね」
『はい!また…』
 ガールズトークが終了し、ノートパソコンが閉じられた。
「さて、たっくん。この後暇?」
「まあ……特に用事は無いかな?」
「この刀の試し斬りをしたいの!付いて来てくれない?」
「……仕方ない。付いて行ってやるよ」
「よし、決まり!ただ、魔物が現れるのは、夜が殆どだから……夜の七時にここで待ち合わせね!」
「了解。それじゃあ、一回帰るとするわ」
「うん。……何だか、ごめんね。こうなるなら二回も来てもらう必要無かったね」
「そうだな。だけど、別に良いさ」
「そう言ってもらうと、ありがたいね」
 という訳で、夜になるまで俺は家に帰る事にした。
 さて、これから何をしようか。
 帰路の中、俺は夜までの時間潰しの予定を考えていた。

 外が暗くなった夜七時。
 俺は約束された時間と場所へと向かった。
「おーい、たっくん!」
 手を振りながらぴょんぴょんと飛び跳ねる夜奈の可愛らしさに、俺の彼女可愛いー!と我ながら恥ずかしい事を思いながら、夜奈の元へ。
「ごめん。ちょっと遅れた」
「うんうん。大丈夫だよ?其れより行きますか!」
 俺と夜奈は、魔物が出現する場所へと向かった。
 魔物の出現場所は、毎回違う。しかし、夜奈は死に戻りをしている為、出てくる場所を把握している。
 もちろん、忘れている事もあるようだが、かなりの確率で覚えているらしい。
「今日はここで魔物が出現するはず」
「学校か……」
 夜奈からすれば、俺に魔物と戦っている姿を初めて見られた場所であったはずだ。
「……あの時以来って事か……」
 俺の放ったその言葉に、夜奈が反応した。
「あの時って……」
「俺が死に戻りした時に、夜奈の過去を見たんだが、俺に魔物と戦っている姿を初めて見られたのも学校だったかな?と思ってな」
「そうだね。あれから随分長い時間を過ごしたような気がするよ。其れはそうと、少し離れていてね。今日出現するのは、校舎裏じゃなくて、グラウンドだから離れて見やすいと思う」
「分かった」
 俺はグラウンドから離れる為に、すぐに校舎の方へと向かった。
 ちょうどその頃、グラウンドの真ん中からどろどろとした黒い液状のモノが出てきた。
 その黒い液体は、うねうねと姿を変えながらゆっくり人型へと変化していく。
 最終的に黒い液体は、口の大きな赤子のような姿へと変化した。
 夜奈は魔物が変化し終えたと同時に、走り出した。
 瞬時に間合いを詰め、刀が届く範囲にまで近づいた夜奈は、新しく手に入れた霊刀五月雨を上段から下段へ振り下ろした。
 その直後、魔物の体に縦に伸びる一筋の線が現れた。
 更に夜奈は、縦横無尽に刀を振り回し、切り裂いた。
 そのスピードは、今まで見た事のないスピードであった。
 魔物は反撃する間もなく、四散した。
 俺は其れを確認すると、夜奈の元へと向かった。
「夜奈。怪我は無いか?」
「うん!大丈夫だよ。其れよりどうだった?」
「凄かった。素人の俺が見ても、明らかに前よりスピードが上がっているのが分かったよ。其れより、刀の切れ味などはどうだった?」
「分かりやすく言うと、まるで、豆腐を切っているような感触だったよ」
 と言う事は、ほぼ無抵抗で切れたという事か。
 これはあの化け物の時にも期待が出来る。
「あと、二ヶ月半ほどか。其れまでにもっと力を付けないと……」
 夜奈は、今回の魔物討伐でかなりの自信がついたのか、やる気に満ち溢れていた。
「さて、帰ろうか」
「ああ。そうだな」
 俺たちは、学校を後にし、各自の家へと向かった。
 
 あれから約二ヶ月半。
 草木は茶色く、山の方は白く染まっている。
 とうとう来てしまったのだ。
 今日は十二月二十四日。世間ではクリスマスイブになり、町ではクリスマスカラーに染まっている。
 そんな中、俺たちはあの地へと向かった。
 場所は東尋坊。
 夜奈は巫女服を纏い、霊刀五月雨を握りしめ、その時が来るのを待っている。
 一方俺は、夜奈から離れた場所で、スナイパーライフルを構え、その時を待っていた。
 そして、とうとう海の中から奴が現れた。
 全身は海水で濡れ、目はギョロっと夜奈を睨み、触手はくねくねと動かしていた。
「夜奈、準備はいいか?」
『大丈夫だよ』
「其れは良かった。…………なあ、夜奈。絶対に生きて、明日のクリスマスデートを最高のものにしよう」
『当たり前!絶対に勝つんだから!』
 無線機越しに聞こえた夜奈の声は、恐怖による震え声ではなく、やる気に満ち溢れた声をしていた。
『じゃあ、行くよ!』
「ああ!」
 夜奈は刀を抜き、走り出した。
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