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予選
実況七 予選三
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「やあ、東雲くん。僕の考えは当たっていただろ?」
席に着く途端、そう話しかけてきたのは、同じクラスの男子で三国誠司。
正直なところ、こいつと話したのは初めてである。
「助かったよ。ありがとう」
「東雲くん。来たばかりで悪いが、話がある。出来れば、エリスちゃんも」
「?」
俺は訳が分からず、三国の後ろをついて行った。
「この辺りなら大丈夫だろう」
連れてこられたのは、体育館裏であった。
「さてと、君と話すのはこれが初めてだね」
「そうだな。で、話とは?」
「実は・・・」
そこで三国は話を一旦止め、制服の中から携帯を出した。
『初めまして、私はアリスと言います!』
三国の見せてきた携帯の画面には、可愛らしい赤色の髪の女の子が、俺たちに向かって話しかけてきた。
「・・・って・・・!」
「そう、僕もゲーム実況者なんだよ。名前はKIKI。知っているかい?」
知らないはずがない。だって実況者KIKIは俺にとって、実況者になるきっかけになった人だから。
「もちろん知っているさ」
「そりゃあ、ありがとう。で、話というのはだね、君の持っているエリスちゃんのスキル名を教えてはくれないか?もちろん、僕も教えるつもりではあるけど、ダメかな?」
「いや、それは・・・・・」
スキルを教えると言うことは、相手に手の内を明かすと言うことだ。そしてそれは、負けを意味しかねない。
「ダメか~。だったら、僕のスキルを教えてあげるよ。僕のスキルは破壊。本当かどうかは、君が知っているはずだ」
そう言って、携帯の画面を見せてきた。
スキル :破壊
「確かに・・・」
「で、どうする?君が嫌なら構わないけど?」
「いや、構わない」
正直、迷った。見せれば不利になりかねないし、負ける可能性もある。だが、向こうはそのことを含めて見せてきた。だったら俺も見せてもいいだろう。それに、あのスキルの意見も聞いてみたい。
俺は、三国に同じように携帯の画面を見せてやる。
「スキル:主人公・・・。面白いスキルだね」
「このスキル何だが、いまいち使い方が分からないんだ。分かるか?」
「スキル名を見ただけで分かれば、君も苦労はしないだろう?」
その通りである。
「だったら、今までにやってきた試合の動画を見せてくれないか?」
「見てわかるのなら、どんどん見てくれ」
「よし!決まりだね。じゃあ、放課後に君の家で動画鑑賞でもするかね」
三国は嬉しそうにそう言った。
時は経ち、放課後。
俺は三国を家に連れて行った。
家に戻ると、早速自室へと向かう。
「ここが、実況者りゅーくの撮影場所かー。・・・うん、普通だね」
普通で悪いか!
「さてと、早速動画を見せてくれないか?」
「はいよ」
俺は小さく返事をし、パソコンを起動させた。
「えーっと、確か・・・」
俺はファイルを開いて、動画をクリックした。
「これだよ」
「ちょっと、見せてくれないか」
俺は、パソコンの前を三国に譲った。
動画はまとめて三本。模擬戦と予選の二回。
三国は何度も何度も繰り返し動画を見た。
「・・・・・なるほどね~」
開始から一時間。三国が呟くようにそう言った。
「なるほどって・・・・・分かったのか?」
「大体は。けど、これはあまり教えないようにしたほうが良さそうだね」
「おい、話が違うぞ」
「まあ、待って。じゃあ、こうしよう。最後の予選に勝てたら教えてあげてもいいよ。確か、今日の夜の八時から開始だったよね?」
「そうだが?」
「だったら、頑張ってくれたまえ」
三国はそう言うと、部屋の出口へと向かう。
「って、待て待て。教える約束は?」
「だから、勝てば教えてあげるって。正直なところ、普通のスキルなら教えてあげた方がいいのかもしれない。けど、エリスちゃんのスキルは、特殊なんだ。そしてそれは、エリスちゃんへの負担が大きくなる可能性が高い。それだけ教えてあげるよ。んじゃ、頑張ってね~」
三国はそう言って帰って行った。
午後八時。
『さて、Fブロック予選五回戦目開始します。対戦はりゅーくさんエリスチームとリッチさんエルチームです。因みに、りゅーくさんはこの試合に勝てば、りゅーくさんは自然に予選通過です。逆にリッチさんが勝ち、尚且つHANABIさんが負ければリッチさんりゅーくさんが予選通過です。HANABIさんがまっさんさんに勝ち、リッチさんがりゅーくさんに負ければ、リッチさんは敗退となります。更にHANABIさんがまっさんさんに勝ち、尚且つ、リッチさんがりゅーくさんに勝てば、二勝一敗が三名現れることになりますんで、その場合はじゃんけんをして勝敗を決めさせていただきます。・・・・・コホン。では、第五回戦のゲーム内容は、人生ゲームです!ルールは簡単。持っているお金が多い方が勝ちです。因みに、今からやってもらう人生ゲームは普通の人生ゲームでは無く、少し変わった人生ゲームで、例えば、普通職業はフリーターやスポーツ選手やタレントなどありますが、今回の人生ゲームの職業は剣士や魔法使いや賢者などと言った職業の人生ゲームになります。次に変わっているのは、マス目です。マスはゴールまで二百マスです。マス目の色ですが、色だけに色々あります。例えば、青のマスは資金が与えられ、赤のマスは資金がマイナスになります。黄色のマスは、イベントのマスで、様々なイベントが行われ、イベントの内容により報酬が変わります。そして、黒いマスですが、この黒いマス目は、魔物退治をしてもらいます。魔物は、レベル一から五までのモンスターで、それぞれのレベルによって、報酬を与えます。さてさてさて、説明は一応以上です。もし分からなかった場合は随時説明させていただきます。では、ゲームスタートです」
『誠治様。教えなくて良かったのですか?』
「うん。予選くらいは純粋な心で挑んで欲しいからね」
『でも、誠治様の予想が当たっていれば、終盤に・・・』
「いや、分からないよ?兎に角、今は試合を楽しもう」
『さてそれでは、先行が後行か、決めていただきます。お二人にはそれぞれルーレットを回してもらい、出た数が多い人が先行とさせていただきます。それでは、最初はエルさんで』
リッチさんのAIであるエルは、ルーレットを回した。
くるくると回るルーレットは、次第に回転力が弱り、一から十までの数字が確認し始めた。そして、
『出た数字は七ですね。では次にエリスさん』
次にエリスが、ルーレットを回した。勢いよく回るルーレットは、次第に回転力を失い、止まった。
『出た数字は、五ですね。と言うことで、先行がエルさん。後行がエリスさんとなります。では、お二人はスタート地点に向かって下さい』
クリムの言う通りに、二人はスタート地点へと向かった。
『では、エルさん。ルーレットを回しください』
クリムの言葉にエルは頷き、ルーレットを回した。
出た目は、六。エルは、マスを一・二・三と進み、六マス目で止まった。止まったマスは、赤だった。
これはラッキーである。エルは自然と五百ゴールドを払った。
続いて、エリスの番だ。エリスはくるくるくる~とルーレットを回した。出た目は、三であった。一・二・三と進み、止まった。止まったマスは、青。
これはまたしてもラッキーである。
エリスは報酬として、五百ゴールドをもらった。
二巡目。エルは九を出した。ここで、エルは職業を選択することに。
職業選択はルーレットの出目によって、職業を選択する。例えば、出目で一が出れば、剣士。二が出れば、魔法使いと言った感じで決まる。
そんなエルはルーレットで、十を出した。職業は賢者になった。それが決まると、エルの服装が賢者服に変わった。
職業選択でプレイヤーは二巡毎に職業報酬を得るとのこと。因みにエルの職業報酬は五万ゴールドであった。
次はエリスだが、今回は職業選択のマスには届かず、次回へ。
三巡目。エルはルーレットで、更にエリスとの距離を離した。
エリスは、ここで職業選択をおこなった。
出目は四で職業は武闘家となった。職業報酬として、三万五千ゴールドを二巡目毎にエリスに支払われることに。
五巡目。
エルはここで、ルーレットで七を出し、この試合初めてのイベントマスへと止まった。イベント内容は
〈魔物が村に出現した。プレイヤーは村を守る為に魔物を倒しに行ったが、道に落ちていた石に躓き、魔物にボコボコにやられた。治療費として、五万ゴールド支払った〉
良し!これで少しは差が縮んだ。
と言うのも、エルとエリスの所持金に差がて出来たのだ。原因で一番考えられるのは、職業報酬である。エルとエリスの職業報酬の差は一万五千ゴールド。これは二巡目毎に足されていく。これはまだ序盤だからいいものの、終盤になるとその差は大きなものだ。
この状況で勝つには、エルがイベントマスで、ゴールドを支払う、もしくは、エリスがイベントマスでゴールドをもらうか、最悪黒のマスに止まり、魔物退治か。それしかない。
「やばいな・・・」
俺は無意識のうちに、そう呟いていた。
パソコンではリスナーさんからの応援のメッセージが。携帯では、クラスメイトからの応援メッセージで凄いことになっている。
何かエリスにアドバイスはないのか、と探すが全く出てこない。
一方対戦相手のリッチさんは、今のこの状況を楽しんでいるのか、勝っているからか、ニヤニヤと笑っていた。
十五巡目。
エル、百五マス目。所持金、七十六万ゴールド。
エリス、八十二マス。所持金、五十九万ゴールド。
ヤバい。この試合も半分くらい。このまま差を広げられては、打つ手がない。
どうする、どうする、どうする!
「おや、りゅーくさん。どうしました?長い事声を聞いていませんが?」
リッチさんは、ニヤリと笑いながら言った。
実況者には実況する為に幾つかの種類がある。俺みたいに顔は出さず、声だけで実況する人。声と顔出しもする人。字幕だけで実況する人。己のキャラもしくは、その他のキャラを使って機械で作った声で実況する人。などがある。
その中で、リッチさんは声と顔出しをするタイプで、俺のパソコンの端の画面でニヤニヤと笑っているのが見えているのが、腹が立つ。
落ち着け落ち着け落ち着け。
そう言い聞かせるが、なかなか落ち着いてはくれない。そんな時だ。
『りゅーく様。大丈夫ですよ。落ち着いて下さい。まだ試合は終わっていませんし、大体分かりましたから』
エリスはそう言うと、ルーレットを回した。
五。出目は五だった。
エリスは一歩一歩と進み出す。そして五マス目で、その歩みを止めた。止まったマスは、イベントマスであった。内容は、
〈職業転換。相手プレイヤーと職業を交代する〉
「・・・んな!?」
そう言ったのは、相手のリッチさんだった。
正直俺も、同じ反応をしていたかもしれない。だが、そんなことはどうでもいい。これで勝つ可能性が高くなった。
『さあ、反撃開始です!』
エリスはニヤリと笑った。
二十巡目。エルとエリスの差は縮んでいた。エリスは二巡目毎に五万ゴールドを手に入れ、エルは三万五千ゴールドを手に入れ、先程までの差額がどんどん減ってきているのだ。更に、エリスは毎回青のマスやマイナスにならない黄色のイベントマスに止まっていた。
まるで、狙っているかのように。
二十五巡目。そろそろ、この人生ゲームも終盤になってきた。エリスはゴールまであと三十マス以上もあるが、エルに関しては、あと十五マス程度でゴールする。
気づけば、エリスに旦那さんが出来、子供もいる。エルの方も同様で、旦那さんと子供がいた。家もそこそこの値段の一軒家を二人とも住んでいる。
『さて、そろそろ人生ゲームも終盤になってきました。エルさん、エリスさんの差額は・・・・・エルさんが三万五千ゴールド多いようです』
三万五千ゴールド。エリスとエルの職業報酬の差は一万五千ゴールド。つまりあと六巡で、エリスがエルに追いつき追い越すことができる金額。
パソコンの端の画面に映るリッチさんの表情に笑顔は無かった。
そんな表情を見てなのか、エリスの対戦相手のエルがリッチさんに言った。
『まだ試合は終わっていません』
エルはそう言うと、ルーレットを回した。出目は三。今まで五以下を出していないエルが、初めて五以下を出した。
一・二・三と進み、止まった。そのマスは、黒のマス。つまり、
『おおっとここで、討伐クエストです!ルールは簡単。目の前に出てくる敵を倒して下さい。勝てば、所持金の倍を差し上げます。ただし負ければ、マイナス五十万ゴールドです。では、気をつけて~』
クリムはそう言うと、指を鳴らした。
するとエルの目の前に二本の角が生えた大きなモンスターが出てきた。
そのモンスターの頭上には、サタンと書いてあった。
正直、モンスターと言うからもっと可愛らしいスライム系のモンスターとかが出てくると思っていたが、これはまさか・・・。
『御察しの通り、魔王ですよ。りゅーく様』
クリムがそう言った。
『今までも黒のマスはありましたが、このマス以外は大して強くありませんよ。ただし、この黒のマスは例外で、相当強いですよ。その為、報酬が所持金の倍とさせていただいてます。まあ、負ければ損害は大きいですけどね。さて、其れでは楽しんで見ましょうか』
クリムは、笑いながらそう言った。
三・二・一とカウントダウンの表示が出たあと、fight!と言う表示が目の前に出た。
大きい。けど、逃げる訳にはいかない。リッチ様、いや、正志様とここで別れる訳にはいかない。
私のスキル:コントロールで勝ってみせます。
『覚悟しなさい!』
私は、スキルを発動させた。
異様な光景が目の前で起こっていた。魔王であるサタンが壁に向かって頭をぶつけていた。
「一体どう言うことだ?」
俺は呟くように言った。
その言葉を聞いていたのか、クリムが説明をしてくれた。
『あれはコントロールと言うスキルですよ』
「コントロール?」
『はい。AIである私達以外のモノをコントロールするのです』
「だとしたら、ルーレットもコントロールしていたということか?」
『いえ、其れは無いと思います。これはゲームマスターが言っていた話ですが、コントロールには使用時間があるとのことですし、その場合だと、赤のマスに止まる事なんてありませんよ?』
確かにそうだ。
「其れはそうと、この状況・・・」
『りゅーく様。私達にとってはあまりいい状況とは言えませんよ』
「ああ・・・・」
気づけば、体力の三分の一を切っていた。
ゴンゴンゴンゴン、と壁に頭をぶつけていた。
あまりの光景に一同唖然としていた。
そして、その時はきた。
グオオオオオオオオオオオ!!!と言う雄叫びと共にサタンは倒された。と言うより、自滅していった。
『では、クエストクリア報酬で所持金の倍を差し上げます』
これで、エルとエリスの差は大きく開かれた。勝てる方法は一つ。エリスも同じように黒のマスへと行くこと。そして、さっきのモンスターを倒すこと。これしか無い。
エリスはこの回、四を出し、青のマスへと止まった。
二十六巡目。
エルは、パチンと指を鳴らし、ルーレットを回した。出目は十。
エルはニヤリとエリスを見て、先を進んだ。
「はははは。りゅーくさん。この試合私達の勝ちのようですね~」
『いえ、まだです。リッチ様。私達はまだ負けてません』
「エリス・・・・」
エリスはこちらを見て微笑んだ。
『では回させていただきます!』
エリスは、そう言うと、ルーレットを回した。
六。エリスは黄色のイベントマスへと止まった。
内容は〈遠征中に街を救った。皇帝より、報酬として二十万ゴールドもらう〉
というものだった。
ただこれでも、まだ勝てない。エリスはどうするつもりなのか。
二十七巡目。
エルは、再び指を鳴らし、ルーレットを回した。出目は四。このルーレットを最後にエルはゴールした。
残るのは、エリスだけである。エリスは、ルーレットを回した。出目は十。
止まったマスは黒のマスだった。
『おおっとここで、エリスさんも黒のマスへと止まりましたので、先程エルさんが闘ったモンスターと闘ってもらいます。ルールは先程と同じです。では、初めてもらいます』
クリムはそう言うと、先程と同じように指をパチンと鳴らした。
さっきも見たが、相当強そうだ。
『では、試合を開始です』
fight!と言う表示と共にエリスは魔王の左側へと走った。
ギロリと目がエリスを見た。
エリスは其れを確認すると、腰から木の枝のような杖を取り出した。
『氷系最大の大技を喰らいなさい!氷塊!』
すると、魔王の上に其れはでかい、氷の塊が現れた。
『いっけーい!』
と言う声と共に、杖を振り下ろした。すると、ゆっくりと氷の塊が頭の上に落ちて来た。
勝った。本気でそう思った。しかし、そう上手くはいかなかった。
何と、直撃する寸前に己の何倍もある氷の塊を受け止めたのだ。更に驚く事に、氷を両腕で強く抱きしめ、壊したのだ。
壊れた氷塊は、粉々になり、キラキラと光り輝き落ちていく。
『・・・なっ・・・!』
エリスはあまりの光景に呆然と立ち尽くしていた。
サタンはその状態を見逃さなかった。
「エリス!!」
俺が叫んだ。しかし、遅かった。エリスが俺の声に気づき、動いた時にはサタンの拳が当たる寸前だったのだ。
まるで、砲弾のように吹き飛んだエリスは、周りの壁にぶつかった。
ガラガラと壁とエリスが、地面に崩れ落ちた。
「エリス!!」
俺は再び叫んだ。
HPはまだ微かに残っている。まだエリスは負けていない。
俺は、じっと画面を見つめた。すると、
ガラガラガラと瓦礫が動き、崩れた。
中から、エリスが出てきた。
その瞬間、スキルの表示が光りだした。
俺は迷う事なく、スキルを使用した。
『この場の勝利を私に』
エリスはそう呟くように言うと、激しい光りに包まれた。
数秒もすれば、その輝きが落ち着いた。
前回とは同じように、いつものエリスとは雰囲気が違う。
そうこうしているうちに魔王がエリスに向けて、拳を放った。
ヤバい。これが当たれば、エリスは負けてしまう。
「避けろ!」
だが、そんな俺の心配は無駄だった。何と、エリスは右手を前に突き出し、バリアを作ったのだ。
ドン!と言う凄まじい音と共に魔王の拳を受け止めた。
これには、魔王もおどろいたのか、一瞬呆気にとられたが、魔王は瞬時に頭を回転させ、一発目とは逆の拳をエリスに向けて放った。が、またしてもエリスには届かない。
魔王は更に三発目、四発目と次々に攻撃するが、全てノーダメ。其れどころか、逆に魔王の方が、じわりじわりとダメージを受けている。
そんな状態の中、エリスは左手を頭上に向けた。
すると、手のひらに小さな火の玉が現れた。其れは次第に大きくなり、エリスを上回り、魔王を上回り、更には、画面をはみ出すほどまで大きくなった。
『覚悟はいいかしら?』
そのエリスの問いに答えるように、魔王は雄叫びを上げた。
『そう。だったら、くたばりなさい』
エリスはそう言うと、左手をスッと下ろした。其れと同時に、太陽のように燃える火の玉はすごいスピードで魔王の元へと向かっていた。
魔王は必死に受け止めようとしたが、触れた瞬間、ジュワッという音を立てて、両腕が消え、そして、体全てが消えていった。
画面が一瞬真っ白になるが、次第に元の明るさへと戻った。
『さてと、エリスさんには討伐クエストクリア報酬として、所持金の倍を差し上げます。なお、今の所、所持金では上回っているエリスさんには、このままゴールまで向かってもらいます。では、ルーレット』
エリスはクリムに言われた通り、ルーレットを回した。
出目は十。先程、エルが止まったマスへと向かった。更にエリス。四以上が出れば、ゴールである。エリスはくるくるくる~とルーレットを回した。出目は四。
『ゴールです。これで、試合終了です。其れでは、結果発表です。勝者は、エリス・りゅーく様ペアです。これで、りゅーく様方は、本戦出場決定です。リッチ様ですが、HANABI様とまっさんさんとの勝負で、HANABI様がまっさんさんに負け、更に、その後の試合でHANABI様に勝った場合、本戦出場となります。なお、HANABI様がまっさんさんに勝てば、その時点でHANABI様が本戦出場となり、リッチ様は敗退となります。さて、これでFブロック予選5回戦を終了とさせていただきます。それでは、また』
クリムはスッと消えていった。
これで、予選は通過した。あとは、本戦までにどこまでエリスを強くするかだ。
「頑張ろうな、エリス」
『はい!』
エリスはいつの間にか、いつものエリスに戻っていた。
翌日。休日とあって、俺は昼近くまで寝ていた。
何気にパソコンを開き、他の人の予選を見る事に。その中に、三国のAIのアリスちゃんも戦い終わっていた。
「そういや、Fブロックはどうなったのだろうか?」
俺は、関連動画からFブロック予選の6回戦を見た。だが、まだ試合はやっていなかった。
午後三時。
ようやく、Fブロック予選6回戦が始まった。試合はクイズ。ルールは簡単。20問中多く答えられた方が勝ち。
第1問から第7問くらいまでは二人ともすんなり答えられた。が、8問目あたりから、まっさんさんのモアちゃんが、間違えを連発した。そのまま試合は終了。まっさんさんとリッチさんの負けが決まった。
『それでは、まっさん様、リッチ様、お二人のAIを返してもらいます』
『・・・・・だそうです。まっさん様。わたしは・・・まっさん様にお会い出来て、嬉しかったです』
モアちゃんは、泣きながら、そう言った。
そして、モアちゃんはスーッと姿を消した。
その瞬間、胸が苦しくなった。
「モア、モア!おい、クリム。モアを返してくれよ!」
『不可能です。そもそも、最初の説明でお話しさせていただきました。その時点で、ご理解いただけたと、思っているのですが?』
「いいから、返せ!モアを、返して・・・くれよ・・・」
まっさんさんは次第に弱々しくなり、気づけば、動画が切れていた。
それ以来、まっさんさんは動画投稿を止めていた。
その光景を見た俺は、静かにパソコンを閉じた。
席に着く途端、そう話しかけてきたのは、同じクラスの男子で三国誠司。
正直なところ、こいつと話したのは初めてである。
「助かったよ。ありがとう」
「東雲くん。来たばかりで悪いが、話がある。出来れば、エリスちゃんも」
「?」
俺は訳が分からず、三国の後ろをついて行った。
「この辺りなら大丈夫だろう」
連れてこられたのは、体育館裏であった。
「さてと、君と話すのはこれが初めてだね」
「そうだな。で、話とは?」
「実は・・・」
そこで三国は話を一旦止め、制服の中から携帯を出した。
『初めまして、私はアリスと言います!』
三国の見せてきた携帯の画面には、可愛らしい赤色の髪の女の子が、俺たちに向かって話しかけてきた。
「・・・って・・・!」
「そう、僕もゲーム実況者なんだよ。名前はKIKI。知っているかい?」
知らないはずがない。だって実況者KIKIは俺にとって、実況者になるきっかけになった人だから。
「もちろん知っているさ」
「そりゃあ、ありがとう。で、話というのはだね、君の持っているエリスちゃんのスキル名を教えてはくれないか?もちろん、僕も教えるつもりではあるけど、ダメかな?」
「いや、それは・・・・・」
スキルを教えると言うことは、相手に手の内を明かすと言うことだ。そしてそれは、負けを意味しかねない。
「ダメか~。だったら、僕のスキルを教えてあげるよ。僕のスキルは破壊。本当かどうかは、君が知っているはずだ」
そう言って、携帯の画面を見せてきた。
スキル :破壊
「確かに・・・」
「で、どうする?君が嫌なら構わないけど?」
「いや、構わない」
正直、迷った。見せれば不利になりかねないし、負ける可能性もある。だが、向こうはそのことを含めて見せてきた。だったら俺も見せてもいいだろう。それに、あのスキルの意見も聞いてみたい。
俺は、三国に同じように携帯の画面を見せてやる。
「スキル:主人公・・・。面白いスキルだね」
「このスキル何だが、いまいち使い方が分からないんだ。分かるか?」
「スキル名を見ただけで分かれば、君も苦労はしないだろう?」
その通りである。
「だったら、今までにやってきた試合の動画を見せてくれないか?」
「見てわかるのなら、どんどん見てくれ」
「よし!決まりだね。じゃあ、放課後に君の家で動画鑑賞でもするかね」
三国は嬉しそうにそう言った。
時は経ち、放課後。
俺は三国を家に連れて行った。
家に戻ると、早速自室へと向かう。
「ここが、実況者りゅーくの撮影場所かー。・・・うん、普通だね」
普通で悪いか!
「さてと、早速動画を見せてくれないか?」
「はいよ」
俺は小さく返事をし、パソコンを起動させた。
「えーっと、確か・・・」
俺はファイルを開いて、動画をクリックした。
「これだよ」
「ちょっと、見せてくれないか」
俺は、パソコンの前を三国に譲った。
動画はまとめて三本。模擬戦と予選の二回。
三国は何度も何度も繰り返し動画を見た。
「・・・・・なるほどね~」
開始から一時間。三国が呟くようにそう言った。
「なるほどって・・・・・分かったのか?」
「大体は。けど、これはあまり教えないようにしたほうが良さそうだね」
「おい、話が違うぞ」
「まあ、待って。じゃあ、こうしよう。最後の予選に勝てたら教えてあげてもいいよ。確か、今日の夜の八時から開始だったよね?」
「そうだが?」
「だったら、頑張ってくれたまえ」
三国はそう言うと、部屋の出口へと向かう。
「って、待て待て。教える約束は?」
「だから、勝てば教えてあげるって。正直なところ、普通のスキルなら教えてあげた方がいいのかもしれない。けど、エリスちゃんのスキルは、特殊なんだ。そしてそれは、エリスちゃんへの負担が大きくなる可能性が高い。それだけ教えてあげるよ。んじゃ、頑張ってね~」
三国はそう言って帰って行った。
午後八時。
『さて、Fブロック予選五回戦目開始します。対戦はりゅーくさんエリスチームとリッチさんエルチームです。因みに、りゅーくさんはこの試合に勝てば、りゅーくさんは自然に予選通過です。逆にリッチさんが勝ち、尚且つHANABIさんが負ければリッチさんりゅーくさんが予選通過です。HANABIさんがまっさんさんに勝ち、リッチさんがりゅーくさんに負ければ、リッチさんは敗退となります。更にHANABIさんがまっさんさんに勝ち、尚且つ、リッチさんがりゅーくさんに勝てば、二勝一敗が三名現れることになりますんで、その場合はじゃんけんをして勝敗を決めさせていただきます。・・・・・コホン。では、第五回戦のゲーム内容は、人生ゲームです!ルールは簡単。持っているお金が多い方が勝ちです。因みに、今からやってもらう人生ゲームは普通の人生ゲームでは無く、少し変わった人生ゲームで、例えば、普通職業はフリーターやスポーツ選手やタレントなどありますが、今回の人生ゲームの職業は剣士や魔法使いや賢者などと言った職業の人生ゲームになります。次に変わっているのは、マス目です。マスはゴールまで二百マスです。マス目の色ですが、色だけに色々あります。例えば、青のマスは資金が与えられ、赤のマスは資金がマイナスになります。黄色のマスは、イベントのマスで、様々なイベントが行われ、イベントの内容により報酬が変わります。そして、黒いマスですが、この黒いマス目は、魔物退治をしてもらいます。魔物は、レベル一から五までのモンスターで、それぞれのレベルによって、報酬を与えます。さてさてさて、説明は一応以上です。もし分からなかった場合は随時説明させていただきます。では、ゲームスタートです」
『誠治様。教えなくて良かったのですか?』
「うん。予選くらいは純粋な心で挑んで欲しいからね」
『でも、誠治様の予想が当たっていれば、終盤に・・・』
「いや、分からないよ?兎に角、今は試合を楽しもう」
『さてそれでは、先行が後行か、決めていただきます。お二人にはそれぞれルーレットを回してもらい、出た数が多い人が先行とさせていただきます。それでは、最初はエルさんで』
リッチさんのAIであるエルは、ルーレットを回した。
くるくると回るルーレットは、次第に回転力が弱り、一から十までの数字が確認し始めた。そして、
『出た数字は七ですね。では次にエリスさん』
次にエリスが、ルーレットを回した。勢いよく回るルーレットは、次第に回転力を失い、止まった。
『出た数字は、五ですね。と言うことで、先行がエルさん。後行がエリスさんとなります。では、お二人はスタート地点に向かって下さい』
クリムの言う通りに、二人はスタート地点へと向かった。
『では、エルさん。ルーレットを回しください』
クリムの言葉にエルは頷き、ルーレットを回した。
出た目は、六。エルは、マスを一・二・三と進み、六マス目で止まった。止まったマスは、赤だった。
これはラッキーである。エルは自然と五百ゴールドを払った。
続いて、エリスの番だ。エリスはくるくるくる~とルーレットを回した。出た目は、三であった。一・二・三と進み、止まった。止まったマスは、青。
これはまたしてもラッキーである。
エリスは報酬として、五百ゴールドをもらった。
二巡目。エルは九を出した。ここで、エルは職業を選択することに。
職業選択はルーレットの出目によって、職業を選択する。例えば、出目で一が出れば、剣士。二が出れば、魔法使いと言った感じで決まる。
そんなエルはルーレットで、十を出した。職業は賢者になった。それが決まると、エルの服装が賢者服に変わった。
職業選択でプレイヤーは二巡毎に職業報酬を得るとのこと。因みにエルの職業報酬は五万ゴールドであった。
次はエリスだが、今回は職業選択のマスには届かず、次回へ。
三巡目。エルはルーレットで、更にエリスとの距離を離した。
エリスは、ここで職業選択をおこなった。
出目は四で職業は武闘家となった。職業報酬として、三万五千ゴールドを二巡目毎にエリスに支払われることに。
五巡目。
エルはここで、ルーレットで七を出し、この試合初めてのイベントマスへと止まった。イベント内容は
〈魔物が村に出現した。プレイヤーは村を守る為に魔物を倒しに行ったが、道に落ちていた石に躓き、魔物にボコボコにやられた。治療費として、五万ゴールド支払った〉
良し!これで少しは差が縮んだ。
と言うのも、エルとエリスの所持金に差がて出来たのだ。原因で一番考えられるのは、職業報酬である。エルとエリスの職業報酬の差は一万五千ゴールド。これは二巡目毎に足されていく。これはまだ序盤だからいいものの、終盤になるとその差は大きなものだ。
この状況で勝つには、エルがイベントマスで、ゴールドを支払う、もしくは、エリスがイベントマスでゴールドをもらうか、最悪黒のマスに止まり、魔物退治か。それしかない。
「やばいな・・・」
俺は無意識のうちに、そう呟いていた。
パソコンではリスナーさんからの応援のメッセージが。携帯では、クラスメイトからの応援メッセージで凄いことになっている。
何かエリスにアドバイスはないのか、と探すが全く出てこない。
一方対戦相手のリッチさんは、今のこの状況を楽しんでいるのか、勝っているからか、ニヤニヤと笑っていた。
十五巡目。
エル、百五マス目。所持金、七十六万ゴールド。
エリス、八十二マス。所持金、五十九万ゴールド。
ヤバい。この試合も半分くらい。このまま差を広げられては、打つ手がない。
どうする、どうする、どうする!
「おや、りゅーくさん。どうしました?長い事声を聞いていませんが?」
リッチさんは、ニヤリと笑いながら言った。
実況者には実況する為に幾つかの種類がある。俺みたいに顔は出さず、声だけで実況する人。声と顔出しもする人。字幕だけで実況する人。己のキャラもしくは、その他のキャラを使って機械で作った声で実況する人。などがある。
その中で、リッチさんは声と顔出しをするタイプで、俺のパソコンの端の画面でニヤニヤと笑っているのが見えているのが、腹が立つ。
落ち着け落ち着け落ち着け。
そう言い聞かせるが、なかなか落ち着いてはくれない。そんな時だ。
『りゅーく様。大丈夫ですよ。落ち着いて下さい。まだ試合は終わっていませんし、大体分かりましたから』
エリスはそう言うと、ルーレットを回した。
五。出目は五だった。
エリスは一歩一歩と進み出す。そして五マス目で、その歩みを止めた。止まったマスは、イベントマスであった。内容は、
〈職業転換。相手プレイヤーと職業を交代する〉
「・・・んな!?」
そう言ったのは、相手のリッチさんだった。
正直俺も、同じ反応をしていたかもしれない。だが、そんなことはどうでもいい。これで勝つ可能性が高くなった。
『さあ、反撃開始です!』
エリスはニヤリと笑った。
二十巡目。エルとエリスの差は縮んでいた。エリスは二巡目毎に五万ゴールドを手に入れ、エルは三万五千ゴールドを手に入れ、先程までの差額がどんどん減ってきているのだ。更に、エリスは毎回青のマスやマイナスにならない黄色のイベントマスに止まっていた。
まるで、狙っているかのように。
二十五巡目。そろそろ、この人生ゲームも終盤になってきた。エリスはゴールまであと三十マス以上もあるが、エルに関しては、あと十五マス程度でゴールする。
気づけば、エリスに旦那さんが出来、子供もいる。エルの方も同様で、旦那さんと子供がいた。家もそこそこの値段の一軒家を二人とも住んでいる。
『さて、そろそろ人生ゲームも終盤になってきました。エルさん、エリスさんの差額は・・・・・エルさんが三万五千ゴールド多いようです』
三万五千ゴールド。エリスとエルの職業報酬の差は一万五千ゴールド。つまりあと六巡で、エリスがエルに追いつき追い越すことができる金額。
パソコンの端の画面に映るリッチさんの表情に笑顔は無かった。
そんな表情を見てなのか、エリスの対戦相手のエルがリッチさんに言った。
『まだ試合は終わっていません』
エルはそう言うと、ルーレットを回した。出目は三。今まで五以下を出していないエルが、初めて五以下を出した。
一・二・三と進み、止まった。そのマスは、黒のマス。つまり、
『おおっとここで、討伐クエストです!ルールは簡単。目の前に出てくる敵を倒して下さい。勝てば、所持金の倍を差し上げます。ただし負ければ、マイナス五十万ゴールドです。では、気をつけて~』
クリムはそう言うと、指を鳴らした。
するとエルの目の前に二本の角が生えた大きなモンスターが出てきた。
そのモンスターの頭上には、サタンと書いてあった。
正直、モンスターと言うからもっと可愛らしいスライム系のモンスターとかが出てくると思っていたが、これはまさか・・・。
『御察しの通り、魔王ですよ。りゅーく様』
クリムがそう言った。
『今までも黒のマスはありましたが、このマス以外は大して強くありませんよ。ただし、この黒のマスは例外で、相当強いですよ。その為、報酬が所持金の倍とさせていただいてます。まあ、負ければ損害は大きいですけどね。さて、其れでは楽しんで見ましょうか』
クリムは、笑いながらそう言った。
三・二・一とカウントダウンの表示が出たあと、fight!と言う表示が目の前に出た。
大きい。けど、逃げる訳にはいかない。リッチ様、いや、正志様とここで別れる訳にはいかない。
私のスキル:コントロールで勝ってみせます。
『覚悟しなさい!』
私は、スキルを発動させた。
異様な光景が目の前で起こっていた。魔王であるサタンが壁に向かって頭をぶつけていた。
「一体どう言うことだ?」
俺は呟くように言った。
その言葉を聞いていたのか、クリムが説明をしてくれた。
『あれはコントロールと言うスキルですよ』
「コントロール?」
『はい。AIである私達以外のモノをコントロールするのです』
「だとしたら、ルーレットもコントロールしていたということか?」
『いえ、其れは無いと思います。これはゲームマスターが言っていた話ですが、コントロールには使用時間があるとのことですし、その場合だと、赤のマスに止まる事なんてありませんよ?』
確かにそうだ。
「其れはそうと、この状況・・・」
『りゅーく様。私達にとってはあまりいい状況とは言えませんよ』
「ああ・・・・」
気づけば、体力の三分の一を切っていた。
ゴンゴンゴンゴン、と壁に頭をぶつけていた。
あまりの光景に一同唖然としていた。
そして、その時はきた。
グオオオオオオオオオオオ!!!と言う雄叫びと共にサタンは倒された。と言うより、自滅していった。
『では、クエストクリア報酬で所持金の倍を差し上げます』
これで、エルとエリスの差は大きく開かれた。勝てる方法は一つ。エリスも同じように黒のマスへと行くこと。そして、さっきのモンスターを倒すこと。これしか無い。
エリスはこの回、四を出し、青のマスへと止まった。
二十六巡目。
エルは、パチンと指を鳴らし、ルーレットを回した。出目は十。
エルはニヤリとエリスを見て、先を進んだ。
「はははは。りゅーくさん。この試合私達の勝ちのようですね~」
『いえ、まだです。リッチ様。私達はまだ負けてません』
「エリス・・・・」
エリスはこちらを見て微笑んだ。
『では回させていただきます!』
エリスは、そう言うと、ルーレットを回した。
六。エリスは黄色のイベントマスへと止まった。
内容は〈遠征中に街を救った。皇帝より、報酬として二十万ゴールドもらう〉
というものだった。
ただこれでも、まだ勝てない。エリスはどうするつもりなのか。
二十七巡目。
エルは、再び指を鳴らし、ルーレットを回した。出目は四。このルーレットを最後にエルはゴールした。
残るのは、エリスだけである。エリスは、ルーレットを回した。出目は十。
止まったマスは黒のマスだった。
『おおっとここで、エリスさんも黒のマスへと止まりましたので、先程エルさんが闘ったモンスターと闘ってもらいます。ルールは先程と同じです。では、初めてもらいます』
クリムはそう言うと、先程と同じように指をパチンと鳴らした。
さっきも見たが、相当強そうだ。
『では、試合を開始です』
fight!と言う表示と共にエリスは魔王の左側へと走った。
ギロリと目がエリスを見た。
エリスは其れを確認すると、腰から木の枝のような杖を取り出した。
『氷系最大の大技を喰らいなさい!氷塊!』
すると、魔王の上に其れはでかい、氷の塊が現れた。
『いっけーい!』
と言う声と共に、杖を振り下ろした。すると、ゆっくりと氷の塊が頭の上に落ちて来た。
勝った。本気でそう思った。しかし、そう上手くはいかなかった。
何と、直撃する寸前に己の何倍もある氷の塊を受け止めたのだ。更に驚く事に、氷を両腕で強く抱きしめ、壊したのだ。
壊れた氷塊は、粉々になり、キラキラと光り輝き落ちていく。
『・・・なっ・・・!』
エリスはあまりの光景に呆然と立ち尽くしていた。
サタンはその状態を見逃さなかった。
「エリス!!」
俺が叫んだ。しかし、遅かった。エリスが俺の声に気づき、動いた時にはサタンの拳が当たる寸前だったのだ。
まるで、砲弾のように吹き飛んだエリスは、周りの壁にぶつかった。
ガラガラと壁とエリスが、地面に崩れ落ちた。
「エリス!!」
俺は再び叫んだ。
HPはまだ微かに残っている。まだエリスは負けていない。
俺は、じっと画面を見つめた。すると、
ガラガラガラと瓦礫が動き、崩れた。
中から、エリスが出てきた。
その瞬間、スキルの表示が光りだした。
俺は迷う事なく、スキルを使用した。
『この場の勝利を私に』
エリスはそう呟くように言うと、激しい光りに包まれた。
数秒もすれば、その輝きが落ち着いた。
前回とは同じように、いつものエリスとは雰囲気が違う。
そうこうしているうちに魔王がエリスに向けて、拳を放った。
ヤバい。これが当たれば、エリスは負けてしまう。
「避けろ!」
だが、そんな俺の心配は無駄だった。何と、エリスは右手を前に突き出し、バリアを作ったのだ。
ドン!と言う凄まじい音と共に魔王の拳を受け止めた。
これには、魔王もおどろいたのか、一瞬呆気にとられたが、魔王は瞬時に頭を回転させ、一発目とは逆の拳をエリスに向けて放った。が、またしてもエリスには届かない。
魔王は更に三発目、四発目と次々に攻撃するが、全てノーダメ。其れどころか、逆に魔王の方が、じわりじわりとダメージを受けている。
そんな状態の中、エリスは左手を頭上に向けた。
すると、手のひらに小さな火の玉が現れた。其れは次第に大きくなり、エリスを上回り、魔王を上回り、更には、画面をはみ出すほどまで大きくなった。
『覚悟はいいかしら?』
そのエリスの問いに答えるように、魔王は雄叫びを上げた。
『そう。だったら、くたばりなさい』
エリスはそう言うと、左手をスッと下ろした。其れと同時に、太陽のように燃える火の玉はすごいスピードで魔王の元へと向かっていた。
魔王は必死に受け止めようとしたが、触れた瞬間、ジュワッという音を立てて、両腕が消え、そして、体全てが消えていった。
画面が一瞬真っ白になるが、次第に元の明るさへと戻った。
『さてと、エリスさんには討伐クエストクリア報酬として、所持金の倍を差し上げます。なお、今の所、所持金では上回っているエリスさんには、このままゴールまで向かってもらいます。では、ルーレット』
エリスはクリムに言われた通り、ルーレットを回した。
出目は十。先程、エルが止まったマスへと向かった。更にエリス。四以上が出れば、ゴールである。エリスはくるくるくる~とルーレットを回した。出目は四。
『ゴールです。これで、試合終了です。其れでは、結果発表です。勝者は、エリス・りゅーく様ペアです。これで、りゅーく様方は、本戦出場決定です。リッチ様ですが、HANABI様とまっさんさんとの勝負で、HANABI様がまっさんさんに負け、更に、その後の試合でHANABI様に勝った場合、本戦出場となります。なお、HANABI様がまっさんさんに勝てば、その時点でHANABI様が本戦出場となり、リッチ様は敗退となります。さて、これでFブロック予選5回戦を終了とさせていただきます。それでは、また』
クリムはスッと消えていった。
これで、予選は通過した。あとは、本戦までにどこまでエリスを強くするかだ。
「頑張ろうな、エリス」
『はい!』
エリスはいつの間にか、いつものエリスに戻っていた。
翌日。休日とあって、俺は昼近くまで寝ていた。
何気にパソコンを開き、他の人の予選を見る事に。その中に、三国のAIのアリスちゃんも戦い終わっていた。
「そういや、Fブロックはどうなったのだろうか?」
俺は、関連動画からFブロック予選の6回戦を見た。だが、まだ試合はやっていなかった。
午後三時。
ようやく、Fブロック予選6回戦が始まった。試合はクイズ。ルールは簡単。20問中多く答えられた方が勝ち。
第1問から第7問くらいまでは二人ともすんなり答えられた。が、8問目あたりから、まっさんさんのモアちゃんが、間違えを連発した。そのまま試合は終了。まっさんさんとリッチさんの負けが決まった。
『それでは、まっさん様、リッチ様、お二人のAIを返してもらいます』
『・・・・・だそうです。まっさん様。わたしは・・・まっさん様にお会い出来て、嬉しかったです』
モアちゃんは、泣きながら、そう言った。
そして、モアちゃんはスーッと姿を消した。
その瞬間、胸が苦しくなった。
「モア、モア!おい、クリム。モアを返してくれよ!」
『不可能です。そもそも、最初の説明でお話しさせていただきました。その時点で、ご理解いただけたと、思っているのですが?』
「いいから、返せ!モアを、返して・・・くれよ・・・」
まっさんさんは次第に弱々しくなり、気づけば、動画が切れていた。
それ以来、まっさんさんは動画投稿を止めていた。
その光景を見た俺は、静かにパソコンを閉じた。
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