軍将の踊り子と赤い龍の伝説

糸文かろ

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第一章

最強の光壁軍

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 リエイムと組んだ谷での一戦目が大勝利で幕を閉じたこともあり、オーフェルエイデ軍との聖舞師専属契約は他六州の領主たち満場一致の中、迅速に結ばれた。

 契約を経てサニは宿屋を転々とするではなく、オーフェルエイデ城に腰を据えることとなった。

 サニを専属の聖舞師として迎え入れたことで、何戦もセディシアに勝利するうち、リエイムの率いる軍は国内では『光壁軍』と呼ばれ、その名をとどろかせるようになった。
 光の壁とは、もちろんサニの作り出す加護のことを指した。

 一見サニの加護による光壁が華やかに映り目立ってはいたが、リエイムの練り込まれた戦法による勝利が実のところ大きいことは内側の兵士ならば誰でも知っていた。
 例えば、クレメント七州の軍の間でオーフェルエイデ第二公子を一躍有名人にした戦がある。
 セディシア側にクロスボウと呼ばれる最新の弩を所持した兵が数千控えているのを確認した公子軍将は、出陣前に聖舞師に地面をぬかるませた。
 そしてただちに自兵の武器を長弓に変えた。
 クロスボウは長弓よりも何倍も強力だが、それ故地面に押しつけて固定し、矢を設置する必要があった。
 戦が始まると、セディシア兵たちはぬかるんだ土のせいで滑って設置がうまくいかず、手こずった。
 そこへすかさず、オーフェルエイデの弓兵たちは特に手の込んだ手順の必要がない身軽な長弓でクロスボウより多くの弓を短時間に乱射させ、勝利したのだった。
 サニの力を得たことでリエイムの織りなす戦術は強くしなやかに、いかようにもしなる鞭のごとくセディシアを次々に打った。

 聖舞師による強固な舞術と軍将が組む綿密な作戦を繰り返すことで、オーフェルエイデ軍はオリザの収穫が終わる頃には負けなしの無敵軍隊と成長していった。
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