10 / 104
第一章
再会・初戦 5
しおりを挟む
目隠しの術も兼ねていて、仲間以外からサニを見えなくする。
これで戦の間はどこで舞っていても攻撃されることはまずない。
陣が組まれたのを確認してから、鈴が三重に連なり縫い付けられた赤いリボンを両足首に巻きつけていく。
最後に、ちょうど銀貨くらいの小さな鉄でできた円盤を親指と中指の爪にはめた。
カスタネットのようにぱんと反動を付けて合わせると金属性の音が鳴る、クロテールと呼ばれる打楽器だ。
最前列の歩兵が踏み出したと同時に、サニはしゃらん、と足に付けていた鈴を鳴らした。
両手の親指と中指をはじくように合わせると、クロテールから、りん、と甲高い金属音が鳴り響く。
歩兵の後ろで待ち構えている騎馬軍の最前でリエイムがその音を聞いてはっと振り返る。
サニの後ろにある太陽が逆光になっているのだろう、手でひさしを作り怖いくらい真剣な表情でじっとこちらを見つめてきた。目が合うと、形の良い唇が四文字をかたどる。
——綺麗だ。
谷の奥とこちら側では絶対に聞こえないはずなのに、なぜか低くささやく声がはっきりと耳元に届いた。正面を見据え意識を集中し直すと、サニは静かに踊り始めた。
足の裏のつま先とかかとを使い分けながら、固い大地を踏みならす。
足の甲を反らせ弓形を作ると、高く飛び上がる。
するとサニの動きに合わせるように勢いを増加させた風が砂埃を含み、上空へ舞い上がった。
遙か空の上でキラキラと光る金色の砂塵はまるで鹿のような形に集まると、最前列の兵が持っていたたいまつからもくもくと放たれる煙りを巻き込んで、前方に勢い良く吹いていく。
聖舞師のステップによって意思を持ったようにうごめく砂の鹿は、オーフェルエイデの旗を存分にはためかせ、迷うことなくセディシアに向かって走って行った。
目を潰されたセディシア兵たちは混乱しながらも狭い視界の中前へ進む。
煙がようやく散った時、微かな光が前方にぼんやりと見えた。
光は白い煙と光に包まれ、敵兵たちはあまりの神々しさに一瞬ここがどこかを疑った。
光は兵たちが進むごとに次第に強くなり、そしてようやくそれが何か気づいたときにはもう遅い。
それはオーフェルエイデ兵の一人一人から放たれた加護の光であった。
通常加護の力は武力を増殖させる効果があるがほとんど目には見えない。
しかし聖舞師の舞術が抜きん出て強いときにのみ、珍しくも舞術は可視化される。
その光はまるで一対に集まり、壁が現れたようだった。
光を放つ軍の一番先頭に、軍将はいた。
自らが剣を振り回し、セディシア軍の真ん中を割るようにずんずんと前進していく。
その勢いはすさまじい。
ほとんど全滅させる勢いでオーフェルエイデ軍に攻め込またセディシアはほどなくして体勢を崩される。
結果、生き残った残兵たちは退散を余儀なくされた。
こうして軍は、その長リエイム・オーフェルエイデの予言通り大勝利を収めた。
これで戦の間はどこで舞っていても攻撃されることはまずない。
陣が組まれたのを確認してから、鈴が三重に連なり縫い付けられた赤いリボンを両足首に巻きつけていく。
最後に、ちょうど銀貨くらいの小さな鉄でできた円盤を親指と中指の爪にはめた。
カスタネットのようにぱんと反動を付けて合わせると金属性の音が鳴る、クロテールと呼ばれる打楽器だ。
最前列の歩兵が踏み出したと同時に、サニはしゃらん、と足に付けていた鈴を鳴らした。
両手の親指と中指をはじくように合わせると、クロテールから、りん、と甲高い金属音が鳴り響く。
歩兵の後ろで待ち構えている騎馬軍の最前でリエイムがその音を聞いてはっと振り返る。
サニの後ろにある太陽が逆光になっているのだろう、手でひさしを作り怖いくらい真剣な表情でじっとこちらを見つめてきた。目が合うと、形の良い唇が四文字をかたどる。
——綺麗だ。
谷の奥とこちら側では絶対に聞こえないはずなのに、なぜか低くささやく声がはっきりと耳元に届いた。正面を見据え意識を集中し直すと、サニは静かに踊り始めた。
足の裏のつま先とかかとを使い分けながら、固い大地を踏みならす。
足の甲を反らせ弓形を作ると、高く飛び上がる。
するとサニの動きに合わせるように勢いを増加させた風が砂埃を含み、上空へ舞い上がった。
遙か空の上でキラキラと光る金色の砂塵はまるで鹿のような形に集まると、最前列の兵が持っていたたいまつからもくもくと放たれる煙りを巻き込んで、前方に勢い良く吹いていく。
聖舞師のステップによって意思を持ったようにうごめく砂の鹿は、オーフェルエイデの旗を存分にはためかせ、迷うことなくセディシアに向かって走って行った。
目を潰されたセディシア兵たちは混乱しながらも狭い視界の中前へ進む。
煙がようやく散った時、微かな光が前方にぼんやりと見えた。
光は白い煙と光に包まれ、敵兵たちはあまりの神々しさに一瞬ここがどこかを疑った。
光は兵たちが進むごとに次第に強くなり、そしてようやくそれが何か気づいたときにはもう遅い。
それはオーフェルエイデ兵の一人一人から放たれた加護の光であった。
通常加護の力は武力を増殖させる効果があるがほとんど目には見えない。
しかし聖舞師の舞術が抜きん出て強いときにのみ、珍しくも舞術は可視化される。
その光はまるで一対に集まり、壁が現れたようだった。
光を放つ軍の一番先頭に、軍将はいた。
自らが剣を振り回し、セディシア軍の真ん中を割るようにずんずんと前進していく。
その勢いはすさまじい。
ほとんど全滅させる勢いでオーフェルエイデ軍に攻め込またセディシアはほどなくして体勢を崩される。
結果、生き残った残兵たちは退散を余儀なくされた。
こうして軍は、その長リエイム・オーフェルエイデの予言通り大勝利を収めた。
1
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
あなたの隣で初めての恋を知る
彩矢
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。
優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―
無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」
卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。
一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。
選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。
本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。
愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。
※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。
※本作は織理受けのハーレム形式です。
※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください
後宮に咲く美しき寵后
不来方しい
BL
フィリの故郷であるルロ国では、真っ白な肌に金色の髪を持つ人間は魔女の生まれ変わりだと伝えられていた。生まれた者は民衆の前で焚刑に処し、こうして人々の安心を得る一方、犠牲を当たり前のように受け入れている国だった。
フィリもまた雪のような肌と金髪を持って生まれ、来るべきときに備え、地下の部屋で閉じ込められて生活をしていた。第四王子として生まれても、処刑への道は免れられなかった。
そんなフィリの元に、縁談の話が舞い込んでくる。
縁談の相手はファルーハ王国の第三王子であるヴァシリス。顔も名前も知らない王子との結婚の話は、同性婚に偏見があるルロ国にとって、フィリはさらに肩身の狭い思いをする。
ファルーハ王国は砂漠地帯にある王国であり、雪国であるルロ国とは真逆だ。縁談などフィリ信じず、ついにそのときが来たと諦めの境地に至った。
情報がほとんどないファルーハ王国へ向かうと、国を上げて祝福する民衆に触れ、処刑場へ向かうものだとばかり思っていたフィリは困惑する。
狼狽するフィリの元へ現れたのは、浅黒い肌と黒髪、サファイア色の瞳を持つヴァシリスだった。彼はまだ成人にはあと二年早い子供であり、未成年と婚姻の儀を行うのかと不意を突かれた。
縁談の持ち込みから婚儀までが早く、しかも相手は未成年。そこには第二王子であるジャミルの思惑が隠されていて──。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる