軍将の踊り子と赤い龍の伝説

糸文かろ

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第一章

再会・初戦 5

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 目隠しの術も兼ねていて、仲間以外からサニを見えなくする。
 これで戦の間はどこで舞っていても攻撃されることはまずない。
 陣が組まれたのを確認してから、鈴が三重に連なり縫い付けられた赤いリボンを両足首に巻きつけていく。
 最後に、ちょうど銀貨くらいの小さな鉄でできた円盤を親指と中指の爪にはめた。
 カスタネットのようにぱんと反動を付けて合わせると金属性の音が鳴る、クロテールと呼ばれる打楽器だ。
 最前列の歩兵が踏み出したと同時に、サニはしゃらん、と足に付けていた鈴を鳴らした。
 両手の親指と中指をはじくように合わせると、クロテールから、りん、と甲高い金属音が鳴り響く。
 歩兵の後ろで待ち構えている騎馬軍の最前でリエイムがその音を聞いてはっと振り返る。
 サニの後ろにある太陽が逆光になっているのだろう、手でひさしを作り怖いくらい真剣な表情でじっとこちらを見つめてきた。目が合うと、形の良い唇が四文字をかたどる。

 ——綺麗だ。

 谷の奥とこちら側では絶対に聞こえないはずなのに、なぜか低くささやく声がはっきりと耳元に届いた。正面を見据え意識を集中し直すと、サニは静かに踊り始めた。

 足の裏のつま先とかかとを使い分けながら、固い大地を踏みならす。
 足の甲を反らせ弓形を作ると、高く飛び上がる。

 するとサニの動きに合わせるように勢いを増加させた風が砂埃を含み、上空へ舞い上がった。
 遙か空の上でキラキラと光る金色の砂塵はまるで鹿のような形に集まると、最前列の兵が持っていたたいまつからもくもくと放たれる煙りを巻き込んで、前方に勢い良く吹いていく。
 聖舞師のステップによって意思を持ったようにうごめく砂の鹿は、オーフェルエイデの旗を存分にはためかせ、迷うことなくセディシアに向かって走って行った。
 目を潰されたセディシア兵たちは混乱しながらも狭い視界の中前へ進む。

 煙がようやく散った時、微かな光が前方にぼんやりと見えた。

 光は白い煙と光に包まれ、敵兵たちはあまりの神々しさに一瞬ここがどこかを疑った。
 光は兵たちが進むごとに次第に強くなり、そしてようやくそれが何か気づいたときにはもう遅い。
 それはオーフェルエイデ兵の一人一人から放たれた加護の光であった。
 通常加護の力は武力を増殖させる効果があるがほとんど目には見えない。
 しかし聖舞師の舞術が抜きん出て強いときにのみ、珍しくも舞術は可視化される。
 その光はまるで一対に集まり、壁が現れたようだった。

 光を放つ軍の一番先頭に、軍将はいた。
 
 自らが剣を振り回し、セディシア軍の真ん中を割るようにずんずんと前進していく。
 その勢いはすさまじい。
 ほとんど全滅させる勢いでオーフェルエイデ軍に攻め込またセディシアはほどなくして体勢を崩される。
 結果、生き残った残兵たちは退散を余儀なくされた。

 こうして軍は、その長リエイム・オーフェルエイデの予言通り大勝利を収めた。
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