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第十一話
しおりを挟む楽しい時も苦しい時も流れる時間は同じようです。
指示を出してから一週間。僕達は男爵の下でクレスタの街の警備にあたって、暇だ暇だと毎日プリシラさんの八つ当たりにの対象になっていた。
ソフィアさんが一番最初に暴れるかと思ったが、仕立屋で買った「櫛」を大変気に入り、いつも手にとって眺めていた。
僕なんかは滅多に櫛を使う事が無いけど、女の人にとっては何が大事になるか勉強が必要な様だ。ソフィアさんの髪に僕が櫛を当てると喜んでくれる。そのうちメイクもやらされるのだろうか。
「ろくな男がいねぇな、ここの傭兵達は」
「……」
「もう男探しをしてるんですか? 探している割りには上手く行った話を聞きませんね」
「あたいに見合うだけの男がいないねぇ」
「プリシラさんに見合う男の人はいませんか?」
「あたいの様に強くて美しくて教養のある女に見て見合う男はいないねぇ~」
強くて美しいまでは認めましょう。ライカンスロープに勝てる人間なんているのだろうか。この狂暴で凶悪で人を虫けら如く殺す傭兵は…… 痛てて、股間を握らんで下さい。
「てめぇ、今何を考えていた?」
「……ぼ、僕なんてどうかなっと思ってるだけですよ」
「な、何を言ってやがる。お前なんか、ただのヒモ野郎だろう!」
握り潰されそう、腰が引ける。ここまで顔を赤くして恥ずかしがってるのは初めて見た。まんざらでも無いようなのでもう少し追い込めるか? それとも握り潰されるか勝負だ!
「今日は順番を変えて二人でいませんか」
樫の机がプリシラさんの剣で真っ二つになった。照れ隠しの度に高価な机を壊されたら貯金が無くなる。僕の股間の金が無くなるよりはいいかな。
「ば、馬鹿にするな、順番通りでいいんだよ…… 」
剣を仕舞いながら出ていくプリシラさんを見てこの手の冗談は止めようと心に決めた。今度はもう少し上手くやろう。出来れば最後まで人型でいてくれる様に、眠る時は柔らかい乳房に顔を埋めていられる様に。
「……」
クリスティンさん今のやりとりは冗談だったんですよ。楽しそうに見えてましたか? もしかして股間を握りたいとか? クリスティンさんには股間よりも心臓を握られてます。
アラナには一番大変な事を頼んだので心配だ。ルフィナの作ったゾンビ鳥で三日に一回は連絡が来るので、元気に潜入してる様が手紙から分かるが、字が汚いのと誤字があるので読解力が試されてる。三十と三百は間違えないように。
ルフィナは毎日墓場に通ってネクロマンサーの力を使っているようだ。ゾンビ以外にも作ると張り切っている時の笑顔は、何者にも換えがたい輝きを放ち僕を不安にさせた。
オリエッタは輪番が来ても頼んでおいた物が出来なかったので一回お休みにして、僕の有給にあてた。僕もたまには休みたい。 間に合いそうに無かったので頼みは断り、代わりにBC錬金術を頼んでおいた。
BCは化学兵器の事だ。ミリオタの僕のザッシデ見た程度の知識をオリエッタに教えたら、さすが狂気の天才はあっという間に自分の物にし た。化学より生物になるのかな?
ヌーユでは本当にスゴいことになったのにオリエッタは平然と化学者の顔で状況を観察していた。本当にひどい有り様だった。
使わせたくないし使いたくない。 でもそれが許される状況でもない。仕方がないで使ってもいいのだろうか。 アラナの情報次第で使わなくても済むから頑張ってくれ。
ソフィアさんのドレスは出来た。プリシラさんが砦で着たのはワインレッドだったけど、ソフィアさんはホワイトを選んでまるでウェディングドレスの様に見えたのは僕だけだっただろうか。
案の定、他のメンバーからの「買ってコール」が怒濤の様に鳴り響き、命が惜しいのでアラナが帰って来てからとなった。 クリスティンさんのドレス姿は見てみたいなぁ。
ソフィアさんはドレス姿でいつもより可愛さアップして惚れてしまいそうだ。脱がすのがもったいないが、脱がす。 ……半分まで。
指示を出してから二週間。オリエッタはBC兵器に手間取りアラナは順調に情報を仕入れ、ルフィナは影でこそこそと何かをしている。大事な事は「秘密」と言ってはぐらかされたが、ベットの中でとても楽しそうなルフィナを見るのは気持ちがいいものだ。
問題があったとすればクリスティンさん。 ある傭兵の団の三人がクリスティンさんに強引に迫ったらしい。 女が欲しければ、娼館に行けばいいのにお金をケチったのか?
プリシラさんだったら付いて行ったんだろうか? 男を漁りに行くと言って上手く行った話を聞く事がない。ライカンスロープになっても服が破れないように、際どい服装が目を引くんだけどね。
クリスティンさんに迫った傭兵達は不幸にも心臓発作を起こしたらしく亡くなられま。ハールトーク軍としては貴重な戦力で惜しい事をしたが、死んでも当然だろう。
ソフィアさんは街に出て医療行為を無料で行っているお陰で、ハールトーク軍の株は上がって良好な関係を保っている。全てが順調に進んだ三週間。アラナからの連絡が途絶えた。
「連絡が取れないってどういう事だよ」
「こちらからの撤退の指示に対して答えがありません。昨日、連絡が来る予定でした」
「遅れているだけじゃないですか?」
「私の鳥は遅れないのである」
「どうすんだ団長!」
「決まってます。ハーデンバーに忍び込んでアラナをを探し出します。これから男爵の所に行ってアラナが得た最後の情報を伝えて来ます。敵は二~三日中に攻めてきますよ」
「いよいよか、ハーデンバーに集まった奴等を殺してアラナを助け出す」
「みなさんは出立の準備をして下さいアラナは必ず助けます」
みんなに準備をさせて僕はコニー・クワイエット男爵のところに行きアラナから届いた情報で敵の数は騎士団と傭兵を集めた千人くらいであること、ハーデンバーを二、三日中に出立してくる事を伝えた。
男爵にはハーデンバーに潜入して補給線を叩き後方撹乱をする事を伝えて了承を得られた。さすがに千人を相手にまともに戦えるとは思わなかったのだろうが、僕らとしては補給線も後方撹乱も関係ない。今はアラナを見つけるのが一番だ。
「集まりましたね。こちらの服を着てもらいます。娼館から借りて来ました。みなさんは娼婦としてハーデンバーに入ります」
「正面からではないのであるか?」
「傭兵としてですか? 途中で軍に雇われたりすると面倒なので」
「入った後は?」
「奴隷商人を当たります。捕まったのが軍では無く民間なら奴隷商人が妥当でしょう。尋問も速やかに行いたいのでルフィナには頑張ってもらわないと」
「頭さえあれば大丈夫である」
「着替えたら出発です。クリスティンさんは道中でも顔を出さないように、目立ちますから」
クリスティンさんレベルの娼婦なんて見たことないから目立って足止めをくらうのはマズい。僕なら間違いなく止めた上で身体検査をじっくりと……
「ちょっと胸がキツイです~」
サイズは分かってるつもりだったがオリエッタは成長期だったのか? オリエッタの身長は小柄なアラナと代わらない。アラナは成人してると聞いた事があるけど、オリエッタはちゃんと成人してるのかな? プリシラさん、労働基準法って知ってますか?
僕達がハーデンバーの街に入りかけた時、領軍とすれ違う形で入ってしまった。娼婦の一団と言うことで声くらいはかけられたが問題ない。
まだ日も明るいので街外れでクリスティンさん以外には着替えてもらいプリシラさんとクリスティンさんとルフィナと僕はこの街でも大きな奴隷商の所に行きソフィアさんとオリエッタは宿を取りに行かせた。
奴隷商にはクリスティンさんを売ると言うと、高値を付けてくれ、感謝の言葉を商会のトップから言われるそうで、まんまと罠にはまってもらった。
「やれ!」
プリシラさんは商会長の護衛を音もなく鎮圧しクリスティンさんは見詰めるだけで会頭の心臓を押さえ動けなくしていた。
「最近、猫の亜人を取引した事はありますか?」
クリスティンさんの間接的「不幸にも~」から、プリシラさんの直線的関節技が痛い感じで押さえつけていたので、せめて僕は出来るだけ丁寧に聞いてみた。
「くそ! バカ野郎! 死にや……グフッ」
会長さんの暴言はプリシラさんにストップがかけられ最後まで聞けなかった。あばら骨の二本ぐらいで変な声を出してるんじゃねえよ。僕なんかなあ……
「ルフィナ、任せます。記憶を探って下さい。プリシラさん、アンマリ酷いことをしないように。僕は書類を見ますから。クリスティンさん手伝って下さい」
「任せるである」
「酷い事って分からな~い」
「……」
書類と格闘すること数分でルフィナから、会頭は関係ないとの記憶を読んだと教えてくれた。いきなり押し込んでしまって無実だったなんて、言い訳のしようが無い。
「この人は知らないみたいである。アラナらしい亜人はいないのである。ここ数週間は傭兵になるような奴隷ばかりを扱ったである」
「戦力の補充分ですか。彼の今あった事の記憶は消せますか?」
「無理である 。消すなら全部である。時間もかかるてある」
「……クリスティンさんお願いします」
「……」
クリスティンさんの「不幸にも~」で会長は胸を抑えて絶命した。 これで言い訳をする相手がいなくなってしまった。残念だけど仕方がないよ、奴隷商人だし、白百合団が絡んだ事だし、アラナを探す邪魔はされたく無いし。
奴隷商人が違うなら民間では無い。後の手掛かりは、ここの領主に聞いてみよう。きっと答えをしってる筈だよ。夜になったら直接聞きに行ってやる。
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