26 / 292
第二十六話
しおりを挟む仕事が見つかるまで、女性を連れて野宿する訳にはいかない。宿屋に部屋を取れば、お金がかかる。 プリシラさんの暴れるのではないか、ルフィナ、オリエッタの二人が良からぬ事をするのではないかとヒヤヒヤして夜も眠らせてくれない。
ルフィナ、オリエッタのコンビがソフィアさんを連れて中庭に出たのを見た時は悪寒が走った。僕も神速で走った。
「みんな揃って何をしてるんですか?」
「実験の成果を見るのである。少し前からソフィアに新魔術を教えていたのである」
「新魔術」とてもいい響きだが、どうしても嫌な予感しかしない。黒魔術から白魔術に何を教えるのだろうか。
「元々は団長の記憶の欠片にあったものをオリエッタが考察し私が手を加えソフィアが具現化するのである」
オリエッタが絡んでくるとますます危なくなって来そうだ。僕の記憶はオリエッタが主導してルフィナが読み取ってる時がある。その代わり、輪番は寝てれば終わるのが楽でいい。
「論ずるより見た方が早いである。ソフィア、やってみるのである」
「少しは出きるようになってますからね。見ていて下さい。 ■■■■、レーザー」
えっ!? レーザー!? ソフィアさんの右の手指の先から、無慈悲にふむ、光の線が放たれて行く様は、正にレーザー光線。
「指一本なら五十センチくらいの長さになります。」
五指から伸びた光は十センチほど伸びて目映いプラチナ色の光を放っていた。光に手を近付けると熱く感じた。
「かなりの高温になるんでプレートアーマーくらいなら切れますよ。もう少し慣れて来れば、私も前に出られます」
何でこの世界にレーザーなんてあるの? 変だろ絶対。第一、僕の記憶にレーザーの作り方なんて無いはず。
「団長の記憶を読んだとき、分からない事が多かったであるが、オリエッタに協力してもらって色々な事が出来そうである」
「団長は凄いです~。色々な事を知っていて物知りです~」
「僕はこんな物の作り方なんて知りませんよ」
「はい~。なので黒魔術や錬金術を駆使してみたらソフィアさんには出来そうだなって思ってやってみたのです~。簡単に言うと光の圧縮です~」
光を圧縮したってレーザーにはならねえだろ。光の圧縮なんて出きるのか。ファンタジーにもほどがある。この悪魔のコンビめ。
「ほ、他にも色々な事を知ってるのかな?」
「当然である。前回の屋敷での事もそうである」
「あの思い出したくない衆道のことかな」
「そうです~。ルフィナちゃんから教えてもらった事を参考に霧状にして広範囲に撒く事が出来たのです~。霧状にしても効果が薄れないのがポイントです~」
「ちなみに何を参考にしたか聞いてもいいかな?」
「生物兵器です~。他にも大量に殺せる生物兵器も聞いたので完成も間近です~」
貧乏人の核兵器と言われる生物化学兵器。これはやったらダメなやつだろ。今回は人死にがないけどオリエッタならやりかねない。が、前世では魔族との戦いで押されていた連合国に戦果をもたらせたのも事実だ。
「それは使用禁止ね。少なくとも許可なく使うのはダメ」
「せっかく作ったのに使わないのは勿体無いです~。完成はさせたいです~」
「完成はいいよ。ただし実験も使用も僕に許可を取ってからにして下さい」
「分かったです~。完成を急ぐです~」
急がなくていいよ。まだ時間はあるはずだし使わないで済むなら、使いたくない。ジュネーブ条約に怒られたくない。
「他にもどんな記憶を読んだのかな」
「ふむ、後は団長の個人的な記憶を少し…… 団長の童貞を捨てた相手とかである」
思い出す童貞を捨てた相手…… それは死ぬまで話さないで。墓場まで持って行って死んでくれ。
「これは面白くもないので話してはいないのである。団長との二人だけの秘密にするのである」
偉いぞルフィナ。秘密にしてくれるなら、血ぐらいなら分けてやってもいいぞ。少しなら……
ルフィナが言い終わると同時にソフィアさんが風の様に駆け抜けルフィナの首を握り締めていた。今の速さ、僕より速くないか?
「ルフィナ、団長と二人きりの秘密なんて良くないですよ」
握り締めている右手からはレーザーは出ていないが強く握られているルフィナは苦悶の表情にうめき声を出していた。
「ソ、ソフィア放すのである。く、苦しい…… 」
「話すのはルフィナでしょ。このまま手からレーザーを出してもいいんですよ。ネクロマンサーは首が飛んでも生きているのでしょうかね」
止められない。止めるのが怖い。ソフィアさんの迫力は何度が味わっているが、日々精進しているようだ。
「あんまり黙っているとこうですよ」
ソフィアさんの左の人差し指から小さなレーザーが出で、ルフィナの服を喉元から焼き切っていった。止められない。止めたくない。もう少し見たいから。ソフィアさんの左手が下がる度に切られていくルフィナの服。
あぁ、もうお腹の下の方まで…… ここで風がブワァ~と吹けばいいものが見れるのに。
「分かった。分かったである。言うから止めるのである」
あぁ、ルフィナよ。もう少し頑張って欲しい。もう少し下まで…… せめて風よ吹け。
「最初からそうすれば良かったんですよルフィナちゃん。で、誰ですか?」
ルフィナが口にした人物に満足したのかソフィアさんは笑顔とも残念とも複雑な表情をしていた。 ……教えねえよ。オリエッタの耳を塞いだくらいなんだから誰にも教えねぇ。
ソフィアさんは何事もなかったかの様に「フフフ」と笑って去って行った。久し振りに見たソフィアさんの嫉妬パワーに腰が引けたけどナイフの次はレーザーか。治癒の魔法で治るのかな。
「さすがソフィアである。もう使いこなすとは、さすがである」
半分に切り裂かれた服を引き寄せる様にして白く美しい体を隠す仕草は色っぽい。服を切り裂かれても答えなかったらと考えるとドキドキしてしまう。
ルフィナの柔肌と怯える顔も可愛い、ソフィアさんの今までに無い位のパワーも怖い。オリエッタは腰を抜かしているし意外とチキンなのね。
何にせよ、今日は新しい一面が見れた。ソフィアさんのレーザーは有効だし記憶から読んだ事はきっと役に立つだろう。正し、僕に向かわなければね。
「団長。一つ頼みがある」
ルフィナの頼みで録な事はないが、珍しいので聞いてみよう。
「ソフィアの機嫌を取って欲しいのである。たぶん大丈夫であろうが、さすがに先程の殺気は不味いのである」
「僕にどうしろと……」
さっきの殺気はさすがに怖い。僕としては時間が解決してくれるように見守りたかった。係わり合いたく無かった。
「今日は私の番である。それをソフィアに変わる。なんとか機嫌を取ってもらいたいのである」
その位なら頑張りましょう。ソフィアさんの巨乳に埋まれて眠るのは好きだから。
「いいですよ。その代わり今後、刺すのも切るのも毒を盛るのも禁止でお願いします。その他に仕事に差し支える様な事も禁止で」
「ムムムッ。 分かったである。取り引き成立である。必ずやソフィアの機嫌をとるである」
服を切り裂かれながら悶えるルフィナも見たいが仕方がない、僕は団長だからね。後はオリエッタを何とかすれば乗り越えられそうな気がする。色んな意味で。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる