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第三十話
しおりを挟む日記を書いてみよう。異世界での生活は貴重な体験だから。馬がユニコーンでムチが好きだなんて貴重な体験だ。
本当は星空の下で寝るつもりだったのに、あんな事があって眠気が吹っ飛んだ。これから、馬車を操車する度に今日の事を思い出すのだろうね。
この事も書いた方が良いのだろうか? 日記は過去を思い出す為に書くとしたら、楽しい事も辛い事も殴られる事も毒に犯される事も斬られる事も刺される事も縛られる事も、書いた方が良いのだろうか?
……取り敢えずは登場人物の紹介からかな。誰が出てくるか書いておいた方が分かりやすいし、もし同じ転生者が来たとしたら、僕の体験談はその人の役に立つだろうから。
誰にも見せるつもりは無いけど、同じ転生者なら見せてもいい。僕の日記を役に立てて異世界を生き抜いて欲しい。
ミカエル・シン
異世界転生者。身長、百七十三センチ。中肉中背、何処にでもいる日本人だったが、死んだ事をきっかけに異世界へ転生する。
初めて来た異世界での結末に神様が納得せず、神様が面白いと思うエンディングを目指して、二度目の異世界生活を神速のチートを授かって送る事になる。
傭兵、白百合団の団長。神速を使っての攻撃は何人も避ける事も出来ず、敵を一刀の元に打ち倒す。神様からもらった神速を多方面に展開し無敵を誇る。
プリシラ
ライカンスロープ。身長、百九十三センチ、九十七─六十二─八十五。白百合団、副団長。元々は白百合団の団長だったが、面白いヤツを見付けたので、そいつを団長にして自分は楽な副団長に。
日に焼けた褐色の肌に、肩を少し越えるくらいの赤毛がトレードマーク。戦闘経験も多数あるが、筋肉質と言うより鍛えられた水泳選手の様な体つき。
自身の能力として獣人に変化が出来るライカンスロープ。その時の姿はゴリラと狼を狂暴さを合わせたくらい。身長も二メートルを越え黒い剛毛で被われる最狂の存在。
輪番ではまず剣で勝負をしてから本番に進む、変わった性癖を持ってるが抱き心地は最高だ。
クリスティン
不幸にも相手の心臓を麻痺させてしまう得意能力の持ち主。身長、百八十二─八十七─五十六─八十六。スーパーモデルをもしのぐ美形とスタイルで、長いシルバーゴールドの髪の毛が風に舞う姿は現代の女神か。
基本的に無口で白百合団以外には心を許さない。と、言うよりミカエル・シン以外の男は死んで欲しいと願っている。
剣の腕前は下の下。剣を打ち合うより早く相手が不幸にも心臓麻痺で亡くなる。遠距離攻撃も、彼女を狙っただけで死に至らしめる。ある意味、最強。
輪番では脳ミソを震わせる程の喘ぎ声を上げ、防音テントが必要になってくる。ウエストの細さから後ろからする時は、腰に手を当てると丁度いい。
ソフィア
白魔導師。治癒系を得意とする、栗毛の髪に優しい眼差しの女の子。慈愛に満ちたその笑顔は誰からも好かれる。百六十三─八十四─六十三─八十三。
本来、白魔導師系に攻撃魔法は存在しないのだが、ミカエル・シンの記憶を頼りに、ルフィナ、オリエッタが協力して光の力、レーザービームを撃てる反則的な能力の持ち主。尚、メテオストライクに関しては自分の力では操作できてない。 ……今の所は。
また、ミカエル・シンに近付く女は敵だと思っている。女の敵は男だそうで、攻撃対象はミカエル・シンとなっていて容赦がない。
輪番でも隙があれば肉棒を舐めるのが大好きで、奉仕の心を欠かさない。まろやかに付いた身体の肉は抱き締めたら離したくなくなる。
アラナ
猫の亜人。まさにボーイッシュを地で行く女の子。手足にはアメショーの様な銀灰色の毛が生えているが、身体の中心にかけては生えていない。百五十─七十八─六十一─八十二。
スピードだけなら神速並み速さを誇り、団内、最速と言っているが、本領はその器用さとバランス能力。
手を繋ぐだけで恥ずかしがる乙女チックな所もある可愛らしさ。そして猫の亜人特有の艶やかで柔らかい毛並みが最高だ。
輪番の時には間違っても正常位でしてはいけない。何故なら興奮の余り、抱き締め背中に回した手から鋭い爪が背中を切り裂く。
ルフィナ
天才ネクロマンサー。死の象徴として存在する魔導師だが、いつかミカエル・シンを殺してゾンビ化させ、自分の物にしたいと思っている。百五十五─七十九─五十四─七十九。
病的な程の肌の白さに反比例した長い黒髪はネクロマンサーならではなのか。得意な魔法は「毒」とか「腐らす」とか物騒な物ばかり。
輪番の時でも基本的に性欲は少なく、受け身が多い。受け身と油断させて刺す事も多く、命を掛ける事も多い。
オリエッタ
ミカエル・シンのミリオタの記憶から便利な道具を作ってくれる錬金術師。ふわふわなピンク色の髪の毛と子供みたいな顔立ちからは想像が出来ない程の怪力の持ち主。百五十八─八十一─五十八─八十三。
戦いにおいて装甲服を着込むが、普段から着ている黒をベースにしたゴスロリ服が中で絡まって出れなくなる事も。可愛さから油断すると趣味であるエスエムを駆使しようとする危険人物。
輪番の時にはエスでもエムでも、どちらもいけるがミカエル・シンが「ちょいエス」なのでいつも縛られている方だ。
……こんなもんかな? 日記というより日誌に近い感じで構わないだろ。さすがに日記なんて見られたら恥ずかしいけど、日誌なら…… 輪番は消しておこうか。
僕以外にこの世界に来ている人がいるかも知れない。この先の未来で異世界に来る日本人がいるかも知れない。そんな人達がこの世界で生きる糧になる日誌を書こう。
「面白い物を書いてるじゃねぇか!」
僕の後ろを取れる人間なんて、そうそう居るものじゃない。全く居ない訳ではないが、僕の後ろを取れる人が殺気を立てて真後ろに居る。
「いつから居ましたか……」
怖くて振り向けない。後頭部に掛かる息が人間の物じゃない。 ……野獣。ライカンスロープに変化しているプリシラさんが後ろに立っている。
「夜中に騒げば誰だって気が付くだろ。ムチの音がしたが、ありゃなんだ?」
「何でしょう? 星空が聞かせた幻聴では……」
「そうか…… そうしておこうか……」
「そろそろ寝ようかなぁ~」
「……」
沈黙は金なり。この場合の金は三途の川の渡り賃になるのかな。確か、渡り賃は六文銭だったか、プリシラさんの沈黙の値段は……
「永眠か……」
僕の命の値段だそうだ。
「色んな事を書いてくれてるじゃねぇか……」
「こ、これはですね…… いつか来るかも知れない日本人に役立てようと……」
「ニホン人だか、ハルモニア人だか、知らねぇが、こいつがお前より価値があるとは思えねぇな……」
僕の書いている日誌を上から引き抜き、取り上げる学校の先生は、「授業中にこんな事をしてたらダメよ」と言うタイプじゃない。
もう見ている筈なのに、また読み返してる見られたら恥ずかしい日誌…… 先生やクラスメイトのスリーサイズが載っている。
神速!
真横に飛んで跳ねる僕の真上から振り下ろされた長い足は、黒い剛毛に覆われ抱き付きたくなければ、舐めたいとも思わない。
「速いな…… 手も速いのか? この紙を取り返すくらい!」
取り上げていた日誌をプリシラさんは口に咥えて構えた。僕もボヤッと席に着いてるほど初日の転校生じゃない。
まったく…… たかが日誌くらいに目くじら立てやがって大人気ない。今度、書く時は日本語で書いておかないと。
既にプリシラさんの咥えた口のヨダレで半分も読めるかどうか。もう、取り返す価値よりも、読めなくして証拠隠滅するしか無い。証人の始末はこれからだ。
「プリシラさん、せっかくの休みに輪番だなんて、働き者ですね」
「これでも副団長だからな。女の秘密は守るもんだ」
二時間! ライカンスロープとの組み手に付き合わされ…… 三時間! ライカンスロープとの輪番に付き合わされ……
人型のプリシラさんは終わりのキスだけだった。
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