異世界に来たって楽じゃない

コウ

文字の大きさ
49 / 292

第四十九話

しおりを挟む

 馬車に揺られて説明中。
 
 
 「団長よぉ、貰う物も貰ったし、これからどこにいくんだぁ」
 
 「人の話は聞いてましたか?   これからアシュタール帝国に行くんですよ」
 
 「何で行くんだぁ」
 
 「この会話は何回目ですか!   ハスハント商会の会頭に会いに行くんですよ。マクジュルにもハスハント商会は有りますけど、会頭が直々に会いたいと言ってられるので、これから行くんです。ハスハントと言えば世界でも屈指の商会ですからね、顔を通しておいて悪い事は無いですよ。もしかしたら、仕事も回して貰えるかもしれませんしね」
 
 この会話を朝から何度したのだろう。いい加減に覚えろよ。もしかして寂しくて僕の声が聞きたいのか。
 
 「団長、プリ姉ぇは寝てるッス」
 
 振り返ると酒樽抱いて寝ていた。僕もプリシラさんに抱かれて眠りたい……    なんて思わねえよ。人の話は最後まで聞け。
 
 僕らはマクジュル王都を後にしてアシュタール帝国に向かっている。アシュタール帝国はこの大陸の最大国家で西のマクジュル、プロメリヤ、ハリヌーク、北のハルモニア、ケイベック、ロースファーの六カ国が束になっても勝てないくらい強大な軍事力を持つ国と言われている。
 
 今は領土的野心も無いらしく周辺国家とは仲良くやってるし、軍事より政略で周りとの関係を良好にしている。マクジュルの王妃はアシュタールの偉い人の娘だしね。
 
 ハルモニアの北、魔族の大地で魔王が挙兵するまでの時間に、とてもじゃないが、どこの国の貴族とも太いパイプを作る事は出来ない。
 
 北の三か国で太刀打ち出来ない魔族にはどうしてもアシュタール帝国の力が欲しい。貴族とパイプを作れない以上、貴族を動かせる人とパイプを作れたら、もしかしてアシュタールを動かせるかもしれない。
 
 貴族さえも動かせる人物。それは世界でも屈指のハスハント商会の会頭くらいなものだろう。それが向こうから会いたいと言ってくれるなら、会いに行かないはずはない。
 
 前世ではハスハントとの接触はもっと後、僕らがケイベックに行ってからなのに……   ハイダ・クリーゼルを助けて歴史が変わったのか。
 
 と、言う前世の事はみんなに黙っておいて、ハスハント商会と繋がりがあれば仕事を回して貰えるかもかもと伝えている。
 
 帝都までは十日あまり、それまで普通の旅路でありますようにと、願わずにはいられない。
 
 ああ、そうさ。普通の旅路さ。白百合団にとっては普通の旅路だったよ。白百合団にとってはね……
 
 
 
 「団長、あの村で泊まれる所を探さなくて良かったッスか」
 
 「うん。いくら辺境の村で魔物に襲われる可能性があるとしても、僕達の様な武装した傭兵がいるのも気持ちのいい話ではないだろうからね」
 
 「そんなもんスか。魔物が来たら僕らがやっつけるッス」
 
 そうだね。と、軽く返事をして僕達は村を少し越えた所でキャンプ地を見つけた。ムチを一回、強く与えてから止まりテントの設営や食事の準備など、驚くほど早く終わり輪番が回ってきた。
 
 「今日はオリエッタだから三人いるんだね」
 
 「そうです~。今日は団長から記憶を貰うです~」
 
 「ソフィアさん、変な記憶を取らないように立ち会って下さいね」
 
 「ふふっ、任せておいて下さい」
 
 「団長は早く横になるのである。寝ている間に終わるである」
 
 お前が一番の不安材料なんだよ。変な事をしたらソフィアさんに言って服を切り刻むぞ。その後は……
 
 「早く横になって下さいね」
 
 ぐふっ、鳩尾を殴りやがった。息が出来ない。体が曲がる。だが振り向くとそこには笑顔のソフィアさん。ソフィアさんが僕の額に手を置くと次第に意識が薄れていく。
 
 あぁソフィア、お前もか……    お前が一番、記憶を欲しがっているんだな……    僕が覚えているのはそこまで……
 
 
 
 「ソフィア、やり過ぎである」
 
 「大丈夫ですよ。団長なら分かってくれますし、必要なら今の記憶を消しておいて下さいね」
 
 「ソフィアちゃんが恐い笑顔をしてるです~」
 
 「さっさとやるである。■■■■、記憶の深界」
 
 この後、二時間ほど記憶を掘られに掘られた。掘られた記憶の内容は三人だけが知る秘密となったが僕の軍事マニアとしての記憶か、プライベートの記憶か、恐くて聞けなかった。
 
 「終わったであるが、この後はどうするであるか」
 
 「今日はオリちゃんの番です~。団長は起きないです~」
 
 「起こしましょうか。すぐに起こせますよ」
 
 「ちょっと待つである。その前にオリエッタの作ったBC兵器の試作を試すのはどうであるか」
 
 「BC兵器は禁止されてますよね」
 
 「そうです~、禁止されてます~。でも禁止されているのは溶剤の方で錬金機器の部分は禁止されていないです~」
 
 「ふむ、その機器の部分だけテストするのは問題が無いのである。溶剤を別のにしてテストをすれば良いのである」
 
 「それなら大丈夫ですね。このテントの中で済むのなら大丈夫ですよ」
 
 「それならやってみるです~。このテントなら外に漏れる事も無いです~。■■■■、召喚」
 
 オリエッタの出した物は新型の噴霧器と以前に使った悪魔の催淫剤。
 
 「さ、催淫剤をつかうんですか」
 
 「使わない手はないのである」
 
 「威力は押さえてあるから、みんなで楽しみます~。えいっ」
 
 テントの中に吹き上がる桃色の煙。一瞬で催淫状態に陥る四人。
 
 「どうですか~。少しはその気になってきましたか~」
 
 「我はあまり効いた感じがしないのである。遅効性であるか」
 
 「そんな事ないです~。即効性の催淫剤です~。威力を落とし過ぎました~」
 
 「そうでもないである。ソフィアには効いているようである」
 
 身をくねらせ悶え始めるソフィア。肌もほんのりと桃色に染まっていく。
 
 「ルフィナ、ルフィナはもう少し服装に気を付けるべきよ。いつも黒いローブばかり着て中も味気ない物ばかり」
 
 「な、何を言っているのであるか。我のローブはネクロマンサーにとっては必要なのである。それに相手が違う、向こうで寝ている団長である。……ローブを脱がすな、我は違う……」
 
 脱がされながら首筋にキスをされ、催淫剤のせいかルフィナもその気になってくる。
 
 「ソフィアちゃんとルフィナちゃんが一緒なんですか~。オリちゃんは団長を頂きます~」
 
 オリエッタは僕のパンツを脱がし肉棒を握って遊び始める。
 
 「凄いです~。皮がいっぱい伸びるです~」
 
 「オリエッタ、人の物で遊ぶのは良くないのである。ソフィアもいい加減に……    ひ…あぁっ!」
 
 「ルフィナも感じやすい……」
 
 「なっ!    今のはなんであるか!?」
 
 「ふふっ、プラチナレーザーを極限まで細くして手の平から何十と打ち出したんですよ。すぐに治癒魔法も掛けたから痛みは残らないし、快感だけが残るのよ」
 
 「……化け物か……」
 
 「失礼なルフィナにはお仕置きが必要ね。ふふふっ」

 こんな事がテントの中で行われ四人は幸せに暮らしましたとさ。終わらない……
 
 誰かがテントを開けるまでは……    誰かが開けたんですねテントを。僕かもしれません、ソフィアさんかもしれません。
 
 誰かは分かりませんが外に待っているプリシラさんやクリスティンさん、アラナにまで催淫剤の効果が発揮され、何があったか分かりませんがテントで寝ていた僕は、焚き火の側でアラナと裸で抱き合って寝ている始末。
 
 
 「またやったんですか、オリエッタ!   BC兵器は禁止したはずですよ」
 
 「BCではないです~。錬金機器のテストです~。催淫剤の威力も落としてます~」
 
 「それなら何でこんな事になってるんですか!?   散布範囲が広すぎませんか!?」
 
 「日頃の研究の賜物です~」
 
 話にならない。研究の賜物だって!?    成果を出し過ぎだろ。しかし将来的には役に立つ。魔族との戦いには広域散布は……   広域散布!
 
 「アラナ。昨日、通り過ぎた村に偵察に行って下さい。見るだけで構わないので。他の人は撤収準備」
 
 「何か気になる事があるッスか」
 
 「勘違いで済めばいいんですけどね。お願いします」
 
 アラナはすぐに飛び出し来た道を戻って行き、僕達は撤収準備を整えてアラナの帰りを待っていた。
 
 程なくして帰って来たアラナは僕に抱き付き離れなかった。少し震えて恐いもの……   衆道でも見たのだろうか。
 
 アラナにはあえて聞かなかった。ただ肩を抱いて馬車の隣に座らせていた。ごめんね。
 
 
 あの村は来年、きっと子宝に恵まれるだろう。
 
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

処理中です...