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第六十八話
しおりを挟む皇帝陛下の命により僕達が教導団として帝国騎士団を教え導く。アシュタール帝国の男爵として、給料分の仕事はしないと。 ……給料明細はどこで貰えるのかな?
騎士団の演習開始まで一週間、僕達はラトランド侯爵の家でお世話になる。無駄に宿屋のお金を払わないで済むし、何より侯爵から是非と言われたので甘える事にした。
帰ってから僕が男爵の爵位をもらった事を話すと、皆からお祝いのキスをもらい、プリシラさんからは「飼い犬になりやがって!」とボディブローが鳩尾に食い込んだ。
その後、騎士団を訓練する仕事の話をするとプリシラさんは本当に激怒し「あたいらは戦争屋だ! 戦争しないでどうするんだ!」と怒って部屋を出て行ったが、直ぐにクリスティンさんが追い掛けた。
どんな説得をしてくれやがったのか、プリシラさんはニコニコ笑顔で帰って来て、祝福のキスをしてくれるまでに変えたクリスティンさんに、僕は恐怖を覚えた。
ちなみに僕は今、監禁処分中だ。謹慎では無くて監禁。人の口に門は立たないと申しまして…… 簡単に言えばメリッサ嬢との事がバレた。
僕に悪い所は無かったと…… 自負していますが、尾ひれが付いた話しをルフィナが持って帰って来やがった。
あろうことかアシュタール帝国、男爵の僕が公爵令嬢たるメリッサ様を「ヤり部屋」に連れ込んだと言い掛かりから始まり、部屋の中で二人きりで如何わしい行為をしていたと罪状を叩き付けてきた。
「裁判長、被告である僕の無罪を主張します」
「被告はこう言っているが検察のルフィナ、お前が持って来た話だ。証拠を示せ」
「証人がいるのである。証人のハウザード婦人は当日、団長達の隣のソファーで事を成していたのである。メリッサ準侯爵様と団長が隣に居たと証言したのである」
「意義あり! 事を成していると言いましたが薄暗い中で、セックス中に他人の顔を確認出来ますか? 見えたのなら自分から顔を隠すのが女性では無いでしょうか? 「見る」と、いう行為より「隠れる」が妥当で、とても確認をしていたと思えません」
「メリッサ準侯爵と団長の服を覚えていたと言ってるのである」
「メリッサ準侯爵様のドレスは高価な一品もので二つと無い物でしょう。しかしながら僕の服は借り物の既製品で子爵、男爵クラスなら皆さん同じ物を着ています。メリッサ準侯爵様の相手が僕とは限りません」
急遽、戦時裁判が発動。僕に弁護士が付く事は無かったが、僕は自分の正当性を裁判官や陪審員に伝えた。決定的な証拠が無いまま、裁判は僕に有利に進んだ。
評決の時。勝利を確信していた僕は、陪審員の心情まで考慮に入れれ無かったのか、賄賂をもらっていたのか、裁判長や陪審員の心に僕の言葉は届かず、一対六と言う完全敗北の後に再審無しの有罪が決まった。
「判決、被告人を二十四時間監禁刑に処す」
僕は有罪判決を言い渡され、謹慎処分ならぬ監禁処分の刑は、即日行われた。父さん、母さん、僕は異世界で前科持ちになりました。
世話になるラトランド侯爵が用意してくれた離れ家はとても大きく、幾つかの部屋にバス、トイレ別で同じ敷地内の別邸みたいだった。帝都の中とは思えないくらい静かで、魔法のせいか虫が居なかったのが良かった。
監禁刑は四時間交代制で必ず一人は手錠を掛けて、僕の側に一緒にいると言うもので、風呂もトイレも手錠を外すことも無く一緒だった。
普段の時間を過ごすのには良い。教導団として訓練メニューを考えたり、手が滑って乳を揉んだり、転んでベッドに押し倒したりと忙しかった。
別に無駄な時間を過ごした訳では無いが、お風呂で洗いっこするのは楽しい時間だった…… だが全ての問題はトイレだ!
いくら監禁でもトイレは一人でしたい。 ……だが、許されなかった。クリスティンさんとソフィアさんは手を伸ばして、ドアも閉められるだけしてくれ、隙間から見ても顔を背けてくれてた。
アラナとオリエッタは背中に張り付き離れず、トイレで後ろにピタリと順番待ちをされる気分を味わって、出すのに苦労した。当然、大きい方は我慢だ。
ルフィナに関しては、珍しく外で黙って待つと言ってくれたので、その言葉に甘える事にした。便座の方を振り向けば、斜め上空に骸骨バージョンのロッサが浮き上がり「お手伝いしましょうか」との申し出を、トイレから叩き出すのを返事とした。
問題はプリシラさんだ。僕の肩越しに覗こうとするのを本気で止め、「ちゃんと標的を狙ってやるよ」と優しい声と裏腹に、握り潰される程の力で肉棒を握られたので、僕はプリシラさんの鍛えられた筋肉に無駄な肘鉄を喰らわせた。
ちなみに、自分達が用を足す時は僕の手錠をベットに付け、動けなくしてから一人で行ってる。プリシラさんだけは「見るか?」と言われたので丁重にお断りしたらボディブローを喰らいました。何故なのでしょう。
腹筋を鍛えようと心に決めて二日も過ぎた頃、僕の知らない事態が進んでいる事をプリシラさんは教えてくれた。
「我慢してもらえませんか。お世話になっていますしルフィナの父上で帝国侯爵様ですよ」
「我慢ならしたさ! その上で言ってるんだろうが!」
僕が離れ家に居る時は誰か一人は監視の為に一緒にいるが、その他の皆は屋敷の方にいて順番待ちをしている。その間にトラブルがあったらしく、どうやらラトランド侯爵はエロジジイだったらしい。
廊下で擦れ違いにお尻を触る。後ろから抱き付いて胸を揉む。これがどんどんエスカレートして行って団員の不満が膨れ上がり、一番最初にクリスティンさんがぶちギレた。
クリスティンさんは一度 、お尻を触られてからラトランド侯爵を避ける様にしていたが、二度目に触られて心臓を吹き飛ばした。
もちろん不死の王と同一化しているラトランド侯爵が死ぬ事も無く、クリスティンさんが立ち去るとムクリと起き上がって次のターゲットを探したそうだ。
クリスティンさんがラトランド侯爵の心臓を吹き飛ばすのが知れ渡ると、皆が「殺ってもいいんだ」と拡大解釈に至り ……触られる前に殺ると。
ルフィナはもちろん、僕も参戦しなかったが、他の皆はハンティング気分でラトランド侯爵と殺り合ったそうです。暗黙のルールがあったそうですが、そこまでは聞きません。僕は監禁中で忙しかったので。
一つだけ言わせてもらえば血だらけになって離れ家に来るのは止めて欲しかった。全部がラトランド侯爵の血だったが、血を洗い落とす仕事が増えたし着替えも少ないので。
最後の方ではアラナとソフィアさんが飽きてしまい離れ家に入り浸り。プリシラさんとクリスティンさん、オリエッタが屋敷を破壊する勢いでラトランド侯爵を追い廻していたそうです。
一週間がたち、僕達が屋敷を去る頃には屋敷は半壊、所々に血の跡が残りラトランド侯爵のアンテッドが掃除や修繕で忙しく働いているなかで、別れの挨拶もそこそこに僕達は離れ家を引き払った。
これから演習地点に向かい帝国騎士団の第六騎士団と合流。一ヶ月間の演習の後にリザードマン掃討になる。
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