異世界に来たって楽じゃない

コウ

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第七十四話

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 朝の習慣。ご飯を食べて顔を洗い歯を磨き、身支度を整えたらサムナー騎士団長様への所に行って挨拶をする。
 
  
 教導団九日目。
   昨日の演習はみんなに悪い事をした。団長の二人が演習に顔を出せなかったのだから。でも、嬉しいのは両団長が居なくても演習が上手く行った事。協力してやって行く事で成長して行くのかもしれない。
 
 より良い成果としてはイザベル・サムナー準子爵様が教導団を受け入れてくれたこと。またリザードマン戦に全力を傾けてくれる事が決まった。これで強い帝国騎士団が出来れば魔王軍にも間に合うだろう。
 
 九日目も無事に演習が済んだが、僕とイザベル嬢が団長として仲良く話をしていると、何処からかバスターソードが二回ほど飛んで来たのは何故だろうか。
 
 教導団十日~十二日目。
   やはりトップ同士の仲が良いと演習としては全くもって問題ない。これが直ぐに戦力になるかと言われたら答えはノーだ。そんな簡単に強くなれたら誰も苦労はしない。
 
 「あぁぁ、ミカエルのが……     は、入って来る……」
 
 ここ何日間か、演習の始めは白百合団に任せきりだ。悪いとは思うが、朝から挨拶に行けば団長同士が濃密な挨拶を交わしている。
 
 「催淫剤が無くても乱れるなんて、イザベル様も好き者ですね」
 
 イザベル嬢には机に手をつかせ、後ろから攻められた時の対処法を教えてる。まあ、対処なんて出来ないけれど大きな声を出さない様にいつでも口に手を当てれる様にはしている。    ……対処法は僕の方か。
 
 「いぃぃ……、    あっぁっんんっ…」
 
 神速の拘束!    僕達のテントと違って薄い布切れで作られている準子爵様のテントは声が良く漏れる。初日の大きな喘ぎ声から、テントの周りにも人払いをしてもらってはいるのだけどね。
 
 「どうされました!?」
 
 人払いをしていても、一人だけ「うん」とは言わずテントの前で見張り、事があれば直ぐに入ってくるヤツが一人。仲間に入りたいのだろうか?
 
 「ミラベルか……    あっんんっっっ…    い、いまは……     あ……あぁぁは…あっ……    き、気にするでない……    あ…はぁぁ」
 
 僕が気にするですよ。このミラベルさんは帝都まで事の真相を聞きに行った人だけど、イザベル嬢と同じ鎧も着ているし直属の騎士か何かかな?    男っぽい顔立ちに短い黒髪、申し訳程度のスタイルが渋谷にいたら逆ナンされそうだ。
 
 ただ僕を見つめる瞳は増悪に満ちている。鋭い瞳に射ぬかれそうだが、だんだんと僕と合わせている目から下がって、見ている場所はイザベル嬢との結合部。
 
 イザベル嬢もスカートでは無くパンツだし、隠そうにも服が無い。見られていると恥ずかしいから隠してしまおう。
 
 「ああぁ!    あぁ…っ、ふか…ぁっいぃ…!」
 
 おっと、隠し過ぎたか……    もう少し出しておかないとイザベル嬢には大き過ぎたかな。まだ処女を失って間が無いのに激しいのは禁物だ。
 
 「うっっ、はぁっあぁぁ……」
 
 これで安心だと思ったら、イザベル嬢から深く刺されに来た。どうしろっていうの?    隠した方がいいのか?    隠さない方がいいのか?    入れた方がいいのか?    抜いた方がいいのか?    迷う……    迷うから両方。隠して出して、突き刺し抜いて。
 
 「あ…あ…あ!    うぅぅうぅ!    はぁぁうううぅ………あ……ぁああぁぁあっ」
 
 口を押さえても奏でる鳴き声。これが正解かな?    喜んでくれてるみたいだし、ミラベルさんも目が離れずに見ているみたいだし……
 
 「イザベル様、そろそろお時間です……」
 
 一瞬だが欲望の眼差しに変わったミラベルさんの瞳を僕は見逃さなかった。    ……見逃さなかったけれど、僕は何もしないからね。団長として、教導団として忙しいから。
 
 「す、すぐに……    ぁあぁあっ…    イ、イクぅ……    外で……    いや、中に……  はぁううぅ……」
 
 「すぐに行きますので外で待っていて下さい」
 
 
 テントを出るまで三十分程の時間を頂いた。
 
 
 
 
 教導団十三日目。
 今日はクリスティンさんと二人で帝都に戻る。皆は演習があるけれど、二人でゆっくりする為では無い。もちろん荷物の中にクリスティンさんのドレスを持って行くが、それが目的では無い。
 
 演習前から話をしていたヴィンセント・ラトランド侯爵に会いに行く為と、ハスハント商会のマノン・ギーユさんに会いに行くためだ。
 
 ラトランド侯爵には演習の最終日にアンテッドを出してもらい、人に近いものを実際に斬ってもらう実戦訓練を考えていた。ラトランド侯爵も協力してくれると言うので今日が挨拶と打合せ。
 
 マノンさんの方は簡単。リザードマン討伐の話が帝都で広まっているのか知らないが、マノンさんが横領をしても頼みたかった事が帝国の命令でやるなら、横領した金額を売り上げに戻して横領の事実を無かった事にする。
 
 黒刀は買い取ろう。魔剣だけど在庫で眠っていたのだから大した額で記載されていないだろう。もし高値だったら?    当分は中古のショートソードで我慢だ。
 
 今は馬車を操車しているが隣に座ったクリスティンさんは見ているだけでも絵になる。男としての優越感に浸れるくらいだ。
 
 もちろんクリスティンさんを連れて来たのは、ちゃんとした理由がある。クリスティンさん自身が今回の演習では役に立てる事が少ないからもあるけど、断じて二人きりで泊まる宿屋での事に期待した訳では無い。
 
 クリスティンさんにはラトランド侯爵との交渉に一緒に行ってもらう為、やっぱり美人がいれば話がスムーズに行く。クリスティンさんの事が気に入っていたし、流石に侯爵様も僕の前ではエロジジイにはならないだろうからね。
 
 朝から演習地を出て二時間くらい。回りには小さな森が点在するくらいで人気は無さそうし、後ろの荷台は演習地に荷物を置いて来たので空荷でスペースは十分だ。
 
 急ぐ事は無い、次くらいの森の側で休憩を兼ねて親睦を計ろうとした時に限って邪魔者がやって来る。
 
 「……今、十人ほど心臓を止めました。敵襲です」
 
 休憩をしようとしていた森の方を見ながらクリスティンさんは言った。分かってます、クリスティンさんには絶対に当たらない矢も僕の方には飛んで来るから。
 
 クリスティンさんが「十人ほど……」と言った辺りで飛んで来た矢は落としたが、周りの草影に潜んでいた見慣れぬ者達も剣を抜いて襲いかかってきた。
 
 「ダークエルフを怒らせる事なんてしましたっけ?    取り合えず話を聞き出したいので、出来るだけ殺さないで下さい」
 
 「……」
 
 「話を聞き出したいので出来るだけ殺さないで」
 
 「……」
 
 「話を……   勝手にやっていいですよ」
 
 ここまで話した時にはダークエルフは眼前に迫っていたがクリスティンさんが一睨みするだけで倒れて行った。
 
 僕の方はそうは行かない。完璧に出遅れたのを神速でカバーしダークエルフに対して峰打ちを繰り出す。流石、ダークエルフと言いたいが神速の前では敵ではなかった。
 
 峰打ちに時間がかかり戦闘時間は二十分にも達したが全てを沈黙させるのに怪我一つしなかったのは日頃の行いがいいからだろう。
 
 「終わりましたね。さっきの話しは覚えてますか」
 
 小さな期待を胸に聞いてみたら、大きな答えが帰って来た。
 
 「……出来るだけ殺さず」
 
 おぉ、聞いていてくれたのか!   良かった。これで話を聞くだけじゃなく、もう一つの考えていた事も叶いそうだ。
 
 もう一つの事。それはスパイを作ること。スパイなんてカッコいいものじゃなくても敵情視察とか、情報収集に雇いたいと思っていた。
 
 まあ、普通に雇えるほど、お金も無いので奴隷に出来ないかと。この世界に奴隷制度はある。詳しくは知らないけど契約すると絶対服従になるらしい。これなら危険な情報収集もやってもらえそうだ。
 
 以前、前世でアラナにやってもらった事があるけど、あんな思いはしたくないからね。僕を殺しに来た人達だし、奴隷にしてもいいかなって。
 
 生き残ったダークエルフは十四人。男が八人に女が六人。思いの外、女性が多いのには驚いた。クリスティンさんに情報収集の為に奴隷が欲しい事を告げ、ルフィナと奴隷の事を詳しく知っていそうなオリエッタを呼んで来て欲しいと言うと、とても不快な顔付きになった。
 
 クリスティンさんは奴隷に対して何か嫌な思い出でもあるのだろうか。でも危険な任務だし白百合団を離れての行動では絶対服従は欲しい。
 
 「……男はいらない」
 
 男、八人。その言葉を最後に心臓が吹き飛んだ。
 
 「へっ?」
 
 馬車を走らせ演習地に戻ってしまうクリスティンさん。思わず呆然としてしまうが、気を失ってるダークエルフはいいとして正気に戻った女のダークエルフは下半身を濡らしている人もいる。
 
 
 この状態で一人ぼっちにさせないで。
 

 
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