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第七十八話
しおりを挟む演習期間も残り少ない。リザードマンを倒すだけの力を手にいれないと。
教導団十四日目。
本日の演習は休みだからプリシラさん達もゆっくりしているかな。僕達はまだラトランド侯爵の家にいるが、朝からオリエッタが三角木馬の話を出して来たので「お前を三角木馬にかけるぞ」と言ったら何だか喜んでいたので、ちょっと使ってみたい気持ちを押さえ売却を心に決めた。
教導団十五日目。
昨日の夜には演習地に着いていた。ルフィナとオリエッタには残って仕事の続きをしてもらってる。念を七回くらい押して拷問は禁止にしたけど大丈夫だろうか。
演習地に戻る途中の森で見たクリスティンさんのドレス姿は綺麗だった。妖精だってクリスティンさんには敵わないよ。いつに無く、激しいクリスティンさんに鼓膜と心臓が破れるかと思った。
演習の方は…… プリシラさんの怒りの捌け口になった騎士の皆さんはお気の毒です。
教導団十六日目。
短期集中強制講座のお陰か腕前が上がって来ている。だが決定打に欠ける。後、一歩足りない感じがするのは白百合団を見慣れているせいなのか、殺す事を戸惑っている様に見える。
教導団十七日目。
イザベル嬢と昼食も一緒にしたが、演習について順調に言っていると言われ、昨日の感じた事を話すが「問題無い」で終わられてしまった。
残念ながらミラベルさんも同席していたので、食事をしただけで、同ベッドはしていない。相変わらずミラベルさんが僕に向ける目が怖い。癖になりそうだ。
教導団十八日目。
イザベル嬢を昼食に頂きまして…… もちろん許可はもらった。許可と言うより「やってこい!」も背中を強く叩かれた。プリシラさん達に第六騎士団の問題点をイザベル嬢が軽視している事を相談したら満場一致で「やってから話してこい!」と貴重なアドバイスを頂きイザベル嬢を頂きました。
問題点を一緒に解決しようで纏まり、ミラベルさんの怖い目は相変わらずだが、目線が下に向いてる様な気がする。
教導団十九日目。
イザベル準子爵様の気合いの入った指導により騎兵を含め重傷者が大量に出たが、ソフィアさんと魔法使い達の良い訓練にもなり万事問題無し。ケガが直ぐに治るなんて労災も降りないね。
輪番は一時停止、僕はイザベル嬢に夜も呼ばれ親睦を深めてましたので。
教導団二十日目。
明日のアンテッドを用意してくれるラトランド侯爵が来られたが、全くと言っていいぐらいエロさを隠しイザベル嬢の好感度を上げたのがムカつく。
どんな男か話してしまいたいが、男同士で話せない事もある。ただ、僕の目の前で白百合団に手を出したら黒刀が唸りをあげるぜ。
教導団二十一日目。
本日はラトランド侯爵が用意してくれるアンデッドを実戦形式で斬る。プリシラさんは参戦出来ないと言うと胸ぐらを捕まれた。何で?
「騎士を通常体制の五十で編成。五部隊と騎兵は後方に待機」
イザベル準子爵様の激が飛ぶ。ラトランド侯爵が用意してくれたアンテッドは二百。これを二つに別けて演習場で既に待機中。二百のアンテッドを一人で召喚するのも凄いがアンテッド自体の戦闘力もかなりのものだ。
今回はアンテッドの皆さんは噛ませ犬になってもらわないといけないので、武器は無し戦闘力も農民クラスまで落としてもらっている。
先ずはイザベル嬢の騎士、五十をアンテッド百に当ててどのくらい出来るか見てみると、さすが演習の賜物か騎士達の一方的な戦闘で進み五部隊の全ての戦闘が終わった時には、怪我人くらいで騎士達の顔に達成感が漂っていた。
当然の結果とも言えるけど問題はここから。アンテッドには騎士並の戦闘力に上げてもらい、武器はその辺りに落ちてる木の棒とか石とか。数は同数の百対百で。
これはダメだった。負けた訳ではないけど怪我人が多すぎる。本当の剣を持っていたら怪我どころでは済まない。
最後に騎士五十と重騎兵三十、軽騎兵五十、竜騎兵五十をアンテッド二百に攻撃を掛ける。騎士五十が二百に対して突撃。右翼から竜騎兵を援護に回し左翼には軽騎兵が弓を仕掛けた。
「イザベル様も出ますか。ここで指揮を取るのも指揮官としての務めですよ」
意地悪で言った訳じゃない。指揮官は指揮をするのが仕事だからね。役割を果たしてこそ機能的に動く事もある。
「私を誰だと思っている。イザベル・サムナーは武人ぞ。ここで出ずにいつ出ると言うのか」
その華奢な体で重い鎧を背負い大きな槍を持ち誰よりも先頭で戦わないといけないサムナー家の跡取り。
「はっ!」
馬に鞭を入れてサムナー家の重騎兵がイザベル嬢の後に続いて加速していく。
「貴族様も大変だな。お前もあんな風になるのか?」
家を背負って戦う女。ただの女でいられたら違った幸せもあったろうに。
「僕はそんな柄じゃないですよ」
背負う家も名前を無い。 ……白百合団の為ならなるのかな。それと、演習中の酒飲み禁止!
イザベル嬢率いる重騎兵は騎士と軽騎兵の間を狙ってアンテッドに突き進む。重騎兵の突進を止められるはずも無くバラバラに千切られていくアンテッド。
しかし、止まる! 半ばまで食い込んだ重騎兵が歩みを止めてしまった。接近戦に 持ち込まれて引きずり落とされる騎士達。
「やばい! 神そ……」
「まちなっ! 何をするつもりだい!」
見れば分かるだろ! 腕を離せ、イザベル嬢の所に行って助けないと。アンデッドどもに服を破られ慰みものになるイザベル嬢を思うと少し興奮する。
「助けるつもりなら止めな」
「何を言ってる! 早く助けないとヤバいぞ」
「イザベルだから助けるじゃないのかい」
たまに確信を付いてくるプリシラさんは野生の勘の持ち主だ。それとも女の勘かな。
「まさかソンナコトアリマセンヨ」
「そうかい。それなら行っても良かったんだけどね」
チッ! 外したか。それは冗談として。腕を離せ、本当にヤバくなってきてるぞ。イザベル嬢のいる辺りを見ると重騎兵が騎兵としての役割を果たしてない。
「甘やかしてどうする。あたい達は戦争してんだぞ、これで死ぬならそれまでだ」
イザベル嬢には役目がある。リザードマンを倒し教導団を作り帝国の軍事力を上げて来るべき魔王に対するする礎を作り上げてもらわないと。
「教導団なら他に幾らでも候補があるだろ。イザベルはいいヤツだが強いヤツじゃねえ」
教導団にとっては強く戦闘経験があり教える事が上手いのが必要だ。イザベル嬢はどれも低いが帝国騎士自体が低いんだ。
「安心しな、少しは盛り返しているみたいだぜ」
遠巻きに見ていた軽騎兵が弓を棄て剣を抜きアンテッドに向かって突撃を始めていた。騎士さえもイザベル嬢の重騎兵が止まった位置に向かって陣形を崩して進んでいる。
「あいつ、あれでも人望だけはあるようだな」
それは何となく分かった。重騎兵が止まった場所に騎士団が動いた時は何か大きな力が動いているかの様に感じたんだ。
「おまえにも、あれくらい人望があればなぁ……」
なっ! 失礼な! 僕はあんな男からの人望なんて要らんのですよ。可愛くて優しい娘からの人望だけで充分なんですよ。
「……終わりましたね」
騎士団の勝利で終わったが、イザベル嬢は投石に当たって落馬し重騎兵の進撃を止めた。ソフィアさんの回復魔法で問題は無いが心に残った傷はリザードマン戦までに癒えるかどうか……。
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