異世界に来たって楽じゃない

コウ

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第八十二話

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 イザベル嬢が率いる第六騎士団はリザードマンの集落を制圧し、帝都の水源の汚染を止めた英雄として帝都に凱旋する予定だ。
 
 
 行くときには見送られる事も無く、成功してみたら褒め称えるなんて都合のいい事で。失敗していたらどうなっていたんだか考えたくもないね。
 
 僕達は教導団として参戦していただけに凱旋パレードには参加できない。プリシラさんの「興味ねぇ」の一言で僕達はラトランド侯爵の屋敷に向かった。
 
 リザードマンの集落からラトランド侯爵の屋敷まで馬車の上で、ずっと、ずっ~と、グチグチ言われ続け「愛人にする為に助けた」とか「ダークエルフが好みだったのか」とか「殺しておけば良かった」とか、さすがの僕もキレそうになった所でクリスティンさんの新技「心臓圧縮」で動けなくなり後ろからプリシラさんに羽交い締めされる始末。
 
 まあ、プリシラさんの胸の感触を背中で味わえたのが良かったかな。出来れば向き合ってされたかった。そんなのが、ずっ~と続いていたんだ。
 
 屋敷の離れに行くとルフィナとオリエッタ、そして影であるダークエルフ姉妹が僕達を待っていた。ルフィナとオリエッタに会える事をこんなにも楽しみにしていた事はない。さあ早く僕の無実を晴らしておくれ。
 
 「団長の愛人にしたである」
 
 ……この娘は僕に何の恨みがあるのでしょう。確か少し前に忠誠と敬愛を誓うとか何とか言って無かったか。不死の女王を倒したのも僕の力があっての事だろう。
 
 「やっぱりな……」
 
 ゆっくりと僕の方を振り向くプリシラさん。この静けさが怖い。クリスティンさんは両手で心臓を掴む素振りを見せ、アラナは両腕のガントレットからガチンと剣を出し、ソフィアさんは美しいプラチナ色に輝いた。
 
 「団長は、どうやれば影が出来ると思いますか~」
 
 雰囲気にそぐわない優しく間延びした声。この状況を楽しんでいるようにしか思えない。
  
 「さ、さあ、どうすればいいんでしょうね」
 
 僕は黒刀を握りながら答えた。殺るなら殺るぞ。あばら骨は折れて口の中は傷だらけ、おまけに凄く疲れている。勝てる気が全くしない。
 
 「女が影になる時には擬似的に恋人状態に持って行くんです~」
 
 それがこの状況から僕を生かせる言葉なんですか!?    適当な事を言うとそのゴスロリの服を切り刻みますよ。
 
 「人が人に忠誠を誓うとすると何が必要か分かるであるか」
 
 「ルフィナ!    問答より結論を言え!」
 
 問答は必要だよ。この場合は特にね。その分、僕の命が長らえるから。
 
 「まったく……    簡単に言えば恋する女は男の為に何でもするって事である。それが人殺しでもである」
 
 つまり恋する女心を利用したって事か!    人道上、問題がありませんか。この世界ではありませんね。
 
 「それがどう言うこったぁ!」
 
 どうって?   言葉通りの意味だよ。下品に言えば人の弱味に漬け込んでいるような?   プリシラさん以外は理解したようで剣を納め輝きも消えていった。僕も黒刀から手を離した。
 
 「アホであるか。プリシラ、おぬしと同じ気持ちを持った者達を作ったのである」
 
 この後のプリシラさんは笑える。考えて、思い付き、恥ずかしさに顔を赤らめた。なんて分かりやすいんだろう。
 
 「と、兎に角だ。こいつらは影として使えるんだろうな」
 
 「それは問題ないですね~。みんな団長の為なら死ねると思います~」
 
 「ちっ!    勝手にやってろ。クリスティン、飲むぞ!」
 
 そんな強くダークエルフの皆さんに思われていると、逆がありそうで怖い。団長が裏切ったら殺します的な事を笑顔でしそう。こんな風なのをイメージしてなかったなぁ。もっとライトな、軽い感じのを考えていたのに。
 
 それと、お前は一人で飲んで来い。クリスティンさんは置いていけ!    プリシラさんの誘いにオリエッタとルフィナは残り、地獄の宴がこちらも始まる。
 
 「でも良くやったね。僕を殺しに来たくらいだったから大変だった……   痛てっ、なにっ!?」
 
 「完璧には出来てないのである。これは魔術と錬金術の合わせ技の様な物で最後のピースが必要なのである」
 
 「そうじゃなくて、今何を刺し……た……?」
 
 「即効性でいいである。六姉妹、後は明日まで楽しむのである」
 
 何を刺した?    オリエッタが横から何かを左腕に刺して、景色が歪み膝を着いた。六姉妹と僕を残して二人は部屋を出て行く。
 
 あれれぇ、おかしいぞぉ。凝縮したバスターソードパンツを破らんばかりに元気になってる。何時の間に大きくなったんだ。じゃあ、さっき刺されたのって……
 
 なんだか気が遠くなって来た。美しいダークエルフの六姉妹は服を脱いで抱き付いて来ている。おぉなんて幸せなんだ。バスターソードをフルに使って喰らい尽くしてやるぜ。
 
 
 
 今更ながらやられた。あのタイミングで催淫剤を射たれるなんて思いもしなかったよ。オリエッタは普段から持ち歩いているのか。完璧に不意をつかれた。
 
 今は、両手に花どころか周りはお花畑だ。六姉妹が裸で囲んでいるんだから。乳房と言う山に囲まれた盆地状態だね。うん、我ながらいい例えだ。その中央にそそり立つ黒い巨塔。今日も朝から調子がいい。
 
 オリエッタの催淫剤の欠点はほとんど記憶が無くなる事で昨日の六姉妹との「淫らな行為」の記憶が無い。これは問題だ。朝起きたら隣に裸の女性がいたって覚えていないんじゃナニの意味もない。
 
 周りは寝ている。愛されてる。しかも美女。朝からバスターソードを振るう事に何の躊躇いが必要であろうか!    いや、必要無い!
 
 朝食を頂こう。手近な一人に近づくと目の前をプラチナ色の光が通る。はい、はい手出し禁止ですね。第一、他人の家に穴を開けるな。第二に、どうやって壁越しに僕の場所が分かるんだよ。
 
 ドアを開けて入ってきたソフィアさんに「おはよう」の挨拶もそこそこに押し倒されてキスをされる。速攻で服を脱ぎ始めるソフィアさん。
 
 「ま、周りにいますよ」
 
 「起きたらバラバラです」
 
 朝食は柔らかいソフィアさん。
 
 
 
 事が終わり満足げに部屋を出ていくソフィアさん。そのタイミングを見計らってか次々に起き出す六姉妹。お前ら起きてたろ。それはそうとルフィナとオリエッタに尋問しないと。
 
 起き出した六姉妹の着替えをじっくりと見ながら一番早く終わった人にルフィナとオリエッタを呼びに行かせた。そう言えば名前をまだ聞いてなかった。
 
 「レイナです」 
 「アイナです」
   「シイナ」
   「ニイナ」
   「ミイナです。今、呼びに行ったのが「ユイナ」です」
 
 お父さん、お母さん、一人一人の個性が出るような名前を付けてください。最後の一文字以外は同じじゃないか。工夫しろよ、もう少し。
 
 影としての話は二人を尋問してからとして、影のリーダーだけは決めておこう。最初から決めていたけど、恐怖のあまり漏らしてしまいプリシラさんに蹴られてあばら骨を折ったレイナちゃんに決定。正直、誰がやってもいいんだ、みんな同じ顔で同じ背格好だしね。もしかしたらベットでは……
 
 「来たである」
 
 呼んでねぇよ。いや、呼んだ呼んだ。もう少し妄想時間が欲しかったが仕方がない。六姉妹を部屋から出して厳しい尋問が始まった。
 
 「これはどう言う事か正当な理由があれば聞かせて下さい」
 
 「簡単です~。団長が最後のピースなんです~」
 
 それじゃ分かんねぇって。何で六姉妹を夕食で頂いたかの理由を聞こう。せめて美味しかったかどうか知りたい。
 
 「団長と六姉妹は男と女の関係にならないといけないんです~。具体的に言うと体液の受け渡しです~」
 
 「男と女の体液ってバスターソードから出る、例の、白い……   のですか」
 
 「そうです~。交尾をすれば当然です~」
 
 「別に嫌って訳では無いですが体液だったら血でも唾だって良かったんじゃないですかね」
 
 「団長は馬鹿である。男と女の関係で血を与えるなど聞いた事もないである」
 
 てめぇは、人から血を抜き取って何を言ってやがる。それに馬鹿って言うヤツが馬鹿なんだからな、バーカ、バーカ。
 
 「それで六姉妹は完全に絶対服従の奴隷に……   影になったのですね」
 
 「間違いないです~。ただ定期的に体液の補充をしないと体が腐る様にルフィナちゃんがしたんです~」
 
 
 こいつが馬鹿だろ。何をしてくれてるんだよ。体が腐るってルフィナの趣味だろ絶対。お前ら二人とも朝食のデザートに決定。
 
 
 
 
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