異世界に来たって楽じゃない

コウ

文字の大きさ
84 / 292

第八十四話

しおりを挟む

 コアトテミテスの街。別名「魔石の街」
 
 
 帝都からコアトテミテスの街まで約一ヶ月。もちろん直接向かった訳じゃない、大きな街や小さな街、貧しい村に施しもしながらだった。
 
 僕は偉そうに手伝いもしなかったよ。荷物の出し入れも村人への施しもしないで馬車の中で美女を一人付けて、ふんぞり返っていたよ。
 
 あばら骨、骨折。鎖骨、粉砕。義手、出来てるのにくれない。誰か一人が付く二十四時間監視体制。
 
 僕はそんなに悪い事をしましたか。イザベル嬢は不可抗力からの発展、ダークエルフの六姉妹は重要な影としての仕事をしてもらってる。ミラベルさんの事は知られていない。
 
 僕はそんなに悪い事をしましたか。イザベル嬢との仲はプリシラさんのアドバイスもありましたよね。六姉妹はルフィナとオリエッタの説明前に愛人になってましたよね。ミラベルさんとの授業は楽しかった。
 
 馬車の中は座っているだけ。いつも操車してるだけにヒマ。もちろん隣に美女がいても、いちゃラブ禁止ですね。左腕を肩に回しただけで「左も折るか……」の一言でヘドバン並みに首を横に振り大人しくしていました。
 
 問題はここから、トイレだ!   小の方も最初は嫌だった。他人に掴まれるんだぞ!   いや、掴まれる事はあるのだけど場合が違う。頑なに拒否をしても生理現象には勝てずあえなく敗退。
 
 大の方?   こればかりは少ないプライドを守る為、「便秘になって死んでやる」と言うとアッサリ義手を貸してくれた。やっぱり汚いからね。もちろん終われば義手は強制回収。
 
 長くプライドがズタズタにされる旅路もコアトテミテスの街に着いた事で開放された。義手は以前のを直してくれたオリエッタにお礼を言い、折れた骨も自然治癒と悪魔の血のお陰で治り始めていた。
 
 「変な風に付いてねぇか、この骨」
 
 プリシラさんは僕の事を心配してソフィアさんを連れて診てくれている。やっぱり僕の事が心配なのね。
 
 「そうですか。自分で見ると良く分からないのですが……」
 
 「やっぱり変だよ。曲がって付いてやがる。添え木が不味かったか。ソフィア。治せるか?」
 
 「最初に戻せば真っ直ぐ治せますね」
 
 「そうか……」
 
 何をしたと思います?   また骨を折りやがった!   裸にされて、ちょっと恥ずかしいと顔を背けていた隙に鎖骨に手刀、脇腹に膝蹴りを入れたんですよ。
 
 「ぐへっ、うぐぐぐぅ」
 
 「これで「最初」に戻ったろ。ソフィア、治しておけ」
 
 「はい」
 
 鬼、悪魔、プリシラ!   次の輪番、覚悟しておけ。口には出せない事をやってやるからな。三角木馬はまだ売ってねぇぞ。でも曲がって付いた骨は太刀筋に関わる重要な事だ。今まで通りに戦えないのは足を引っ張る事になり兼ねない。
 
 きっとこれは愛だと自分に言い聞かせる。でも一応……
 
 「曲がった骨は折らないと真っ直ぐには治せないんですか?」
 
 「時間を掛ければ治せますよ」
 
 ……きっと、きっとこれは愛だと、思えるわけねぇ。
 
 
 コアトテミテスの街で一波乱があったが治れば団長、直ぐに次の仕事を探さないと。ハスハント商会から報酬を貰って僕は宿屋の部屋にみんなを集めた。
 
 「この街の近くにサンドリーヌ大森林があります。今回はこちらで魔石の収集をするのはどうでしょうか。いいお金になるそうです」
 
 「ロースファーに行くんじゃないッスか」
 
 「今、影の皆さんが情報収集してますので結果を聞いてから、ロースファーでいい仕事につきたいと思ってます。もしくはハルモニアですね」
 
 「あたいは構わねぇよ。他に斬る相手もいねぇしな」
 
 貴女は普通の友達を作るべきです。
 
 「私はここの寺院で医療のお手伝いをしたいのですが……」
 
 貴女は女神です。是非、手伝って来て下さい。
 
 「我は構わんである」
 
 お前を野放しにすると死人が生き返るので一緒に来い。
 
 「オリちゃんは団長の義手とプリちゃんの剣を作りたいです~。魔石が帝都より豊富です~」
 
 魔石を使うんですか。構いませんが変なのは止めてね。
 
 「……行く」
 
 はい。
 
 「……僕は、僕は故郷の村に帰りたいッス」
 
 「えっ?」
 
 「ここから半日も行かないで東に行くと僕の故郷のジビル村があるッス。村を出てから一度も帰って無いし、近くに来たから……」
 
 消え入れそうな声でうつ向いてしまったアラナ。いいじゃないか!   いいじゃないか!   親孝行しておいでよ。元気な姿を見せてやりなよ。でもね……
 
 「アラナは貴族だったり、何か変なものを召喚したりしないよね?」
 
 「へ、変な者とはなんであるか!?   ロッサ!」
 
 「イエス、マイ・ロード」
 
 出さなくていいから。それと僕の前では肉を付けてから来い!   
 
 「そんな事はしないッス。父さん。母さんは麦を育ててるッス」
 
 「そうか~。親孝行して来るんだよ。馬車を使っていいからね。これからギルドに行って仕事を探してきます。一週間ぐらい長いのを考えているのでアラナはその間、実家に帰っていいからね」
 
 「馬車を使われるなら、あたいらは歩きか?」
 
 「そうですね、馬車で行ける所までと考えていましたが健康の為に歩きましょう」
 
 「めんどうくせぇ、アラナが歩け」
 
 「いいんですかプリシラさん。最近、プリシラさんのお腹のミートがファットですよ」
 
 「?……   てめぇ!」
 
 意味を理解したようでなによりです。剣を抜くのは止めて下さい、狭いんだから。

 
 
 部屋の中で抜刀騒ぎがあったものの神速を使って逃げ出した僕の敵ではない。街中を歩くと帝都までとはいかないけれど街は活気に充ち溢れていた。
 
 人の往来も多く、やはり魔石狙いの冒険者の姿が目につく。将来の魔族との戦争において、この冒険者と傭兵の長所と短所が難しい。
 
 冒険者は個人戦闘において傭兵より上だ。これは冒険者の戦闘経験が傭兵より多く、個人能力が戦闘の勝敗に起因する。
 
 ならば戦争になったら冒険者を出せばいいかと言えばそうでもない。冒険者は集団戦闘が出来ない。少人数の戦闘で相手の数が少なければ問題ないが、総数は別として集団戦は殆どが同数で大集団がぶつかり合う。
 
 個人の勝手な行動で戦線を崩すと集中砲火や逃げ遅れがある。ヌーユで僕らがやったのがそうだ。
 
 戦争になったら傭兵が一番だ。と言うのも今回は当てはまらない。相手が魔物でトロールぐらいのなら殺れるが、獣やドラゴンみたいなのは戦った事がない。
 
 理想と言えば冒険者並みの戦闘能力、応用力と傭兵の集団戦闘能力がある人材があれば問題無いんだけど、そんな都合のいい人材は数が圧倒的に少ないよ。
 
 
 今回のサンドリーヌ大森林で二足歩行以外の魔物と殺って経験値を高めたいのが僕の隠れた目標だ。
 
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

処理中です...