異世界に来たって楽じゃない

コウ

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第八十六話

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 僕達、白百合団はコアトテミテスの街の北にあるサンドリーヌ大森林に魔石の収集に来た。
 
 僕達、白百合団はコアトテミテスの街の北にあるサンドリーヌ大森林に魔石の収集に来たんだよぉ。
 
 大事な事だから、お前ら復唱しろ!   決してチャラ男を斬りに来たんじゃ無いんだ!   
 
 
 「ミカエル、いい仕事を持って来てくれたじゃねぇか、初日から人斬りなんて幸先いいぜ」
 
 プリシラさん、近いです。顔に胸を近付けないで下さい、鎧が痛いです。
 
 「面白かったですね。殺さなくて良かったんですか」
 
 ビックリした~。急に声を掛けるの止めて下さい。さっきの低音ボイスがトラウマなんです。
 
 「まあまあ、である」
 
 口を拭け。血が付いてるんだよ。
 
 「……」
 
 今度から変顔の後はチューしようね。
 
 三人組は帰ってしまった。僕達のせいです。ダン隊長に三人の分も働く事を告げる為に離れていた?   避けられていた?   隊長の元に行こうとすると入れ替わりの様に四人組の冒険者が近付いてきた。
 
 その冒険者は女四人組。女の傭兵は珍しいけど冒険者では普通なんだろうか。リーダー格の女性はプリシラさんと似たような背格好に同じバスターソードを持っている。
 
 プリシラさんの様なグラマーと言うより筋肉質。パワーで押すタイプだ。つり目で意思の強そうな感じがするが筋肉アーマーがなければ合格ラインに入る。
 
 もう一人は僕の様にショートソードにスモールシールドの万能タイプ。違うのは弓を背負ってる事ぐらい。僕は弓を使った事は無いが遠距離攻撃には有効だ。今度、手取り足取り教えてもらいたい。
 
 細身の女性でリスの様にキョロキョロしている。目がパッチリと大きいので、影ながらリスちゃんと呼ぼう。他の二人はローブを頭から被って顔さえ見えなく背格好も分からない。きっと恥ずかしがり屋さんなんだろう。そのうち中身も見てみたいものだ。
 
 「ぐへっ、ぐぐぅ」
 
 「何を見てるのかな。ミカエル君」
 
 こいつ、ちょっと僕より背が高いからって後ろから腕を回して首を絞めるな!   落ちたらどうするんだよ。
 
 「挨拶とお詫びに行こうかと。三人組が帰ったのは僕らのせいですからね」
 
 「そうか~?」
 
 そうだ!   それ以外に何がある!   まず僕達がですね……   無理だ、説明は、また、いつか、永遠の先で……
 
 「プリシラさんも挨拶に行きませんか。女性の冒険者みたいですよ。話が合うかもしれません」
 
 「ゴリラみたいだな……」
 
 そう言うのは分かっていても口に出したらいけません。それと、プリシラさんとそうは変わりませ……
 
 「ぐへっ、これは何故ですか」
 
 「何となくな……   行こうぜ」
 
 僕はプリシラさんの肘鉄をくらい、ヨロヨロとプリシラさんの後に付いて行った。四人組の冒険者は「白薔薇団」と名乗り、リーダーはローズさん、リスちゃんの名前はリースさん、惜しかったね。
 
 ローブを被った二人の事は紹介されなかったが、仲が悪いのだろうか?    それとも男の僕を警戒してからか。
 
 僕達の名前、白百合団の名前は出すつもりは無かった。あくまで傭兵が冒険者の真似事をしているくらいで見られたかった。素人を装っていた方が話をいろいろ聞けるから。
 
 だが三人分の戦力を失って、中止されても困るし安心をしてもらう為にも名乗る事にした。案の定、白百合団の名前は「殲滅旅団」の二つ名で通っており出発前から質問攻めになってしまった。
 
 質問された事は殆ど「尾ひれ」が付いて誇張されている。そんなものだろう、その中でもアラナの「騎兵殺し」が有名みたいだった。みんなの前で派手にやっただけに知名度が上がってるみたいだ。ここにアラナを連れてきてあげたかったよ。
 
 話が一段落すると全員を集めて円陣を組み、自己紹介が始まる。この円陣はいい、会話の円陣だ。白百合団も同性である白薔薇団と仲良くなって欲しい。情報を交換し自分のレベルアップに役立ってくれたら魔石が一つも取れなくとも、僕としては大満足だ。
 
 やっと出発したのが正午近くになったが僕達は副隊長を先頭に隊列を組んだ。それで二番手は誰になるかで揉めた。プリシラさんは自分だと思い前にでると白薔薇のローズさんから待ったがかかる。お互い二番手を譲るつもりは無いようで、僕からそっとプリシラさんに耳打ちしてローズさんが二番手に決まった。団長って辛いね。
 
 僕も魔法使いの人に興味があった。相変わらずローブで顔が見えなく、自己紹介も声が小さくて聞こえなかった。戦場で前に出る魔法使いの殆どは「火」か「雷」がメインで、使える攻撃的な魔法使いだ。「土」はバックアップやゴーレム、「水」に関しては兵站で必要とされる水を作ってるのしか見たことがない。
 
 冒険者ならやっぱり「火」なんだろうか。「風」は人には効いても魔物には効くのだろうか。「雷」は?   「水」、「土」は?   興味が尽きないね。
 
 魔法を使える人をナンパ……   話が出来ないかと後ろを振り向くとソフィアさんが先に話し掛けていた。いい事だ。白百合団だと魔法はソフィアさんの他はルフィナだけ。ジャンルは違っても身に付く事はあるだろう。
 
 ルフィナも後で交ぜてもらえる様にソフィアさんに話しておこう。ルフィナはあんな風に見えるけどスーパーエリートの一人だ。家柄も良いし、ネクロマンサーの目標である不死の王を手に入れてる。まだまだ伸び白は大きい。
 
 改めて考えると白百合団は成長が出来るだろう。魔族との戦争に勝つために。
 
 
 
 「えっ!?   防音テントを持って来たんですか。あれは魔力を使うからマジックポーチに入れるのはは厳しいと……」
 
 一日目の移動はゴブリンが何匹かとコボルトが少し、二足歩行は魔石が無いから殺ってスルー。少しでも奥へと思ったが暗くなると危険と判断しキャップとなった。
 
 傭兵なら夜打ちもあるけど、冒険者は休む事を優先するんだね。休むとなったら火や水やテントが必要だが、それを運ぶのはマジックポーチを持っている魔法使いの仕事だ。
 
 防音テントは本来ならオリエッタが召喚するか馬車に積んでおく、ソフィアさんは回復に必要なポーション類をお願いしていたんだけど……
 
 「テントの邪魔なんで置いてきました」
 
 おぉ、マジか!?   そんなに輪番が大切か。回復役が回復しないで誰が回復してくれるの。
 
 
 「死ぬような味方はいませんから」
 
 理屈がわからん。
 
 
 
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