異世界に来たって楽じゃない

コウ

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第九十七話

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 コアトテミテスの朝は……   これはもういいや。
 
 
 「ソフィアさん起きて下さい。外が騒がしいようですよ」
 
 「うぅん、邪魔する様なら真っ二つです……」
 
 本気か!?    寝ぼけているのか。ソフィアさんならやり兼ねない。僕はソフィアさんに目覚めのキスをしてから着替えて外に出た。ドアはオリエッタに直してもらわないと。
 
 廊下に出るとアラナも心配していたようで外に出て来ていた。僕達は街の様子を見ようと外に出たが、他の人も少しは心配しようね。せめて起きようよ。
 
 街の中は朝早くから冒険者達が武装して慌ただしく歩いている。コアトテミテスでも祭りがあるとは知らなかった。今度こそ走るのだといいな、神速を活かしてアラナから祝福のキスをもらいたい。
 
 受け付け場所を探す為に冒険者の一人を捕まえたら以外な答えが帰ってきた。
 
 「おまえ、何も知らないのか!   魔物が攻めてくるんだよ!」
 
 なんだそんな事か。僕達は北に用があるから皆さんの邪魔にならないよう先に進もう。この街は冒険者が腐るほどいるんだから魔物の二十や三十、問題ないだろ。だけど僕はアラナの不安な表情に気付いていなかった。
 
 「魔物が攻めてくるらしいですよ」
 
 僕は宿屋の食堂で皆で朝御飯を食べながら話した。予想通りの反応で関心が低い。これがロースファーが攻めてくるとか言ったら「やる気」を出してくれるんだろうけどね。
 
 「それで……」
 
 「それだけです。僕達には関係無いですし、冒険者も多いですから問題ないでしょ」
 
 「でも何で魔物が攻めてくるなんて分かったんですかね」
 
 言われてみればそうだ。魔物が宣戦布告や戦時条約を結ぶ訳がない。関心が低いのは僕もだったか。
 
 「そりゃあ、オーガが冒険者の首を北門に持ってきたからだよ」
 
 話に割って入って来たのは宿屋のオヤジだった。オヤジさんが言うには……   話が長々しいので要約すると、さっきの通り。オーガが冒険者の首を持って来たくらいで攻めてくるとか大袈裟な。
 
 確かに、わざわざ首を持ってくる必要なんてないしね。オーガに殺られたらエサになるだけだから骨しか残らないよ。それが首だけを持って来たから攻めてくるなんて話になってるのか。飛躍し過ぎじゃないのかな。
 
 「変だな…」
 
 そう、何かしっくり来ない。さすがはプリシラさんと言う事か。
 
 「オヤジ!   これ腐ってねぇか。変な味がするぞ」
 
 だよね。こんなオチになるのは分かってたんだよ。少しは期待したっていいだろ。
 
 「変ですね」
 
 ソフィアさんの方が本題だな。プリシラさんはオヤジと喧嘩でもしてろ。僕達は現状に付いて話し合うから。
 
 オーガが冒険者の首を持って来た。これをどう見ればいいのか。これを戦争の始まり、宣戦布告と見なすのか。見なすのならコアトテミテスは戦争の準備に入る。牛追い祭りから帰って来た者や魔石収集に行こうとしていた冒険者は防衛の為の準備をするだろう。
 
 準備をするのが分かっていて冒険者の首を持って来たのか?   それは愚策だろ。やるなら牛追い祭りの日に奇襲をかければ冒険者も少なくて済んだはずだ。
 
 「囮ですかね。コアトテミテスに人を集めておいて他を攻める」
 
 それも有りだろうけどコアトテミテスはロースファーとの交通の要所だ。ここ以上に戦略的に攻める意味がある所が付近にあるとも思えない。
 
 ……訳が分からん。オーガのする事に意味なんてあるのだろうか。食べ残しを城門前に捨てたとか、そんな風に考えられたらいいんだけど。
 
 「不味かったから、食わなかったんじゃねえか」
 
 ヤバい、プリシラさんと似たような考えをしてたよ。でも本当に理由が分からない。情報が足りなさ過ぎだね。
 
 「それで僕達は何をするッスか」
 
 「何も、何もしないですよ。魔石収集のお金は二日後なので、それを待ってからですね出発は」
 
 「コアトテミテスは囮の可能性もあるッスよね」
 
 「こっちが囮だな。わざわざ敵を集めて攻めるなんてしねぇだろ」
 
 やっと話に加わったか、この暴食娘が。確かに、ここまであからさまだと囮に見えなくもない。ただのゴミ捨ての場所に城門を選ぶ理由も無い。
 
 「本格的な進行として、囮だった場合はコアトテミテスには攻めずに近隣の街や村を攻めるでしょう。それを追うように散った冒険者達を各個撃破ですかね。領軍が出てきた場合は無人の村を通って補給部隊を殲滅。コアトテミテスを兵糧攻めにしますね、僕なら」
 
 「囮では無かったらどうなるのです~」
 
 「そうなると「攻めない」と言うのも選択肢に入ります。ただの威圧行動だけだったのかもしれませんね。それとも他に理由があるのかも」
 
 「面倒くせぇ、来たらぶっ殺せばいいんだよ」
 
 うん、分かりやすい。その通りなんだけど考えて行動しようね。手を滑らせたりしないように。とにかく僕達は報酬を貰うまでは動けないから冒険者に頑張ってもらわないと。
 
 「もし囮ならジビル村はどうなるッスか、僕の村は……」
 
 襲われる。コアトテミテスの街に近いだけに無事では済まないだろう。猫の亜人はアラナを見るとそれなりに強いだろうけど壊滅は免れない。
 
 「団長、白百合団を連れてジビル村に行って欲しいッス。白百合団がいれば安心出来るッス」
 
 そうだな。ここにいても冒険者がいるから大丈夫だと思うけど集団戦が出来るのだろうか。相手の数も予測も立てられないから。
 
 「待ちな、アラナ。今、白百合団って言ったろ。あたいらは傭兵だ。金をもらって戦争してるんだ。団を動かしたかったら金を出しな」
 
 おっと、予想外の言葉を耳にした。まさかお金の無心をするとはね。相変わらずプリシラさんは言葉が足りない。
 
 「お金ならあるッス。村に帰った時に両親にあげちゃった分も出すッス」
 
 アラナは懐からドサリとお金の入ったポーチをテーブルに出した。クソッ!   僕よりお金持ちじゃないか、今度借りよう。
 
 「こんなんじゃ足りねえよ。白百合団がいくらで雇われてるか知らない訳じゃねぇだろ」
 
 アラナはうつ向いてしまった。テーブルに置かれたお金は大金ではあるが白百合団を雇うには全然足りてない。そろそろ助け船を出しますか。
 
 「プリシラさん、ジビル村でもらった魔石はどうしました。あれもかなりの大金になると思いますよ」
 
 「あんなもんは売っちまった。もう酒代に変わっちまってるよ」
 
 「……嘘です。アラナの両親にあげてました」
 
 「クリスティンてめぇ……」
 
 「アラナ以外はみんな知ってますよ。魔石もかなりの高額になると思うのですが、それをあげてしまう人がこんな事を言うはずがないと」
 
 「くっ!」
 
 「もう一つ、付け加えましょう。アラナも分かっていると思いますが、農民が戦えるはずがない。戦えないのなら逃げればいい、プリシラさんからもらった魔石をお金にして」
 
 「相変わらず口下手なのである」
 
 「下手、下手です~」
 
 「アラナ、プリシラさんは両親に逃げて欲しいと思っているのよ。戦場になるかもしれないわ。もしここに百万ゴールドがあってもプリシラさんは受け取らないわ、そのお金が有ったら逃げるのに使えと」
 
 クソッ!   また美味しい所をソフィアさんに持っていかれた!   このアッサリ、バッサリめ!
 それが本音だ。プリシラさんは不器用だ。損をして生きていくタイプなんだろうなぁ。だけど僕はそんなプリシラさんに付き合いますよ。
 
 「アラナ、僕達は傭兵だ。お金をもらって戦争をしている。だからここから一ゴールドで僕はアラナに雇われよう」
 
 僕はアラナの出したポーチから一ゴールドを出した。安い金だ、とても命を掛けれる額じゃない。
 
 重い金だ、命を掛けるのに悪くない。
 
 ソフィアさんが手を出す。僕は指で弾いて一ゴールドを投げる。クリスティンさんにもルフィナもオリエッタにも。
 
 「プリシラさんはどうしますか」
 
 少し意地悪に聞いてみた。
 
 「あたいは二ゴールドだ!   お前より安くは請けねぇぜ」
 
 
 
 人を指差すな!   まったく、この馬鹿で愛すべき高給取りめ。
 
 
 
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