異世界に来たって楽じゃない

コウ

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第九十八話

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 団を二つに分ける。これはアラナの意向でもあるけど、ジビル村の出身者でもある猫の亜人がコアトテミテスで働いているからだそうだ。本当にアラナはいい子だ。どっかの愛すべき高給取りに教えてあげたい。
 
 
 だが、ありがたい。二日後には報酬の受け渡しもあるし、影さんの問題もあるからね。恐らく続々と影さんが帰って戦争どころじゃなくなるのは、雇い主に悪いから何とか頑張って両立させないと。
 
 「アラナ、プリシラさんソフィアさんとルフィナはジビル村に向かって下さい。僕とクリスティンさんとオリエッタは残ります」
 
 「こっちに四人も貰っちまっていいのか」
 
 「構いません。本当なら僕一人でもいいのですが、帝国男爵としての立場もあるので助かります。ジビル村には念のため長期戦を覚悟の準備で出て下さい」
 
 「長期戦になると思ってるのか?」
 
 「念のためです。ジビル村が攻められたらコアトテミテスへの兵糧攻めを考えて後方の街に村人を率いて撤退して下さい。それに攻めてこない選択肢も考慮に入れておいて下さい」
 
 今回はどうも勝手が分からない。やっぱり人間と魔物の思考はかなり違っているのだろう。戦争のやり方も違うとしたら冒険者に対応出来るかな。魔物の戦闘力をそのままに集団戦が出来るようになったら、それはかなりの驚異になる。
 
 「こんな時の戦時団則どうなるんだ」
 
 やっぱり気になるのか。これからも長期に渡って団が二分される事があるだろういから、先に決めておいた方がいいだろう。
 
 「輪番は停止、戦時報酬は自己報告のスコアでどうですか」
 
 「ゴブリンとオーガが同じってのはねぇだろ。それにトロールだって出てくるかもしれねぇ」
 
 確かにゴブリンとトロールが同じなら、ゴブリンばかり倒して戦時報酬が跳ね上がるのは問題だ。それに黒炎竜もいるし他にもドラゴンとかも出るのだろうか。
 
 「オーガを一として大きさでスコアの対象にするのはどうですか。オーガ一匹とゴブリン五匹くらいが同じでどうでしょうか」
 
 「……まぁ、いいか。それで手を打つぜ」
 
 何で偉そうなんだよ。さっさとジビル村に行って敵を殲滅してこいよ。自慢のハルバートを振るってこい。
 
 僕達は朝食会議を終えるとジビル村へ行くアラナ達と別れる。ただプリシラさんから「少し先にもらっておくぜ」と胸ぐらを捕まれ引き寄せ唇を奪われた。何が「先」なんだか理解出来ん。それと皆さん、プリシラさんの後ろに列を作らないで。
 
 僕とクリスティンさんとオリエッタはこの街が魔物に対してどのような対処を取るのか知っておかないといけない。恐らく領主が直接指揮を執るのか冒険者ギルト、傭兵ギルトに指揮を任せるかどちらかだろう。
 
 クリスティンさんを領主の所へ、オリエッタをギルトに向かわせて、僕は朝からデートの予定が入っている。これは決して遊びではない。影と言う存在を存続させる為に仕方が無い役割分担だ。
 
 プリシラさんとソフィアさんをジビルの村に行かせたのは、戦力バランスを考えた結果で他意はない。比較的、大人しい二人を残したのも他意はない。
 
 デートと言ってもコアトテミテスの街が騒がしくなってる今、静かに出来る所も少なく見世物小屋も閉店、僕達は買い物と食事をするくらいで、いつの間にか影さんが予約を取った宿に行くくらいだ。
 
 プレゼントは高くもないブレスレットを探してみた。危険に身合った物を買ってあげたいと思うが僕自身の懐具合が悪い。
 
 でも六姉妹全てに違ったプレゼントをしたい。同じのだと差が出るだろうし、プレゼントによって名前が分かるから……    ブレスレットはニイナちゃんだね。
 
 だって仕方が無いんだよぉ。見た目は同じ顔をしていて、髪型も体型も似た様な物で見分けはつかない、名前を呼ぶ度に脱がしてしまうのもマズイよね。
 ちなみにニイナちゃんには左胸の下の所に黒子が二つ、並んで付いていた。
 
 騒がしい街の中で、宿屋にいる僕達は回りの事などお構い無しだった。それだけにもう一人の影さんが部屋の中に立って、気が付かなかったのはニイナちゃんと激しく愛し合ったからか。
 
 「はぁぁ、良き人……    気持ち……いいです…」
 
 僕の絶え間無い突き刺しに、ニイナの声は同じ事を繰り返していた。それでは面白くないと、僕のエス気がムクムクと沸き上がり、ペティナイフからショートソードに変えようと思った時にニイナの目線が僕の肩越しに移った。
 
 一瞬、敵かと思った僕の背中に柔らかい二つの膨らみが当たる。振り替えると目の前に同じ顔のダークエルフがこちらを向いていた。
 
 「良き人……    私にもください……」
 
 モノには順番があるのだが、いきなり抱き付かれてニイナの体液の補充は終わった……    もう少し頑張りたかったが、もう一人にも頑張らないと身体が腐る。
 
 ズルリと抜け落ちた相棒に覇気は無く、「実るほどに頭を下げる稲穂かな」を地で行っているが、僕には悪魔の血が流れているんだ。■■■■、凝縮!
 
 もう一人の影の前で、そそり立つ相棒は稲穂を刈り取られた状態から、またまた実り豊かな稲穂に変わっていった。
 
 「良き人……」
 
 言葉はいらない、目線も僕では無く稲穂の方へ。少し乱暴に押し倒し秘部にあてがい一気に差し込めばスルリと入る。
 
 「あぁっ!    あ…ぁあ!はぁ…っん…ああ…」
 
 一回、入れただけで悶え狂うダークエルフ。これからなのに、ショートソードから始めるのは不味かったか。    ……いいや、気にするもんか。魔力を流さなければ起たないんだし。
 
 「身が狂うほど、中に出してやるからな」
 
 僕の声は刺しただけの喘ぎ声で、聞こえてい無いだろうね。これも仕事のうちだと、自分に言い聞かせ、三回出し入れして仕事を忘れて楽しむ方向に変わった。
 
 
 楽しみも終われば賢者の時間。     ……もう一回ヤってからにしようか。外は慌ただしいが、魔物が来た様子でもないし、時間は無いけど作るものだ。
 
 「よ、良き人……     もう壊れてしまいそうです……」
 
 このくらいで弱音を吐くなんて、僕の影としての重要性が分かっているのだろうか?    いや、分かってない!    これから身体の隅々まで分からせないと!
 
 「大丈夫、大丈夫」
 
 何が大丈夫なんだか、自分で言ってても分からないが、「大丈夫」のボケに突っ込みが無いなら、身を呈して突っ込みを入れて……
 
 「あぁあ!    ぁ…っんんん……    あっあぁぁ…」
 
 一人突っ込み、一人ボケ。いや、この場合は突っ込む先は二つか。突っ込み相棒は一人、もう一本あったなら……    今日の僕は疲れているようだ。
 

 遅れてやって来た影の名前はユイナちゃん。二人で呼び合っていたから間違いない。見た目は……    同じたね。顔も髪型も体型も。ご両親は本当に区別が出来ていたのか聞いてみたい。
 
 まさか、僕のように服の中身で判断しようとする事はあるまい。
 まさか、僕のようにベッドでの喘ぎ声で判断する事はあるまい。
 
 僕はプレゼントと着けている場所で判断しようかと。ユイナちゃんにもブレスレット、ただしニイナちゃんとは逆の左手に着けてね。
 
 これで判断が出来るのだろうか。気分で逆の手に付けられたら分からなくなってしまう。ちなみにユイナちゃんは左の脇の下の近くに黒子が一つ。
 
 ユイナちゃんからもロースファーの有意義な情報を聞けて大満足。これで他の影さんから、ハルモニアからの情報を聞ければ、少なくとも行き先は決められるかな。
 
 二人と別れた時は夕方を過ぎていたが、別れる時に涙を流された。奴隷にしている罪悪感が少し沸き上がるけど、ずっと奴隷にするつもりはないんだ。その時が来たら解放したい、無傷で腐らせずに。
 
 宿屋に戻るとクリスティンさんとオリエッタは先に戻っていて装備さえ整えていた。どうやら冒険者ギルトから指揮官が出る事が決まったらしい。ここの領主はいい人そうだけど軍事には疎いのか。僕達の総兵力は三百程に達している。魔物が相手ならこれくらいで大丈夫なのか?
 
 オリエッタがギルトで白百合団として今回の戦いに参加する事を伝えると快く参加を認めてくれた。僕達の参加人数は三人、完全歩合で西門の担当になった。本当なら派手な戦闘が出来る森側の北門が良かったのだけど、出遅れた分は仕方か無いかな。
 
 僕達は夕食を軽く取ってから西門に向かった、水や保存食を持って。魔物が来るなら夜だろう。夜行性の物もいるし夜でも目が見える物もいるからね。今日、来るとは限らない。本当に来るとも限らない。
 
 朝に首を置いて、夜には戦闘準備を整えている僕達の対応を見ているだけかもしれない。そこまで頭が回る魔物がいるのだろうか。
 
 西門に着くとそこには三十人の冒険者がいた。弓で武装しているのがほとんどだったが、僕達は弓など持ってない。オリエッタにも装甲服は着させていない。門が打ち破られるか、門から出るまで出番は無さそうだ。
 
 最近、寝不足。寝てはいるけど、寝てはいない今日この頃、睡眠時間の減少は集中力の低下に繋がる重要な事なので僕は城壁の上で座りながらでも寝ていよう。
 
 まるでやる気の無さそうに見えるのが、魔物が来たら石の一つでも投げてやる。問題は両手の花に埋もれて寝るくらいか。
 
 団長権限としてこれくらいは許して欲しい。一応、白百合団の名前で雇われているし、文句を言ってくる人は近付いただけで心臓麻痺だ。
 
 
 団長ってヤる事が多いのよ、まったく……
 
 
 
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