異世界に来たって楽じゃない

コウ

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第百五十五話

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 「あれはヤバい」
 
 グリフォンから投下された二十体のサイクロプスは土煙を上げ滑る様に落下してきた。強襲なんて洒落た事をしてくれるじゃねえか!  
 
 
 「プリシラ!    壁はいい!   僕とサイクロプスを狙うぞ。他の者は壁を守れ!」
 
 「スコアは高いんだろうな!」
 
 夜襲で火だるまになり掛けたプリシラさんは、張り切って黄金のライカンスロープになった。魔法を使えるサイクロプス相手に普通の人間が十人いても相手にならない。
 
 勝つならばサイクロプスの魔法を無効化するくらいのパワーがなければダメだ。プリシラさんなら心配はいらない。今の僕ならモード・スリーまで出せるし、超振動のハルバートがあれば勝負になるはずだ。
 
 空挺降下がされた第三軍の所に行けば、数多くの兵隊の死体が大きな力で破壊されたように横たわっていた。残された第三軍は壁の上で戦っている者ばかり。
 
 「プリシラさん油断してローストされないでね」
 
 「てめえ、誰に言ってやがる!    うりゃ!」
 
 背中から斬りかかったプリシラさんのハルバートに胴体から真っ二つにされたサイクロプスは血の噴水を上げて倒れて行った。
 
 「よいしょっと、とっとっと……」
 
 カッコ悪い言い方だが、モード・スリーで振り回したらハルバートの重さと速さに体が付いていかない。振り回しているより振り回されているくらいだ。
 
 だけど安定の神速、使えるモード・スリー。サイクロプスの防衛魔法も無いと同じ、味方がいなければ振り回すだけで血飛沫が舞う。
 
 慌てたのは一回だけ。また、プリシラさんがローストにされた時はビビった。昨日の夜に見て平気だったのは知ってはいたが、目の前で松明の様に燃え上がるプリシラさんは、燃えたままサイクロプスを斬っていた。
 
 「プリシラさん大丈夫ですか!?」
 
 「うるせえ!    てめえがローストとか言うからなっちまったじゃねえか!    服が無くなっちまったぞ。弁償しろ!」
 
 それはサイクロプスに言ってくれよ。それに油断しているから燃やされちゃったんだろ。黄金に輝く毛の方は無事だけど、服なんてボロボロ。辛うじて革鎧が着いているくらい。    ……いや、待て。今、人型に戻れば着エロか。
 
 「プリシラさん下がって。後は僕が殺りますから」
 
 「スコアはやらねえよ」
 
 スコアなんかくれてやるよ。僕が心配してるのはそれ以上、服が破け革鎧が取れないかなんだよ。下がって人型に戻って休んでくれよ。今ならちょうど良いのに……
 
 僕は振るった、体より大きく重いハルバートを。モード・スリーと僕の強い信念は伊達じゃ無いんだ。絶対に鎧姿の着エロを見てやるぞ。
 
 サイクロプスによる強襲空挺は第三軍を壊滅させる事が出来たが、僕の鬼気迫る戦いで全滅した。プリシラさんが怒るほどスコアを独り占めしたけれど、僕は満足だ。
 
 人型に戻ったプリシラさんは裸鎧姿と言ってもいいくらいの着エロに、僕は魅了される。出来ればもう少しだけ鎧が焼けていれば……
 
 「壁がやべえな。あたいらも昇るか?    ……何を見てるんだ?    壁を見てみろ」
 
 嫌だよ。プリシラさんを見ていたいの。こんなチャンスは滅多にあるものじゃない。焼け焦げた服の隙間から見える肌。溶けた革鎧が大事な所をもう少して見せそうで見えないギリギリ。これが良いんじゃないか。サイクロプスさん、ありがとう。
 
 「僕は壁に上がります。プリシラさんは何か服を着けた方が……」
 
 「かまわねえよ。さっさと上がって殺っちまおうぜ」
 
 そう言うのを待たず、人型からライカンスロープに変わって城壁に登ってしまった。もう少し見せてくれてもいいのに。オーガさん、皆殺す。
 
 プリシラさんの後を追って城壁に登る前に、ハルバートを置いて落ちていたバスターソードを拾う。さすがに狭い城壁の上でハルバートを振るう気にはなれないと遠慮がちな僕をよそに、プリシラさんは味方ごと斬っているのは目をつむろう。
 
 城壁の上でバスターソードを振るっている時になって初めて気がついた。サンドドラゴンが二頭とも倒れている事に。
 
 オリエッタが撃った訳じゃない。これでも戦いながらレールガンの銃声に気を付けていたのが、一度も鳴っていなかった。
 
 サンドドラゴンは何かこう、大きなヘビにでも絞め殺され様に頭や手足が向いてはダメな方向を向いていた。こんな事が出来るのはルフィナのウネウネ大木ぐらいなものだ。
 
 あいつは、僕を捕まえる為に街中でウネウネ大木を出していたけど、捕まっていたらサンドドラゴンの様になるのか……    
 
 
 
 シュレイアシュバルツの街は守りきれそうだ。巨人もサンドドラゴンも失い、奥の手だったかサイクロプスの強襲空挺も全滅させた。
 
 ルフィナは城壁の上から魔法を撃ちまくり敵が可愛そうになるくらい。ソフィアさんも負けじとレーザーを放てば炎の回廊が出来上がる。
 
 オリエッタも砲台から降りてきてオーガやトロールを相手にレールガンを撃ちまくっているが、一発五百ゴールドを忘れるなよ!    費用対効果が割りに合わない。
 
 
 「……終わりましたね」
 
 「うおっ!    いつから居ましたかクリスティンさん!?    今、ちょっと手が離せないのでドアを閉めてもらっていいですか」
 
 壊滅的な第三軍は僕とプリシラさんの活躍でオーガを追い払う事が出来た。まだ残っている残党が中央から東にかけて居たが、僕は尿意を我慢出来ずに近くの無人の民家のトイレを借りていた。
 
 急いでいたので腰の革鎧を外すのに手間取りドアを開けっぱなしにしていたのはマナー違反だけど、後ろに立たれると出るものも引っ込む。
 
 「……もう中央からの敵も退却を始めました。    ……私たちの勝利です」
 
 「うん、わかりました。    ……ドアを閉めてもらえますか。報告は後で」
 
 すっと、ドアの閉める音が聞こえる。僕がドアを開けっぱなしにしたのが悪いけど、もう少しタイミングを考えて話してくれてもいいのに。
 
 「……手伝いましょうか」
 
 「うおっ!    まだ居たんですか。中に入らないで下さい」
 
 「……大丈夫です。ドアには鍵もかけましたから」
 
 いや、いや、そんな問題じゃないんだよ。出なくなるんだよ僕の尿意が。なんでこんな狭いトイレに二人きりにならないといけないか。
 
 「……お預かりしていた遊撃隊ですが半数が死にました。    ……申し訳ありません」
 
 クリスティンさんは僕にもたれるように背中に寄り添ってきた。遊撃隊の半分が死んだ。その中で何人かと話した事もある。アンハイムから一緒に戦ってきた者もいる。親しい訳でもないが、昨日まで話していた相手がもう居ないと思うと……
 
 「クリスティンさんのせいでは有りませんよ。みんな納得づくで戦っているのですから。この戦、負けたらお仕舞いです」
 
 ふむ、局部を出しながら話す話じゃないね。なんだか出る気がしないから引っ込めようかな。
 
 「……半数が死にました。    ……半数しか死ななかったんです。    ……全滅してくれたらどれほど良かったか」
 
 そっちかぁ。そっちの話になるのか。全滅なんてしたら大変だよ。本当にクリスティンさんは「雄」が嫌いなんだね。僕もその雄に入らないように気を付けないと。
 
 僕は振り返って    ……もちろん局部をしまってから振り返ってクリスティンさんを抱き締めた。
 
 「クリスティンさん、みんなクリスティンさんを想った勇敢な戦士です。今は鎮魂の灯火をあげましょう」
 
 僕は訳の分からない事をしれっと言って、そっとドアの鍵を開け、抱き合っているクリスティンさんを外へ促してから、ドアを閉め鍵を掛けた。やっぱり出すものは出さないと。
 
 やっと独りでゆっくり出来るぞと、思って局部を出して二秒後には、前の壁に頭をぶつける程に心臓が握り潰される感覚が僕を襲う。
 
 「ぐはっ!」
 
 神速の心臓マッサージで対抗したけれど、上に集中すると下の方が疎かになってしまう。ダメだ。こんなんじゃ出るものも出ない。僕は諦めて局部を仕舞い込みトイレを出た。
 
 「……仲間が    ……仲間がみんな死んで……」
 
 あんた、さっき、全滅しろって、言ってたやん。
 
 「戦争ですから……    負けられない戦争ですから」
 
 僕はもう一度クリスティンさんを抱き締めた。肩が震えている、弱い女を演出しているのか!?    早く心臓麻痺を解いてくれよ。今、モード・ツーまでマッサージの速さが上がったぞ。
 
 これはさすがにダメだね。もう言葉はいらない、ただ実行するのみ。僕はクリスティンさんの手を取りゆっくりと二階へ上がった。
 
 最近のクリスティンさんはパワーアップかレベルアップでもしたのだろうか。益々、心臓麻痺に磨きがかかっているようで、僕の神速の心臓マッサージもモード・ツーまで出すようになってきた。
 
 クリスティンさんの力は外から見ても分からない。ハルバートの超振動でも無く、大きな魔法の要に見える訳でも無く、誰がやったとも分からない力だ。
 
 その分、受けた人にしか分からない静かで凶悪な力。サンドドラゴンだって殺せる力に生き残れるのは僕くらいなものだ。
 
 いつか心臓麻痺で死ぬような気がする。神速もモード・スリーまで出せる様になったけど、クリスティンさんがもっとレベルアップしたらどうなる。
 
 常に向上心を持って努力していかないと、いつか殺られる。    ……殺られても誰かが助けてくれるのかな?    プリシラさんのカカト落としの心臓マッサージとかは嫌だけど。
 
 僕は「死ぬ死ぬ詐欺」の常習犯みたいだし、殺されかけて助かるのか……    でも、アンテッドにされてまで生きたくはないけれどね。
 
 僕ははクリスティンさんをベットに押し倒し服を脱ぐ。今日は着たり脱いだり忙しい日だ。別に構わないけどね、目の前にいるのがクリスティンさんなら。
 
 
 僕は一時の安息の時をクリスティンさんと過ごす。心臓マッサージ神速で、下半身はモード・ツーで。
 
 
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