異世界に来たって楽じゃない

コウ

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第百九十二話

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 逃げる。交わす。避ける。千の言葉より一つの行動。
 
 
 僕はアンネリーゼ嬢を抱いたまま、ソフィアさんの胸ぐらを掴んで寄せ、強引にキスをする。最初は抵抗もしたがソフィアさんは甘く、とろける様に僕に身を任せた。
 
 怖え~。何個かの光の玉からは針のレーザーが飛び出てるのが見える。さすがに囲まれてからの数万の針は避けられません。
 
 光の玉自体が熱を発するから、緊張からの汗か熱量からの汗か、僕はシャワーを浴びたくなる程の汗をかく。その時はソフィアさんに洗ってもらう。もちろん二度洗いで。 
 
 十秒か十分か、ソフィアさんから力が抜けるまでキスをしてエイト・ライトニング・ボールは消え、部屋は元にあった状態に戻った。
 
 所々、焼けてはいたがレーザーを撃たれるよりかはいい。それに僕の家じゃないしね。ユーマバシャールは光の玉の餌食になって死んでくれていいのに残念だ。
 
 「アンネリーゼ様、お話があります」
 
 僕はぐったりともたれ掛かったソフィアさんの腰に手を廻し、反対の手はアンネリーゼ嬢の腰に手を回した。羨ましいと思ったヤツはレーザーの所から代わってやるから手をあげろ。
 
 ソフィアさんを運ぶのはそれなりに重いが……    軽くはないが抱き締める様にしてアンネリーゼ嬢の後に続いて階段を登った。
 
 オリエッタは何故か楽しそうに見ているのが気に入らなかったが、僕が撒いた種だ仕方がない。仕方がないが悔しいので神速のモード・スリーでオリエッタの胸も揉んでやった。
 
 神様からもらったチート、僕が努力してモード・スリーまで上げたチートをこんな風に使ったのが神様に知られたら、いつか神罰がくだるのかな。
 
 僕達はアンネリーゼ嬢が執務室として使っている部屋に通され、オリエッタから聞いている話とこれから僕がしようとしている話をした。
 
 アンネリーゼ嬢は簡単にはイエスの答えがもらえなかった。やはりハルモニア軍がこの街を武力によって制圧した事を思っての事だろう。
 
 僕はこれからのドワーフとの関係を力強く説得し、絶対にアンネリーゼ嬢を守ると言う事で一緒に来てもらう事になった。ちゃんと言葉だけで説得した。ソフィアさんやオリエッタがいる前だ、言葉以外を武器に説得したら死ぬ。
 
 僕達は急いでいる。ドワーフが作った横穴が出来れば街中のドワーフを連れて北へ向かってしまうからだ。アンネリーゼ嬢にはすぐに着替えてもらいオリエッタの案内で横穴に向かった。出来ればもう少し見ていたかった、二人きりで……
 
 
 
 横穴に着いた頃には日が陰っていた。そんなに時間を掛けたつもりはないけど、貴族の、女性の身だしなみには時間が掛かるものだ。手伝いを申し出た事は許諾されたが、ソフィアさんに拒否されたので時間が余計に掛かったのだろう。
 
 横穴は人が一人通れるよりも狭く、膝を付いての移動だったがオリエッタのお尻を間近で見れたので疲れは無い。
 
 むしろ、もっと続けと思ったくらいだ。たまに止まったり、急いだりして、ぶつかったのは事故だから仕方がない。
 
 洞窟の中に入れば見張りのドワーフが立っていたが、国王陛下の孫娘は人に近いが人気は絶大だ。気を良くした僕は、握手を求めて近寄れば槍の矛先が向けられ、ソフィアさんとアンネリーゼ嬢とは握手をしやがった。チッ!
 
 もう少し採掘作業をしているドワーフがいるかと思ったが、見張りがいるだけで周りにはいない。こんな洞窟に閉じ込められて自分達の運命を決める横穴を掘っているんだ、休憩を取りながらでも作業する方が効率的だ。
 
 「オリエッタ、シャイデンザッハ国王の場所は分かるのかな?」
 
 僕だけ拘束されたのをアンネリーゼ嬢の言葉一つで解放するのってどうよ。男女差別も甚だしい、僕は強い意思を持って抗議したい。
 
 だが、その強い意思も洞窟の中を進めば進むほど薄まり、逆に男の汗臭さが濃くなって来た。洞窟の中に入浴施設なんてある訳もなく、ドワーフが温泉に入っている所など想像もしたくない。きっと排水口が詰まるほどの抜毛があるんだろうね。
 
 光を微かに出す苔が道を照らし、洞窟が広くなって来ているのが分かる。道は広がっても臭いは濃くなって来る所をみると、集まっている場所も近いのだろう。
 
 。正直な所、戻りたい。この体にまとわり着く様な重い空気が僕のやる気と足取りを削る。これもドワーフの戦術の一つかと疑いたくなる。
 
 「このまま真っ直ぐです、プシュー。この辺りは昔に遊びに来た事があります、プシュー」
 
 プシュー?    いつもの間延びした言葉尻から「プシュー」に衣替えか?    キャラクターを変えるのは控えてもらわないと周りが困る。それともドワーフの方言とかかな?
 
 僕はキャラ変は原作者の許可を取ってからにしろと注意をするために振り返れば、そこにはどう見てもガスマスクにしか見えない物を着けた三人が……
 
 「怖っ!」
 
 女性に向かって言う言葉では無いが、薄暗闇でガスマスクがプシューって言ってるのを見れば男だってビビるんだよ。
 
 「何が怖いんですか、プシュー。怖いのは団長の方です、プシュー」
 
 プシュー、プシューどう見ても怖いんだよ。暗闇でカサカサ音が聞こえるくらい怖いんだよ。もしGだったらどうする!?    モード・テンまで出すぞ!
 
 「この辺りは、プシュー。たまに、プシュー。プシュー。プシュー」
 
 プシュー、プシューって話にならん。ドワーフの体臭くらいでガスマスクなんているの?    何でも大げさなリアクションは良くないよ。そのうち爆発する馬車とかに乗らされて、リアクションを要求されるから。
 
 「プシュー。毒が吹き出します、プシュー」
 
 予備ください!    この体の重さはてっきりドワーフの体臭攻撃のせいかと思ってたよ。予備ください!    死ぬ前に!
 
 「使いますか、プシュー」
 
 あたり前だろ!    さっさとよこせ、最初からよこせ。どうせソフィアさんがいるから、死にそうになっても平気だと思ってるんだろ。ああ、平気さ。斬られたって毒だって何でも来いよ。早く貸せ!   涙を隠すから……
 
 僕は少し乱暴にガスマスクを奪って顔に……    どうやって着けるの?    僕はアンネリーゼ嬢の優しい手解きで無事にマスクを着け呼吸が楽になった。ドワーフの体臭攻撃とか疑ってごめんね。おや、なんでソフィアさんはエイト・ライトニング・ボールを展開しているのだろう。洞窟内が明るくなって、いいね。
 
 それから大広間的に広がった洞窟まで、道は広がったもののソフィアさんが僕の腕を組み、胸が当たる至福の時間と坑道の出っ張りに頭をぶつけながら進んだ。
 
 大広間には石の塊に見えたドワーフが並び、先の方では石の塊が議論をしてる大声が洞窟内に響き渡っていた。
 
 僕達はガスマスクを外し、オリエッタを先頭にソフィアさんを左手に組み替え、いつでも魔剣ゼブラを抜ける様にした。ここは敵地だ、ハルモニアはドワーフ領を攻めたんだ。
 
 僕達四人はドワーフの間をぬって議論している者達の所に向かう。中には立ち上がってツルハシを持ち上げる者もいた。
 
 中央に国王ギルベルト・シャイデンザッハ、周りには石……    ドワーフの偉そうな者達が、掴み合いも辞さない勢いで話をしていた。
 
 「お爺ちゃん~」
 
 場を和ますにはいい声だ。空気を読まないとも言うけど。このピリピリし、むさ苦しい空気がガスマスクが無くても高原の澄みきった空気に変わる。
 
 「良く来たなぁ、オリエッタ」
 
 厳しい顔が一瞬にして柔らかい好好爺に変わった。議論を止め、僕達の話をする切っ掛けが出来た!    何が悲しくて腹出し短パンで来たと思ってる。毒ガスの中を突っ切って来た僕を舐めるなよ。
 
 「シャイデンザッハ国王陛下。傭兵白百合団、団長ミカエル・シン、アシュタール帝国男爵です」
 
 最後まで言えて良かった。舌を噛む事は無いけど呂律が回っているか心配なんだよね。最後の方では意識が飛んでたから。
 
 三人よりも長く毒ガスを吸っていたせいで頭がグラグラ、足元フラフラ。アンネリーゼ嬢もちゃんと着け方を教わってから僕に着けたんですか?   
 
 アンネリーゼ嬢に話をしておいて良かった。後の交渉はお願いします。僕はちょっと死んできます。あぁ、大丈夫。ソフィアさんがいますから。僕は世界最高の詐欺師ですから。
 
 
 
 洞窟探検の人選にソフィアさんを選んだのは僕の人を見る目が正しいからだ。僕が目を覚ました時、ソフィアさんの膝枕で寝ていると思って膝の辺りから足の付け根に向かって手を……
 
 鳩尾に食い込む傭兵御用達の安全靴。ソフィアさんも履いていたんですね。触る前に教えておいて欲しかった。
 
 「ぐえっ、がはっ、お、おはようございます、ソフィアさん。話しは……    ぐぇっ、」
 
 二発目をありがたく頂き、話と息が止まる。鼻水は出る。蹴り易いように腹出しなんて着るんじゃ無かった。僕はドワーフと相性が悪いのかな。オリエッタとはベッドの相性はいいのに。
 
 「終わりました。シャイデンザッハ国王はは私達の話を飲んでくれました。これからの氷の魔物退治です」
 
 これが倒れて苦しんでいる僕の髪の毛を掴み上げて話をする事でしょうか。普通に僕の膝の上に正面から乗りラブラブしながらの方が楽しい会話が出来ると思います。
 
 「お、お疲れさま。その後の事は……」
 
 「それはハルモニア国王次第だそうです~」
 
 オリエッタ、見てないで話してないで助けて。禿げた僕は嫌でしょ。しかも天辺だけがむしり取られるんだよ。この世界にいるのか知らないけどお皿を乗せたらカッパになるよ。
 
 「ソ、ソフィアさん、そろそろ……」
 
 今だに髪の毛を掴んでいる優しい笑顔のソフィアさん。君の笑顔は心が癒される、髪の毛は乏しくなる。乳、揉むぞ!
 
 「あら、ごめんなさいね。シャイデンザッハ国王はすぐにでも氷の魔物を退治して欲しいそうですよ。白百合団を呼びますか?」

 「ああ、すぐに集めろ。氷の魔物をぶっ殺す」
 
 こうなりゃ八つ当たりだ!    お前のせいでもあるんだからな、氷の魔物!    てめぇなんかは、北極に行って氷でも作ってろ。
 
 
 魔物を退治してドワーフには加治屋としてシャイデンザッハに残ってもらう作戦は、アンネリーゼ嬢の説得により半分は成功だ。後は白百合団が魔物退治で完結する。
 
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