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第二百三十六話
しおりを挟む連合軍、三万八千。内、死者一万九千人、重軽傷者一万五千人。無傷な者は二千といない数字に僕は絶望し、クリスティンさんは微笑んだ。
「いかがいたしましょう?」
僕の方が聞きたいくらいだ。教えてくれマノンさんのスリーサイズを…… いや、これからどうすればいいのかを……
連合軍の被害は予想を上回った。魔王軍の被害は巨人が七、サンドドラゴンが四、それ以下のサイクロプスやオーガ、ゴブリン等が一万くらい。
机越しに立つマノンさん。胸を持ち上げる様に腕を組む姿は、強調しているのか、誘っているのか……
オーガ一匹に五人の騎士が必要とされてる割には善戦したのだが、連合軍は壊滅的な被害を受けたと言ってもいい。もう、何も考えないでマノンさんの胸に飛び込みたいよ。
「取り敢えずは遺体の処理を優先ですね。疫病が流行ったら本当に壊滅しますよ。それと城壁の修理は魔法使いのみで、その他は全て遺体の回収に充てて下さい」
「物資の搬入に城の倉庫を開けてもらいたいのですが……」
貴女の胸のボタンをもう一つ開けてくれたら、倉庫の一棟や二棟、いくらでも開けましょう! そんな所には僕が入っていたい!
「分かりました。女王陛下に話しておきます。事後報告で構いませんので、マノンさんの裁量で進めて構いませんよ」
スカートも短い…… 今まで胸の方に目を捕らわれていたが、その白い足は国宝に認定しよう。細すぎず、かといって太からず。その生足を……
「それと、ご遺体の回収は一週間を予定していますが、ケイベックが難色を示しています」
「ん? どういうこと?」
「ケイベックとしては聖処理をしてから国に連れて帰りたいと申しておりまして……」
聖処理ってのは、確かアンデッドにならない様に魔法をかけるんだったよな。防腐の意味合いも合って遺体を保存するんだったかな?
「ケイベックは国に帰るの? 撤退するってこと?」
「半数以上が戦死されてますから……」
マジか!? 今、ここでケイベックに去られるのは痛い。攻城兵器も持ち出してもらってるのに、これからまだ必要になるのに……
「ケイベックの司令官と合って来ます。他に撤退を考えている所はありますか?」
「アシュタールは増援を頼むそうです。ロースファーは待機しております」
マジか!? 次の脳内妄想は社長と秘書にしよう。不倫旅行もいいけど社長室で二人きりのシチュエーションがいいかな。
「分かりました。何かあったら報告して下さい。 ──それと、イリス。いるかな?」
「はい。良き人のそばに……」
ドアに向かって呼んだイリスは僕の後ろから抱き付いて来た。この部屋の中は一応は見て回った筈なのに、どうやって、いつの間に部屋に入ったのだろう。そして僕の後ろに簡単に立つなんて……
「調整官を全員呼んでおいて。ケイベックの駐屯地で会えるように」
「分かりました、良き人。それで……」
「……マノンさんは戻って仕事を続けて下さい。僕は仕事を片付けてから行きますので……」
「分かりました。それでは何かありましたら報告に参ります。失礼します」
マノンさんの後ろ姿の…… 特にお尻を見送って、僕は仕事をしなければ。事務仕事は山積みだしこれからの事を考えると頭が痛い。
「イリス、これから少しの間は僕の事を「社長」と呼ぶように」
「シャチョウですか? 分かりました。 ……シャチョウ」
勇者の仕事は色々と忙しいんだ。
「全員いるかな?」
「いるよぉ。これから祝勝会を開くんだよぉ」
開かねぇよ。勝ったは勝ったけれど、被害が大きくて、それどころじゃない。それよりケイベックが帰ってしまうのを止めなければならないんだ。
「開きません! それよりもやってもらいたい事があるんですよ」
「だからヤるんだよぉ。それともリアとだけヤるんだよぉ」
二十四人から立ち上る殺気は、さすが魔物のサキュバスと言えるくらいに縮み上がりそうだ。なぜ「上がる」んだろう。僕の相棒は中に潜り「込み」そうだ。
「ズルい」「酷い」「犯す」「ヤる」の大合唱が静まるまで約五分を待ち、最後にはリアが僕に抱き付いてキスをした時には、本当に盛り上って死ぬかと思った。
「うるさい! 僕だって怪我人なんだ! 少しは話を聞け!」
キレた僕の意見は八つ当たり的で、大人として誉められたものでは無いが、誰も聞いてくれないので無かった事で構わないだろう。
「早い者勝ちだよぉ」
この言葉を合図に狩りが始まり、手近な民家に押し込まれた。剣も左手も無く、捕まれてからでは神速も出せず、人間の力を凌駕するサキュバスにとっては拉致も服を脱がすことも、相棒を引き出すことも容易いことだった。
ケイベックの皆さん、もう少しお待ち下さい。すぐに行って話し合いをしましょう。帰るなんて言わないでもう少し……
「全員、服を着ろ! 一番遅いヤツはヤってやらねぇ!」
全裸で相棒を振り回しながら言った言葉に反応したサキュバス達は、我先にと服を着始め、一番遅かったのは僕だった。一番遅いヤツはヤらない。僕が一番遅かったのだから、もうヤらない。
「もう昼だよぉ。お昼ご飯を食べながらしようよぉ」
甘ったるい声に惑わされるほど、僕は甘くはないんだ。これからサキュバスには、その力を使ってヤってもらわないと。
「ケイベックが撤退を考えているそうです。皆さんにはケイベックの主要人物の籠落をお願いします。調整官として、その力を存分に奮って下さい」
「奮って殺しちゃうよぉ」
「籠落って言ったでしょ。ケイベックには残ってもらわないといけないので、必ず「生かして」おいて下さいね」
「遠征隊の隊長さんはどうするよぉ。女の子だったよぉ」
「その人とは僕が「話し」をしてきます。何とか話し合いで解決したいのですが、部下が残りたいと言えば残るかと。その為の籠落です」
「女の子なんてミカエルのバスターソードでイチコロだよぉ。ヤっちゃった方が早いよぉ」
お前は悪魔か!? 魔物なんだろうけどね! 出来るだけ話し合いで解決したい。出来れば、もう少し穏やかにいきたい所だけど、男なんて女次第で何とかなるさ。女はそうも…… いくのかな?
「相手はケイベック王国の侯爵ですよ。メレディス・マクレガーとか言ったかな? そんな侯爵様に手を出すなんて出来る訳がないでしょ!」
「手は出さないよぉ。出すのは下半身だよぉ」
そっちも出しません! この会話からは逃げられそうもないから、もう終わりにしてサキュバスには自分の仕事に行ってもらおう。まさにサキュバスらしい仕事。
「調整官としての身分は隠して、娼婦に変装していくこと。顔や身体つきも変えられるんでしょ? 分かったら仕事に向かって下さい」
誰一人として動かぬサキュバス。ここまで、ここまで僕の話を無視するのか!? 僕は貴女達の神にも等しい存在とか言ってたろ!
「……ミカエルよぉ。ご褒美の話がまだだよぉ」
何故に神から褒美をせびる。普通は神様に物を奉納したり、献金するものだろ。使徒なんだから無給で働け!
「……分かりました。何か考え……」
「やった! 褒美は望みのままだよぉ。みんな張り切るんだよぉ」
待て! 待て! 待て! 待って! 待っておくれよ。 ……もう誰も居ない部屋に取り残された勇者の僕は、一人寂しくメレディス・マクレガー侯爵の元に涙を堪えて急いだ。
「我々はケイベックに帰らせてもらう!」
メレディス・マクレガー侯爵の言葉に下半身の必要性を感じた。
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