異世界に来たって楽じゃない

コウ

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第二百四十三話

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 「ダメですね」
 
 胃を貫通した刀傷。膝を貫通した小さなメテオストライクの銃創。ニコールさんには荷が重かったようだ。
 
 
 「ダメ……    なんですか?」
 
 野営地まで放置プレイをくらい。やっとの事で診てくれた元白薔薇団の水系魔法使いニコールさん。簡単だけど治癒の魔法も使える、色白でありながら艶やかな肌の持ち主なのは水を操れるからか。
 
 僕は勇者専用の、一人には巨大なテントの中で治療を受けている。小さな会議が出来る程の机も椅子もあって、奥には一人用のお風呂まで付いてるなんて、勇者になって良かったよ。ただ、テントのドアの前に「勇」では無く「ゆ」の字の暖簾がかかっていたのは疑問だ。
 
 「わたしの魔法では、この傷は中途半端にしか治せないくらい重症なんです。今、わたしの力だけで完璧に治すと後遺症が残ってしまうと思います」
 
 いつもならソフィアさんが、死にかけていても簡単に治してしまうから気に止めなかったけど、魔法の仕組みとは難解なものなんだね。
 
 以前、プリシラさんが腕を切り落とした若者の手を付けた時、ソフィアさんは手の向きを逆さまに治した事があったけど、「一度、切り落として付けれ大丈夫です」と言ってたのと同じだろうか。
 
 なんにせよ、今は治してもらわないといけない。明日にはシュレイアシュバルツに仕掛けるのだから。戦えない勇者なんて解雇通告をもらっても仕方がないだろう。
 
 「動ける様になれば構いません、お願いします」
 
 神速が出せるかどうかは治ってから確かめよう。僕は裸になってベッドに横たわった……    もちろんパンツは履いている!      
 
 アラナが刺した傷口に手を当てて呪文を詠唱し始めた。ほんのりと暖かさを感じ痛みが引いていく。うつ伏せになって背中にも手を当てると、少しくすぐったいが、痛みが引いていくのが分かった。
 
 「やっぱり魔法は凄いですね。もう痛みも無い」
 
 「傷みだけだと思って下さい。無理に動けば傷口が裂けます」
 
 明日は無理をしないでプリシラさんに頑張ってもらおう。僕は後ろの方で隠れて指揮をとろう。ニコールさんはお腹の傷を治して、すぐに右膝の方を診た。
 
 「こちらは難しいです。骨が砕けて筋肉に刺さってますし、何より穴が開いてますから……」
 
 小さいとは言えメテオストライクの直撃を喰らって、この程度で済んだのはソフィアさんが寝込んでいるほど魔力を使った後だったからだろう。
 
 まあ、宙に浮かんでレーザーを飛ばされるよりかはマシだよね。神々しいったらありゃしない。あれは神に一番近いんじゃないか、狂暴な神に……
 
 「どの程度、治せそうですか?」
 
 「杖をついて、やっと歩けるくらいには……」
 
 これで僕の選手生命は絶たれてしまうのか……    いや、くじけるものか!    僕は国立競技場に立つんだ!    マネージャーを連れて行くって約束したんだから。
 
 「やってください!」
 
 「……それでは……」
 
 ……
 
 「うぎゃ!」
 
 「ど、どうしました!?」
 
 「どうって……    今、傷口に指を入れたでしょ!」
 
 「はい。折れた骨を取り除かないといけないので……」
 
 「……麻酔は?」
 
 「ありません」
 
 「……強いお酒は?」
 
 「無いようですね……」
 
 そんなのに耐える根性は無い!    本当にソフィアさんの偉大さが分かるよ。それとも治癒魔法専門だと傷みも無く治せるのかな?
 
 「……優しさは?」
 
 「それはあります……」
 
 ニコールさんは僕に顔を寄せると優しくキスをしてくれて、傷口に指を突っ込んだ。
 
 「ぎゃあ!」
 
 「大丈夫ですか?」
 
 大丈夫じゃねぇ!    大丈夫じゃねぇから治してもらってるんだけど、指を傷口入れても大丈夫なんですか?    破傷風は?    感染症は?    国立に立つ夢は?
 
 「つ、続けて下さい。大丈夫です!」
 
 キスでは無いよ。今度はキスをしながら傷口に指を突っ込んでいるけど、叫ぶに叫べない!    歯を食い縛る訳にはいかず、何かをを掴んで痛みを堪える。僕は目の前やや下の、穏やかな膨らみを掴んで痛みを堪えた。
 
 「ダメですよぉ……」
 
 まさか鷲掴みにする事なんてしない。身体の力を抜く気持ちで優しく揉みほぐし、五分もかからず僕の方が痛みで気を失った。
 
 
 
 目が覚めた時には痛みも無く、穏やかな暖かさを感じた。失神するなんてカッコ悪いが、痛いものは痛いんだ。麻酔も無くて良くやったよ、自分で自分を誉めてあげたい。自分にご褒美をあげたいくらいで、今はご褒美をもらってる。
 
 「はぁあぁぁ…ああぁっん…」
 
 いや、「もらってる」より「あげている」か。まだ、あげていないかな?    もう少ししたらあげるよ、白いミルクチョコレートを……    じゃねえ!
 
 「な、何をやってるんですかニコールさん!」
 
 聞くまでも無く見れば分かる。僕のパンツをずり下げ、いきり立った肉棒を、その御身の中に入れたり出したり……
 
 「ぁあぁぁ……    ゆ、勇者さまの……    はぁあぁ……     魔力を流しひはら……    くっ、んっ……    とても……     あっく、あぁ……    お、大きくなっ…    はぅあぁ……」
 
 どうやら知らないうちに凝縮をしていたらしい。ソフィアさんが治す時には、そんな事は起こらないのに違う人が魔力を流したからか。
 
 そんな節操の無い相棒を殴ってやりたいが、今はニコールさんの中に入ったり出たりでタイミングが掴めない。取り敢えず、この状況から脱出しよう。相棒を叱るのはそれからだ。
 
 「ひあっ……やあぁ…」
 
 僕はニコールさんの肩を掴んで相棒を一気に差し込んだ。体勢を入れ換える様にニコールさんをベッドに押し倒して僕が上に。これでいつでも引き抜ける。
 
 「あひぁっ…   ああぁ……    あん っ…  あぁっ」
 
 引き抜いた相棒は、途中で僕の意思に逆らいニコールの秘部へ突き進む。負けてなるものかと、僕はもう一度引き抜くが相棒も負けてはおらず、抉るように奥まで刺し込まれた。
 
 「やめ……    ふ、ふかい……    あぁ……」
 
 ほら、やめてって言ってるだろ相棒。ニコールさんの身体が仰け反って小刻みに震えてるじゃないか!    紳士な僕はこれ以上の事は出来ないと一気に引き抜き突き刺した。
 
 またしても僕に逆らうのか!?    いくら長年の付き合いのある相棒としても許せん。こうなればどちらかの力が尽きるまで付き合ってやるよ。
 
 「あ…んんふ…    はぁ…んんっ…」
 
 僕は負けない。神速で抜き出す相棒は、すぐさま逆らって中に入って行き、今度は矢尻のように抜かれまいと膨らんだ。
 
 これでは膣内いっぱいに広がってしまう。相棒も抜かれまいと必死なんだな。だが、チャンスも巡って来た。じゃぶじゃぶと、言うくらいに濡れて来た今なら引き抜ける筈だ!
 
 僕と相棒の戦いはニコールさんを舞台に激しさを増したが、僕は右膝から崩れ落ち中の深い所で白いミルクチョコレートをぶちまけると言う、意外なほど呆気ない幕切れになってしまった。
 
 「ニコールさん!」
 
 「あ…   あぁ…   あああ……」
 
 自分でしておいて言うのも何だが、どんなに可愛くても白目を向いてる女性は怖いものがあるね。やっぱり神速は偉大だ、今度から容量、用法を正しく守って使っていこう。
 
 だが、僕はシュートを決めたんだ。砕けた膝だって構うものか!    これで国立競技場に勃つ……    いや、立つんだ!
 
 「心配して来てみれば、これか……」
 
 レッドカードで退場してもイイデスカ……
 
 「プリシラさん……」
 
 後ろからのタックルなんてズルい。プリシラさんの方こそレッドカードだぞ。審判!    ちゃんと見ろ!
 
 「あたいもいるぜ。うちのニコールを可愛がってくれたじゃねえか」
 
 確かに可愛いですよ、白目を向くまでは……    今は静に眠っているので何事も無かったように、このままテントを出て行って下さい。
 
 「こ、これには……」
 
 「分かるぜぇ、ミカエル」
 
 肩を叩かんで下さい。一発、一発が突き刺さるように痛いんです。僕のガラスのハートも砕けそうです。取り敢えず、ニコールさんから抜いてもイイデスカ?
 
 「あたいも分かるぜぇ、団長」
 
 僕の胸に手を回して揉まんで下さい。そんな立派な胸囲ではないんです。ローズさんは僕の胸に手を回してニコールさんから引き抜き、プリシラさんはニコールさんを押さえるように踏み潰す。
 
 にゅるんと、バスターソードがニコールさんの鞘から抜けると濡れて黒光りした刃がプリシラさんの顔を打った。
 
 「てめぇ……」
 
 僕のせいじゃない!    引っ張ったローズさんが悪い!    決して肉棒でプリシラさんを殴るつもりなんてなかったんだ!
 
 「楽しみは分かち合わないとな、プリシラ」
 
 「ああ、ローズ。一方的にな……」
 
 
 二対一のデスマッチからバスケットへ、野球からサッカーへ、最後にはラグビーの人数がテントを占拠し、ノーサイドの笛の音は朝まで聞こえなかった。
 
 
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