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第二百四十四話
しおりを挟む「二千だって!」
ノーサイドの笛の音は聞きたくもない音色を奏で、アラナは人の山をかき分け、服を脱ぎながらの報告に僕は驚愕した。
「ご褒美のチュウが欲しいッス」
「チュッ」
何故、自分から言っておいて恥ずかしがる。それより、ベッドの横で裸で立つのは構わないのか? 僕はアラナが風邪を引いたらいけないと、ベッドの上にあげ、後ろから抱き締めて暖めた。
時折当たるアラナの毛並みに、ラグビーの試合後でも元気な相棒が喜んでいる。手でも無く髪の毛でも無く、「毛並み」に触れると言う、新しいプレイの発見かな。
「アラナ、報告を……」
「ダ、ダメッスよ、団長……」
ダメッスよって、報告はちゃんとしてもらわないと…… 少しくらい首筋にキスしたり、少しぐらいクリを神速でいじったりしたくらいで報告が出来ないなんて、傭兵として弛んでいる!
「報告を… 続けて……」
アラナのより一層の成長の為、僕は涙を飲んで…… 腰を持ち上げ四つん這いにさせ、アソコを舐めながら報告を聞いた。
「 ああぁん… にゃふ! はにゃ…… て、敵は…… あ…にゃん…… オーガが…… にゃあぁ……」
敵が二千だろ。予想以上の数だよ。てっきり百か二百くらいだと思っていたのに、十倍もいるなんて、どうしよう。
「はあぁ…… あっう…… にゃん… にゃあぁぁぁ」
思わず舌に力が入ってしまって、神速を出しちゃったよ。でも、それくらいで根を上げて、腰砕けになるなんて傭兵の風上にもおけない。
それなら僕の上に置いてやろう。アラナが僕の方に倒れ込んで来たのを、すかさず両手で抱き止め、狙いを定めて撃ち落とした。
「はにゃ! …あぁにゃぁぁ……」
安心して下さい、ペティナイフですから。
驚愕して下さい、バスターソードになりますから。
「あぁ…あぁん… はぁっ…にゃあぁっんっ…」
膝を痛めている僕は悪魔の血の力を使って、我が肉棒を動かす。ペティナイフにして縮み、バスターソードにして伸ばす。
「にゃ…ぁんん…… いにいぃや…や…」
勿論、アラナの体術ならペティナイフになった時には逃げ出すのも可能だ。だからこそ左手は胸に回して、右手は割れ目に這わせよう。
「あぁ…にやぁあ…にゃ…ああ!ああっ」
そして極めつけに肉棒を矢尻の様に形を変え、それを幾重にも叩き込む。真珠を入れるってのは聞いた事があるけど、矢尻が何個も入れるってのは聞いた事がない。
「ひっぃ… あっ… ああっ! あにゃあぁ…」
これで僕の思いのままだ。最後まで付き合ってもらうぜ。神速、モード・シック……
「バカタレ! アラナが死んじまうだろ!」
後頭部直撃の蹴りは、僕の意識が飛ぶのに充分な威力を発揮した。消え行く感覚の中で最後の力を振り絞り、アラナの中へ振り絞った……
「敵は二千のオーガなんですね」
「そうです……」
「何か作戦はあるのですか?」
「いえ…… まだ無いです……」
「それでもあんな事をしていたのですか?」
「はい…… そうです……」
僕達はシュレイアシュバルツにオーガがまだ二千もいる事を聞き、僕を中心に朝御飯を食べ始めた。もう少し正確に言うと、昨日の試合に参加しなかった白百合団数十名に取り囲まれ、正座と罵倒を浴びせられながらの食事は、消化にとても悪かった。
「いい加減にしねぇか、お前ら!」
救いの手は、やはり一番心を許せる女性からだった。プリシラさんは参加出来なかった白百合団に、事の状況を説明し「あんなのが凄かった」とか、「誰々が失神させられた」とか、誇張を振り撒き自己満足に浸った。
ちなみに、そんな僕をクスリとでも笑った殲滅旅団のメンバーはその後、ピクリともしなかった。戦死者二名…… 南無。
「さぁ、飯も食ったし戦の時間だ!」
うん、人の話をまるで聞いてない。作戦が無いって言った筈なのにね。二千のオーガが守る街に八百名を切る人数でどうやって攻めればいいのか?
「バシッと、ぶっ飛ばせばいいんだよ! はっはっはっはっ!」
ご飯後の答えは不正解にしか聞こえないが、行く所までは賛成だ。出来るだけ自分の目で見た方が正解に近付ける。アラナは「オーガ」と「二千」しか言ってくれなかったし……
僕達は吊し上げも程々に、一路シュレイアシュバルツの街に向かった。僕の松葉杖を作ってから向かった。
「ダメだこりゃ……」
シュレイアシュバルツの街を望める所まで来た時には、突撃陣形を取ってはいたものの、一向にオーガさん達は引きこもったままだった。
「まったく攻めて来る気配も無いですね。この数なら討って出てくると思ったのですが……」
「酒でも飲んでんじゃねぇか?」
ああ、お前以外はな。どっから持って来たんだよ。軍事物質の横領は死刑だぞ。少し分けてくれ、膝が痛いんです。
僕の右膝は何故か悪化して、ニコールさんに治してもらったが、痛みは引かないし足を着けば激痛が速度違反で駆け巡った。
ソフィアさんもルフィナも、寝込んだままと笑ったまま。どちらも今は戦える状態で無く、オリエッタもやっと戦える状態まで戻ったくらいだ。アラナは眠ったまま……
「どうする? 突撃か?」
しねぇよ。したら死んじゃうでしょ。こっちには攻城兵器も無い騎馬軍団なんだよ。平地での威力を発揮する軍団で城攻めには向いて無いの!
「しません。敵は出て来ないし…… 困りましたね」
敵が出て来てくれれば、殲滅して逃げる。これを繰り返して数を減らすつもりだったのに、当てが外れたな。
「じゃあ、どうする? やっぱり酒か?」
あそこまで防衛に徹されると、手も足も出ない。せめて神速が出せるのなら、僕が一人で少しずつでも狩り取れるのに。
「ルフィナはダメなんですよね?」
「見てきな…… 襲われても知らねぇ……」
放置決定で。藪をつついてルフィナが飛び出したら怖いから。オリエッタのレールガンもフルオートで撃ち込んだら懐の被害が増える一方だし、打つ手が飲むしか見当たらない。
「一時、後退します。 ──伝令! クリンシュベルバッハに居るケイベック王国のマクレガー侯爵に連絡を取って、攻城兵器を借りれないか掛け合って来い。攻城兵器の移動はハルモニア軍で都合を付けるように」
「貸してくれるかねぇ?」
「大丈夫だと思いますよ。ケイベックはクリンシュベルバッハに残ってくれると思いますしね」
「いや、そうじゃなくてよ…… お前に貸しを作る事になるのを避けるんじゃないかと思ってな…… 出来る事なら関わらない様に……」
この人は愛しのメレディス嬢に何を言ってくれたんだ? いいじゃないか、貸しの一つや二つ。これで僕がケイベックに協力するのも、貸しを返す為にするなら皆でハッピーだろ。
「問題は無いと思うんですけど……」
「まぁ、まぁな! ソフィアが納得してくれたらな…… まぁな……」
何か恐ろしい藪をつついてしまったかも。止めようにも仕事熱心なクリスティンさんの部下は、もう走り出して見えないくらいになってしまったが、たぶん大丈夫だろう。ソフィアさんなら分かってくれる。
「話が上手くいっても攻城兵器が来るのは三日後ぐらいでしょう。それまでにソフィアさんとルフィナが復活してくれたら使わないで攻め落とします。攻城兵器は見付からない様に、ギリギリまで隠しておけば大丈夫です」
「まぁ、まぁな…… 死ぬのは、てめぇだし……」
たかが女一人にビビるなよ。ちょっと隕石が落とせて、ちょっとレーザーを撃てるくらいじゃないか。今の神速も出せない右膝なら確実に死ねるね。どうか、最初に話し合いから始まります様に……
「撤退! 戻るぞ!」
今日の仕事は終った。早く帰ってご飯を食べて、勇者用のテントに備えられていたフロに熱い湯を入れて、日本酒を浮かべてゆっくり入りたいな。
そんな偉大な勇者の小さな望みは、「参加出来なかった者」の集会に呼びつけられ、「参加した者」に変わるまで朝まで続いた。
「グ、グリズディンさんが居ないって!?」
蹴りから始まる朝の挨拶。目覚まし時計を変えようかしら……
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