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第二百四十八話
しおりを挟むドゥイシュノムハルトの街攻略。どこかに攻略本でも売ってないかな。
アシュタール帝国とロースファー王国の連合軍は、魔王軍が占領している街に攻撃を仕掛けた。ロースファーには攻城兵器があり、今は全力で投石中。
「下手だな……」
「難しいんじゃないですか? あれだけ大きい石を投げてるんだし…… あっ! 今のは惜しい!」
オーガはドゥイシュノムハルトの街に立て籠り引き籠り、一向に討って出ようとしなかった。それは僕達の攻めたシュレイアの街と同じだが、連合軍にはクリスティンさんがいない。
「らちが開かねぇな。クリスティンを突っ込ませるか?」
それは絶対に反対です。クリスティンさんにあんな苦労はさせられない。あそこまで疲弊していたクリスティンさんを、また同じ目に合わせる事なんて出来ないよ。夜通し、僕が看病してもいいなら考えるけど。
「オーガは出て来ないし、ロースファーの投石機があるから、時間をかければ大丈夫だと思いますよ。それに今は秘密兵器を待ってますからね」
「リヒャルダか?」
土魔法使いリヒャルダ。トロール級の大型ゴーレムを作れただけで一流と言われるなか、それを三体も作り出し、それをまた合わせて巨人級のゴーレムを作った天才魔導師。まだまだ戦場に慣れていないと思うが、お父さんは将来が楽しみです。
「シュレイアシュバルツを落とした後でケイベックに走らせた二次伝令に攻城兵器を断る事と、ハルモニアにリヒャルダちゃんを貸してもらえる様に伝えたんです。良くリヒャルダちゃんて分かりましたね」
伊達に白百合団の副団長じゃないね。たまに頭の回転が早いプリシラさんが好きだ。毎度、早ければもっといい。
「ドゥイシュノムハルトを攻める事は頭に入ってましたから。被害が多かったのは誤算ですが、攻城兵器の無い僕達には土魔法のリヒャルダちゃんが必要です」
「役に立つのか?」
「城壁と言っても土壁ですからね。それに巨人ゴーレムで城門を破ってもらえるかも知れません」
「……そうか」
プリシラさんとしては、リヒャルダちゃんを前に出したくないのだろうね。母性本能なのかな…… それなら僕が父親でプリシラさんが母親、娘にはリヒャルダちゃんか!? みんなで幸せな家族を作りたいね。
「いつ来るんだ?」
「間に合うかと思ったんですけどね。もうすぐ来ると思いますよ。戻りましょうか?」
「そうだな。どれくらい乳がデカくなったか見てやろう」
プリシラさんに似ればきっと大きくなるよ。まぁ、不純目的の男が近付いたら真っ二つになるだろうけどね。 ……僕も入るのかな?
白百合団の元に帰ると遠くから馬が六騎、走って来るのが見えた。プリシラさんとアラナには誰が来たのか見えた様だが、視力一・五の僕が見ても分からなかったのは老眼が始まったせいなのだろうか。
「メレディス・マクレガー侯爵旗下、エテルナ・ウェールズだ。リヒャルダ・シェーンハイド殿をお連れした」
何故にケイベックの護衛なの? リヒャルダちゃんはハルモニア軍の所属なのに。ユーマ君が裏で悪い方に手を回したのか? それとも良い方に回したのか?
複雑な事情があるのだろうが、ユーマ君にしてはなかなか良い手を打ったね。このエテルナ・ウェールズさん、メレディス嬢に負けないくらいに若くて美しい。
「勇者ミカエル・シンです。ケイベックがなぜ護衛を?」
それに詳しい所属と年齢、スリーサイズ、彼氏有り無し、この後の予定は? 僕って勇者なんだけど君のストライクゾーンに入っている?
「マクレガー侯爵の命により、シェーンハイド殿を護衛した。ハルモニアは女も守れぬ腰抜けとみえる」
ユーマ君…… 後で死刑。気の強い人をメレディス嬢は送ってくれたものだ。可愛いんだけどね、気の強い人は白百合団で見飽きてるよ。それとも慣れたかな。
「ハルモニアにも事情があるのです、ウェールズ殿」
何故に僕が弁明しなければならん。まぁ、リヒャルダちゃんを無事に連れて来てくれたから、いいけどね。仕事は終わった。さっさと帰れ。
「遅れて申し訳ありません、団長。いえ、勇者さま」
そこは、お父さまと呼ばれたい父性心。
そこは、お兄ちゃんと呼ばれたい兄弟心。
そこは、ご主人さまと呼ばれたいエロ……
「おとう…… 待ってましたよ。早速ですが、白百合団に入って下さい。ウェールズ殿達はどうされますか?」
帰れ! 気の強い女は間に合ってるんだ。もちろんベッドは空けてやるけど、帰れ!
「このまま護衛に付ければいいんじゃねぇか?」
今日の頭の回転はどぅしたぁ!? 飲んで無いと、そんなに頭が冴えるのか? それとも飲んでるから速いのか?
「残らせてもらいたい。ケイベックの実力を白百合団どもに見せ付けてくれよう」
何故にそんなに好戦的なんですか? 笑えばもっと可愛いのに。ケイベックは魔王軍にボロ負けしたのを忘れたんですか?
「ボロ負けした軍に期待はしねぇよ」
何度も心の中で言うけれど…… それ言ったらダメね! 二人は至近距離で睨み合い、行司がいたら「はっけよい、のこった!」と言いたくなるだろうね。
「待って、待って! プリシラさんは白百合団に戻って。ウェールズさんはリヒャルダちゃんの護衛をお願いします。これから重要な役目がありますから」
割って入るほどの隙間も無く、むしろ割って入りたいその隙間。二人は上から下から睨み合い一触即発の状態はいつものアレで終わった。
「…………仕事です」
僕もなんですね……
「ドゥイシュノムハルトの城壁に取り付き、その間に城壁を破る! ウェールズ殿はシェーンハイドを死守して城門までたどり着け!」
白百合団、殲滅旅団はドゥイシュノムハルトの西門を攻める。南門を攻めている連合軍は制球が甘いのかストライクゾーンに入って無いようだ。
「アラナ、西門付近の敵は?」
「オーガが五十くらいッスね。楽勝っす」
「敵は南門に集中してるんだろ? 北門の方が良く無いか?」
「北と南門は城壁が厚いんです。リヒャルダちゃんの魔法は未知数なので、出来るだけ薄い所で魔法を使ってもらいたいんですよ。もし失敗したらゴーレムで城門を直接狙ってもらいます」
「じゃ、それまでは暇だな」
「そうでもないです。攻めればオーガは城壁から弓を射ってくるでしょう。僕とプリシラさんの舞台はそこです」
「じゃ、それまでは暇だな」
「そうでもないですって。城壁に取り付く前に見つかるでしょうからね。白百合団はハルバート持ちで充分な盾を持てません。僕とプリシラさんとアラナで先陣を切って守らないと」
「あたいを働かす気か!?」
「……当たり前だろ! 働け!」
不毛な議論を終わらせ、僕達はドゥイシュノムハルトの城壁に取り付いた。途中で飛んで来た無数の矢も、二人の鉄壁のチームワークで切り抜け、城壁に登れば今日の仕事の三割は終わる。
「プリシラ! 飛べ!」
やっと自分の番かと、打ち上げ花火の様に舞い上がるプリシラさん。僕も斬馬刀を片手に勝利を確信して飛び上がった。
どうしても二メートルは城壁の縁まで届かないのが分かる、確信から生まれる余裕。慣れない斬馬刀と重さで、いつもの様に飛び出せば、それは届きもしないよね。
最初から全力モード・シックスで飛び上がれば余裕で飛び越せるのは分かっていたが、飛んでどうする? その後は降りるんだよ、何十メートルも下に。
この一瞬の間に考える。一回は諦めてカエルみたいにもう一度、飛び上がる。白百合団にダイブ出来る得点があるが、ハルバートの矛先がこちらを向いていたら串刺しだ。僕はもう一つの方、触手義手を伸ばして城壁に登った。
「気持ちわりぃぞ、それ!」
そう言うなよ、意外と便利道具かもしれないだろ。オーガもいきなり城壁に上がった人間に驚いたのか、触手義手が気持ち悪いのか簡単には近寄らなかった。
「いくぞ! 叩き落とせ!」
猛威を振るうハルバートと斬馬刀と斬馬刀…… あれ? アラナはいつの間に上がったんだ? アラナには無理な距離だと思ったのに。
「お揃いッス」
プリシラさんは放っておいて、アラナとの初めての共同作業は三人で乱交パーティーになっていった。
「アラナ、 ……残像?」
「いつの間にか出来るようになったッス。もう一人くらい出せるくらい速いッスよ」
二人も残像が見えるなんてモード・スリーは出てるんじゃねぇ? しかも、いきなり出せるなんて、瞬発力では負けそうだよ。
神速使いが三人も居れば城壁に登ったオーガなど容易いものだ。制圧した事を教えようと白百合団の方を覗き見ると、僕の足元から城壁が崩れた。
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