人はそれを『』と呼ぶ

此宮

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1,友

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「ここまで、理解できた?」
少し猫背気味の姿勢のままくるりと振り返る。
「さっぱり理解出来ません」 
「めっちゃ分かりません」 
ふたりの生徒がほぼ同時に答える。カクッと背を丸めて、
「先生、自信なくしちゃうなー」
とぼやき気味に呟くのを生徒2人は首を傾げて見ていた。どこが分からないの?と聞けば
「何でxとyがこの世に存在するのかわかりません」
「そもそもなんで数学がこの世にあるのか分からないです」
これである。世界の俺を含めた数理学者に謝って欲しい。

「もー…先生、この補修しなくていい?お前ら成績1にしていい?」
「それは困ります、親に叱られちゃうので」
「そうです。学校毎日行って補修にも出てるのに1は可笑しいですよ」
「お前らが期末テストで0点じゃなければ俺はこんなことせずに今頃お家で借りたDVDを見ている筈なのです」
「なんのDVDですか?」
「えっちなのですか?」
「うるせぇ君達は15だろうそんなの見られないでしょ」


「あーあなんで補修なんてこの世にあるんだろう」
木谷がぼやく。
「お前らみたいなのの救済策だよ。今は策になってないけど」
「あーあなんで人間って無駄な能力持ったんだろう。狩猟してたら楽なのに」
脳筋の坂野がぼやく。
「あーあなんで俺はこんな補修してるんだろう」
「先生頑張って」と木谷。
「超頑張って」と坂野。
こいつらほんと仲良しだな、パッと見全然タイプ違うのに。

「そう言えば先生」
「あぁ?」
坂野が手を挙げた。やっとやる気になってくれたか。
「先生、どうして人間は死ぬって分かってるのに恋なんて無駄な事をするんですか?」
「そんなの親に聞いてみなさい」
即答してしまった。木谷も同調するように言う。
「確かに。というかうちの親も合コンでイチャイチャのラブラブ見せつけて結婚したらしいのに、今あんまり仲良くないですもん」
「別に木谷くんのお家事情は聞きたくなかった」
「じゃ俺の家のこと聞きたいですか?」
「遠慮します」
ほんとなんなんだこいつら。
しかもたちが悪いのが、ものすごく真面目な顔してこんなことを言っているという点。ふざけているならどうとでも言えるんだがな。
「ホントわけわからん」
「ホント何なんだろう」
お前らがなんなんだよ(2度目)

「もうお前らで付き合えばいいじゃん」
そう言ってしまったのは、早く補修を終わらせたかったか、彼らの関心の軌道修正をしたかったか。その両方の理由だったのかもしれない。とにかく冗談だ。
何にせよ、軽い気持ちで言ったのをすぐに後悔することになる。

「それだ…」
「流石先生…」
本当に尊敬した顔で見てくる生徒二人に、俺は「は?」としか答えることができなかった。
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