2 / 12
2
僕――レイ・ポメロットは、ポメガバースの伯爵令息だ。
第一王子の婚約者選びの茶会で、緊張のあまりポメラニアンになってしまい、子を成しやすい身体という理由で第一王子の婚約者に決まった。
それでも第一王子との仲は悪くなかったはずなのに、ゲームの強制力には勝てなかったらしい。
転校生として学園に転入してきた男爵令息で、チワワバースのチロにあっという間に第一王子は夢中になっていく。まあ、主に身体に――
(あの二人、ずっと王族専用の個室に篭ってたんだよなぁ……)
すぐにチワワになるチロと王族しか入れない個室に篭り、事後を思わせる雰囲気で出てくる二人が噂にならないはずはなかった。
普通は浮気になるはずなのに、チワワになったチロを目撃した者は全員、その愛らしさに夢中になり、第一王子との恋を応援した。結果、二人の仲を引き裂く僕は、悪役令息と呼ばれて肩身が狭い思いをしていた。
やっと針のむしろ同然の学園を卒業できると喜んでいたのに――
「レイ、お前との婚約を破棄する! オレとチロの真実の愛に嫉妬して、いじめを繰り返していたそうだな! そんなお前は、国母にふさわしくない!」
卒業パーティーで突然、ヒロインであるチロをいじめていたと言われて頭が真っ白になった。
「……そ、そんなことしていません!」
「素直に認め、謝れば可愛げもあったというのに!」
「ひどいです……レイ様……」
くすん、と悲しそうに鼻を鳴らすチロに、第一王子が肩を抱き寄せる。第一王子からは見えない角度で僕を見たチロの口がニヤリと弧を描く。
(え……? 笑ってる……? な、なんで……?)
「きゃっ! レイ様が睨んできます……チロ、怖い……っ」
「オレが守ってやるから大丈夫だ! オレの妃はチロしかいないから――」
「嬉しいです~~!」
大きな瞳を潤ませて抱きつくチロに、第一王子は鼻の下をデレデレ伸ばす。おでこに口づけをひとつ落とすと、僕をきつく睨んだ。
「お前が今後一切、オレとチロの婚約を邪魔できないように、婚約者の資格を奪うべきだな」
「――っ!?」
婚約者の資格――それは純潔であることだ。
チロはもう純潔ではないのに、それでいいのだろうかと思うけれど、初めての相手が第一王子であれば問題ないということなのか。それとも、王家の医師の判断などいくらでも操作できるということなのか――?
(ううん、きっと違う……)
万が一にも、僕が第一王子とチロの恋路の邪魔にならないようにするためだろう。身も心もぼろぼろにするつもりだと思ったら、身体が勝手に震えていく。
「そ、そんな……っ」
「衛兵、こいつを連れて行け!」
屈強な衛兵に拘束される。冷たい鎧の感触と、乱暴に腕を掴まれて骨まで食い込む痛みが走った。
「い、いや……!」
会場からくすくすという嘲笑が漏れ聞こえる。
まさか家にも戻れず純潔を奪われるなんて、いくらなんでもやりすぎではないだろうか? でも周りを見渡しても、悪役令息の僕に味方してくれる人なんてどこにもいない。
あまりの恐怖に、目の前が涙でにじんでいく――
(どうしよう……このままだとポメラニアンになっちゃう……嫌だ! こんな人たちにポメラニアンになるところを見られるなんて絶対嫌だ――)
第一王子の婚約者選びの茶会で、緊張のあまりポメラニアンになってしまい、子を成しやすい身体という理由で第一王子の婚約者に決まった。
それでも第一王子との仲は悪くなかったはずなのに、ゲームの強制力には勝てなかったらしい。
転校生として学園に転入してきた男爵令息で、チワワバースのチロにあっという間に第一王子は夢中になっていく。まあ、主に身体に――
(あの二人、ずっと王族専用の個室に篭ってたんだよなぁ……)
すぐにチワワになるチロと王族しか入れない個室に篭り、事後を思わせる雰囲気で出てくる二人が噂にならないはずはなかった。
普通は浮気になるはずなのに、チワワになったチロを目撃した者は全員、その愛らしさに夢中になり、第一王子との恋を応援した。結果、二人の仲を引き裂く僕は、悪役令息と呼ばれて肩身が狭い思いをしていた。
やっと針のむしろ同然の学園を卒業できると喜んでいたのに――
「レイ、お前との婚約を破棄する! オレとチロの真実の愛に嫉妬して、いじめを繰り返していたそうだな! そんなお前は、国母にふさわしくない!」
卒業パーティーで突然、ヒロインであるチロをいじめていたと言われて頭が真っ白になった。
「……そ、そんなことしていません!」
「素直に認め、謝れば可愛げもあったというのに!」
「ひどいです……レイ様……」
くすん、と悲しそうに鼻を鳴らすチロに、第一王子が肩を抱き寄せる。第一王子からは見えない角度で僕を見たチロの口がニヤリと弧を描く。
(え……? 笑ってる……? な、なんで……?)
「きゃっ! レイ様が睨んできます……チロ、怖い……っ」
「オレが守ってやるから大丈夫だ! オレの妃はチロしかいないから――」
「嬉しいです~~!」
大きな瞳を潤ませて抱きつくチロに、第一王子は鼻の下をデレデレ伸ばす。おでこに口づけをひとつ落とすと、僕をきつく睨んだ。
「お前が今後一切、オレとチロの婚約を邪魔できないように、婚約者の資格を奪うべきだな」
「――っ!?」
婚約者の資格――それは純潔であることだ。
チロはもう純潔ではないのに、それでいいのだろうかと思うけれど、初めての相手が第一王子であれば問題ないということなのか。それとも、王家の医師の判断などいくらでも操作できるということなのか――?
(ううん、きっと違う……)
万が一にも、僕が第一王子とチロの恋路の邪魔にならないようにするためだろう。身も心もぼろぼろにするつもりだと思ったら、身体が勝手に震えていく。
「そ、そんな……っ」
「衛兵、こいつを連れて行け!」
屈強な衛兵に拘束される。冷たい鎧の感触と、乱暴に腕を掴まれて骨まで食い込む痛みが走った。
「い、いや……!」
会場からくすくすという嘲笑が漏れ聞こえる。
まさか家にも戻れず純潔を奪われるなんて、いくらなんでもやりすぎではないだろうか? でも周りを見渡しても、悪役令息の僕に味方してくれる人なんてどこにもいない。
あまりの恐怖に、目の前が涙でにじんでいく――
(どうしよう……このままだとポメラニアンになっちゃう……嫌だ! こんな人たちにポメラニアンになるところを見られるなんて絶対嫌だ――)
あなたにおすすめの小説
ハードモードな異世界で生き抜いてたら敵国の将軍に捕まったのですが
影原
恋愛
異世界転移しても誰にも助けられることなく、厳しい生活を送っていたルリ。ある日、治癒師の力に目覚めたら、聖堂に連れていかれ、さらには金にがめつい師によって、戦場に派遣されてしまう。
ああ、神様、お助けください! なんて信じていない神様に祈りを捧げながら兵士を治療していたら、あれこれあって敵国の将軍に捕まっちゃった話。
敵国の将軍×異世界転移してハードモードな日々を送る女
-------------------
続以降のあらすじ。
同じ日本から来たらしい聖女。そんな聖女と一緒に帰れるかもしれない、そんな希望を抱いたら、木っ端みじんに希望が砕け散り、予定調和的に囲い込まれるハードモード異世界話です。
前半は主人公視点、後半はダーリオ視点。
逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子
もちもちほっぺ
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。
(その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!)
期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。
冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件
りわ あすか
恋愛
「君を愛するつもりはない」
結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。
出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。
愛を期待されないのなら、失望させることもない。
契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。
ただ「役に立ちたい」という一心だった。
――その瞬間。
冷酷騎士の情緒が崩壊した。
「君は、自分の価値を分かっていない」
開始一分で愛さない宣言は撤回。
無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。
以後、
寝室は強制統合
常時抱っこ移動
一秒ごとに更新される溺愛
妻を傷つける者には容赦なし宣言
甘さ過多、独占欲過剰、愛情暴走中。
さらにはリーリアを取り戻そうとする実家の横槍まで入り――?
自己評価ゼロの健気令嬢と愛が一分も我慢できなかった最強騎士。
溺愛が止まらない、契約結婚から始まる甘すぎる逆転ラブコメ
拝啓、聖騎士様。もうすぐ貴方を忘れるから離縁しましょう
花虎
恋愛
「はぁ?嫁に逃げられたぁ!?」
世界を救った召喚聖女リナリアと彼女を守り抜いた聖騎士フィグルドは世界に祝福されて結婚した。その一年後、突然リナリアは離縁状を置いてフィグルドの元を去った。
両想いで幸せだと思っていたフィグルドは行方不明になった妻を探し出すが、再会した彼女は、自分に関する記憶を全て、失っていた。
記憶を取り戻させたいフィグルドに対して、リナリアは困惑する。
「……でも、私は貴方のことを忘れたくて忘れたのかもしれないですよ?」
「もし君が、俺のことを忘れたくて忘れたとしても……、記憶を取り戻せなくても……俺は君に心を捧げている」
再び愛する彼女と共に生きるため、記憶の試練が始まる――――。
夫のことだけ記憶を失った妻の聖女リナリア(21)×両想いだと思い込んでいた夫の聖騎士フィグルド(24)のすれ違い追いかけっこラブコメ
番が逃げました、ただ今修羅場中〜羊獣人リノの執着と婚約破壊劇〜
く〜いっ
恋愛
「私の本当の番は、 君だ!」 今まさに、 結婚式が始まろうとしていた
静まり返った会場に響くフォン・ガラッド・ミナ公爵令息の宣言。
壇上から真っ直ぐ指差す先にいたのは、わたくしの義弟リノ。
「わたくし、結婚式の直前で振られたの?」
番の勘違いから始まった甘く狂気が混じる物語り。でもギャグ強め。
狼獣人の令嬢クラリーチェは、幼い頃に家族から捨てられた羊獣人の
少年リノを弟として家に連れ帰る。
天然でツンデレなクラリーチェと、こじらせヤンデレなリノ。
夢見がち勘違い男のガラッド(当て馬)が主な登場人物。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
世話焼き幼馴染と離れるのが辛いので自分から離れることにしました
小村辰馬
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢、エリス・カーマインに転生した。
幼馴染であるアーロンの傍にに居続けると、追放エンドを迎えてしまうのに、原作では俺様だった彼の世話焼きな一面を開花させてしまい、居心地の良い彼のそばを離れるのが辛くなってしまう。
ならば彼の代わりに男友達を作ろうと画策するがーー
義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。ユリウスに一目で恋に落ちたマリナは彼の幸せを願い、ゲームとは全く違う行動をとることにした。するとマリナが思っていたのとは違う展開になってしまった。