転生したらポメガバースの悪役令息だったので逃げたはずが、大きな愛に捕まりました

恋白もも

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 僕――レイ・ポメロットは、ポメガバースの伯爵令息だ。
 第一王子の婚約者選びの茶会で、緊張のあまりポメラニアンになってしまい、子を成しやすい身体という理由で第一王子の婚約者に決まった。

 それでも第一王子との仲は悪くなかったはずなのに、ゲームの強制力には勝てなかったらしい。
 転校生として学園に転入してきた男爵令息で、チワワバースのチロにあっという間に第一王子は夢中になっていく。まあ、主に身体に――

(あの二人、ずっと王族専用の個室に篭ってたんだよなぁ……)

 すぐにチワワになるチロと王族しか入れない個室に篭り、事後を思わせる雰囲気で出てくる二人が噂にならないはずはなかった。
 普通は浮気になるはずなのに、チワワになったチロを目撃した者は全員、その愛らしさに夢中になり、第一王子との恋を応援した。結果、二人の仲を引き裂く僕は、悪役令息と呼ばれて肩身が狭い思いをしていた。

 やっと針のむしろ同然の学園を卒業できると喜んでいたのに――
 
「レイ、お前との婚約を破棄する! オレとチロの真実の愛に嫉妬して、いじめを繰り返していたそうだな! そんなお前は、国母にふさわしくない!」

 卒業パーティーで突然、ヒロインであるチロをいじめていたと言われて頭が真っ白になった。

「……そ、そんなことしていません!」
「素直に認め、謝れば可愛げもあったというのに!」
「ひどいです……レイ様……」

 くすん、と悲しそうに鼻を鳴らすチロに、第一王子が肩を抱き寄せる。第一王子からは見えない角度で僕を見たチロの口がニヤリと弧を描く。

(え……? 笑ってる……? な、なんで……?)

「きゃっ! レイ様が睨んできます……チロ、怖い……っ」
「オレが守ってやるから大丈夫だ! オレの妃はチロしかいないから――」
「嬉しいです~~!」

 大きな瞳を潤ませて抱きつくチロに、第一王子は鼻の下をデレデレ伸ばす。おでこに口づけをひとつ落とすと、僕をきつく睨んだ。

「お前が今後一切、オレとチロの婚約を邪魔できないように、婚約者の資格を奪うべきだな」
「――っ!?」

 婚約者の資格――それは純潔であることだ。
 チロはもう純潔ではないのに、それでいいのだろうかと思うけれど、初めての相手が第一王子であれば問題ないということなのか。それとも、王家の医師の判断などいくらでも操作できるということなのか――?

(ううん、きっと違う……)

 万が一にも、僕が第一王子とチロの恋路の邪魔にならないようにするためだろう。身も心もぼろぼろにするつもりだと思ったら、身体が勝手に震えていく。

「そ、そんな……っ」
「衛兵、こいつを連れて行け!」

 屈強な衛兵に拘束される。冷たい鎧の感触と、乱暴に腕を掴まれて骨まで食い込む痛みが走った。

「い、いや……!」

 会場からくすくすという嘲笑が漏れ聞こえる。
 まさか家にも戻れず純潔を奪われるなんて、いくらなんでもやりすぎではないだろうか? でも周りを見渡しても、悪役令息の僕に味方してくれる人なんてどこにもいない。
 あまりの恐怖に、目の前が涙でにじんでいく――

(どうしよう……このままだとポメラニアンになっちゃう……嫌だ! こんな人たちにポメラニアンになるところを見られるなんて絶対嫌だ――)
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