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「レイ、俺のものになってくれ――」
天蓋付きの豪奢なベッドルームの窓からは月明かりが柔らかく差し込み、部屋全体を淡く照らしている。暖炉の火がぱちぱちと優しい音を立てていた。
(ここは……どこだろう?)
そんなことをぼんやり考えていたのも束の間、ゴツゴツした太い指が頬を優しくなぞった瞬間、跳ね上がるような甘い快感が全身を駆け巡り、思考が一気に霧散した。
「あぁ……っ」
今、僕にとって一番大切なことは――前世で最推しだったハルトムート様が、欲情に満ちた瞳で僕を見つめているということだけだった。それ以外の思考はもう霞んでいて、僕にできるのはただ、問いかけに頷くことだけ。
こくん、と小さく頷くと、ハルトムート様はふっと目を細めた。その色香に当てられたように、心臓がばくばくと激しく跳ね続ける。
「……っ」
ハルトムート様に口づけられる。分厚い唇が僕の小さな唇を、まるで食べてしまいそう。
何度も優しく啄まれ、角度を変えながら繰り返される口づけ。酸素を求めてひらいた唇の隙間から、ぬるりと大きな舌が滑り込んできた。
「んっ……、ふぅ……」
僕の舌を絡め取り、ねっとりと擦り合わせるように動かされると、お腹の奥がきゅんきゅんと期待するように震えた。ハルトムート様に口づけされるなんて、幸せすぎて泣きそう。
「レイ、可愛い……」
ハルトムート様に囁かれながら、シャツのボタンを一つずつ外されていく。熱い手が胸を這い、敏感な突起を指先で転がされると、甘い吐息が漏れた。
「んっ……あっ……」
首筋に唇を這わされ、吸い付かれるたびに身体がびくんと震える。あっという間にズボンを脱がされてしまい、勃ち上がりきった僕のものを見られてしまった。
「や……、恥ずかしい……っ」
あまりの恥ずかしさに両手で僕のものを隠す。
「レイに恥ずかしいところなんて、ひとつもない。俺にレイのを見せて?」
「で、でも、小さいし……」
「俺は、レイの全部が見たい――駄目か?」
太ももを優しく撫で上げられる。前世からの最推しの頼みごとを断れるわけなんてない。ゆっくり手を外すとハルトムート様がうっとり僕のすべてを見つめる。
「ああ、レイ……綺麗だ」
前世の僕の最推しのハルトムート様だけど、今世の僕は、ハルトムート様のことをずっとずっと好きだった。冷遇されている僕をさりげなく気を遣ってくれたり、第一王子に待遇を改善するよう進言してくれていた。
それに今の僕は『ちわ君』の知識で知っている。
夜会ごとに届く僕の衣装も、王太子名義の贈り物やカードも、すべてハルトムート様が選んでくださっていたことを――
(忠誠心の強いハルトムート様は、王子の命令だから僕を抱いてくれているんだ……)
きっと僕なんか好きではないだろうに。初めての僕が痛くないよう、ゆっくりと優しく押し拓いてくれる彼がたまらなく嬉しくて、僕は何度も浅ましく白濁をこぼしてしまう。
(あぁ……勘違いしちゃダメなのに……!)
あまりに優しい手つきに、どうしようもなく縋りたくなる。腕を伸ばして首に手を回し、溢れる気持ちを止められないまま、ハルトムート様に愛をささやいてしまった。
「好き……好きです……ずっと好き、だったんです……ハルトムートさまぁ……」
「ああ、レイ……俺も同じだ。お前を愛している」
ハルトムート様の熱が僕の中に何度も注がれるたび、頭が真っ白になった。
優しく抱かれながら、耳元で「愛している」と何度も繰り返される。媚薬のせいだとわかっていても、その言葉が嬉しくてたまらず、何度も達してしまった。腰を掴まれ、深く繋がるたびに甘い声が漏れて、すべてがぐちゃぐちゃに溶けていく。
最後は強く抱きしめられたまま、意識がゆっくりと遠のいていく。そのとき、頬を伝う熱いものを感じた。ハルトムート様の指が、そっと僕の涙を拭ってくれる。
「……レイ?」
掠れた声で名前を呼ばれ、僕は慌てて首を振った。
(違うんです……嬉しいんです……でも、こんなに幸せなのに、胸が痛くて……)
僕の気持ちは声にならなくて。
ただ僕の想いを込めて、ハルトムート様の唇をそっと奪った。
「…………ハルトムート様、愛しています」
(どうか今だけは、好きということを許してください……)
彼の出世が傷つかないように、この行為が終わったら僕は目の前から消えるから。それでも、僕の初めてを愛する人に捧げられたこの夜を、一生の思い出として胸に抱いて生きていく――僕は、意識を静かに手放した。
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