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第2章 最後の良心
第7話 二人の侵入者
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★★ここから先のエピソードは、まだ一度も改稿していません。小説を書き始めた当時のままのため、第1章のVer3.0から続けて読むと色々違和感があるかもしれませんが、よろしくお願いいたします。★★
①
その日の朝、ノイズ音しか出さなかったラジオから人の声が聞こえた。
『こちらは山梨県――の―地区、通称「天国」と呼ばれているば―。もし、今ここを目指す人達がいたら――すぐに引き返すように。繰り返す。天国を目指す人達は今すぐ引き返せ!ここはもう地獄だ!!』
若い男性の聞き取りやすいアナウンサーのような声は、最後の方はただの叫びに変わっていた。
繰り返し天国には来ないように告げた後、泣きそうな声でぽつぽつと経緯を話し始めたが、ノイズも激しく部分的にしか聞き取れなかった。
無駄だと思いながらもラジオのつまみを動かしてみたり、ちょっと叩いてみたりしたがノイズは特に減ることなく、最後は男の断末魔のような叫び声で放送は終わった。
聞き取れた部分を想像で補いながらまとめると、最初平和だった天国もやがて派閥争いが激化し直接的な戦闘へ発展した。膠着状態が何日か続くと何者かが意図的にゾンビを大量に発生させた。
住人は争うことをやめ街の清浄化を試みたが、ゾンビに圧倒され区画を放棄することにした。
といった感じだった。
マンションの屋上に出て、双眼鏡で辺りを確認する。
この拠点の周囲は特段変化はないように見える。
天国からここまでは車だと高速を乗り継げば2時間くらいの距離だった。
瓦礫や破壊された道路の状態を考えると、車での移動は現実的ではない。道路上には放置された車も数多くあり、唯一現実味のある移動手段としてはオフロードバイクではあるが…。
一部の人間がバイクで移動できたとしても、台数に限りもあるであろう中、天国の脱出者のほとんどは徒歩で散り散りになっていることだろう。
脱出者の中には悪意を持ってこちらを攻撃してくる人間がいる可能性も高い。
そして、俺を襲わないとはいえふーこが他の人間を襲わない保証も無ければ、ゾンビと生活している俺を敵とみなさない保証も無い。
この区画のことを知っている奴らも天国にいるはずだ。脱出者がこの区画へ来るとしたら1週間後くらいだろうか?
②
「もう無理だ!これ以上は本当に無理だ!その子は諦めろ!」
若い男が叫ぶ。
「愛を見捨てろってことっすか!?」
黒いミディアムヘアーに茶色い瞳、ところどころ破れたブラウスを着た、歳は18歳くらいだろうか?若い女が愛と呼ばれた同じ年ごろの女をぎゅっと抱きしめながら叫んだ。
「あああ!あああああああああ!!」
愛と呼ばれた女は、髪は明るいボブで、服装に白いウィンドパーカーにジーンズ姿。一見すると活発的なスポーツ少女といった印象を受ける容姿をしているが瞳は狂気をたたえており、口から涎がだらだらと垂れてもお構いなしに叫び続けている。
続々と迫りくるゾンビの対処を若い男が一手にひきうけ、金属バットで応戦しているが圧力負けしているように見える。
「そいつがゾンビを呼び寄せてる!もう無理だ!」
ミディアムヘアーの女が必死に愛の口を手で塞ぐが、愛はその度に顔を激しく動かし抵抗し叫び続ける。
映画のゾンビのように異常に聴覚が鋭いということはないが、これだけの音量で叫んでいればさすがのゾンビも群れてくるだろう。
3人は四方八方から来るゾンビの群れに追われ、あるマンションのエントランスに逃げ込んだ。
もうそこにしか退路は無かった。
ミディアムヘアーの女が愛を抱えながらエントランスに走りこむ。
「ああああ!うあああああ!やめろー!やめてくれー!」
背後から殿をつとめていた男の断末魔が聞こえる。
振り返ると、屈強そうなゾンビに足をつかまれそのままもぎ取られるところだった。
日の光が差し込む中、どす黒い赤色が周囲を染める。
「あああああああ!いたいー!いたいぃぃぃ!」
男が泣き叫ぶが、ゾンビは顔面を殴りつけると男の顔が無くなった。
男の体が小刻みに痙攣する。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。」
ミディアムヘアーの女は涙をボロボロこぼしながら、エントランスの奥へ奥へと進んで行く。
エレベーターが見え階数表示のディスプレイが光っているのに気づく。
「ここ電気がきてる!?」
慌てて乗り込むと必死に屋上を示す「R」のボタンを何度も何度も叩きつけるように押した。
エレベーターのドアが閉まるまでの間、目をそらしたくても男が大量のゾンビに身体を裂かれバラバラにされる姿を見続けてしまった。
もう何度も見た景色。何度見ても慣れない景色。
エレベーターが再び扉を開いたとき、女は愛の泣き叫ぶ手を強引に引っ張り屋上へ文字通り転がり出た。
ゾンビにエレベーターを操作する知能は無い。しかし、何かの拍子に押してしまうかもしれない。
何かの拍子にここにも殺到するかもしれない。
「もう無理…。」
最悪の想像はいくらでもできたが、視界は暗く意識は落ちていった。
③
朝起きるとふーこが見当たらなかった。
このところ抱いて寝ると、朝も俺に抱きついていることが多かったし、そうでなくても近くで俺の顔をじっと見ていることがほとんどだったのに、そのふーこが見当たらない。
鍵を開けることができるため、1人で出かけることも可能ではあるが…。
「ふーこ!ふーこどこだー?」
ふーこの名を呼びながらマンションの部屋から出て廊下を見渡すが姿が見えない。
そもそもが、ふーこが自分が「ふーこ」と呼ばれていると認識しているかもわからない。
エレベーターホールに来たところで階数表示が「R」になっているのに気づく。
「屋上?自分で行ったのか?先に?」
このところ毎朝屋上で周囲の偵察を行っていたため、ついてきていたふーこも習慣化し自律的に行くようになったのだろうか。ゾンビの記憶力は壊滅的なはずだが、ふーこは他のゾンビとは様子が違う。
俺は、エレベーターを呼び戻し屋上へと向かった。
エレベーターが屋上につきドアが開くと黒髪のミディアムヘアーの女が倒れていて、茶髪のボブの女が屋上の隅で体育座りで顔を膝につっぷしている。
「人間…?だよな…?それともゾンビになったか?」
エレベーターを操作している以上人間の可能性が高いが、屋上についてから発症してゾンビになったなんてこともありうる。
腰にマウントしていた鉈を鞘から抜いて右手に持つ。
先に足を折り、手足を切断しておくべきだろうか?それとも、厄介ごとに巻き込まれる前に殺しておくべきだろうか?
目撃者となりうるのは、隅で突っ伏しているボブの女だけ。
二人とも殺してしまえば今日はおかしなことは何もなかった。平穏な1日の始まりだ。
しかし、情報が欲しかった。
もしこの二人が天国から脱出者として、いや、脱出者じゃなかったとしても区画外で何が今起きているのか知っておきたい。
結論として、ビニールひもで手足を縛ったうえで瞼を指でぐいっと開ける。
瞳の色は茶色。
「人間か。」
もう一人を確認しなければ、気を失っているのか?失っていなければ迂闊に近づけばこちらがやられる可能性がる。
何分か逡巡していると、ボブの女はゆっくりと顔を上げ…叫んだ。
「あああああああああああ!あああああああ!ああああああ!」
瞳の色は同じく茶色。こちらも人間だった。
「おい。落ち着け。」
「ああああああああああ!ああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「おい!静かにしろって!うるせーよ!」
「あああああああ!あああああああああああああああ!!」
話にならない…。
ヨダレや鼻水を垂らしながら、瞳は狂気に染まって狂ったように叫び続けている。
「ちょっと!あんた誰っすか!?」
後ろで更に女の叫び声。
ミディアムヘアーの女が気が付いたようだ。
鉈を右手に握っている俺を見て顔が怒りに染まる。
体を飛び起こして俺に飛び掛かろうとしたのだろうが、手足が縛られていて地面をわずかに跳ねたのみ。
「縛られて…!ちくしょぉおおおお!おまええええ!」
女の顔が真っ赤に染まる。
眉と目が吊り上がり、今にも俺を殺そうという勢いだ。
久々に生きた人間の生の感情を見た俺は、あー人間ってこういう表情するんだよなぁと感慨深げにじっと見つめてしまった。
「ひっ。愛!逃げてえええええ!愛!お願いだから逃げてぇぇ!」
女はそんな俺の目を見て小さく悲鳴を上げると、ボブの女に叫ぶ。
しかし、愛はこの間もずっと「あああああああ!ああああ!ああああああああ!」と叫び続いている。
「ああああああああ!あああああああああああああ!!!」
「きさまぁあああああ!何をする気だ!指一本でも触れてみろ!殺してやる!首だけになっても殺してやるからなぁ!」
女が二人絶叫し続けている。なんか、久々に生の感情見ただけで疲れてきたのに、うーん頭痛くなってきた。
「おい、落ち着けって。何にもしないって。ゾンビじゃねーなら興味ねーよ。」
「じゃ、なんで縛ってんのよ!」
「ここは俺の家。いつものように屋上に来たら、お前が倒れてた。ゾンビかどうか確認したいけど、ゾンビだったら危ない。だから縛ってから瞳を確認した。わかる?そんだけ。」
「…。じゃあ、早くほどきなさいよ!」
「人間なのはわかったからほどくよ。ちょっと待って。」
俺がビニールひもを切ろうとミディアムヘアーの女に近づく。
殺気立ってはいるが、大事な存在を守ろうとしているからこそであり、誤解が解ければ害はなさそうだと思い解放することにする。
「変なことしないでよね!?」
「しないって…。」
鉈を腰の鞘に戻して、十徳ナイフを取り出す。
女に近づいてしゃがみこんだところで
だんっ!!
何かが着地したかと思ったら、ふーこだった。
いや、お前どっから跳んできた?
エレベーターは動いてないし、階段で来た様子もない。
もしかして、下の階からジャンプでここまで来たのか?
「ふーこ。なんで血まみれなんだ?」
ふーこの服が、全身が真っ赤な血とどす黒い血でべっとり染まっている。
ふーこの赤い瞳が俺と女を捉えると、物凄いスピードで走り寄りミディアムヘアーの女にのしかかり、女の顔を右手で鷲掴みにしわずかに持ち上げた。
「なになに!?ゾンビ!?あの時の?!違う?なんで!?やだ!やだぁああああああ!」
「ふーこ!敵じゃない!手を出すな!」
ふーこが虚ろな瞳でこちらを見る。眉がわずかながらきりっとしており、口も堅く結ばれている。
あきらかにいつものふーこと比べると緊張状態にある。
女ゾンビをバラバラにしたときのように、この女も今にもバラバラにしかねない勢いだ。
「ふーこ。てをだすな。」
ふーこの瞳をじっと見つめてゆっくり言葉をかけると、ぱっと手を離した。
女の頭がごつんと地面に落ちる。
「嫌だ!何なの!嫌だぁあああああああああああ!」
女は叫びながら失禁し、ボブの女はこの時もずっと叫び続け、ふーこは血まみれの状態で俺の顔をじーっと心なしか不機嫌そうに見つめている。
「なんだ…この状況。」
久しぶりすぎる生きた人間の生の感情を見ただけで胸やけしているのに、混迷極めるこの状況。
人間嫌いの俺はもう今日は寝たくなった。
①
その日の朝、ノイズ音しか出さなかったラジオから人の声が聞こえた。
『こちらは山梨県――の―地区、通称「天国」と呼ばれているば―。もし、今ここを目指す人達がいたら――すぐに引き返すように。繰り返す。天国を目指す人達は今すぐ引き返せ!ここはもう地獄だ!!』
若い男性の聞き取りやすいアナウンサーのような声は、最後の方はただの叫びに変わっていた。
繰り返し天国には来ないように告げた後、泣きそうな声でぽつぽつと経緯を話し始めたが、ノイズも激しく部分的にしか聞き取れなかった。
無駄だと思いながらもラジオのつまみを動かしてみたり、ちょっと叩いてみたりしたがノイズは特に減ることなく、最後は男の断末魔のような叫び声で放送は終わった。
聞き取れた部分を想像で補いながらまとめると、最初平和だった天国もやがて派閥争いが激化し直接的な戦闘へ発展した。膠着状態が何日か続くと何者かが意図的にゾンビを大量に発生させた。
住人は争うことをやめ街の清浄化を試みたが、ゾンビに圧倒され区画を放棄することにした。
といった感じだった。
マンションの屋上に出て、双眼鏡で辺りを確認する。
この拠点の周囲は特段変化はないように見える。
天国からここまでは車だと高速を乗り継げば2時間くらいの距離だった。
瓦礫や破壊された道路の状態を考えると、車での移動は現実的ではない。道路上には放置された車も数多くあり、唯一現実味のある移動手段としてはオフロードバイクではあるが…。
一部の人間がバイクで移動できたとしても、台数に限りもあるであろう中、天国の脱出者のほとんどは徒歩で散り散りになっていることだろう。
脱出者の中には悪意を持ってこちらを攻撃してくる人間がいる可能性も高い。
そして、俺を襲わないとはいえふーこが他の人間を襲わない保証も無ければ、ゾンビと生活している俺を敵とみなさない保証も無い。
この区画のことを知っている奴らも天国にいるはずだ。脱出者がこの区画へ来るとしたら1週間後くらいだろうか?
②
「もう無理だ!これ以上は本当に無理だ!その子は諦めろ!」
若い男が叫ぶ。
「愛を見捨てろってことっすか!?」
黒いミディアムヘアーに茶色い瞳、ところどころ破れたブラウスを着た、歳は18歳くらいだろうか?若い女が愛と呼ばれた同じ年ごろの女をぎゅっと抱きしめながら叫んだ。
「あああ!あああああああああ!!」
愛と呼ばれた女は、髪は明るいボブで、服装に白いウィンドパーカーにジーンズ姿。一見すると活発的なスポーツ少女といった印象を受ける容姿をしているが瞳は狂気をたたえており、口から涎がだらだらと垂れてもお構いなしに叫び続けている。
続々と迫りくるゾンビの対処を若い男が一手にひきうけ、金属バットで応戦しているが圧力負けしているように見える。
「そいつがゾンビを呼び寄せてる!もう無理だ!」
ミディアムヘアーの女が必死に愛の口を手で塞ぐが、愛はその度に顔を激しく動かし抵抗し叫び続ける。
映画のゾンビのように異常に聴覚が鋭いということはないが、これだけの音量で叫んでいればさすがのゾンビも群れてくるだろう。
3人は四方八方から来るゾンビの群れに追われ、あるマンションのエントランスに逃げ込んだ。
もうそこにしか退路は無かった。
ミディアムヘアーの女が愛を抱えながらエントランスに走りこむ。
「ああああ!うあああああ!やめろー!やめてくれー!」
背後から殿をつとめていた男の断末魔が聞こえる。
振り返ると、屈強そうなゾンビに足をつかまれそのままもぎ取られるところだった。
日の光が差し込む中、どす黒い赤色が周囲を染める。
「あああああああ!いたいー!いたいぃぃぃ!」
男が泣き叫ぶが、ゾンビは顔面を殴りつけると男の顔が無くなった。
男の体が小刻みに痙攣する。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。」
ミディアムヘアーの女は涙をボロボロこぼしながら、エントランスの奥へ奥へと進んで行く。
エレベーターが見え階数表示のディスプレイが光っているのに気づく。
「ここ電気がきてる!?」
慌てて乗り込むと必死に屋上を示す「R」のボタンを何度も何度も叩きつけるように押した。
エレベーターのドアが閉まるまでの間、目をそらしたくても男が大量のゾンビに身体を裂かれバラバラにされる姿を見続けてしまった。
もう何度も見た景色。何度見ても慣れない景色。
エレベーターが再び扉を開いたとき、女は愛の泣き叫ぶ手を強引に引っ張り屋上へ文字通り転がり出た。
ゾンビにエレベーターを操作する知能は無い。しかし、何かの拍子に押してしまうかもしれない。
何かの拍子にここにも殺到するかもしれない。
「もう無理…。」
最悪の想像はいくらでもできたが、視界は暗く意識は落ちていった。
③
朝起きるとふーこが見当たらなかった。
このところ抱いて寝ると、朝も俺に抱きついていることが多かったし、そうでなくても近くで俺の顔をじっと見ていることがほとんどだったのに、そのふーこが見当たらない。
鍵を開けることができるため、1人で出かけることも可能ではあるが…。
「ふーこ!ふーこどこだー?」
ふーこの名を呼びながらマンションの部屋から出て廊下を見渡すが姿が見えない。
そもそもが、ふーこが自分が「ふーこ」と呼ばれていると認識しているかもわからない。
エレベーターホールに来たところで階数表示が「R」になっているのに気づく。
「屋上?自分で行ったのか?先に?」
このところ毎朝屋上で周囲の偵察を行っていたため、ついてきていたふーこも習慣化し自律的に行くようになったのだろうか。ゾンビの記憶力は壊滅的なはずだが、ふーこは他のゾンビとは様子が違う。
俺は、エレベーターを呼び戻し屋上へと向かった。
エレベーターが屋上につきドアが開くと黒髪のミディアムヘアーの女が倒れていて、茶髪のボブの女が屋上の隅で体育座りで顔を膝につっぷしている。
「人間…?だよな…?それともゾンビになったか?」
エレベーターを操作している以上人間の可能性が高いが、屋上についてから発症してゾンビになったなんてこともありうる。
腰にマウントしていた鉈を鞘から抜いて右手に持つ。
先に足を折り、手足を切断しておくべきだろうか?それとも、厄介ごとに巻き込まれる前に殺しておくべきだろうか?
目撃者となりうるのは、隅で突っ伏しているボブの女だけ。
二人とも殺してしまえば今日はおかしなことは何もなかった。平穏な1日の始まりだ。
しかし、情報が欲しかった。
もしこの二人が天国から脱出者として、いや、脱出者じゃなかったとしても区画外で何が今起きているのか知っておきたい。
結論として、ビニールひもで手足を縛ったうえで瞼を指でぐいっと開ける。
瞳の色は茶色。
「人間か。」
もう一人を確認しなければ、気を失っているのか?失っていなければ迂闊に近づけばこちらがやられる可能性がる。
何分か逡巡していると、ボブの女はゆっくりと顔を上げ…叫んだ。
「あああああああああああ!あああああああ!ああああああ!」
瞳の色は同じく茶色。こちらも人間だった。
「おい。落ち着け。」
「ああああああああああ!ああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「おい!静かにしろって!うるせーよ!」
「あああああああ!あああああああああああああああ!!」
話にならない…。
ヨダレや鼻水を垂らしながら、瞳は狂気に染まって狂ったように叫び続けている。
「ちょっと!あんた誰っすか!?」
後ろで更に女の叫び声。
ミディアムヘアーの女が気が付いたようだ。
鉈を右手に握っている俺を見て顔が怒りに染まる。
体を飛び起こして俺に飛び掛かろうとしたのだろうが、手足が縛られていて地面をわずかに跳ねたのみ。
「縛られて…!ちくしょぉおおおお!おまええええ!」
女の顔が真っ赤に染まる。
眉と目が吊り上がり、今にも俺を殺そうという勢いだ。
久々に生きた人間の生の感情を見た俺は、あー人間ってこういう表情するんだよなぁと感慨深げにじっと見つめてしまった。
「ひっ。愛!逃げてえええええ!愛!お願いだから逃げてぇぇ!」
女はそんな俺の目を見て小さく悲鳴を上げると、ボブの女に叫ぶ。
しかし、愛はこの間もずっと「あああああああ!ああああ!ああああああああ!」と叫び続いている。
「ああああああああ!あああああああああああああ!!!」
「きさまぁあああああ!何をする気だ!指一本でも触れてみろ!殺してやる!首だけになっても殺してやるからなぁ!」
女が二人絶叫し続けている。なんか、久々に生の感情見ただけで疲れてきたのに、うーん頭痛くなってきた。
「おい、落ち着けって。何にもしないって。ゾンビじゃねーなら興味ねーよ。」
「じゃ、なんで縛ってんのよ!」
「ここは俺の家。いつものように屋上に来たら、お前が倒れてた。ゾンビかどうか確認したいけど、ゾンビだったら危ない。だから縛ってから瞳を確認した。わかる?そんだけ。」
「…。じゃあ、早くほどきなさいよ!」
「人間なのはわかったからほどくよ。ちょっと待って。」
俺がビニールひもを切ろうとミディアムヘアーの女に近づく。
殺気立ってはいるが、大事な存在を守ろうとしているからこそであり、誤解が解ければ害はなさそうだと思い解放することにする。
「変なことしないでよね!?」
「しないって…。」
鉈を腰の鞘に戻して、十徳ナイフを取り出す。
女に近づいてしゃがみこんだところで
だんっ!!
何かが着地したかと思ったら、ふーこだった。
いや、お前どっから跳んできた?
エレベーターは動いてないし、階段で来た様子もない。
もしかして、下の階からジャンプでここまで来たのか?
「ふーこ。なんで血まみれなんだ?」
ふーこの服が、全身が真っ赤な血とどす黒い血でべっとり染まっている。
ふーこの赤い瞳が俺と女を捉えると、物凄いスピードで走り寄りミディアムヘアーの女にのしかかり、女の顔を右手で鷲掴みにしわずかに持ち上げた。
「なになに!?ゾンビ!?あの時の?!違う?なんで!?やだ!やだぁああああああ!」
「ふーこ!敵じゃない!手を出すな!」
ふーこが虚ろな瞳でこちらを見る。眉がわずかながらきりっとしており、口も堅く結ばれている。
あきらかにいつものふーこと比べると緊張状態にある。
女ゾンビをバラバラにしたときのように、この女も今にもバラバラにしかねない勢いだ。
「ふーこ。てをだすな。」
ふーこの瞳をじっと見つめてゆっくり言葉をかけると、ぱっと手を離した。
女の頭がごつんと地面に落ちる。
「嫌だ!何なの!嫌だぁあああああああああああ!」
女は叫びながら失禁し、ボブの女はこの時もずっと叫び続け、ふーこは血まみれの状態で俺の顔をじーっと心なしか不機嫌そうに見つめている。
「なんだ…この状況。」
久しぶりすぎる生きた人間の生の感情を見ただけで胸やけしているのに、混迷極めるこの状況。
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