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第3章 星に願いを
第35.5話 千鶴の独白
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窓が鏡の役割を持った夜。
千鶴は窓に映る自分の姿を見ながら、適当に引っ張り出した酒をコップに注ぐ。
これは、私、小林千夏が墓まで持っていくと決めたことだ。
窓にうつる自分の顔、それにそっくりだった存在。
小林千鶴は、私の姉である。
歳の差は1つしか違わない。
一卵性双生児というわけでもないのに、そっくりな見た目。
要領がとても良くて、わりとなんでもできる。
千鶴はなんでも手に入れて、そして、私には何にもくれない。
私は、頭もよくないし、器用でもなければ、立ち回りがうまいわけでもない。
落ちこぼれの私は、両親の愛も向けられることなく、千鶴だけ愛されていくのを傍目でずっと見ていた。
高校を卒業したら、家から出て、それこそ身体でも売って生きていくかと思っていたら、ゾンビクライシスの発生なんて……。
両親はあっさりとゾンビになって、私達を襲ってきた。
千鶴は私を囮にしながら逃げて逃げて、私も死ぬならお前も道連れだと必死に食らいついた。
姉はたくさんの男達に助けられながら、犠牲にしながら生き延びて、私は、姉にそっくりなせいで、姉に想いをぶつけられない男達は、代わりに私にぶつけた。
天国と呼ばれる場所があると聞いて、みんなで向かった時、ゾンビの襲来だけでなく、千鶴の奪い合いで馬鹿みたいに人を減らしていき、着いたときには、私と千鶴しかいなかった。
割り当てられた家に二人で住み始めたが、私は気力を失っていて、それでもなお、愛だけは見捨てたら自分は獣以下のなにかになるという強迫観念で、愛の世話をしながら生きていた。
最初は、住人みんな仲良く暮らしていたが、段々と考えの違いによる軋轢が目立ってくる。
宮本と出会ったのは、まだ天国が分裂前の時だった。
千鶴に夢中で、まだ抱くことすらできていないというのに、随分と色々なものを貢いでいた。
馬鹿だなぁと思っていた。
千鶴が他のお気に入りの男には股を開くというのに、宮本には焦らしてばかりで、物を貢がせてばかりで、そんな餌をろくにもらえないわんこ君を見ていたら、なんとなく同情の気持ちすら湧いてくるというものだ。
千鶴は男達をうまく扱って、日に日に贅沢な暮らしをするようになっていった。
身に着けるものは高価そうなものばかりになって、それに比べて、ろくに着るものもない私は、いつも似たようなものを着て家の隅っこで息をひそめて暮らしていた。
私は何をやってもうまくいかない。
千鶴と見た目がそっくりなせいで、いらぬ憎悪を向けられながら、さらに、私自身が無能なせいで余計に周りから顰蹙をかっていた。
引きこもりになるのも自然な流れと言えるよね。
だけど、ある時、ふと思った。
どうせ、千鶴への憎悪も負担させられるのなら、私が千鶴になればいいんじゃないかって。
私は千鶴のように立ち回れないけれど、男なんて……、特に、宮本ならヤラセテあげれば簡単に言うことを聞いてくれるんじゃないかって思った。
千鶴のふりをして宮本に近づく日々。
千鶴は自分の持ち物が私に使われているのがわかると、烈火のごとく怒り散らして、私のことを暴行した。
普段着ていないで忘れている服ですら、私が着れば鬼の形相で家から叩きだしたものだ。
だから、殺した。
宮本に殺してもらった。
宮本に千鶴がどれだけの男に股を開いているか、見せつけてやった。
そして、私が宮本だけの千鶴になってやると言うと、あっさりと千鶴を縊り殺した。
そのびっくりするくらい無表情に迅速に殺すので、内心酷く怯えてしまったくらいだ。
宮本は自分が認められない記憶は嘘で改竄し、改竄したものを本気で信じる傾向があった。
まぁ、こんな終末の世界であれば、誰しもが少なからずそういった傾向はあると思うけれど、宮本は特に強かったと思う。
小林千鶴の亡骸を埋めたとき、私、小林千夏は死んだのだ。
今日から、私は小林千鶴だ。
千鶴のものは全部自分のモノだと思ったら、神様はそんなズルは許してくれなかった。
多田と小川の派閥争いが激化して、天国を二分した時……。
小川の支配地域にいた私は、千鶴に対して鬱憤ためていた男達によって制裁された。
してもいない千鶴の罪の全てを背負わされて、奴隷のように扱われて、いや、奴隷だった。
代わる代わる男達がこちらの都合もお構いなしでやってきて、私を犯していく。
愛は守りたかったけど、守り切れなかった。
あの時の記憶が、愛にはないのが救いだ。愛は自分が何をされてきたかは、うすうすわかっているようではあるけれど。
ある時、3人がかりでいつものように強引に犯されそうになっていると、宮本が颯爽と現れて助けようとしてくれた。
まるで、漫画の英雄みたいで、この時は、本当に格好良いと思った。
このままこの状況から助け出してくれるのなら、彼に全てを捧げても良いと思った。
しかし、宮本は人数の不利には逆らえず、やられてしまい……。それどころか、嬲られる私を見て股間のものを大きくしていた。
気持ちが悪い。
英雄のように見えたことが一瞬でもあったがために、その反動は凄まじい。
私は呪った。
宮本を呪った。
宮本は千鶴を殺したことも、私が千夏であることも忘れていて、小川の進めるまま、多田陣営の情報を小川に流すスパイとなった。
貴重な情報を小川に流すたびに、報酬として私を抱かせた。
それでいながら、宮本は、他の男とは違って優しく抱く自分こそが、私に愛されていて、私を救っていると思っていた。
心底気持ちが悪い。
私以外の人間なんて、みんな死んでしまえ。
天国が崩壊するとき、宮本ではなく別の千鶴の奴隷君を護衛に連れて行った。
あの時、宮本はさぞ絶望した表情をしていたかと思うと心底笑える。
なぜ、自分だけが特別だと思い込めるのか。
もしかしたら、自分は好かれてないかもしれないと、どうして一瞬でも疑わないのか。
恋は盲目というが、不思議で仕方がない。
あれ以来、天国の生き残りからは、私は大虐殺者として大いに恨まれている。
しかし、それすら気分が良いと思ってしまう。
私は千夏。
千鶴の名前が汚れていくたびに、気分がすかっとする。
多田を殺せなかったのは残念だ。
あの状況を作り出した小川は死んだ。私は罰を受け続けている。
なぜ、多田はなにもないのか??
宮本が殺してくれれば、本当に英雄として愛してやるそう思ったが、そうはいかないだろうなというあきらめの方が強かったから、失敗して宮本が死んだ今でも、大して心は痛まない。
痛まないはずだ。
はずなのに……。
なぜか、窓に映る小林千鶴は泣いている。
ねぇ、あなたはだ~れ?
千鶴は窓に映る自分の姿を見ながら、適当に引っ張り出した酒をコップに注ぐ。
これは、私、小林千夏が墓まで持っていくと決めたことだ。
窓にうつる自分の顔、それにそっくりだった存在。
小林千鶴は、私の姉である。
歳の差は1つしか違わない。
一卵性双生児というわけでもないのに、そっくりな見た目。
要領がとても良くて、わりとなんでもできる。
千鶴はなんでも手に入れて、そして、私には何にもくれない。
私は、頭もよくないし、器用でもなければ、立ち回りがうまいわけでもない。
落ちこぼれの私は、両親の愛も向けられることなく、千鶴だけ愛されていくのを傍目でずっと見ていた。
高校を卒業したら、家から出て、それこそ身体でも売って生きていくかと思っていたら、ゾンビクライシスの発生なんて……。
両親はあっさりとゾンビになって、私達を襲ってきた。
千鶴は私を囮にしながら逃げて逃げて、私も死ぬならお前も道連れだと必死に食らいついた。
姉はたくさんの男達に助けられながら、犠牲にしながら生き延びて、私は、姉にそっくりなせいで、姉に想いをぶつけられない男達は、代わりに私にぶつけた。
天国と呼ばれる場所があると聞いて、みんなで向かった時、ゾンビの襲来だけでなく、千鶴の奪い合いで馬鹿みたいに人を減らしていき、着いたときには、私と千鶴しかいなかった。
割り当てられた家に二人で住み始めたが、私は気力を失っていて、それでもなお、愛だけは見捨てたら自分は獣以下のなにかになるという強迫観念で、愛の世話をしながら生きていた。
最初は、住人みんな仲良く暮らしていたが、段々と考えの違いによる軋轢が目立ってくる。
宮本と出会ったのは、まだ天国が分裂前の時だった。
千鶴に夢中で、まだ抱くことすらできていないというのに、随分と色々なものを貢いでいた。
馬鹿だなぁと思っていた。
千鶴が他のお気に入りの男には股を開くというのに、宮本には焦らしてばかりで、物を貢がせてばかりで、そんな餌をろくにもらえないわんこ君を見ていたら、なんとなく同情の気持ちすら湧いてくるというものだ。
千鶴は男達をうまく扱って、日に日に贅沢な暮らしをするようになっていった。
身に着けるものは高価そうなものばかりになって、それに比べて、ろくに着るものもない私は、いつも似たようなものを着て家の隅っこで息をひそめて暮らしていた。
私は何をやってもうまくいかない。
千鶴と見た目がそっくりなせいで、いらぬ憎悪を向けられながら、さらに、私自身が無能なせいで余計に周りから顰蹙をかっていた。
引きこもりになるのも自然な流れと言えるよね。
だけど、ある時、ふと思った。
どうせ、千鶴への憎悪も負担させられるのなら、私が千鶴になればいいんじゃないかって。
私は千鶴のように立ち回れないけれど、男なんて……、特に、宮本ならヤラセテあげれば簡単に言うことを聞いてくれるんじゃないかって思った。
千鶴のふりをして宮本に近づく日々。
千鶴は自分の持ち物が私に使われているのがわかると、烈火のごとく怒り散らして、私のことを暴行した。
普段着ていないで忘れている服ですら、私が着れば鬼の形相で家から叩きだしたものだ。
だから、殺した。
宮本に殺してもらった。
宮本に千鶴がどれだけの男に股を開いているか、見せつけてやった。
そして、私が宮本だけの千鶴になってやると言うと、あっさりと千鶴を縊り殺した。
そのびっくりするくらい無表情に迅速に殺すので、内心酷く怯えてしまったくらいだ。
宮本は自分が認められない記憶は嘘で改竄し、改竄したものを本気で信じる傾向があった。
まぁ、こんな終末の世界であれば、誰しもが少なからずそういった傾向はあると思うけれど、宮本は特に強かったと思う。
小林千鶴の亡骸を埋めたとき、私、小林千夏は死んだのだ。
今日から、私は小林千鶴だ。
千鶴のものは全部自分のモノだと思ったら、神様はそんなズルは許してくれなかった。
多田と小川の派閥争いが激化して、天国を二分した時……。
小川の支配地域にいた私は、千鶴に対して鬱憤ためていた男達によって制裁された。
してもいない千鶴の罪の全てを背負わされて、奴隷のように扱われて、いや、奴隷だった。
代わる代わる男達がこちらの都合もお構いなしでやってきて、私を犯していく。
愛は守りたかったけど、守り切れなかった。
あの時の記憶が、愛にはないのが救いだ。愛は自分が何をされてきたかは、うすうすわかっているようではあるけれど。
ある時、3人がかりでいつものように強引に犯されそうになっていると、宮本が颯爽と現れて助けようとしてくれた。
まるで、漫画の英雄みたいで、この時は、本当に格好良いと思った。
このままこの状況から助け出してくれるのなら、彼に全てを捧げても良いと思った。
しかし、宮本は人数の不利には逆らえず、やられてしまい……。それどころか、嬲られる私を見て股間のものを大きくしていた。
気持ちが悪い。
英雄のように見えたことが一瞬でもあったがために、その反動は凄まじい。
私は呪った。
宮本を呪った。
宮本は千鶴を殺したことも、私が千夏であることも忘れていて、小川の進めるまま、多田陣営の情報を小川に流すスパイとなった。
貴重な情報を小川に流すたびに、報酬として私を抱かせた。
それでいながら、宮本は、他の男とは違って優しく抱く自分こそが、私に愛されていて、私を救っていると思っていた。
心底気持ちが悪い。
私以外の人間なんて、みんな死んでしまえ。
天国が崩壊するとき、宮本ではなく別の千鶴の奴隷君を護衛に連れて行った。
あの時、宮本はさぞ絶望した表情をしていたかと思うと心底笑える。
なぜ、自分だけが特別だと思い込めるのか。
もしかしたら、自分は好かれてないかもしれないと、どうして一瞬でも疑わないのか。
恋は盲目というが、不思議で仕方がない。
あれ以来、天国の生き残りからは、私は大虐殺者として大いに恨まれている。
しかし、それすら気分が良いと思ってしまう。
私は千夏。
千鶴の名前が汚れていくたびに、気分がすかっとする。
多田を殺せなかったのは残念だ。
あの状況を作り出した小川は死んだ。私は罰を受け続けている。
なぜ、多田はなにもないのか??
宮本が殺してくれれば、本当に英雄として愛してやるそう思ったが、そうはいかないだろうなというあきらめの方が強かったから、失敗して宮本が死んだ今でも、大して心は痛まない。
痛まないはずだ。
はずなのに……。
なぜか、窓に映る小林千鶴は泣いている。
ねぇ、あなたはだ~れ?
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