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出会い
思わぬ遭遇に驚いていると、バイト先の人がやってくる。
「えっと、本日からバイトの方ですね」と、会議室のような部屋に通されると、すでに10人ほどが座っていた。
凛花と、彼女の友達らしき女の子は固まっており、俺はどこに座ろうかと考えていると、凛花の隣の女の子――後で知った名前は宮野森唯――は、ふわっとしたピンクの髪を揺らして、のんびりした笑顔で手を振ってきた。
「えへへ、隣の席空いてるよー」
俺は仕方なくその隣に座った。
凛花は反対側で、明らかに俺を無視モード。
座学は1時間半。
チャットの基本ルール、NGワード、対応マニュアル、トラブル時のエスカレーション方法……。
講師のお姉さんが淡々と説明していく中、俺はノートを取るのに集中した。
座学が終わると、いよいよ実践練習。
「お客様役」と「オペレーター役」に分かれて、模擬チャットを行う。
ペアはランダムで……俺は宮野森唯さんと組むことになった。
「じゃあ、唯ちゃんがオペレーターで、神谷くんがお客さんね。スタート!」
俺がPCで模擬チャットルームを開くと、唯さんが画面越しに「こんにちはー♡ 今日はどんなお話しましょー?」と送ってきた。
ゆるふわの見た目通り、チャットもふわふわ。絵文字多めで、のほほんとした空気だった。
俺は適当に「お疲れ様です。どのようなことでお困りでしょうか?」と送ってみる。
すると、唯さんは即座に「彼氏がいなくて寂しいです!」と返してきた。
……この人、真面目にやる気ないな。
練習が一通り終わると、休憩タイムになる。
部屋の隅で水を飲んでいると、チャラい見た目の男――研修生のひとり、名前は佐藤翔――が凛花と唯さんに近づいてきた。
「よっ、二人とも可愛いね~。研修終わったらさ、飲みに行かない? 俺、奢るよ?」
凛花は適当に「あー、予定あるんで」と流してるけど、唯さんはにこにこしながら「えー、私、彼氏いるからー」とかわしてる。
佐藤はしつこく食い下がる。
「えー、彼氏とか関係なくさ。連絡先交換しよ? 俺と遊んだ方が絶対楽しいって」
唯さんが困ったように笑っていると、突然―― 彼女が俺の腕にぎゅっと抱きついてきた。
「ごめんなさいー! わたし、彼氏いるので! ほら、この人!」
……は?
俺、固まった。
唯さんの柔らかい胸が腕に当たって、頭が真っ白になる。
佐藤が眉をひそめて俺を見る。
「いやいや、そんな冴えないやつと付き合って何が楽しいの? 俺と遊んだ方が100倍楽しいよ。な?」
唯さんは俺の腕をさらに強く抱きしめて、にこにこしながら言った。
「そういう見た目で判断する人とか、わたし大嫌いなんですよねー」
佐藤の顔が引きつる。
俺はパニックのまま、唯さんの頭を撫でることもできず、ただ立ち尽くしていた。
その瞬間、背後から舌打ちが聞こえた。
「チッ……」
凛花だった。
彼女は明らかに苛立った顔で、俺たちを睨んでいる。
ちょうどそのタイミングで、上司らしき女性が部屋に入ってきた。
「ちょっと、佐藤くん。研修中になんかナンパまがいなことやってるの? ここは仕事の場ですよ。しっかりしてください」
佐藤はしぶしぶ引き下がり、俺たちはなんとかその場を収めた。
昼休み。
休憩室で俺は一人、コンビニ弁当を黙々と食べていた。
すると、唯さんがトレイを持ってやってきて、隣に座った。
「ね、神谷くん。さっきはごめんねー、急に抱きついちゃって」
「……いや、びっくりしたけど、大丈夫」
唯さんはおにぎりを頰張りながら、にこにこ笑う。
「でもさ、私、君にちょっと興味あるんだよねー。なんか、落ち着いてて、タイピングもめっちゃ速いし。いい感じ」
俺が苦笑いしていると、向かいの席に凛花が座ってきた。
無言で俺を睨んでいる。
唯さんは気にせず続ける。
「ねえ、連絡先交換しよ? バイトの時も、プライベートでも話したいなー」
「……え、うん、まあ……」
俺がスマホを出していると、凛花が箸をカチャンと置いた。
「……ふん」
小さく鼻を鳴らして、立ち上がって出て行った。
その日はそんな感じで終わった。
それからというもの、シフトのたびに唯さんが話しかけてくるようになった。
休憩中も、チャット練習中も、隣に座ってきて「神谷くん、今日のランチ何食べたー?」とか「この客、めっちゃエロいよねーw」とか、無邪気に絡んでくる。
そして、連絡先も自然と交換した。
そんなバイトが休みの日。
俺が部屋でゴロゴロしていると、LINEが鳴った。
【唯】 おっはー。今日は暇かな?♡
俺: うん、特に予定ないけど
【唯】 やったー! じゃあ、今日デートしよ!
駅前のカフェで待ち合わせしない? 13時くらいでどう?
俺はスマホを見つめて、しばらく固まった。
……デート?
しかも、唯さんから。
頭に浮かんだのは、凛花のあの舌打ちと、睨む視線。
でも、断る理由もない。
いや、断るべきか?
俺は深呼吸して、返信を打った。
俺: 了解。13時に駅前で
送信した瞬間、胸の奥がざわついた。
これは、ただの暇つぶしなのか。
それとも――また新しい、面倒な三角関係の始まりなのか。
まだ、分からない。
でも、俺の日常は、また少しずつ、予想外の方向に動き始めていた。
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