竜王様のヘタレな恋 ーR18バージョンー

Arara

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出会い編

プロローグ

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 ここは、ゼフィラス国の北にある国境の砦。
 中央には閉じられた大きな門があり、その両脇にある中くらいの門が先ほどより開けられて、我らは順番に通行税なるものを支払い左側の門をくぐる。
 砦の外の広場では、門より出てきた人々と入国しようとする人々でごった返していた。


「なあ、もう国に帰ろうではないか。我はもう帰りたい」

 前を歩く赤髪の男に、ちょっと言ってみた。だめもとで言ってみた。

「はあ!?」

 竜王である我にこんな無礼な口をきくのは、今回の花嫁探しの旅において従者を務めることになったディーン。

「何を言ってるんですかねぇ。まだ、国を出て三月みつきですよ? 俺は宰相様から、花嫁を見つけるまで戻って来るなと強く申し付けられているんです。俺の意地にかけても帰れませんよ」

 人間で言えば二十歳前後の一見明るく爽やかに見える赤毛の好青年であるが、なかなかに手強い奴である。

「最低でもこの花嫁候補リストに載っている方々を見て回ってからでないと戻れませんね」

 我の言は一蹴された。

「いいですか、宰相様からいただいた花嫁候補リストのうち、まだ半分も回れていないんですよ?! アルベルト様がぐずぐず言ってなかなか動かないからです。だいたいアルベルト様には、見つけようという気概が足りません! それでは見つかるものも見つかりませんよっ」

 おまけに小言までもらってしまった。

「そうは言うけど、我には今の若い令嬢と何を話せば良いのかさっぱりわからんし、どうやって機嫌をとったら良いものなのかもわからんのだ」
 というか我には令嬢達が何を話しているのかすらわからんのだ。

 先日参加したとある貴族のパーティでの事を思い出す。

 花嫁候補リストに載っている魔力が高いと評判のご令嬢が参加すると聞いて、我とディーンはそのパーティに潜り込んだ。


 その令嬢はすぐにわかった。
 確かに魔力保有量は多いようだ。
 竜族の番いとなる人間の女の条件として、魔力が必須であることは分かっている。
 それゆえ、宰相のエルランドは、魔力が高いと評判の令嬢を集めた花嫁候補リストなるものをわざわざ作って、我に押し付けたのだ。
 
 優秀な魔法使いを多数輩出している家柄で、両親ともに魔法使いらしいが、我にはひと目見れば番いでないことくらい分かる。
 美しい令嬢ではあるが、心は動かない。
 同じくらいの年齢の少女達と楽しそうに談笑している。
 番いでないことは分かったから我が帰ろうとすると、ディーンが練習ですよと言って我を令嬢たちのもとへと連れて行った。我を若い令嬢に慣れさせるつもりか。

「お嬢さん方、随分賑やかですけど、お話の仲間に加えていただいても?」

 ディーンが人懐っこい明るい笑顔を浮かべて話しかける。

「何のお話をされていたのです?」

「こちらのアメリアが、先日求婚されたのですけど・・・」
 件の令嬢が答える。

「私はなしよりのありだと思うわよ?」
 別の令嬢がアメリアという令嬢に言う。
 
「そうかしら。私はありよりのなしだと思うけど」
 すると今度はそれに反論するように、また別の令嬢がアメリアに言う。

 なしよりのあり? ありよりのなし? 
 梨よりの蟻? 蟻よりの梨? 

「ううん、やっぱりなしよりのなしよ」

「私も、なしよりのなしね。アメリアの相手としては、少しお年を召し過ぎていらっしゃると思うの」

 梨よりの梨とは一体なんなのだ?!?!?!

「求婚者はお年寄りなのかい?」

「ええ、そうなのです。ただ、その方の家格は伯爵家で、財力もあるので悩みどころではあるのですが。でも、アメリアには、NHKされて恋に落ち、イケボでKSKと言われるのも間近の好きピがいるんですの。ただ、最近は手紙を書いても亀レスで、アメリアはもう飽きられてしまったのではと、さげぽよなのですわ。そこに求婚者が現れて、もうその方の求婚をお受けしようかしらなんて言うものですから。私はワンチャン賭けるべきだと思っているのですけど」 

「そうよ、アメリア。今度のパーティーに誘って、来るかどうかはハンチャンだけど、来たらカクチャンゲット出来るように、胸元の開いたドレスで行くのよ。諦めるのは早いわ」

「そうね、それがいいわ」

「ありがとう。私、頑張ってみる」

「「「いいのよ、私たちBFFじゃない!うふふ」」」

「アメリアさん、良かったですね。僕たちもこうして旅をして、運命の相手を捜しているんです」

「「「「きゃー、素敵ですわ」」」」

「そうだ、ちなみに僕たちって若い令嬢にウケるのかな? 僕やアルベルト様はあり?それともなし?」

「「「「お二人ならありよりのありですわ」」」」

「そう? アルベルト様、良かったですね!僕たちありよりのありですって」


 ・・・・・・


 五人は楽しそうに会話をしていたけれど、途中からついて行けなくなった我の頭では、両脇に陣を構える蟻軍と梨軍が、仲間の蟻と梨に、お前は蟻寄りだ梨寄りだと号令をかけている図までしか思い浮かばなかった。




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