竜王様のヘタレな恋 ーR18バージョンー

Arara

文字の大きさ
8 / 144
出会い編

ローリーの謎2

しおりを挟む
 ディーンがローリーを小脇に抱えて戻ってきた。
 ローリーは離せーとかバカヤローとか叫んで暴れている。
 なんか悔しい。

「二人とも仲良しだな」

 我は悲しくて辛くて、いじけてしまった。


 今は大人げなかったと反省している。
 なんといっても、我はローリーが憧れちゃうくらい大人の魅力たっぷりの渋いカッコいい男だからな。
 大人の余裕というものを、軽っ軽らしい若造のディーンに示さねばなるまい。
 
 だから、ちょっと年長者としての余裕を見せながら提案してみる。

「交代で火の番をしよう。我が最初にするから、二人とも寝てよいぞ」

「あ、それなんだけどね、大丈夫なんだ。オレが特別な結界を今からこの周りに張るから」

 ローリーはそう言って杖を取り出し、周囲を歩きながら結界を張り始めた。

「魔物はこの大岩の魔石が弾いてくれるけど、泥棒は排除してくれないからね。だけど、オレの結界は泥棒こそをやっつけるんだ。結界は頑丈にしておくから、剣でぶったたこうが何をしようが誰も入れない。でっもー、それだけじゃないんだ。泥棒が結界に触れると、触れたところから目に見えない虫が移動して、その泥棒の体中を這い回るんだ! ふふん、オレ達にはそうならないようにしておくから! トイレとか行っても大丈夫だから、安心して出入りしていいよ!」
 
 ローリーは得意げに、満面の笑みで言った。

「げっ、お前って案外エグいのな」

 ディーンがボソっと呟く。

「ディーンにも効くようにしておくかな。信用ならないし」

 ムッとしてローリーが返す。

「え、やめて。す、すまん。それだけは許して。俺、虫は苦手なんだよ」

「え、そうなの? いいこと聞いちゃったな。これからディーンがオレを虐めてきたら、虫で対抗すればいいんだ」

「人聞き悪いな、俺がいつお前を虐めたっつーんだよ」


「・・・・・・」


「はあ? ついさっきオレの耳引っ張ったじゃないか!」


「・・・・・・」


「それはお前が悪いんだ・・・ろー・・・が」

 ディーンが我の視線に気が付いて黙る。



「仲良しだな」

「・・・・・・」

「・・・・・・」




 二人ともまた我がいじけるかとビクビクしていたけれど、結果からいうといじけなかった。
 いじけそうになったところで、ディーンが我の寝る場所を二人の間の真ん中・・・に決めたからだ。

 ローリーが自分用の毛布を取り出して、我に聞く。

「毛布いる? それともそのマントが毛布代わりだから必要ない?」

 竜族は暑さにも寒さにも、人間とは比べものにならないくらい強い。
 今は季節がいいから、まったく必要なかったが、ポケットの銀貨を使う絶好の機会だと考えて「いる」と答えた。
 ディーンは呆れたように我を見たが、何も言わなかった。
 そうして我はワクワクして、初めての銀貨投入を経験したのであった。


 夜中、声を殺してうめくような、泣き声のようなものが聞こえて、泥棒がローリーの例の虫の結界にでもひっかかったのかと思った。
 だがそれは思い違いだった。
 声はすぐ近くから発せられていた。

 隣を見るとローリーが体を丸めて、眠ったまま苦しげに呻いて泣いている。

「ローリー? どうした? 怖い夢でも見たのか? ローリー?」

 うなされているのが可哀想で揺り動かして起こしてやると、起き上ったローリーは焦点の定まらない虚ろな目をして、まだここではないどこかを見ていた。

「あっ、あっ、おと、・・さま、・・・さま、いやあああああああああああああああーーーーー!!!!」

「ローリー?!」

「どっ、どっ、どうした?! 泥棒か?!」

 ローリーの悲鳴にディーンが飛び起き、剣を構えて辺りを見回す。
 その気配に、蹲って頭を抱え込んでいたローリーが、はっと目を覚ました。

「あ、・・・あれ?」

「寝ぼけたのか?」

「あ、・・・アル。うん、そうみたい、ははは、・・・ごめん、あの、・・お、オレ何か・・言ってたかな?」

 涙をさっと拭って、心細げに我を探るような瞳を向ける。

「いや、ローリーが悲鳴をあげて飛び起きたんで、二人とも驚いて起きたところだ」

 我が誤魔化すと、ローリーは明らかにほっとした顔をした。

「起こして悪かったよ。おわびに明日の朝食はただにするから」

「全く、驚かしやがって。夢にお化けが出てきたのか?」

 憔悴した様子のローリーを元気づけようと、ディーンがちゃかした。

「ああ、まぁ、そんなところ」

「やっぱ、ガキだな!」

「あ、オレのこと馬鹿にしたな。やっぱり朝食ただにするのやめた」

「は?! それは、起こしたメーワク料だろーが」

 言い合いを始めた二人に我が「仲良しでいいな」とぼそりと呟くと、二人はピタリと言い争いをやめ、おやすみと言ってそそくさと横になる。 
 ローリーが寝息を立て始めたのを確認して、我はもう悪夢を見ることのないよう深い眠りへと誘う魔法をかけてやった。

「何か深い事情がありそうですね」

「ああ」
 
 ローリーのうろたえようは、尋常ではなかった。
 とてもただの悪夢とは思えない。
 いや、ローリーは、今日護衛達のところから戻って来た時からおかしかった。
 考え込んだり、神妙な顔をして急に黙りこんだり。
 自分達がその様子を訝しげに窺っているのを感じると、ハッとしたようにディーンをからかい始める。
 まるで先程までの自分を誤魔化すように、我らに気付かれないように。

 ローリーの頬に残る涙の跡を見て、なんとかしてやりたいと思った。
 こんな幼い子供が親元を離れてひとり、このような危険な場所で道案内稼業などしているのだ。
 特別な事情を抱えているだろう。
 我はそっとローリーの体を毛布でくるみ、胸に抱き寄せた。





しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

憧れの騎士さまと、お見合いなんです

絹乃
恋愛
年の差で体格差の溺愛話。大好きな騎士、ヴィレムさまとお見合いが決まった令嬢フランカ。その前後の甘い日々のお話です。

処理中です...