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外伝 レオンハルト編

予想外の展開

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「それが、命の恩人に対していう言葉か! フローラはともかく、お前の部下どもも助けてやったんだぞ!」

 どうやら、全くバレていない。
 フローラを助ける為とはいえ、うっかり人前で変化へんげを解いてしまったのだ。

「いや、それはそうだが、たまたまってのも無理があるだろう? あんなところでたまたま通りがかって助けるとか、怪し過ぎるじゃないか。しかも、お前は魔法使いだ。はっきりした理由も聞かずに解放する事は出来ん」

 俺は魔力を消耗し過ぎた為に昏倒してしまったフローラを部屋に運び入れ、出たところを隊長に捕まって、寄宿舎の応接室に連行された。

 俺達の班は、今日、森に増え過ぎた鹿の駆除に出掛けた。
 鹿に襲われたとか、赤い目をした鹿のような獣がたくさんいて怖ろしいとかで、森に入れないから何とかして欲しいと住民から訴えがあったのだ。

 だが、行ってみれば、それはただの鹿ではなく、魔獣と化した鹿の群れだった。
 ポルトは魔素の少ない地域だから、魔獣が生まれる要素がないため、ほとんど存在しない。
 班の連中は魔獣など見たこともない奴ばかりで、俺達は苦戦を強いられた。

 フローラに他の皆を助けるように言われ、俺は渋々フローラの元を離れたのだが、他の奴らの剣に魔力を込めて回っている時に、フローラがボスと思われるバカでかいヤツに襲われてしまった。
 俺はフローラを助ける為に、考えることなく一瞬のうちに人型を取って、転移し、大剣に込めて鹿の首を一刀両断にした。
 しまった!と思った時にはもう首を落としていた。
 そして、フローラの無事を確認した後、ついで・・・に他の鹿も片付けてやった。

 俺はいいやつだからな!
 仲間は助け合わないといけない、協調性を持てとか、俺が魔法で脅してばかりいると、フローラがしっぺ返しを食らう事になるぞとか、俺はグレンにくどくどと説教を受けた。
 むざむざ仕返しなどさせるつもりはないが、フローラに万が一があってはいけない。
 俺は念のためグレンの忠告を聞いて、俺も魔法も怖くないぞ、いいやつなんだぞ!と周囲にアピール中だ。
 他にも治癒魔法の出血大サービスとか、日々の努力が実って、今では俺の評判もまずまずといえる。

「ぼうず、助けて貰ったのに、済まん。お前が優秀な魔法使いだったもんだから、隣国のスパイ容疑がかかってしまってな」

 面倒見のいいグレンが、口を挟む。
 なるほど、やはりグレンの言った通り、このポルトにおいて魔法使いは警戒されるようだ。
 ここでは、腕のいい魔法使い=隣国の魔法使いという図式が成り立ってしまうんだな。

「俺はレノルドのレオンハルト=ハイネケンだ。優秀な魔法使いだから隣国のスパイ? 笑わせるな。そんな事を言ったら、レノルドの魔法使いは皆隣国の魔法使いになるぞ。俺の身分はレノルドに問い合わせれば分かる。もちろん、俺は確認が取れるまで拘留されるのはごめんだからな、失礼させてもらうが」

 俺は椅子からさっと立ち上がり、扉に向かう。
 こんなところで、遊んでいる暇はないんだ。
 フローラには、さっき魔力を分けてやったから、そろそろ目を覚ますかも知れない。
 だから、早く戻ってやらないと。
 フローラは、俺が長く離れていると心配しちゃうからな!!
 
「待て! そうはさせん!」

 身体の大きい隊長が俺の前に立ちふさがる。
 全く、鬱陶しい奴だな! 俺は急いでるっていうのに。

「はっ、お前ごときに俺が止められるとでも?」

 睨み合う隊長と俺の間に、またしてもグレンが割り込んできた。

「ちょっと、待った! ぼうず、済まん! 隊長は職務上、どうしてもお前を問い質さねばならんのだ。怒らんでくれ、な?」

 しようがないな。
 俺はグレンに宥められて、とりあえずは転移するのを踏みとどまった。
 グレンには俺もフローラも、まぁ世話になっているから、顔を立てて話を聞いてやることにする。
 するとグレンは、俺の予想もしないとんでもない事を言い始めた。

「隊長、こいつ、例の、ほら、ちょっと前にフローラに一目ぼれして、しつこく求婚してたガキですよ。だから、スパイと言うよりは、ストーカーです。フローラの後をつけてたんですよ」

 グレンは俺の目を気にして、最後のストーカーとかフローラの後をつけてたとかは、隊長に耳打ちするように小さな声で話していたが、しっかり聞こえたぞ!!

「お前、フローラをつけていたのか? なるほど、それなら納得だ。タイムリーにフローラを助ける事が出来たのも、見ていたのなら当然だ。そうかそうか、ストーカーというのもたまには役に立つものなんだな、ははは」 
「そうですね、ははは」

 ・・・・・・

 二人して納得顔で頷き合っている。
 それにもう、声も憚る事無く、堂々とストーカー呼ばわりしているし。
 周りでさっきまで静観していた外野からも、フローラに振られてたガキかとか、諦めてなかったんだなとか、まさかストーカーをしてたなんて驚いたとか、口々に話しているのが聞こえてくる。

「ちょっと待て! 人を勝手にストーカー呼ばわりするな、失礼だろう! 俺はただ、大切なフローラが危険な目に遭わないように傍で見守っているだけだ! ストーカーじゃなくて、俺はナイトだ!」
 
 フローラを守るのは、番いである俺の役目なのだ! という意味を込めて、腕組みをして正々堂々言い放ってやった。

「ほら、やっぱり、ただのストーカーですよ」
「そのようだな。ぼうず、疑って済まなかった。今日は部下を助けてくれてありがとうな」

 ・・・・・・

「魔法使いとして優秀でも、やっぱガキはガキなんだな」
「ぷぷ、ナイトとか、カワユイじゃないか。誰だよ、スパイなんて言ったの」
「笑ったら、また、怒り始めるぞ。お子ちゃまは怖い魔法使いなんだぞ? ククッ」

 ・・・・・・

 うぬぬ、コイツら、全部聞こえてるし!!

「お前達、いい加減にしないか。そうだ! ぼうず、お礼にフローラと話をさせてやるよ。求婚を受けろとまでは命令出来ないが、フローラだって、命の恩人に礼を言いたいだろう。明日、また来いよ」

 ん? 命の恩人?
 そうか、俺が自分の番いを守るのは当然だが、周りから見ればそうなるのか。
 ふーん、なるほど。
 俺は思案した。

 うん、いいかも!
 父上、
 恩人・・なのを笠に着て求婚を迫るとか、父上ってこすいな、とか思っててごめん。
 




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