竜王様のヘタレな恋 ーR18バージョンー

Arara

文字の大きさ
122 / 144
外伝 レオンハルト編

ばれる1

しおりを挟む
 目覚めれば、薄暗い部屋の中俺はベッドの中で、脇には思い詰めた顔で身体を丸めているフローラがいた。

 やっちまったなー。
 やむを得なかったとはいえ、番いに心配をかけるなんてサイテーだ。
 フローラには随分心配を掛けた事だろう。
 魔力の使い過ぎで命を落とす魔法使いは山ほどいるのだから。
 まぁ、竜族の生命力は強いからそうそう簡単に死んだりはしないのだけど、俺が竜族だってフローラは知らないわけだし。

 フローラの様子がなんだかヘンだ。
 誤魔化そうとして明るく振る舞ったりしてるけど、表情は硬いし、ソワソワ落ち着きもない。
 先ほどの思い詰めた顔も気にかかる。
 でも、どうしたんだ?と聞いたところで、フローラが簡単に話すとは思えない。

 そもそもからして、フローラは他人とコミュニケーションをとるのが得意ではないのだ。
 生い立ちを思えばそれも当然のような気もするけど、自分の意思や感情を表現したりする事が特に苦手だし、怖がっているようにも感じる。
 俺との会話だって、フローラが饒舌に話すのはカメレオンの俺の話ばかりで、フローラ自身についての話なんてほとんどした事がない。
 フローラが心を許している唯一の例外がカメレオンの俺だけど、この状況で入れ替わるにはさすがに無理がある。
 カメレオンじゃなくて、人間の俺を頼りにしてくれるといいと思うけど、まぁ、人間不信に陥っているフローラからしてみれば、人間じゃないから逆に安心して話せるのかも知れない。

 とにかく、今のところはフローラにとって俺は初恋の相手(これは間違いない!)ではあるものの、心を任せられるほどの信頼に足る人間ではないという事だ。
 番いなのに、全く不甲斐ないことこの上ないが、精進するしかないだろう。

 となれば、本人が話さずにはいられないようにしてやればよい。
 竜族の番いの繋がりは強固で、生涯にわたって最高の悦びを得られる反面、番いを失えば絶望のあまり生きる意味を見い出せなくなってしまうほど。
 それ故に、竜族にとって番いの身の安全は何よりも優先させるべき事項となる。
 そして、その呪縛は竜族に番いとして選ばれた人間にも同様に降りかかる。

 俺はわざと挑発するように、フローラに話し掛けた。
 フローラが堪えきれずに感情を爆発させるのは、番いである俺の命が危機に晒されるような状況のみ。
 フローラは、俺が倒れて、きっと死ぬほど心配していたはずだ。

 案の定フローラは激高した。
 レノルドに帰れと言われた時には、自分でまいた種とはいえ、番いとして失格だと烙印を押されたようで、少々落ち込む。

 だが、よくよくフローラの言葉を聞いていると、フローラが酷い妄執にとらわれている事に気付く。
 フローラは、俺が想像していたよりも、ずっと過酷な環境の中で生きてきたのだ。
 
 フローラを腕の中に囲い込み、抱き締める。
 フローラの哀れな心をすくい上げて、守ってやるにはどうすればいい?
 落ち着かせるには、魔力の口移しが効果てきめんだ。でも今はその魔力が欠乏している。

 仕方が無いので、子供をあやすように頭を撫でた。
 落ち着いてきたところで、いつものようにおでこをくっ付けて、気持ちが伝わるように話す。
 俺達は番いだ、共にいるのが自然なのだと番いの繋がりを信じて、心を込めて訴えた。
 気持ちが通じたのか、フローラの強ばっていた身体から力が抜ける。
 そして、拗ねたように文句を言った。

「いいわけないよ。私だって、レオンくんと一緒にいたら、不幸じゃなくなっちゃうもん」

 それは、フローラが初めて贈ってくれた愛の言葉だった。

 
「フローラ・・・」

 感動のあまり声が出なかった。
 愛しくて、ただぎゅっとフローラを抱き締める。
 しばらくして、フローラが小さな声で何か呟く。

「レオンくんはあったかいね。さっきまですごく寒かったのに、不思議、氷も溶けちゃったみたい」 
「え?」 
「レオンもね、レオンくんと同じで温かいのよ」

 一体何の話だ?
 フローラが何を言いたいのか、さっぱり分からない。

「・・・レオンくん、レオンがまだ帰って来ないの」
「ああ・・・」

 フローラはカメレオンの方の俺を心配してるのか。
 今のところは、人間の俺よりもカメレオンの俺との方が繋がりは強いから、それも無理はないとは思うけど、でも今はといるのに。
 俺の腕の中で他の奴の事なんて考えるなよという気分になった。
 他の奴じゃなくて、それも俺だけどさ! 
 
「私、すごくゲンキンだね。さっきまでは、レオンくんが心配で心配で堪らなかったのに、レオンくんが元気になったと思ったら、今度はレオンの方が心配になってきちゃった。ね、レオンくん、レオンは無事かな?」

「ああ、絶対に無事だよ。心配しなくても、そのうち帰って来るよ」

「・・・・・・でもね、レオンはいつも私を守ってくれてたの。私、レオンは賢いから、ポルトが危険な状況だと判断して逃げたんだって、ずっと思い込もうとしてたけど、やっぱり無理! 戻って来ないのは、戻って来れない状態だからなのよ! レオンは逃げたんじゃなくて、私を守るために魔獣と戦っていたに決まってるもの! どうしよう、レオン、酷い怪我をして倒れてるのかも!」 

「フローラ、落ち着いて!」

 そわそわして今にも飛び出して行きそうなフローラをがっしりと捕まえて、言い聞かせる。
 
「落ち着いてなんていられないよ、相棒の危機なんだもん! いつだってレオンは私を助けてくれた。今度は私がレオンを助ける番よ! 私、レオンを探しに行ってくる!」

 悪い想像にどんどん正気を失っていくフローラを必死に説得する。 
 
「え、ちょ、ちょっと待って。こんな真っ暗な中、探したって見付からないよ」 
「じゃあ、寄宿舎の周りだけでも探してみる。だって、近くまで来て、力尽きてるかも知れないでしょう?」

 ああ言えばこう言う。
 強情に探しに行くと言い張るフローラを、なんとか宥めようとするけど、ちっとも言う事を聞かない。

「フローラ!! とにかく、もう少し待ってみよう? ひょっこり戻って来るかも知れないよ?」
「でも、」

 なかなか折れないフローラに、根負けしたのは俺だった。
 つい口が滑ってしまったのだ。

「そうだ、フローラの部屋に戻ってるかも! いや、きっと、戻ってるよ! まず、部屋を見に行った方がいい!」
 



 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...