竜王様のヘタレな恋 ーR18バージョンー

Arara

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外伝 レオンハルト編

フローラの気持ち2

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「フローラ?」

 夜半、レオンくんが目を覚ました。

「え? あ、レオンくん、目が覚めたのね! 良かった! 気分はどう? 喉は渇いてない? お腹は? スープがあるの」

 私は、落ち込みそうになる気持ちを奮い立たせるために、わざと明るい声でレオンくんに話し掛けた。

「フローラ、俺が倒れた後、どうなった? 今はどうなってる?」

 レオンくんは、スープをガツガツ食べながら聞いた。

「レオンくんの魔法のお陰で、百足は砂漠に戻って行ったわ。あれからは、魔獣も襲ってきてない。皆、無事よ。今は交代で見張りに立ってる」
「ふーん、そうか」

 レオンくんは少し考える素振りを見せたかと思うと、にっこり笑ってびっくりするような事を言った。

「じゃあ、俺は何とか約束を守れたわけだ。良かったよ。ぶっ倒れた時は自分でもやっちまったかなと焦ったけど、俺、生きてるし、フローラも街も無事だ。めでたしめでたしだな!」

 私は目を剥いて驚いた。
 めでたしめでたしですって?! 死にかけたのに!? なんでそうなるの!?
 生きていたから良しとするなんて、そんなのおかしい。
 私は、レオンくんが自分の命を軽く考えている事にものすごく腹が立った。

「全然良くないわよ! そこそこって言ったのに! そこそこって約束したのに! レオンくん、もう少しで死ぬところだったんだから! 分かってるの?! 本当に死んじゃうところだったんだから! 全然、めでたしなんかじゃない!!」

 だから、つい大声で怒鳴ってしまった。
 レオンくんが目を丸くして驚いてる。

「あ、私ったらごめんなさい。レオンくんが無理をしてでも街を救ってくれたのだから、本当はお礼を言わなきゃいけないのよね。だけど、だけどね、レオンくんを責めるのはおかしい、と思うけど、だけど、だけど、やっぱり駄目! レオンくん、体力が戻ったらレノルドへ帰って!!」

 こんな酷い言い方するつもりじゃなかったのに、つい溜め込んでいた言葉が口を衝いて出てしまった。
 レオンくんが傷付いた顔をする。
 こんな顔をさせたいわけじゃなかったのに。
 見るのが辛くなって、下を向いた。

「フローラ、不安にさせたのは悪かったよ。俺、もっと強くなるから! こんな無様な姿はもう見せない。だから、そんな事言わないでくれよ。今は不甲斐ない番いだけど、フローラが誇れるくらいもっと強い男になって見せるから! フロー」

 レオンくんが手を取ろうとしたのを、私は振り払って立ち上がる。

「そうじゃないの! レオンくんのせいじゃない! 私のせいなの。私のせいで、関係のないレオンくんをこれ以上危険な目に遭わせるわけにはいかないのよ。私の事情に巻き込むわけにはいかないの。お願い、分かって」

 レオンくんは黙り込んだ。
 私の酷い態度に、怒ってしまったのかも知れない。

「無理だね。フローラには悪いけど、俺達は出逢ってしまったんだ。フローラがどう思おうと、番いの繋がりは切れないし、俺達は離れられない。フローラだってもう気付いているはずだよ」

 すると、レオンくんは先程とはうって変わって、淡々と鋭い目つきで私を見透かしたように断言する。
 レオンくんには、私の心の底にある暗い願いまで分かってしまうの?
 レオンくんの言う通り、あの時、レオンくんが倒れて救命措置が必要だった時、最初はレオンくんを助ける為必死に魔力を吹き込んでいたけれど、私は途中で気付いてしまった。
 このまま続ければ、私の魔力の全てはレオンくんに取り込まれて、レオンくんの命と混じり合い、レオンくんに同化する。私はずっとレオンくんと一緒にいられる。
 思いついた時には、私の全身が悦びに震えた。

「わ、わたしと一緒にいたら、レオンくんは幸せになれないんだもの! だって、だって、私は幸せになってはいけない子供だから! 私が憎まれて蔑まれて孤独な生活を送っていれば、ポルトの人達も神様も満足してくれるの。私が不幸なうちは、私に優しくしてくれる人達に危害を加えない。だから、だから、」

「フローラ・・・」

 レオンくんがベッドから出ようとしてよろける。

「レオンくん! まだ動いちゃ駄目だよ」

 私が慌ててレオンくんを支えようと傍に行くと、レオンくんの腕が私を囲い込んだ。

「捕まえた」
「え?」

 レオンくんがニヤリと笑う。

「ズルいよ」

 文句を言うと、レオンくんは私をぎゅっと抱き締めて、駄々っ子を宥めるように頭を撫でた。

「ズルくてもいいさ。フローラを抱き締められるなら」

 レオンくんは恥ずかしげもなく堂々と言う。
 そして、真剣な面持ちで私のおでこに自分のおでこをくっ付けて、話し始めた。

「フローラ、よく聞いて。俺達は共にあるべき存在なんだ。フローラが幸せになってはいけないというなら、一緒に不幸でいよう」

 私の方がお姉さんなのに。
 本当は私がレオンくんを諭さなきゃいけなかったのに。

「あ、でも俺はフローラと一緒にいたら、不幸じゃなくなっちゃうけどな。うーん、フローラが不幸でいればいいんだから、それはいいのか」

 だけど、レオンくんの腕の中はうっとりするほど暖かくて心地が良くて、抗う気持ちは徐々に小さくなり、最後にはどうでもよくなってしまった。
 一枚も二枚も上手なレオンくんに、私は一言だけ文句をこぼす。

「いいわけないよ。私だって、レオンくんと一緒なら、不幸じゃなくなっちゃうもん」





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