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外伝 レオンハルト編

ばれる3

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 レオンくんには一人で考えたいからと言って、部屋に戻ってもらった。
 とても不満そうだったけど、しょうがないじゃない、私はとりあえず一人になって、頭を冷やして、さっき聞いた話を整理したかったんだもの!

 そりゃあ、誤魔化さずに本当の事を全部話してと言ったのは私だけど、まさかこんな突拍子もない話をされるとは思ってもいないじゃない。
 聞くための準備は出来てないし、次から次に明かされる真実?は複雑に込み入ってて、私の小さな脳みそは完全にオーバーヒートしてしまった。
 
 とりあえず詰め込んだ内容を整理しよう。
 えーとえーと、まず何だっけ? 易しいヤツから、順番に片付けていこう。うん。
 で、何だっけ?

 ・・・・・・

 落ち着いて。落ち着いたら、きっと思い出せる! 大丈夫!

 ・・・・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・

 えーと、こういう困った時はレオンに、・・・・・・って、

 そうだった。
 思い出した。
 レオンは、・・・レオンくんだった。

 そんでもって、レオンくんは人間じゃなくて竜族で、おとぎ話の竜の国は、本当にあった話で、しかもそれが今回の魔獣襲撃とかかわりがあって、おまけにその黒幕があの言い伝えの北に住んでるっていう魔物の神だったりして、そんでもって、魔物の神は竜の国に出てくる魔法使いで、種族としては魔族・・・ああ、またごちゃごちゃしてきちゃった。

 落ち着いて、一つずつ整理しよう。
 まず、レオンがレオンくんだった件について。
 うーん、正直、本人からちゃんと聞いたわけだけど、全然実感がないのよねー。
 私にとっては、レオンとレオンくんは全くの別モノで、だから、レオンくんのコトをレオンに相談しちゃってたわけだし。
 わあああああああああああああああああああああ、私、今更だけどずっと本人に相談してたんだよね?! 
 ってことは、今までずっと、私の気持ちはレオンくんに全部筒抜けだったってコト?!
 
 恥ずかし過ぎる!! 恥ずかし過ぎるよ!!
 
 明日から、私はレオンくんにどんな顔をして会えばいいんだろ・・・・・・
 あー、レオンくんじゃないレオンに会いたい・・・
 そんでもって、レオンに今のこの困った状況を相談したいよ。
 
 はぁーーーーー。
 堂々巡りで結論が出そうにないから、これはやっぱ後に置いとこう。

 次、じゃあ、レオンくんが竜族だった件は?
 うーん、竜族と聞いてそりゃあ驚いたよ? 実在するものとは思っていなかったから。
 千年生きてる仙人とか神様と同じ、おとぎ話に登場するだけの架空の存在だと思ってた。
 昔、竜の国は実在するって噂が大陸中に流れた事があるらしいけど、どこにあるのか誰も知らないし、竜族だって名乗る輩は偽物ばかりだから、結局、それも流言飛語の類だったんだろうって話だった。

 確かにレオンくんは魔力も魔法も人間離れしていて、得体の知れない存在なのかも知れない。
 だけど、レオンくんはレオンくんだよ? ポルトを命がけで守ってくれたレオンくんだよ?
 全然問題無い。

 よし、次!
 竜の国の話に出てきた魔法使いが魔物の神って話!
 ああ、この辺からややこしくなってきちゃうのよね。

 えっと、まず、おとぎ話の竜の国は本当にあった話で、魔族に唆された人間によって竜は捕まえられ、大昔に生きたまま心臓や肝や血を取られて残酷に殺された。
 で、竜は魔獣と同じで、殺されると魔石になる。
 で、その時殺された竜の魔石がこの魔獣襲撃事件に使われた。
 で、その黒幕は魔物の神の魔族である。
 聞いた事実を羅列してみたけれど、やっぱりよく分からない。
 っていうか、魔物の神って本当にいたんだ・・・・・・


「本当はポルトの言い伝え通りに、魔族になんて近寄らないのが一番なんだ。だけど、竜王は祖先の魔石の回収を命じた。竜族は総力を上げて魔族から魔石を奪い返すよ。竜の谷に還してやるんだ。このままじゃ、あまりにも哀れだろう? 魔石なら宝石のように美しいはずなのに、恨みの念のせいでこんな風になってしまった」

 レオンくんは、ジャイアントボアから回収したという竜の魔石を見せてくれた。
 そして、真剣な顔を向けて私に言った。

『だから、最初はともかく、今は俺の事情にフローラの方が巻き込まれているんだよ。魔族は俺達にとっても得体の知れない恐ろしい存在だ。だから、フローラは俺の傍を絶対に離れないで。フローラは俺の番いだから、魔族に狙われる可能性がある』




 寝過ごした! とにかく急いで支度をして、レオンくんの部屋に向かう。
 あれこれ考えたけど、結局答えは最初から決まってた気がする。
 
 部屋に入ると、レオンくんがベッドから出ようとしてるのをグレンが止めていた。
 
「ああ、ちょうど良かった。今、呼びに行こうとしてたとこなんだよ。ハルがもう大丈夫だって言って寝てないんだ。昨日死にかけてたのに、大丈夫なわけねーだろって、フローラからも言い聞かせてくれよ」

 私が寝てた間、グレンがレオンくんの面倒を見てくれてたみたい。

「グレン、ありがとう。交代するわ。レオンくん、駄目だよ。ちゃんと寝てなきゃ。グレンの言う通りなんだからね。皆、本当にすごく心配したんだから」

 傍に行ってベッドに入るように促すと、レオンくんは大人しく従った。

「フローラ・・・分かったよ。フローラがそう言うなら、ちゃんと寝る。だから、・・・ここにいて?」

 グレンが何か喚いて出て行ったけど、私を見詰めるレオンくんの目に吸い込まれていた私には全然聞き取れなかった。

「・・・うん」

 二人きりになると、レオンくんは手を伸ばして私の手を取る。

「フローラ、会いたかった」

 レオンくんの黒い瞳の奥には、私をいつも気遣ってくれていたレオンの小さな目と同じ光が宿っていた。

「私もレオンが・・・レオンくんが恋しかったよ。レオンくんが何者でもいい。レオンくんと一緒にいたい」

 涙が溢れて止まらなかった。





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