痛快!乙女さんがゆく!

Arara

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同志2

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 僕は、大学の付属施設の先端医療開発センターで、再生医療の研究をしている。
 僕の最終目標は、移植しか治らない腎臓病や心臓病の人達のために、臓器の一部または全部を作ることだ。
 だけど、研究にはお金がかかる。
 勿論、大学から資金は支給されるが、それで足りるなどとは到底言えなかった。
 だから、企業から資金を提供してもらい、合同研究という形をとったり、見返りに企業にとって有利になる情報を提供したりするのだ。

 僕は、長く合同研究していた企業から、成果を要求されていた。
 資金の打ち切りを言い渡され、どうしても結果を出さなければならない。
 焦れば焦るほど上手く行かず、考えれば考えるほど袋小路に迷い込んで、僕は一人もがき苦しんでいた。


 あれから、不眠症に悩まされる事はなくなった。
 結局、結果は出せず資金提供は無くなったが、かえって良かったと今は思っている。
 企業との合同研究は、資金が潤沢になる代わりに枷も嵌められる。
 今は、規模は小さくなったものの、誰に遠慮することもなく自由な発想でチャレンジ出来る。
 試してみたい事が沢山あった。


 僕が今、こんなに幸せな気持ちで楽しく充実して研究に取り組めているのは、全部女王様のお蔭だ。
 これまでは、実験に失敗する度くよくよ悩んで落ち込むのが常だったけれど、今の僕には大抵の事が些末に思える。

 応援してくれる家族や仲間がいて、自分が健康でありさえすれば、実験なんて何度だってやり直せる。
 大したことじゃないと思えるのだ。


 

 女王様のことは、毎日のように思い出す。
 もう一度会ってお礼を言いたいけれど、それはもう叶わない。


 お茶を飲み干す頃には糖分を得た頭が働き出して、女王様がやった事は全て僕のためになされた事だと分かっていたし、仮面に隠し切れない美しいかんばせが、優しい微笑で僕を見守る様子はまるで女神か聖母そのものだった。
 だから、また会いたくて会計時に予約を申し出たわけだけど、女王様はもう辞められているとかで、今は予約分だけを消化している状態なのだと聞かされた。
 残念に思うのと同時に、先輩がその貴重な予約を僕のために譲ってくれたのだと理解した。
 

 そして、後から妻に明かされた話で、土井先輩に会ったのは偶然ではなくて、妻が僕を心配して先輩に相談したからということが分かった。
 誰の忠告も受け付けなくなっていた僕に、尊敬している土井先輩の言うことならきっと聞くだろうと判断してのことらしい。
 先輩に迷惑をかけて申し訳なく思うのと同時に、妻にそこまでさせてしまった自分に腹が立った。


 先輩に会い、手を煩わせてしまったお詫びとお世話になったお礼、そして充実した日々の近況を報告する。
 先輩は喜んでくれて、応援するから頑張れよと励ましてくれた。

 その翌朝、出勤するとセンター長から呼び出しがあり、朝から僕の研究室に寄付したいと申し出る企業からの電話が鳴りっぱなしなのだが、何か心当たりがあるかと聞かれた。
 昨日、確かに企業からの資金提供が打ち切りになった話を先輩にこぼしたばかりだけど、まさか先輩が手を回してくれたのだろうか?

 僕は、直ぐに先輩に真偽のほどを確かめる電話をかけた。
 すると、困っていると話をしたのは確かに自分だけれど、判断したのは彼だよと、お礼は本人に言うといいと直通の電話番号を教えてくれる。

 彼とは、加納信一さんという方で、加納グループのトップ、先輩の高校時代からのご友人らしい。
 僕は知らなかったけど、加納グループは千葉が本拠地の、地元では有名な大きなグループ企業なのだとか。

 儲かってるみたいだから、遠慮なくもらっておけと先輩は軽く言ってたけど、友達の後輩というだけで会ってもいない知らない人間に、困っているからといって大金を出したりするだろうか。

 加納氏の意図が読めない。
 彼が社長を務める服飾関係の会社を筆頭に、加納グループ内の幾つかの企業と、おそらくは加納さんが口利きしたと思われる企業数社が寄付してくれたのだが、どれも医療分野の会社ではないだけに、理由がさっぱり分からない。
 純粋に再生医療発展のために寄付してくれたという事だろうか。



 僕は、早速加納氏に電話をして、お礼と寄付の理由を尋ねたのだが・・・

『ああ、気にしなくていい、俺達は同志だからな。馬鹿のお陰で会は存続する事になったから、会員証とバッチと心得十カ条を送るよ。詳しくは良一に聞いてくれ。じゃあ、研究頑張れよ』 
 
 その返答は、まったく意味のわからないものだった。

 同志? 会員証? もしかしてヤバい系の人? 
 一瞬疑ったけど、そう言えば先輩のご友人デシタ。

 先輩の紹介なんだから大丈夫だとは思うけど、やっぱり謎の会員証は恐ろしい。
 戦々恐々として、届くのを待つ。
 数日後に届いた物を見て、僕は感涙した。






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