なぜ、私を殺したのですか?

月見うさぎ

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第0章 婚姻前の死

1 惨劇①

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大陸にある5つの国の中で最も力を持ち大国であるジルベールとの婚約が決まったクラメル王国は盛大なパーティーを開いていた。
王座の広間には王族、有力貴族達が集まり大きなシャンデリア、きらびやかに飾られた空間で和気あいあいとした雰囲気で国王を見つめていた。

「我がクラメル王国に繁栄と栄光を!」

そうクラメル王国、国王である父がグラスを手に高く上げるとそれにつられ他の貴族達もグラスを挙げた。
国王の横に本日の主役である第3皇女セレーナ、つまり私が立っている。
この婚約の為にと腰まで伸ばした母譲りの綺麗な銀髪に映えるように濃い藍色の最高デザイナーのドレス。
他の令嬢から見たら贅沢と他国の王との結婚はこの上ない幸せだというが私はとてもそうは思えなかった。
それまで、ボーっと父の話を聞いていたら何か言うようにと促された。

「えっと…本日は私の為にお集まりありがとうございます。明日、この国を去ることは名残惜しい限りですが、大国ジルベールとの関係がより深くなることを心より嬉しく思います。」

そう、あらかじめ用意していた心もない言葉を告げると大きな拍手が沸いた。

「では、最愛の我が娘セレーナの婚約を祝い今日は楽しんでくれ!」

と14年の人生で2回しか会ったことのない名ばかりの父親の言葉に、ただ売った娘の利益が大きくて嬉しいだけでしょ?と不満に思った。

ふぅ-。とため息をつき壇上から下りると真っ先に駆けつけてくれたのは第3王妃の母。

「セレーナ!」

と、涙ぐみながら銀髪の髪を揺らしながら淡い水色のドレスに身を包んだ母が抱きついた。

「泣かないで下さいお母様。」

「だって…もう、毎日お花を持って来てくれるのも毎日お茶をすることも。セレーナの笑顔を見ることも……なくなるのでしょ?」

とジルベールとの繋がりが出来たことだけを喜ぶこの空間の中で唯一去ることを悲しんでくれてる母。

それを見て微笑みながらまた心もない言葉を発してしまった。

「大丈夫よ、お母様!私は今とっても幸せなんだから!きっとあっちの生活でも楽しくやれるわ!」

元は小国の姫だった母にとって他国に売られることはとても怖いものだと知っているのだろう。

私は心配させないように精一杯の笑顔を向けた。

「明日この国を去るけど毎日手紙書くから!」

「うん……苦しかったらいつでも帰っておいで」

とまるで子供みたいにポロポロと金色の目から涙を溢しながら優しく微笑んだ。

納得したような様子を見て、キョロキョロと見渡したが王族の中には大好きな兄2人がいなかった。

もちろん実の兄の方でもなく皇后、第2后妃の息子でもない。

「兄様とラナス見てませんか?」

「シリウス皇子?見てないわよ。」

「では、探してきますね!」

母に一言言い残しこの場を後にした。

廊下に出ると一気に夜の静けさが戻った。

主役がいなくてもいいのかと思ったが、誰もがジルベールの多大な利益に大喜びで気づきもしないだろう。

廊下をまっすぐ行った突き当たりをさらにまっすぐ行くと、真ん中の裏庭を囲うようにして右は部屋左は外のほぼ外に近い渡り廊下がある。

そこの手すりに肘をつき月を見上げた。

「綺麗な満月ね…」

涼しい夜風が髪をなびかせ、それが心地よく目をつぶる。

明日私はジルベールに嫁がなければならない。

これは、もう揺るがない事実だけどもし可能ならば婚姻なんか蹴飛ばして優しい母そして、大好きな兄2人と過ごしたい。

大好きな兄というのは、腹違いの兄で無口で不器用な第4王子シリウスと血の繋がりはないけど泣き虫で優しい兄のような存在ラナス。

でも、この婚姻がきっかけでギクシャクしちゃってなかなか話せずじまいだ。

「結局今もいなかったし。私がいなくても寂しくないのかな……」

そんな悲しいことを考えてしまい涙が滲む。

そんなことはないと思いつつもどこがでそう思っている自分がいる。

(落ち着くまでここにいよう。)

それからどのくらい時間がたったのか分からない。

ただひたすら月を眺めていたが、これでは埒が明かないのでそろそろ戻ろうと視線を月から廊下に戻した時だった。

ドン。

急に後ろから誰かがのしかかるような衝撃がきたのだ。

誰?!とドキドキしながらみると母が背中にもたれかかっていた。

「なんだ……誰かと思ってビックリしたー」

私は先ほどと同じで寂しくて抱きついたのだとホッとしたのだが、何か様子がおかしい。

「セ…レーナ…」

「母様??」

「逃げて……」

「……え?」

それだけ言うと足が脱力したようにガクと座り込んだ。

「母様?!!」

母の呼吸が荒い。

どこか苦しそうにハァハァと肩ごと呼吸をしている。

「母様?!どこか怪我でも…」 

「…………え」

母が押さえている手に視線をやると淡いドレスが赤く滲んでいた。

ドッドッドッドと心臓が止まりそうなほどに速まり血の気が引く。

「セレーナ……逃げて。謀反よ……」

謀反……その言葉を理解するのに時間がかかった。


 もしも神様がいるのなら、なぜこんな惨劇を起こしたのか?と問いただすだろう。

 そして、大好きだった兄を憎むようになるとは思いもしなかっただろう。


※ー※ー※ー※ー※ー※ー※

ご愛読ありがとうございます

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