なぜ、私を殺したのですか?

月見うさぎ

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第2章 居場所

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あの一件から数日。

不信感を抱いているカペラをよそに英才教育がスタートした。

毎日毎日、ほとんどの時間を授業に費やしている。

“どうせ殺すのに、形だけの皇女のために高い金を使うなんて勿体ないなー”

私をそこまで馬鹿じゃない。

侯爵が釈放されず、私だけ仕方なくシリウスの娘として受け入れられた意味ぐらい分かる。


「カペラ様!聞いているのですか!?」


 もの呆けていると急な怒鳴り声にビクと肩を震わせた。

授業中にも関わらずボーとしている生徒である“一応”皇女のカペラに嫌気がさしている皇室教師アスラム夫人。

“何でこの私がこんな小娘に教えないといけないのかしら?皇帝の娘といえど皇帝は侍女の子だし、娘の母親は平民出の下級貴族らしいじゃない”

「いいですか?いくらあなたでも立派な皇女なのですよ?将来は夫を支え子供を産むのが最大の幸せなのですよ?!」


その言葉に眉をひそめたカペラに、余計強い口調で話す。


「子供を産むのは淑女としての最低限の役目。それは皇女なら当然!そして、皇女ともあれば身分の高い殿方、隣国の王族などの婚姻も夢ではありません!これ以上の幸せは──」

カペラは苛立ちを見せバンっと机を叩き立ち上がった。

「幸せ?役目?誰がそんなの決めたの?」

「なっ!」

「馬鹿馬鹿しい。幸せかどうかは自分で決めるのが当たり前でしょ?」

そんな女性を縛り付けるような呪いのような言葉をセレーナの時から何回も何十回も言われ続けた。

この人の話す授業はとてもつまらないし、うんざりするし、気分が悪い。就寝直前の授業にするようなものでもない。

「では」と言って呆気にとられている夫人をよそにバタンと扉を閉めた。

「皇女様っ!!これで済むと思っているのですか?!」

廊下を歩くと中から夫人の叫ぶ声が聞こえたけどそれも無視。

本当につまらない。前世に嫁修行とかなんとかで習った大部分の学問は全てコンプリートしていて、今さらそれをするなんて無意味だ。

「皇女様。陛下がお呼びです」

渡り廊下を歩いていると騎士の姿をした人に後ろから声をかけられた。

“兄様がこんな時間に何の用かしら?”

「こちらへ」と言われあとをついていくことにした。

別宮に住んでいた私はそこまで王宮に詳しい訳じゃない。あれよこれよと王宮の廊下を右に左にとついていく。

でも、どんどん人気の少ないところに行っているような気がし不信感が出てくる。

足を止めるとそれに気づいたのか、前に歩いていた騎士が振り返り笑顔を貼り付けたような顔で笑う。

「あなた……本当にここの騎士なの?」

「何を?ここの騎士に決まっているじゃないですか」

「なら、なぜここに来る必要が?そっちは渡り廊下。先には使われてない部屋があるだけであとは中庭だけ」

だいたい王宮の内臓を把握していることに目を丸くし、嘘はつけないということを察したのか本性を表し始めた。

「ほほぉ。ここに来て数日だと聞いてはいましたが、もう既にご存知だったとは……」

“ジルベールからの刺客?今ならまだ逃げれる”

もちろん8歳の足の速さが大人に勝てれるならの話だ。

「ま、ここに着た時点でもう手遅れですけどね」

カペラが気づいた時には遅かった。

後ろの共犯者達がカペラを押さえ込み猿グツワを噛ませ手足を縛った。



“あーあ。ミスったなー”

そう、カペラは詰められた箱の中で冷静に反省した。

暗闇につつまれた王宮敷地内にある森を5、6人の人影が通る。

「へへへ。うまく行ったな」

「そうだな。見捨てられた姫が消えたところで対して騒がないだろう」

他国からこういう時のためにこの王宮に使用人として忍び続けて4年、やっとの依頼がこれだ。

あとは、商人業者である仲間のいる荷馬車に姫入りの荷箱を詰め込み国外に逃げれば大金が手に入る。

そう思うだけで頬が緩む。

「おい、こんな時間に何してる?」

ドキっ!とし、カペラの箱を抱えている1人を含めた3人が草影にしゃがみこみ隠れた。

“この声は近衛騎士のレグルスとかいう人?もしかしたら助けてくれるかも”

約七メートルほど先の渡り廊下から見回りをしていたのは茶髪の近衛騎士レグルスだった。

残りの2人はドギマギしながら受け答えをする。これでバレれば死罪は確定。

「えっと……私達は商人業者です」

「こんな時間にですか?」

眉間にシワをよせ怪しむ。それはそうだ。この時間にこの嘘は難しい。

一方箱の中ではカペラが縛られたまま足で箱を壊そうと蹴っていた。

ガン!ガン!ガン!

が、穀物用の荷箱のため、なかなか壊れない。それどころか右に左にとグラグラ揺れる。

ガっターン!!!

ついに箱が倒れカペラは外に放り出された。

「痛ったぁ!」

その時レグルスと目があった。

確かに目があったのだ。いくら茂みの中でも葉の隙間から見えたのだ。

一瞬目を大きく見開き確実に分かったはずなのに、彼は目を………

そらしたのだ。

カペラは確信する。あぁ。もう完全に見捨てられたのだと。
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