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しおりを挟む腹が立ってしょうがなかった。
俺らはただの物だとでも思っているのか?
俺らにだっていくら国の為でも命はある。
それなのに貴族どもは。
この国の王族だというのに、呑気に読書?
呆れて物も言えない。
気づけば俺は怒りに任せて、皇女がいた中庭の方に向かっていた。
皇女がいる木の脇にはレンガ道になっていて正面からは訓練を終えた生徒が帰ってきていた。
その生徒の横をミエルは通りすぎようとしていた。
「うわぁー。今日も訓練疲れたわー」
「それなー。」
「真剣ともなると重さが全然違うよな。」
「あぁ。俺も………あれ?俺、剣どうしたっけ?」
「ハハハっ。忘れたんじゃね?」
「んな。バカな。確かに持ってたはずだぞ?」
2人組の生徒を通りすぎたミエルの手には先程なかった真剣が握られていた。
皇女は腰まで伸ばした白百合のような髪色で自然とウェーブしていた。
「ルイゼ・グレイ・クラシエル。」
名前を呼ぶと本から目を離してミエルを見上げた。
戦場にはない、艶と華奢な体。
女にしては座ってわかるぐらい、身長がそこそこあるみたいだ。
皇女は剣に気づき、戸惑いと困惑の色を浮かべた。
当然だった。
「お前を殺す。」
普通の温室育ちの女はここで、悲鳴をあげるか助けを乞うのどちらかだと思ったが、そいつは静かにこう言った。
「理由はなんだい?」
口調はまるで、女というか男みたいな口調だ。
「……今回の戦争はお前らのせいだ。お前らのせいで大勢の命が失われた。」
「・・・・」
「それなのに、お前らはまるで自分達の手柄のようにし、遺族には死亡の言葉だけだ!」
「慰謝料もまるでなし。遺族の気持ちを考えたことはあるか!!」
「俺は12から戦場に出ている。」
それまで、黙って聞いていたルイゼの顔が少し曇った。
「12?でも。規定では15からのはず……」
「あぁ。俺もそれを聞いて驚いたよ。他にも奴隷や賄賂、敵国のスパイ。人身売買。それほどこの国は腐っている。」
大勢の人が抱えていた怒りを一気にミエルはルイゼに言った。
「以上が理由だ。」
初めて知る事実に驚き悲しみを隠せず、うつむく。
フワッと顔をあげ
「なら、しょうがないね。でも、痛くはしないでくれ。」
と笑った。
それは非常におっとりしていた声で女にしては少し低めで男にしては高めだった。
“しょうがない?殺されることがしょうがないのか?”
この状況を理解し殺してもいいと笑っている奴はよっぽどの死にたがりか冷静に物事を考えれるバカだけだ。
もっとも、冷静に物事を考えれるバカは1人しか知らないが。
「殺さないのか?」とまるで殺す気がないことを分かっているように微笑む。
それを聞いて、血迷い程度の気持ちがスッーとひいていった。
「貴殿は確か……リスティア───」
思い出したように名前を呟こうとした瞬間。
バシュッ!と木の上から何が落ちてきた。
それはそのままビーン!とルイゼが持っていた本に刺さった。
驚きのあまり目をパチクリさせたルイゼ。
皇女を狙ったかのように「いかにも刺さりました!」みたいな感じに矢が革表紙の本を垂直に刺していた。
それは勿論ミエルをも驚かした。
“なんだ?”
ルイゼは心当たりがあるように、木を見上げ問いかける。
「ロイ。危ないじゃないか。」
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