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3.平民
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ワイアットは初等部、私は中等部に通っているのだが、最近ワイアットの良くない噂が耳に入る。
勉強が疎かになり、授業態度が悪いだとか、ある令嬢とばかり仲良くしているだとか…。
しかもその令嬢がこの学園で有名な意地の悪い庶民だとか…!
私はその噂を聞き、昼休み初等部にあるワイアットのクラスへと向かった。
「ワイアット」
扉を開き、ワイアットの名前を呼ぶ。
苛つきからかいつもよりも低い声が出てしまうが、今はそんなことどうでも良い。
それよりも…この噂が事実かどうかだろう。
もしも平民がワイアットに取り入ろうとしているなら…。
「姉様っ…!」
私に気づいたワイアットが満面の笑みでこちらを見つめる。
それが嬉しくてつい私も頬を緩ませた。
けれど、私の緩んだ顔はすぐさま先ほどと同じ様な顰めっ面へと変わった。
「行かないで下さいよ!ワイアットさまっ!」
私のワイアットの腕に絡める様に抱きつき引き留めているあの女性…。
たしかにあれはこの学園で有名な平民ね。
私も一度姫であるリリーから聞いたことがある。
「あのねぇ、あの子ったらわたくしに姫なんだからこれぐらいちょうだいよ!だなんて言ってきたの。さすがに驚いたわ。わたくしに敬語で話さないなんて…!貴女だけが特別だったのよ?だからか、あの時は何だかとても苛々してしまったわぁ」
それをすぐさまイライラして良いものなのよと訂正したのだが、そんな礼儀のない女が今ワイアットへとくっついている。
ズカズカと私は2人に近づき扇子と自身の手で勢いよく音を立てた。
「やめて下さる?私の弟に近づこうだなんて」
「あぁ!ワイアットのお姉様ね!」
「お姉様だなんて…。ワイアット?早くこちらへ」
私はワイアットに向かっていつものように腕を広げた。
それを見てワイアットは困り顔から嬉しそうに微笑んで私へと勢いよく抱きついた。
「ふふ、可愛いらしい」
私はそんなワイアットを強く抱きしめて微笑んだ。
「ワイアットさま?今日はわたしとご飯を食べましょうって約束したじゃありませんか!」
「ワイアット、今日はあなたの好きな、私特性のサンドイッチよ。」
ワイアットは私の言葉を聞いて、嬉しそうに私の持っているランチボックスを見つめた。
「さぁ、行きましょう」
手を繋いだ私がそう言えば、空いている片方の手を女が強く握り、ワイアットを引き留めた。
「ワイアットさま!約束破るんですか!?」
「貴女!ワイアットが痛がっているじゃない!」
私は慌てて、女の手とワイアットの腕を離した。
「…ミルキーさん、僕は約束した覚えはないよ。あと何度も言っているけれど僕の事を名前で呼ぶのはやめてくれないか。友達になった覚えもない」
淡々とそう女に言ったワイアットに私はぽかんと口を開けて固まった。
(…ワ、ワイアットって学園ではこんな感じなの?まるで別人みたい)
そんな事を考えている間にいつのまにかワイアットは女から離れ、わたしの手を引っ張り歩いていた。
「今日のサンドイッチの具材はなんですかっ?」
いつものワイアットが可愛らしい笑みでわたしに話しかける。
「今日はね、貴方が大好きなベーコンと卵のサンドイッチよ」
「嬉しいです!早く食べましょう」
にこにこと力強く手を引っ張り屋上へと向かうワイアットに私はついふふと笑みをこぼした。
「そんなに急がなくてもサンドイッチは逃げたりしないわよ」
「昼休みの時間は逃げてしまいます…!姉様ともっとおしゃべりしたいから邪魔されないように、誰もいないところへ早く行きましょう!」
「そうね」
微笑みそう言えばワイアットはより笑みを深めて歩みを進めた。
勉強が疎かになり、授業態度が悪いだとか、ある令嬢とばかり仲良くしているだとか…。
しかもその令嬢がこの学園で有名な意地の悪い庶民だとか…!
私はその噂を聞き、昼休み初等部にあるワイアットのクラスへと向かった。
「ワイアット」
扉を開き、ワイアットの名前を呼ぶ。
苛つきからかいつもよりも低い声が出てしまうが、今はそんなことどうでも良い。
それよりも…この噂が事実かどうかだろう。
もしも平民がワイアットに取り入ろうとしているなら…。
「姉様っ…!」
私に気づいたワイアットが満面の笑みでこちらを見つめる。
それが嬉しくてつい私も頬を緩ませた。
けれど、私の緩んだ顔はすぐさま先ほどと同じ様な顰めっ面へと変わった。
「行かないで下さいよ!ワイアットさまっ!」
私のワイアットの腕に絡める様に抱きつき引き留めているあの女性…。
たしかにあれはこの学園で有名な平民ね。
私も一度姫であるリリーから聞いたことがある。
「あのねぇ、あの子ったらわたくしに姫なんだからこれぐらいちょうだいよ!だなんて言ってきたの。さすがに驚いたわ。わたくしに敬語で話さないなんて…!貴女だけが特別だったのよ?だからか、あの時は何だかとても苛々してしまったわぁ」
それをすぐさまイライラして良いものなのよと訂正したのだが、そんな礼儀のない女が今ワイアットへとくっついている。
ズカズカと私は2人に近づき扇子と自身の手で勢いよく音を立てた。
「やめて下さる?私の弟に近づこうだなんて」
「あぁ!ワイアットのお姉様ね!」
「お姉様だなんて…。ワイアット?早くこちらへ」
私はワイアットに向かっていつものように腕を広げた。
それを見てワイアットは困り顔から嬉しそうに微笑んで私へと勢いよく抱きついた。
「ふふ、可愛いらしい」
私はそんなワイアットを強く抱きしめて微笑んだ。
「ワイアットさま?今日はわたしとご飯を食べましょうって約束したじゃありませんか!」
「ワイアット、今日はあなたの好きな、私特性のサンドイッチよ。」
ワイアットは私の言葉を聞いて、嬉しそうに私の持っているランチボックスを見つめた。
「さぁ、行きましょう」
手を繋いだ私がそう言えば、空いている片方の手を女が強く握り、ワイアットを引き留めた。
「ワイアットさま!約束破るんですか!?」
「貴女!ワイアットが痛がっているじゃない!」
私は慌てて、女の手とワイアットの腕を離した。
「…ミルキーさん、僕は約束した覚えはないよ。あと何度も言っているけれど僕の事を名前で呼ぶのはやめてくれないか。友達になった覚えもない」
淡々とそう女に言ったワイアットに私はぽかんと口を開けて固まった。
(…ワ、ワイアットって学園ではこんな感じなの?まるで別人みたい)
そんな事を考えている間にいつのまにかワイアットは女から離れ、わたしの手を引っ張り歩いていた。
「今日のサンドイッチの具材はなんですかっ?」
いつものワイアットが可愛らしい笑みでわたしに話しかける。
「今日はね、貴方が大好きなベーコンと卵のサンドイッチよ」
「嬉しいです!早く食べましょう」
にこにこと力強く手を引っ張り屋上へと向かうワイアットに私はついふふと笑みをこぼした。
「そんなに急がなくてもサンドイッチは逃げたりしないわよ」
「昼休みの時間は逃げてしまいます…!姉様ともっとおしゃべりしたいから邪魔されないように、誰もいないところへ早く行きましょう!」
「そうね」
微笑みそう言えばワイアットはより笑みを深めて歩みを進めた。
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